現在の運用面での課題に応える画期的なアーキテクチャ

ルーテッド オプティカル ネットワーキングの概要: ネットワークレイヤの統合

はじめに

収益が一定のまま運用コストが上昇しているサービスプロバイダーは、市場の変化に対応できるアプローチを求めています。つまり、設備投資(CAPEX)と運用コスト(OPEX)を抑えながら、IP サービスの大規模な拡大に対する投資を保護できるソリューションを必要としているのです。従来、ネットワーク事業者は、3 〜 5 年ごとにネットワークをアップグレードする必要がありました。一般的にその主な理由は、新しいタイプのサービスを提供するためでした。そしてアップグレードするたびに、新しい導入方法、新しい計画管理手法、新しい計画ツールが必要になったため、運用コストが大幅に増加しました。

さらにサービスプロバイダーは、今日のコンテンツプロバイダーやアプリケーション プロバイダーが急速に進化させているサービスに対応しなければなりません。5G、Internet of Things(IoT)、クラウドベースのアプリケーションに対するニーズの拡大に対応するには、より柔軟なインフラストラクチャを構築する必要があります。そのようなインフラストラクチャの重要なポイントの 1 つは、現在の収益源となっているサービスを維持しながら、付加価値の高いサービスを追加できる拡張性を備えていることです。これらの課題は、ほとんどのネットワークが階層化されて個別のテクノロジーに分断されているため、サービスを追加するたびに各レイヤでコストが増加することに起因しています。また、各レイヤで保護機能が重複していることで、ネットワーク使用率が低下し、ますます複雑になっています。

進歩は変化なくしてはありえない。考えを変えられない人は何も変えられない

ジョージ・バーナード・ショー

したがって、新しいソリューションでは、ネットワークの運用面に対応する必要があります。現在、運用コストは、ネットワークコストの約 80% を占めています。コストが高くなる原因は、複数のレイヤを管理することの複雑さ、電力とスペースの制約、ライフサイクル管理にあります。現在のサービスは、さまざまな部門が管理する従来の階層型アーキテクチャ上で実行されています。そして各レイヤでは、ルータ、オプティカル トランスポート ネットワーク(OTN)スイッチ、オプティカルトランスポンダ、再構成可能オプティカル アド/ドロップ マルチプレクサ(ROADM; Reconfigurable Optical Add-Drop Multiplexers)が利用されています。これまで、IP ドメインとオプティカルドメインの統合(IPoWDM)は、ポート密度のトレードオフと、技術の進歩サイクルの違いに悩まされていました。また、組織の壁によって、自動化の進歩を活用できずにいました。このような現在の運用状態では、ネットワークを適切に最適化することは困難です。

現在、電子機器に大きな経済的変革を引き起こしている革新的なアーキテクチャが登場し、主要なサービスプロバイダーは、現在の運用モードと比較した上で導入を検討しています。ルータのネットワーク プロセッシング ユニット(NPU)は、現在、数十テラビットから数百テラビットまで拡張できるようになっています。また、400G オプティクス インターフェイスはサイズが小さくなり、電力消費量も少なくなっています。そのため、これまでとはまったく異なる方法でネットワークのアーキテクチャを設計できます。

一方、ルータプラットフォームの拡張性が常に課題であったため、ルータをバイパスするアーキテクチャや ROADM が開発されました。このアーキテクチャは、非常にスケーラブルなルータや新しいオプティクス インターフェイスが市場に出回っている今だからこそ実現できるものです。また、これらの機器の拡張性を考えると、今投資しても、今後何年にもわたって保護されます。

おそらく、これらの中で最も重要なポイントは、ネットワーク管理をシンプルにすることで、今後 5 年間で運用コストを 60% 削減できるということです。設備投資の削減額は比較的少ないものの、運用コストの 60% 削減は非常に大きなインパクトがあります。さらに、モバイルバックホールでの IP アグリゲーションに要する総所有コスト(TCO)は、設備投資で最大 50%、運用コストで 70% 削減されます。

 

ネットワークの再構築

新しいソリューションに対するシスコのビジョンは、ルータとオプティクスの分野で起こっている抜本的なライフサイクルの変化に対応して、それらのテクノロジーを異なるアーキテクチャで利用することです。これらのテクノロジー(Cisco 8000 ルータ、400G ZR/ZR+ コヒーレントオプティクス、シンプルな DWDM ラインシステム、テレメトリソフトウェア、自動化)は、すべて、新しいネットワークパラダイムにつながるものです。

この新しいネットワークは、伝送路が各地点内で必ず終端するポイントツーポイント アーキテクチャをベースにしています。これは「ルーテッド オプティカル ネットワーキング」とも呼ばれています。このアーキテクチャによって、ネットワーク事業者は、今後 10 〜 15 年にわたって成長を維持し、投資を保護できるようになります。初期のモデル(ACG TCO)で、これまでに運用コストが 45% 以上削減されることがわかっています(図 1 参照)。

Figure 1. Five-Year Cumulative OPEX of IP Transport to Router Bypass (Source: ACG Research 2020)

図 1. IP トランスポートとルータ バイパス アーキテクチャの 5 年間の累積運用コストの比較(出典:ACG Research 2020

図 2. ルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャ

ルーテッド オプティカル ネットワーキング ソリューションは、IP サービスと専用回線サービスを単一の IP/MPLS ネットワーク(インターネットプロトコル/マルチプロトコル ラベル スイッチング)に統合することで実現されています。すべてのスイッチングはレイヤ 3 で行われます。ルータは、標準化されたオプティクス インターフェイスを利用したポイントツーポイントの WDM リンクによって、ホップバイホップで接続されます。管理面では、単一のネットワークレイヤにおいて、モデル駆動型のプログラムで自動ターンアップ/プロビジョニングを実現できるため、柔軟な対応が可能になっています。このシンプルなアーキテクチャは、オープンデータモデルと標準 API を備えているため、プロバイダーは、自動化に注力することで、よりシンプルなネットワークトポロジを実現できます(図 2 を参照)。また、このアーキテクチャを段階的に導入するアプローチでは、既存のインフラストラクチャを活用します。

ルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャの利点は、単一レイヤであるため、計画、設計、アクティベーション、トラブルシューティング、管理がシンプルなことです。ネットワーク内のデバイスが削減されることで復元力と可用性が向上するとともに、オプティカルネットワークの距離が短縮されるため、光ファイバのキャパシティも最適化されます。つまり、ネットワークを維持するすべての側面がシンプルになるということです。

シスコは、現在の運用モードと 5 年間の成長計画を比較するプロセスも用意しています。各運用事業者には固有の課題と独自設計のネットワークがあるため、シスコは、現在のネットワークとコンバージド アーキテクチャ ネットワークを比較するためのモデリングツールを作成しました。このモデリングツールは、光ファイバのキャパシティ、ROADM のスケーラビリティ、DWDM インフラストラクチャの内外での IP トラフィックを、数年後の状況と比較します。

たとえば、あるモデルでは、事業者の 5 年間の成長計画を作成し、トラフィックを年平均成長率(CAGR)の推定値以上に増加させた上、ライフサイクルを 15 年にまで延ばしました。この例では、コンバージドアーキテクチャによって TCO が大幅に削減されました。現在のツールでは、複雑なネットワーク設計に対して、何週間も何ヵ月もかけずに迅速にモデリングできます。

シスコは、ルーテッド オプティカル ネットワーキング アーキテクチャに全力を傾け、ルーティング、オプティクス、管理、自動化プラットフォーム全体に対して戦略的に投資しています

Jonathan Davidson
シスコ 大規模インフラストラクチャ グループ担当 SVP/GM

まとめ

新世代の大規模スケーラブルルータと 400G オプティクス インターフェイスにより、ネットワークの経済性は変化しています。レイヤを削減することでトポロジがシンプルになり、ビットあたりのコストが減少します。

最終的には、ネットワークの最適化により、ネットワークの使用効率が向上し、サービス提供までの時間が短縮されます。シスコは、ネットワークをシンプルにし、TCO を削減するために設計した、この革新的なアーキテクチャで業界をリードしています。