こちらは、ハイブリッドクラウド活用、企業のインフラストラクチャと運用への影響、そしてより良いテクノロジーとビジネス成果を得るための戦略に関する最新動向を調査したレポートです。特に明記のない限り、本レポート内のインサイトとデータは、S&P Global Market Intelligence 社の一部である 451 Research 社がシスコの代理として実施した、13 ヵ国にわたる 2,500 人の IT 意思決定担当者を対象としたグローバルアンケートで得たものです。回答者には、クラウドテクノロジーを高度に活用する企業に所属する、クラウドコンピューティング、DevOps、エンタープライズ ネットワークの専門家も含まれます。
オンプレミスのインフラストラクチャとクラウドベースのリソースを合体させたハイブリッドクラウド モデルは、シスコのグローバル調査を見るに、企業の標準となりつつあります。アンケート対象企業の大半(92%)は複数のパブリッククラウドを使用していますが、その目的は各サービス独自の強みの活用だけでなく、運営の敏捷性、セキュリティ、アプリケーション パフォーマンス、そしてビジネスレジリエンスの向上でもあります。
当社アンケートへの回答者の皆さんは、ハイブリッドクラウドモデルが生む課題を痛感し、さまざまな方法で適応しようとしています。NetOps、CloudOps、DevOps チームの連携が技術面と運用面の課題を克服する鍵となると、多くの方が答えていました。インフラストラクチャの最新化、アプリケーション内部の再構築、AIOps と自動化を使った運用の強化も、ハイブリッドクラウドの成功に欠かせない要素と見られています。
回答者の皆さんは、ネットワーク、クラウド運用と、DevOps チームの連携に、価値を見出しています。クラウドネイティブとハイブリッドクラウドへの移行により、DevOps チームは新旧アプリケーションの落としどころを見つける目的で、ハイブリッドの最適化済みインフラストラクチャを活用するようになってきています。
82%
ハイブリッドクラウドを活用している回答者の割合
92%
パブリッククラウド プロバイダーを 2 社以上使用している企業の割合
8%
パブリッククラウド プロバイダーを 1 社のみ使用している企業の割合
いまや世界中ほとんどの企業が、多数のアプリケーションに対応するため、そしてビジネスの迅速性と拡張性を高めるために、複数のクラウドを使用しています。シスコのグローバルアンケートでは、回答者の 82% が、現在クラウドベースの Infrastructure as a Service(IaaS)を使用してワークロードをホストしていました。このハイブリッドアプローチをとることで、企業はより 迅速で拡張性のある開発環境を構築し(42% が回答)、ビジネスの迅速性とイノベーションを加速(40% が回答)できています。加えて、現在そして今後ワークロードを配置する最適な場所を検討する際、マルチクラウドの使用が一般的な解決策となっています。地域ごとのコンプライアンスやセキュリティ、パフォーマンスなどの要素を考慮して、企業ごとに最適な環境を選べるためです。
アンケート対象企業の多く(58%)が、ワークロード用にパブリック IaaS クラウドプロバイダーを 2 ~ 3 社、そして 31% が 4 ~ 10 社使用していました。3 社以上のクラウドプロバイダーを使用する企業は、専業のパブリッククラウド プロバイダーや、広範なポートフォリオの一部としてクラウドサービスを提供する企業(たとえば電話会社)など、AWS、Azure、Google Cloud 以外のクラウドプロバイダーも活用しています。また、従業員が 5,000 人を超える企業では、パブリッククラウド プロバイダーを 10 社以上使用する確率(8%)が、従業員数の少ない企業の確率(5%)を少し上回りました。大企業のほうが基幹業務関連の要件が多いことから、複数プラットフォームにまたがった、IT の観点に留まらない使い方が求められるためです。
興味深いことに、調査のほとんどの分野にわたって地域差はさほど見られませんでした。つまり、ハイブリッドクラウド環境を運用する人々が経験する内容はある程度共通しているということです。皆さんは、世界共通の課題に立ち向かう一つの精鋭グループといえるでしょう。
SaaS に注目すると、企業が使用するプロバイダーの数はさらに増えます。回答者の 23% が、E メール、コラボレーション、ビデオ会議、顧客関係管理(CRM)、人的資本管理(HCM)などの分野で合計 20 ~ 100 のサービスを業務に使用していると答えました。また、回答者の半数近く(45%)が 5 ~ 10 社の SaaS ベンダーを使用していました。SaaS アプリケーションの多くは特定のビジネスニーズや IT ニーズに特化しているため、企業は複数ベンダーにまたがって使用することになるのです。
オンプレミスとクラウドベースのリソースを組み合わせたモデルが標準となってきています。大多数の企業が、セキュリティの管理、アプリケーション開発の強化、ビジネスの迅速性の強化に複数のクラウドを活用しており、ワークロードごとに最適な場所を選んでいます。
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの活用を進めるにあたって、課題は必ず立ちはだかります。特にセキュリティは、マルチクラウドを使用する回答者が抱える課題の中でも一番の難題です。先述のとおり、セキュリティは回答者がマルチクラウドを使用する大きな理由でもあり(37% がそう回答)、回答者はセキュリティと、パフォーマンスや拡張性のニーズとのバランスを重視しています(42% がそう回答)。同時に、回答者の 3 分の 1 がマルチクラウド環境での運用の複雑さ(33%)と管理コスト(33%)に関する課題を抱えています。回答者はこうした障害を克服するために多様な戦略を採用し、そこに役立つ新たなテクノロジーの導入に強い意欲を見せています。
マルチクラウド活用を目指すどの段階にいようと、セキュリティは重要課題であり続けます。常に変化し続ける脅威に、技術とプロセスを適応させていく必要があるからです。セキュリティはハイブリッド運用のさまざまな要素と関連していることを、常に念頭に置くことが大切です。運用面のセキュリティの懸念事項は、環境を拡張する限りついてまわります。ハイブリッドアプローチをとることで、企業はセキュリ ティの最も基本的な制御であるセグメンテーション、そ してアイソレーションを導入でき、つまり使用例ごとに 異なるクラウドを使えるようになります。
成熟したクラウド運用に必要な要素の 1 つが、ワークロードとデータの配置場所を慎重に選ぶことによるリスク管理です。ハイブリッド環境では、セキュリティチームは、ワークロードの一部をパブリッククラウドに配置して残りをオンプレミスに置いたり、データ格納要件ごとに領域を使い分けたりなど、配置のバランスをとる方法を選択できます。これは強みと言える一方で、複数の異なる領域で運用することにより複雑性が増すというリスク要素もあります。クラウド環境ごとに異なる運用モデルと管理環境を持つことになる可能性もあるのです。これらを管理する共通のフレームワークがなければ、セキュリティチームはクラウドごとにスキルを開発しなければならず、大量の時間とリソースを投じることになります。
アプリケーションを別の環境に移行する頻度によっては、セキュリティ面の対処はいっそう複雑で困難になります。アンケート回答者の半数以上が、毎週アプリケーションをオンプレミスとオフプレミス環境間で移行すると答えました。ワークロードをオンプレミスと別のパブリッククラウドに分割するのに加え、企業はセキュリティ態勢を強化する選択肢も視野に入れるようになっています。たとえばクラウドネイティブなテクノロジー(44% が回答)や Infrastructure as Code(58% が回答)の使用です。環境全体のセキュリティ管理に加えて複数のクラウドにまたがる API のセキュリティを確保するというのは困難な課題だと、回答者の 32% が答えています。
ここで役立つのが、複雑性にまつわる課題を克服しつつハイブリッドクラウドのセキュリティ面の強みを最大限に活かせる、自動化と抽象化という領域です。複数のクラウドにわたってセキュリティ管理の共通フレームワークを敷くツールをセキュリティチームが導入できれば、設定不備や操作ミスといった最大のリスクを緩和できるうえ、正しいワークロードを適切な環境に配置するためのガードレールを確保できます。有能な管理プラットフォームが提供する抽象化は、ハイブリッドの複雑さにすでに過負荷状態のセキュリティチームにとって、力強い味方となるでしょう。
クラウド環境の管理業務を簡素化するツールが急増しているにもかかわらず、回答企業の 33% が、ハイブリッドクラウドまたはマルチクラウドモデルの活用にあたって運用の複雑さが重大な懸念事項だと答えています。ハイブリッド環境を持つとは、バラバラのクラウド環境だけでなくさまざまなハードウェアも管理しなければならないことを意味します。回答者の多く(79%)が、環境全体でワークロードの半分以上を複数のハードウェアで実行するだろうと答え、場所に関係なくワークロード管理の包括的なツールセットが必要であることが強調されました。たとえば、回答者の大多数(94%)が、サービスとして提供されるクラウドベースの IT 運用プラットフォームを使用しています。こうしたプラットフォームは、運用の複雑さの定量化、徹底したライフサイクル管理、オンプレミス インフラストラクチャのプロアクティブなサポートを手助けします。いずれも重要な機能で、回答者にとっては、クラウドベースの ITOps プラットフォームを選ぶうえで最大の基準となる部分です。
複雑化するインフラストラクチャの可視性への関心の高まりを受け、マルチクラウド環境全体の管理支援が重視されるようになってきました。確実に経営目標に貢献するための人気の選択肢は、SaaS ベースの運用プラットフォーム(60% が回答)でした。
クラウド費用の管理も課題となりえます。しかし、マルチクラウドを使用する企業のほとんど(回答者の 66%)は、マルチクラウドの使用動機にクラウドサービス費用の軽減を挙げていません。むしろ回答者の半数以上(56%)が、クラウドサービス 購入費の正当性を確保し、負荷のバランスをとるために 、費用対効果を重視したアプローチをとっています。
コスト最適化はマルチクラウドの成功を測る指標の一つ ではありますが、クラウドに関してのコスト削減は保証できません。複数のクラウドを管理するとなると複雑性が増し、よって運用コストは上がると考えられます。クラウドの価値への理解が成熟するにつれ、目的は敏捷性と拡張性という、マルチクラウド採用動機の上位に入る要素の実現となり、ユーザーの関心はコスト削減からコスト管理へと移りつつあります。
効果を出すには、目標のビジネス成果を達成するという背景をもってコスト管理に取り組む必要があります。企業は運用効率とコスト効率を上げるためにさまざまな アプローチをとってきました。当社のアンケートでは、クラウドのセンターオブエクセレンスを創設する(57%)、費用対効果のアプローチまたは AIOps モデルを活用する(53%)、CloudOps と NetOps 機能を中央に集約する(50%)などの手段が多く見られました。
ハイブリッドクラウド環境で複数のクラウドを使うと、セキュリティ、運用の複雑さ、コスト管理に関する課題は増します。ほとんどの企業は SaaS 運用プラットフォーム、Infrastructure as Code、AIOps 運用モデルを活用して、こうした課題に対応しています。また、クラウド センター オブ エクセレンスを導入し、CloudOps と NetOps 機能を中央に集約しています。
企業のクラウド戦略策定にデベロッパーが及ぼす影響度は高まっており、アプリケーション開発とインフラストラクチャ最新化を支えるクラウドプラットフォームとサービスの選択でデベロッパーが重要な役割を果たすことも多く見られます。クラウド運用と DevOps 担当の回答者は、クラウドファーストの義務づけ(34% が回答)が社内の開発プロセスとツールの転換点となるとともに、コスト最適化(19% が回答)と自動化(18% が回答)も要因となると答えました。これもまた、企業が運用能力をマルチクラウド活用の取り組みの一環と見るようになり、クラウド環境への期待が成熟してきたことを示唆しています。
クラウドファーストの義務づけは新規導入するアプリケーションに適用することになるでしょう。ほとんどのビジネスで使用している旧式のアプリケーションには、別のアプローチが必要であるためです。CloudOps と DevOps 担当者の大半(91%)が、自社はクラウドネイティブな技術を使用してアプリケーションを再構築している、またはするだろうと答えました。ミッションクリティカルな旧式アプリケーションを前進させる手段としては、変革を支えるクラウドネイティブな技術を活用して、適切な最新化(38% が回答)または再構築と移行(25% が回答)を進める考えが挙がりました。回答者は変革を前向きに捉えており、ミッションクリティカルなワークロードを現状のまま維持するつもりと答えた人はわずか 8% でした。
企業が特定のアプリケーションをどこで実行するかに関係なく、アプリケーションを確実かつ適切に機能、動作させるためにはネットワークが重要です。デベロッパーは、ネットワークの優先順位決めに自分たちが関与する必要があると考えています。デベロッパーの大半(92%)が、企業のネットワーク戦略と優先順位の意思決定の場に参加することが重要だという考えに、同意または強く同意と答えました。オフプレミスとオンプレミス環境間でワークロードを移行する頻度を見ても、ネットワークの重要性は高まっています。回答者の 53% がワークロードまたはアプリケーションを毎週移行し、39% が毎月移行していました。
アンケート対象の企業は、コアチーム外の協力会社や組織との協業によりハイブリッドクラウド環境の安全を確保し、効率とパフォーマンスを維持することに対しては、全体的に前向きで先入観を持っていません。回答者の皆さんは、NetOps、CloudOps、DevOps チームの連携に価値を見出しています。
回答者は NetOps と CloudOps チーム間の連携強化に数多くのメリットがある点に同意し、具体的なメリットとしてはクラウドセキュリティの改善が 1 位(45%)でした。全体的な運用効率向上(41%)、クラウドアプリケーションのパフォーマンス強化(39%)がそれに続きました。
回答者の半数以上(55%)が技術部門と業務部門からメンバーを集めた部門横断チームを編成し、回答者の 50% がハイブリッドクラウド戦略を自社の経営目標に確実に沿わせる目的で全社的な CloudOps と NetOps チームを持っていると答えました。北米の企業のうちこうしたチームを設置している割合(58%)は、APAC 地域の企業の同じ割合(48%)をわずかに上回りました。
一方で、ネットワークの専門家もこうした連携が必要不可欠とみています。ネットワーク担当の回答者の 57% が、社内の DevOps チームがネットワーク戦略の策定に関与することに強く同意しています。実際にはデベロッパーのほとんどがネットワークチームとの連携プロセスをすでに持ち、DevOps 担当の回答者の 84% がネットワークチームと定期的なミーティングを行っていると答えました(62% が週次、22% が月次)。
回答者のほとんど(83%)が、DevOps チームとネットワークチームの現在の連携度は十分だと感じているものの、協業のさらなる充実を疎外している障害物もあります。チーム間の優先順位の競合(45%)、変化への抵抗(43%)、目標とインセンティブの食い違い(41%)はどれも、DevOps チームとネットワークチームの連携強化を疎外する要因です。ネットワークの改善により開発を高速化、効率化できることについて認識を一致させ、共通のビジネス目標を定めることが、チーム間の連携に大きな効果をもたらすでしょう。ある程度の連携は行われているものの、ネットワークに関するデベロッパーの懸念事項により良く対処する余地がまだあることは明らかです。
当社のアンケートでは、デベロッパーの 48% が、今後はネットワークの信頼性が喫緊の課題の一つとなるだろうと述べています。DevOps チームはネットワークの課題の可視性向上を求めています。デベロッパーの 41% は、根本原因分析を実施できるかどうかと、共通のツール、プラットフォーム、インターフェイスの欠如が、主要な課題となると話していました。連携をさらに生産的に行うことで、デベロッパーがネットワークの優先順位の理解を深め、アプリケーション要件とビジネスニーズが全体的なネットワーク戦略の一部であると認識する助けとなるでしょう。
NetOps、CloudOps、DevOps 機能間での調整が、ハイブリッドクラウドの成功には欠かせません。チーム間、ツール間、そして環境間での可視性、オーケストレーション、自動化を実現できる、中央一元化されたプラットフォームの必要性が高まっています。
当社のアンケートへの回答者は、ハイブリッドアーキテクチャにより実現できる幅広い最先端テクノロジーに、強い興味を示しています。たとえば、インフラストラクチャ自動化の展開(49%)、エッジコンピューティング(41%)、組み立て可能なインフラストラクチャ(27%)などです。
回答者の 41% はすでにエッジコンピューティング機能をなんらかの形で導入しており、これに加えて 53% が今後 2 年以内に導入すると予想しています。エッジコンピューティングは幅広いアプリケーションを持つテクノロジーです。ハイブリッドなアプローチにより、アプリケーションのパフォーマンスとカスタマーエクスペリエンスを最適化する適切なレベルのキャパシティを、適切な場所に確保できるでしょう。10 社以上の IaaS クラウドプラットフォームを使用する企業は、エッジコンピューティングでさらに使用数を増やす可能性が高い(57% がすでに展開中)こともわかっています。
インフラストラクチャの自動化は、クラウドの規模と効率を活かした運用には欠かせません。アンケート対象の企業のうちそれなりの数(49%)が、自動化の展開を進めていると答えました。これは従来、投資が不十分だった領域です。全体的なクラウド使用と比べると、インフラストラクチャの自動化状況には大きな差が見られます。パブリッククラウド 1 社のみを使用する企業のうち、自動化を展開済みと回答したのは 39% でした。一方で 10 社以上のクラウドを運用している企業からは、大幅に高い 55% という回答が得られました。ここから、ハイブリッドクラウドの複雑さに対処するには自動化が必須となりつつあることがわかります。クラウドベースのサービスとして提供される、インフラストラクチャのライフサイクル管理を支援する IT 運用プラットフォームなど、自動化に役立つツールを使うとハイブリッドクラウドの複雑さにより効果的に対応できるでしょう。
同時に回答者は運用の効率化も求めており、テレメトリと AIOps を使用した予測機能に特に強い興味を示していました。ここから、運用に対する考え方が事後対応型から事前予測型へと移り、最終的なプロアクティブ型に向かって成熟しつつあることがわかります。アンケート対象の企業の半数近く(45%)が、なんらかの形の AIOps テクノロジーを現在使用しており、49% が来年の導入を計画していました。
相互接続性やデータへのアクセスの重要性に関する調査からは、強い兆候がいくつか見られました。データファブリックは、ハイブリッド環境全体でデータを確実に利用可能な状態にします。回答者の 88% がすでにこの機能を導入済みか、2 年以内に導入予定だと答えました。社内の全データを扱うアプリケーションにアクセスするための高性能インフラストラクチャの構築も、不可欠と見なされており、回答者の 91% が今後 2 年以内にプライベート 5G ワイヤレスネットワークを活用する計画でいます。ハイブリッド環境は、データ配信機能とアクセス機能の性能によって決まるのです。
ハイブリッドクラウドモデルは、AIOps、インフラストラクチャ自動化、エッジコンピューティングなどといった新興テクノロジーの活用を後押ししています。こうした機能を結合し、データアクセスとデータ配信を充実させるインフラストラクチャが、何よりも重要です。
アプリケーションのパフォーマンスとセキュリティを高めるテクノロジーを企業が求めるようになるにつれ、クラウドネイティブなアプリケーション アーキテクチャへの移行が加速しています。回答者の大半(91%)が、クラウドネイティブなテクノロジーを使って実稼働ワークロードとアプリケーションを積極的に移行するか、移行を計画しています。DevOps と CloudOps 担当者が話すクラウドネイティブなテクノロジーの使用動機としては、パフォーマンス関連の要件(45%)、セキュリティ(44%)、速度(39%)が上位に入りました。
クラウドネイティブなテクノロジーを使用する企業に勤める回答者のうち、半数近くが自社はコンテナを導入し使用している(48%)と答え、45% がサービスメッシュを、40% がサーバーレステクノロジーを、37% が Kubernates を展開済みと答えました。現在クラウドネイティブなテクノロジーをいっさい使っていない、または計画していないと答えたのは全体の 5% 未満で、多くの企業が計画または展開段階にあることがわかります。
回答者はクラウドネイティブなテクノロジーが持つ可能性を前向きに捉えると同時に、自社に効果的に導入しようとした場合に直面する課題を重く受け止めてもいます。DevOps と CloudOps を担当する回答者の 3 分の 2(66%)が、クラウドネイティブを使用するにあたってセキュリティの懸念事項が最大の難題だと述べ、ほかの主な課題としてはプロセスとツールの統合(57%)、予算の制約(52%)が続きました。
多くの企業で、スキル不足と予算不足がセキュリティの懸念事項に拍車をかけている可能性が高く、これにより、開発速度の速いクラウドネイティブな環境でデータとワークロードの適切な保護ができなくなる可能性があります。クラウドネイティブなアプリケーション アーキテクチャの使用は、企業のセキュリティ戦略のみならずネットワーク戦略にも良い影響をもたらします。CloudOps と DevOps を担当する回答者は、クラウドネイティブなテクノロジーがネットワークの自動化を進め(24% が回答)、安全性を高める(25% が回答)というプラスの効果をもたらすと考えています。
クラウドネイティブなアプリケーションを活用するデベロッパーと CloudOps の専門家は、インフラストラクチャを手動プロセスではなくコードで管理する Infrastructure as Code(IaC)の使用により、企業の自動化とセキュリティ機能をさらに高めることができます。セキュリティの強化は、IaC 使用によって得られる重要な成果です。特にクラウド運用に携わる回答者のうち 68% が、セキュリティの強化が IaC 導入の主な動機となったと答えました。DevOps 担当の回答者で同様に答えたのは 48% でした。クラウドセキュリティの管理もまた IaC の主な活用先だと、DevOps と CloudOps 担当の回答者の 69% が感じています。IaC は複雑なアプリケーションの管理(61% が回答)にも必要不可欠で、特に 10 社以上のパブリッククラウドを使用する企業では 72% がそう回答しました。
DevOps と CloudOps を担当する回答者は、IaC によって展開を効率化でき(52% が回答)、インフラストラクチャの一貫性を高められる(52% が回答)点も重視しています。地理的な傾向としては、ラテンアメリカの企業の半数以上が IaC 使用の主な動機はリスクの軽減(52% が回答)だと答え、一方で北米の企業でそう答えたのは 34% でした。
今の IaC 機能を構築した方法、または予定している構築方法に関しては、DevOps と CloudOps 担当者の意見が割れました。既存の管理システムを拡張した(36%)、SaaS ベースの IaC サービスを利用した(34%)、新しい開発環境を構築した(30%)の 3 つに分かれました。IaC の安全性確保に必要なステップに関しては、DevOps と CloudOps 担当者は、脆弱性を特定、および脆弱性を診断するために IaC 構成をスキャンする(いずれも55%)必要があると述べています。より広範なクラウドセキュリティの課題を予測したうえでの優先事項といえるでしょう。脆弱性関連の懸念事項は、興味深いことに、クラウドベースのインフラストラクチャで定番のセキュリティ課題のうち 2 つの領域で特に重視されています。ID とアクセス管理(全体の 41% が回答)と組み込みの秘密データ(47%)です。こうしたさまざまなセキュリティ課題が、どれも回答者にとって重大であることがよくわかります。
ほぼすべての企業が、クラウドネイティブなテクノロジーを使用してアプリケーションの移行または再構築に取り組んでいるか、計画しています。Infrastructure as Code(IaC)は、セキュリティ改善とアプリケーション開発プロセスの加速を同時に実現できます。
ハイブリッドモデルとマルチクラウドモデルは企業の標準となりつつあります。適切に実行すれば、こうしたモデルは企業のセキュリティ、パフォーマンス、ビジネスの敏捷性、そして運用面のレジリエンスを強化してくれます。また、アプリケーション開発と運用効率を高める幅広い最先端テクノロジーの活用を、後押しします。当社のアンケートの対象企業は、複数のクラウドを活用する高度なテクノロジーユーザーです。一部の企業が抜きん出る要因となったのは、クラウドの使用方法と運用方法の成熟度でした。敏捷性、拡張性、高度な技術を活かす方法を探りながら、SaaS 運用プラットフォーム、自動化、AIOps を活用してコストと複雑さに対処する計画を立てていました。
どれほど効果的なハイブリッドクラウドのアプローチにも、セキュリティと運用の複雑さに関する課題はつきものです。ハイブリッドクラウド環境では、ビジネスの複数領域にまたがる、そしてハイブリッドクラウド戦略全体にわたるテクノロジー関連の意思決定の、影響度を見極められる関係者同士で、連携をとり合うことが求められます。これには、幅広いユーザーとクラウドフレームワークに対応できる、統一されたクラウド運用モデルが必要です。クラウド運用、ネットワーク、DevOps チームの間でプロアクティブで一貫性のある連携をとることで、セキュリティ、効率性、敏捷性を確保できるでしょう。こうした運用面の課題は、企業が新たな道を進んでイノベーションを育もうとする際にもなくなることはありません。
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドモデルには、多大なるメリットがあります。ただしそれを活かすには、企業はスキルを習得し、運用能力を構築しなければなりません。ハイブリッドクラウド環境が自社のインフラストラクチャに重大な影響を及ぼすことを認識する必要もあります。こうしたモデルを効果的かつ効率的に安全確保し、管理できなければ、競争力を失う危険性があるのです。
このレポートで引用したアンケートのデータは、2,500 人を超えるグローバル IT の意思決定者と、クラウドコンピューティング、DevOps、エンタープライズ ネットワークの専門家を対象とする、独立した Web アンケートの一部として、S&P Global Market Intelligence 社の一部である 451 Research 社によって収集されました。委託元はシスコです。シスコ 2022 年ハイブリッドクラウド グローバル トレンド レポートは、2022 年 4 月 11 日から 5 月 6 日の間に実施されました。対象国は、北米、ラテンアメリカ、APAC、西ヨーロッパにわたる 13 ヵ国(米国、カナダ、ブラジル、メキシコ、オーストラリア、中国、インドネシア、韓国、日本、シンガポール、イギリス、フランス、ドイツ)です。
本アンケートは、企業の全体的なインフラストラクチャとグローバルネットワーク戦略に関わるハイブリッドクラウドのトレンドを調査する目的で作成されました。このレポートでは、世界各国の企業が新規テクノロジーとプロセスを活用したハイブリッドクラウド導入計画をどの程度達成しているかを探究し、企業がハイブリッドクラウドとそれを補う新興テクノロジーについて現実に即した予測ができるよう推奨事項をまとめています。