Open Shortest Path First(OSPF)は、各ルータでの各エリアのローカル ビュー(ルータに接続するインターフェイスがあればそのビューも含む)を維持するリンク ステート ルーティング プロトコルです。OSPFルータが起動すると、helloメッセージを交換してネイバーを検出し、(ローカルエリアネットワーク(LAN)の場合)指定ルータとバックアップ指定ルータ(DRとBDR)を選択します。 この段階で、OSPF ルータは近接ルータ構造にその状態を記録します。続いて、エリアのローカル ビューを作成します。
まず、ルータは近接ルータとデータベース サマリー メッセージを交換します。これらのメッセージは、近接ルータからどの Link State Advertisement(LSA; リンクステート アドバタイズメント)を要求する必要があるかを決定するために使用されます。Link State Request(LSR; リンク ステート要求)に対する応答は Link State Update(LSU; リンク ステート更新)で、近接ルータが、リンクステート確認応答で確認応答を行うまで送信されます。エリア内のすべてのルータで同期を達成するプロセスは、ルーティング コンバージェンスと呼ばれます。LAN の場合、データベースの同期はルータ、DR および BDR の間で別々に行われます。DR または BDR 以外の相手とのルータ対ルータの交換は行われないため、メッセージの数は大幅に少なくなります。OSPF は、階層ルーティングの概念をサポートしています。たとえば、Autonomous System(AS; 自律システム)が、50 台のみのルータを含むエリアと、バックボーン エリア(エリア 0)に編成されているとします。 各エリアには、バックボーン エリアにインターフェイスを持つルータが、最低でも 1 台必要です。また、バックボーン エリアは接続されている必要があります。つまり、バックボーン エリアにあるルータは、バックボーン エリアのリンクによって直接接続されているか、トランジット エリアを横断する「仮想リンク」によって接続されている必要があります。
OSPF は、現在 OSPF をルーティング プロトコルとして実行していて、コンテンツ サービス スイッチ(CSS)11000 を OSPF ルートの学習とアドバタイジングに参加させる必要がある顧客による使用を意図しています。
顧客が CSS で OSPF を実行する例としては、次の 2 つがあります。
CSS が(ネットワークの中央に配置された)透過的環境またはプロキシ キャッシュ環境で使用され、クライアントに戻るルートを学習する必要がある場合。
ファイアウォール ルートを CSS から下流の OSPF ドメインに再配送する必要がある、ファイアウォール ロード バランシング実装において。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
このドキュメントに関しては個別の前提条件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このマニュアルの情報は、特定のラボ環境に置かれたデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。実稼動中のネットワークで作業をしている場合、実際にコマンドを使用する前に、その潜在的な影響について理解しておく必要があります。
CSS 11000 の OSPF の実装は、次の機能をサポートしています。
ほかの OSPF ルータ間の 1 つのエリアにおけるルーティング機能(エリア内ルートのサポート)。
OSPF ルータ間の複数のエリアにおけるルーティング機能(エリア内ルートのサポート)。
複数のエリアにまたがる階層ルーティング。
エリア間での経路集約。
AS 境界ルータのサポート。
スタブ エリアのサポート。
Routing Information Protocol(RIP; ルーティング情報プロトコル)ルート漏出。
ローカル、RIP、スタティックおよびファイアウォール ルートの OSPF ドメインへの再配送。
Simple Authentication。
Request for Comments(RFC; コメント要求)1850 準拠の Management Information Base(MIB; 管理情報ベース)。
OSPF を設定するには、次の手順を実行します。
OSPF ルータ ID を設定します。最初の OSPF インターフェイスの IP アドレスを使用することをお勧めします。
OSPF を有効にします。
OSPF エリアを設定します。デフォルトでは、OSPF バックボーン エリア 0.0.0.0 が作成されます。
IP インターフェイスで OSPF を設定します。デフォルトでインターフェイスはバックボーン エリアに追加されます。
そのインターフェイスで OSPF を有効にします。
必要に応じて、Versatile Interface Processor(VIP; バーサタイル インターフェイス プロセッサ)を設定します(ospf advertise コマンドを使用)。 これにより、そのネットワーク/ホストがすべての OSPF インターフェイスでアドバタイズされます。
必要に応じて、OSPF ドメインへの経路再配送を設定します。
必要に応じて、OSPF エリア集約を設定します。
advertise:すべての OSPF インターフェイスを介して、ルートを OSPF AS 外部ルートとしてアドバタイズします。デフォルトのタイプはtype2です。主にVIPまたはVIPの範囲をOSPFドメインにアドバタイズするために使用されます。次に、コマンド構文を示します。
beta-rules(config)# ospf advertise 200.200.200.200 /32 optional sub commands
advertise コマンドのサブ コマンドには次のものがあります。
metric:アドバタイズするメトリック
tag:アドバタイズする 32 ビット タグ
type1:ASEタイプ1としてアドバタイズします(OSPFメトリックに相当するコスト)。
metric :範囲は 1 ~ 15 で、ルートの相対コストを示します。コストが大きくなればなるほど、ルートの優先順位が低くなります。デフォルトは 1 です。
tag :各外部ルートに添付される 32 ビットのフィールド。これは、OSPF プロトコル自体が使用しません。AS 境界ルータ間での情報の通信に使用される場合があります。
type1:OSPFインターフェイスコスト(リンクステートメトリック)と同じ単位で表されます。 タイプ 2 の外部メトリックは、より大きな値になります。つまり、すべてのタイプ 2 メトリックは、AS 内部のすべてのパスのコストよりも大きいと見なされます。この設定パラメータを使用して、OSPF ドメインで type2 を type1 VIP よりも優先させることができます。
注:type1コマンドを発行する前に、CSSを自律システム境界(ASB)ルータとして設定する必要があります。
area:OSPF エリアを設定します。デフォルトでは、エリア 0.0.0.0 がすでに設定されています。また、次のようにエリアをスタブ エリアとして指定することもできます。
beta-rules(config)# ospf area 2.2.2.2 stub ?
default-metric:スタブ エリアにアドバタイズされるデフォルト ルートのメトリック。
send-summaries:集約 LSA をこのスタブ エリアに伝搬します。
as-boundary:CSS を ASB ルータとして設定します。
ASB とは、RIP ドメインなどのほかの自律システム(AS)に属するルータと、ルーティング情報を交換するルータのことです。このコマンドを実行して、VIP、ローカル、ファイアウォール、および RIP 学習ルートを OSPF ドメインにアドバタイズします。
default:OSPF を介して、デフォルト ルートを ASE としてアドバタイズします。オプションには、metric、tag、type1があります(type2はデフォルト)。
equal-cost:OSPF が使用できる同等コストのルートの数。範囲は 1 ~ 15 です。
enable:OSPF をグローバルに有効にします。
range:OSPF エリア間の経路集約を設定します。
beta-rules(config)# ospf range 0.0.0.0 10.10.0.0 255.255.0.0
OSPF エリア 0.0.0.0 には、ユーザがほかのエリアにアドバタイズする、連続的なネットワークが含まれています。また、ある範囲のアドバタイズメントをブロックすることもできます。次に例を示します。
beta-rules(config)# ospf range 0.0.0.0 10.10.0.0 255.255.0.0 block
redistribute:OSPF を介して、ほかのプロトコルからのルートをアドバタイズします。オプションには、次のものが含まれます。
firewall:OSPF を介してファイアウォール ルートをアドバタイズします。
local:OSPF を介してローカル ルートをアドバタイズします。
rip:OSPF を介して RIP ルートをアドバタイズします。
static:OSPF を介してスタティック ルートをアドバタイズします。サブ オプションは、metric、tag、および type1 です。
router-id:OSPF ルータ ID を設定します。設定されている最初の OSPF インターフェイスの IP アドレスを使用することをお勧めします。
次に、コマンド構文を示します。
beta-rules(config-circuit-ip[VLAN2-20.20.1.2])# ospf ?
コマンド オプションは次に示すとおりです。
area:このインターフェイスが属する OSPF エリアを設定します。デフォルトでは、OSPF インターフェイスはすでに 0.0.0.0 エリアのメンバになっています。
cost:このインターフェイスでパケットを送信するコストを設定します。デフォルトのコストは 10 です。
dead:このインターフェイスに関するルータの Dead インターバルを(秒単位で)設定します。これは、CSS の近接ルータが CSS の hello パケットを受信しなくなった場合、CSS の近接ルータがこのインターフェイスのダウンを宣言するまでの秒数です。デフォルトは 40 です。
enable:このインターフェイスで OSPF を有効にします。
hello:このインターフェイスの Hello インターバルを(秒単位で)設定します。これは、CSS がこのインターフェイスで送信する hello パケット間の時間の長さ(秒単位)です。デフォルトは、10 です。
password:このインターフェイスのシンプル パスワード(最長 8 文字)を設定します。簡易パスワード認証は、ルータが誤ってルーティング ドメインに参加することを防止します。まず各ルータは、ルーティングに参加できるようになる前に、接続されたネットワークのパスワードを使用して設定する必要があります。パスワードはクリア テキストです。
poll:このインターフェイスのポーリング インターバルを(秒単位で)設定します。近接ルータが非アクティブになった(RouterDeadInterval 秒の間 hello パケットが確認されなかった)場合であっても、ダウン状態の近接ルータに Hello パケットを送信する必要がある場合があります。これらの hello パケットは、減じられたレートの PollInterval で送信されますが、HelloInterval よりもかなり長くなっているはずです。デフォルトは 120 秒 です。
priority:ルータの優先順位を設定します。ネットワークにアタッチされている 2 つのルータがともに指定ルータ(DR)になろうとした場合、ルータのプライオリティの高い方が優先されます。プライオリティも同じである場合は、ルータ ID の最も大きいルータが優先されます。Router Priority が 0 に設定されているルータは、接続されたネットワークで DR になる資格がありません。デフォルトは 1 です。
retransmit:このインターフェイスの再送信インターバルを(秒単位で)設定します。これは、このインターフェイスに属する隣接関係に関する、LSA 再送信間の秒数です。データベース記述パケットおよびリンクステート要求パケットを再送信する際にも使用されます。これは、接続されたネットワーク上にある、任意の 2 つのルータ間で予測される往復の遅延を大きく上回る必要があります。不必要な再送信が生じないよう、この値の設定は慎重に行う必要があります。デフォルトは 5 です。
retransmit:このインターフェイスの再送信インターバルを(秒単位で)設定します。これは、このインターフェイスに属する隣接関係に関する、LSA 再送信間の秒数です。データベース記述パケットおよびリンクステート要求パケットを再送信する際にも使用されます。これは、接続されたネットワーク上にある、任意の 2 つのルータ間で予測される往復の遅延を大きく上回る必要があります。不必要な再送信が生じないよう、この値の設定は慎重に行う必要があります。デフォルトは 5 です。
次のリストは、さまざまな show ospf コマンドの出力例です。
show ospf advertise
beta-rules# show ospf advertise OSPF Advertise Routes Entries: Advertise Routes Prefix : 200.200.200.200 Advertise Routes Prefix Length : 32 Advertise Routes Metric : 1 Advertise Routes Type : aseType2 Advertise Routes Tag : 0
注:上のshowコマンド画面では、32ビットマスクのVIPがアドバタイズされます。デフォルトは他のパラメータのために使用されます。
show ospf areas
beta-rules# show ospf areas Area ID Type SPF Runs Routers Routers LSAs Summaries -------- ------- -------- --------- -------- ---- --------- 0.0.0.0 Transit 46 0 1 3 N/A 2.2.2.2 Stub 5 0 1 1 Yes
show ospf ase
beta-rules# show ospf ase Forwarding Link State ID Router ID Age T Tag Metric Address --------------- --------------- ---- - -------- -------- --------------- 0.0.0.0 192.168.151.1 1 2 00000000 1 0.0.0.0 200.200.200.200 192.168.151.1 593 2 00000000 1 0.0.0.0
注:アドバタイズされた宛先のデータトラフィックは、転送アドレスに転送されます。フォワーディング アドレスが 0.0.0.0 に設計されている場合、データ トラフィックは、代わりに LSA の発信ルータ(つまり、担当の ASB ルータ)に転送されます。
show ospf global
beta-rules# show ospf global OSPF Global Summary: Router ID: 192.168.151.1 Admin Status: enabled Area Border Router: FALSE AS Boundary Router: TRUE External LSAs : 2 LSA Sent : 8 LSA Received : 5
show ospf interfaces
beta-rules# show ospf interfaces OSPF Interface Summary: IP Address: 192.168.151.1 Admin State: enabled Area: 0.0.0.0 Type: broadcast State: BDR Priority: 1 DR: 192.168.151.2 BDR: 192.168.151.1 Hello: 10 Dead: 40 Transmit Delay: 1 Retransmit: 5 Cost: 10
show ospf lsdb
beta-rules# show ospf lsdb OSPF LSDB Summary: Area: 0.0.0.0 Type: Router Link State ID: 192.168.151.1 ADV Router: 192.168.151.1 Age: 699 Sequence: 0x80000003 Checksum: 0xdf5d Area: 0.0.0.0 Type: Router Link State ID: 192.168.151.2 ADV Router: 192.168.151.2 Age: 706 Sequence: 0x80000004 Checksum: 0xd565 Area: 0.0.0.0 Type: Network Link State ID: 192.168.151.2 ADV Router: 192.168.151.2 Age: 706 Sequence: 0x80000001 Checksum: 0xbd93 Area: Type: ASE Link State ID: 0.0.0.0 ADV Router: 192.168.151.1 Age: 114 Sequence: 0x80000001 Checksum: 0xb51a Area: Type: ASE Link State ID: 200.200.200.200 ADV Router: 192.168.151.1 Age: 706 Sequence: 0x80000001 Checksum: 0xa10b
show ospf neighbors
beta-rules# show ospf neighbors Address Neighbor ID Prio State Type Rxmt_Q -------- ------------ ------ ------ ----- ------ 192.168.151.2 192.168.151.2 1 Full Dynamic 0
show ospf range
beta-rules# show ospf range Area ID LsdbType Addr Range Mask Range Effect -------- ----------- ---------- -------------- --------- 2.2.2.2 summaryLink 150.0.0.0 255.0.0.0 advertise
show ospf redistribute
beta-rules# show ospf redistribute Redistribution via OSPF Summary: Static Routes Redistribution : disabled RIP Routes Redistribution : disabled Local Routes Redistribution : disabled Firewall Routes Redistribution : disabled
show ip routes ospf
beta-rules# show ip routes ospf prefix/length next hop if type proto age metric ------------------ --------------- ---- ------ -------- ---------- ----------- 20.20.20.0/24 150.150.150.2 1021 remote ospf 5 1
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
03-May-2004 |
初版 |