ATM セルは 48 バイトのペイロードと 5 バイトのヘッダーで構成されています。ユーザ ネットワーク インターフェイス(UNI)と Network-Network Interface (NNI)の両方のヘッダーには 1 ビットのセル損失優先(CLP)フィールドがあり、ATM ネットワーク通過中、過剰な輻輳に遭遇した場合にセルの廃棄を優先的に行います。
1ビットのフィールドは、高いプライオリティを示す0と低いプライオリティを示す1の2つの値があることを意味します。CLP ビットを 1 に設定するとセルの優先度が下がり、ATM ネットワークが輻輳した物理回線や待ち行列を経験したときにセルが廃棄される可能性が増加します。
従来はATM スイッチだけが CLP ビットを設定することができました。Cisco ATM ルータ インターフェイスやほかのユーザ側の UNI インターフェイスは、このビットを設定することはありませんでした。最近では、シスコの Quality of Service(QoS)フィーチャ セットの一部として、Cisco ATM ルータ インターフェイスは、特定の仮想回線(VC)に適用されるサービス ポリシーの一部として CLP ビットを設定することができます。
この文書では、Cisco ルータに CLP ビットを設定するために使用する 2 つのコマンド、 set atm-clp と set-clp-transmit を説明します。また、ルータとスイッチが CLP ビットをどのように使用するかを明確にします。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
仮想接続のセルフローは、CLPビット設定を考慮する3つのフローに論理的に分割できます。
CLP=0+1 セル フローは集約フローと呼ばれ、CLP=0 セルと CLP=1 セルを含みます。
Catalyst 8500 シリーズのような Cisco キャンパス ATM スイッチでは、Cisco IOS ® コマンドか、簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP)ポーリングを通してセル カウントを得られます。show atm vc interface atm コマンドを使用して、次のようにコマンド ラインで VC 毎のセルが参照できます。
ls1010# show atm vc interface atm 0/0/0 0 50 Interface: atm0/0/0, Type: oc3suni VPI = 0 VCI = 50 Status: UP Time-since-last-status-change: 00:03:08 Connection-type: PVC Cast-type: point-to-point Packet-discard-option: disabled Usage-Parameter-Control (UPC): pass Wrr weight: 2 Number of OAM-configured connections: 0 OAM-configuration: disabled OAM-states: Not-applicable Cross-connect-interface: atm0/0/1, Type: oc3suni Cross-connect-VPI = 0 Cross-connect-VCI = 55 Cross-connect-UPC: pass Cross-connect OAM-configuration: disabled Cross-connect OAM-state: Not-applicable Threshold Group: 5, Cells queued: 0 Rx cells: 0, Tx cells: 80 TX Clp0:80, TX Clp1: 0 Rx Clp0:0, Rx Clp1: 0 !--- Per-VC cell counts based on CLP bit. Rx Upc Violations:0, Rx cell drops:0 Rx Clp0 q full drops:0, Rx Clp1 qthresh drops:0
CISCO-ATM-CONN-MIB は ciscoAtmVclTable で VC 単位の統計を維持します。この表は、次のオブジェクト ID のカウンタが増加するときに CLP ビットの値を考慮します。
ciscoAtmVclInCells
ciscoAtmVclInClp0Cells
ciscoAtmVclInClp1Cells
Catalyst 8500 シリーズと Lightstream 1010 は、相手先固定接続(PVC)に割り当てられたトラフィック パラメータを格納するために接続トラフィック テーブル 列(CTTR)を使用します。 VBR-nrt PVC CTTR を設定するとき、維持セル レート(SCR)を"scr0" か "scr10" セル フローのどちらに割り当てるかを指定します。
Switch(config)# atm connection-traffic-table-row [index row-index] {vbr-rt | vbr-nrt} pcr pcr-value {scr0 | scr10} scr-value [mbs mbs-value] [cdvt cdvt_value]
Cisco ATM ルータは SCR=0 フロー、または SCR=1+0 フローで整形するかどうかを示す同等のコマンドをサポートしません。vbr-nrt コマンドはピーク セルレート(PCR)と SCR を指定できるだけです。
Router(config)# interface atm 5/0 Router(config-if)# pvc 1/1 Router(config-if-atm-vc)# vbr-nrt ? <1-155000> Peak Cell Rate(PCR) in Kbps Router(config-if-atm-vc)# vbr-nrt 1000 ? <5-1000> Sustainable Cell Rate(SCR) in Kbps Router(config-if-atm-vc)# vbr-nrt 1000 500 ? <1-65535> Maximum Burst Size(MBS) in Cells
シスコのモジュラQoS CLI(MQC)は、インターフェイスまたはVCにQoSポリシーを設定するための特別なコマンドセットです(モジュラQuality of Serviceコマンドラインインターフェイスの概要を参照してください)。 トラフィック クラスを class-map コマンドで指定し、policy-map コマンドを使用する 1 つ以上の QoS 機能に関連するトラフィック クラスでトラフィック ポリシーを作成し、 service-policy コマンドでトラフィック ポリシーをインターフェイスまたは VC に接続します。
MQC は CLP ビットを設定するために次の 2 つのコマンドサポートします。
set atm-clp:単純なパケットマーキングを実装します。このコマンドは指定したクラスに一致するすべてのパケットで CLP ビットを 1 に設定します。PVC の輻輳レベルは考慮しません。
set-clp-transmit:トラフィックポリシングを実装します。このコマンドは PVC の輻輳レベルは考慮せずに、設定した値(bps)を超えるレートを持つトラフィックが流れた場合に CLP ビットを 1 に設定します。つまり、このコマンドは「違反」した場合に実行されます。
これらのコマンドについては次の 2 項で説明します。
クラスベース パケット マーキングは、レイヤ 2 とレイヤ 3 のパケット ヘッダーの値を、より高いまたはより低い優先度に設定する Cisco IOS 機能です。(クラスベースパケットマーキングの設定を参照してください)。 この機能は指定したクラスに一致するパケットのすべてのセルの CLP ビットをマークする set atm-clp コマンドによってサポートしています。
Router(config)# policy-map TEST Router(config-pmap)# class CLP Router(config-pmap-c)# set atm-clp
マークしたパケット数を表示するには、show policy-map interface atm コマンドを使用します。
CLP ビットを設定するときに、クラスベース パケット マーキングは ATM PVC の輻輳レベルを考慮しません。set atm-clp コマンドは、VC 上の輻輳期間と非輻輳期間に関わらずすべてのパケットの CLP ビットをルータが設定するようにします。
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.1T では、set atm-clp コマンドは PA-A3 と PVC だけでサポートされており、SVC ではサポートされていません。さらに、Cisco Express Forwarding(CEF)のスイッチング パスのパケット転送だけをマークできます。ルータから発信するパケットは異なる IOS スイッチング方式を使用するので、マークされません。
Cisco IOSソフトウェアリリース12.0(23)S以降、ATM CLP設定機能を使用すると、Cisco 12000シリーズインターネットルータの8ポートOC-3 STM-1 ATMラインカードのATM CLPビット設定を制御できます。
Cisco IOSリリース12.2(8)YN以降、ATM CLPビットマーキングはCisco 3600および2600ルータで使用できます。
注:Cisco Bug ID CSCdr19172では、マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)実験ビットで一致するように設定されたクラスでset atm-clpコマンドを使用すると、ルータのリロードに関する問題が解決されます。
トラフィック ポリシング メカニズムは、設定した値にトラフィックが準拠しているかどうかを判別してから、ドロップしたり、ヘッダー値を書き換えたりして違反トラフィックを制御します。ATM PVC では、 set-clp-transmit コマンドを使用してポリシング アクションとして CLP ビットを設定するルータを設定できます。(トラフィックポリシングを参照してください)。 ポリシー マップを作成して、set-clp-transmit アクションで police コマンドを設定します。
7500(config)# policy-map police 7500(config-pmap)# class group2 7500(config-pmap-c)# police BPS burst-normal burst-max conform-action action exceed-action action violate-action action
set-clp-transmit コマンドは RSP プラットフォームでは Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.1(5)T から、ほかのプラットフォームでは、12.2(1)T からサポートされています。
注:特定の設定では、ATM PVCにプロセススイッチングされるパケットはポリシングを行います。ポリサーの設定には、set-clp-transmitパラメータを使用した1つ以上のアクションがあります。ただし、パケットによって生成されたATMセルにはCLPビットが設定されていません。この問題は、クラスベースのポリシャとプロセス交換のパケットだけに発生し、Cisco バグ ID CSCdw18196 で解決します。
ATM スイッチは次の 2 つの目的で CLP ビットを使用します。
トラフィック ポリシングの違反アクション
輻輳が発生してしきい値以上にキューが多数ある場合に、どのセルをドロップするかを判別する要因
次の 2 項で使用方法を詳細に説明します。
Cisco キャンパス ATM スイッチは使用パラメータ管理(UPC)ポリシング アルゴリズムを適用して、Cisco ルータのような端末デバイスからのセル レートがトラフィック契約に従っているかどうかを判別します。セルが準拠していないと UPC が判別すると、スイッチは設定に応じて次のアクションのどれかを行います。
Pass:セルを送信し、CLP値を変更しません。
Tag:セルの相対的に低い優先度を示すようにCLPビットを設定します。
ドロップ:セルをドロップします。
パスが UPC 動作のデフォルトです。PVC にデフォルトではない値を設定するには、atm pvc コマンドの一部として "upc" パラメータを設定します。
atm pvc vpi vci [cast-type type] [upc upc] [pd pd] [rx-cttr index] [tx-cttr index] [wrr-weight weight]
show atm vc interface atm コマンドは UPC 設定と「Rx Upc 違反」の数を表示します。
ls1010# show atm vc interface atm 0/0/0 0 50 Interface: atm0/0/0, Type: oc3suni VPI = 0 VCI = 50 Status: UP Time-since-last-status-change: 00:03:08 Connection-type: PVC Cast-type: point-to-point Packet-discard-option: disabled Usage-Parameter-Control (UPC): pass !--- Confirm the correct UPC setting. Wrr weight: 2 Number of OAM-configured connections: 0 OAM-configuration: disabled OAM-states: Not-applicable Cross-connect-interface: atm0/0/1, Type: oc3suni Cross-connect-VPI = 0 Cross-connect-VCI = 55 Cross-connect-UPC: pass Cross-connect OAM-configuration: disabled Cross-connect OAM-state: Not-applicable Threshold Group: 5, Cells queued: 0 Rx cells: 0, TX cells: 80 TX Clp0:80, TX Clp1: 0 Rx Clp0:0, Rx Clp1: 0 Rx Upc Violations:0, Rx cell drops:0 !--- View the number of "Upc Violations". Rx Clp0 q full drops:0, Rx Clp1 qthresh drops:0 !--- Output suppressed.
特定の VC で UPC に検出された準拠していないセルの総数を収集するために CISCO-ATM-CONN-MIB の ciscoAtmVclUpcViolations 管理対象オブジェクトをポーリングできます。
ATM スイッチは、従来は ATM スイッチだけによって、現在は ATM の接続されているルータによって、トラフィックとリソース管理を行っている場合は CLP=1 を設定します。選択的なセルの廃棄は、出力キューが設定しているしきい値に到達する場合にネットワークが CLP=1 のセルを廃棄するプロセスです。
Cisco キャンパス ATM スイッチは、選択的セル廃棄を実行します。これはスイッチのカードとモデルの機能に応じてわずかに差があります。
フィーチャカード クラス単位キューイング(FC-PCQ や FC1)を搭載した LightStream 1010 と Catalyst 8510 は、VBR-nrt や UBR のような各 ATM サービス カテゴリの設定可能なインターフェイス キューしきい値をサポートします。show atm interface resource atm コマンドはすべてのサービス クラスでデフォルト値の 87 パーセントと表示されます。
Switch> show atm interface resource atm 3/0/0 Resource Management configuration: Output queues: Max sizes(explicit cfg): 30000 cbr, none vbr-rt, none vbr-nrt, none abr-ubr Max sizes(installed): 30208 cbr, 256 vbr-rt, 4096 vbr-nrt, 12032 abr-ubr Efci threshold: 50% cbr, 25% vbr-rt, 25% vbr-nrt, 25% abr, 25% ubr Discard threshold: 87% cbr, 87% vbr-rt, 87% vbr-nrt, 87% abr, 87% ubr !--- Percent of queue full at which discard threshold starts. Abr-relative-rate threshold: 25% abr
手動で設定するには atm output-threshold コマンドを使用します。(「リソース管理の構成」を参照してください。)
Switch(config-if)# atm output-threshold {cbr | vbr-rt | vbr-nrt | abr | ubr} discard-threshold disc-thresh-num
特定のサービス カテゴリの VC に属するすべてのセルが共有メモリのデフォルトの 87 パーセントを占める場合に、後続の CLP=1 セルはドロップされます。
フィーチャカード フロー単位キューイング (FC-PFQ)を搭載した LightStream 1010 と Catalyst 8510 は Catalyst 8540 と同様に、VC 単位で最大と最小のキュー制限サイズをサポートします。これらのキューをインプリメントするにはしきい値グループ機能を使用します。
しきい値グループは、すべての VCS と 1 つの ATM サービス カテゴリの仮想パス(VPs)で構成されます。しきい値グループは、グループ内の仮想接続キューのセル累積数の制限値を設定します。しきい値グループが輻輳するときには(累積数が設定した最高セル値に到達する)、VC 単位のキューのセル最大数が、グループの最大キュー制限値から最小キュー制限値に減少します。
次の例では、デフォルトではしきい値グループ 1 にマップする CBR サービス カテゴリの 95 パーセントの非デフォルト値を設定する方法を示します。
ls1010(config)# atm threshold-group 1 ? discard-threshold discard threshold as percent of queue full marking-threshold marking threshold as percent of queue full max-cells max number of cells in Threshold Group max-queue-limit max (uncongested) queue limit for this TG min-queue-limit min (congested) queue limit for this TG name name of TG ls1010(config)# atm threshold-group 1 discard-threshold ? <0-100> discard threshold percent ls1010(config)# atm threshold-group 1 discard-threshold 95
設定変更を表示するには、show atm resource コマンドを使用します。
ls1010# show atm resource Resource configuration: Over-subscription-factor 8 Sustained-cell-rate-margin-factor 1% Abr-mode: relative-rate Service Category to Threshold Group mapping: cbr 1 vbr-rt 2 vbr-nrt 3 abr 4 ubr 5 Threshold Groups: Group Max Max Q Min Q Q thresholds Cell Name cells limit limit Mark Discard count instal instal instal --------------------------------------------------- 1 65535 63 63 25 % 95 % 0 cbr-default-tg 2 65535 127 127 25 % 87 % 0 vbrrt-default-tg 3 65535 511 31 25 % 87 % 0 vbrnrt-default-tg 4 65535 511 31 25 % 87 % 0 abr-default-tg 5 65535 511 31 25 % 87 % 0 ubr-default-tg 6 65535 1023 1023 25 % 87 % 0 well-known-vc-tg
Cisco キャンパス ATM スイッチでは、Cisco IOS コマンドから、または SNMP ポーリングを通して、CLP=1 のキューしきい値ドロップ数を表示できます。コマンド ラインで VC 単位の値を見るには show atm vc interface atm コマンドを使用します。
ls1010# show atm vc interface atm 0/0/0 0 50 Interface: atm0/0/0, Type: oc3suni VPI = 0 VCI = 50 Status: UP Time-since-last-status-change: 00:03:08 Connection-type: PVC Cast-type: point-to-point Packet-discard-option: disabled Usage-Parameter-Control (UPC): pass Wrr weight: 2 Number of OAM-configured connections: 0 OAM-configuration: disabled OAM-states: Not-applicable Cross-connect-interface: atm0/0/1, Type: oc3suni Cross-connect-VPI = 0 Cross-connect-VCI = 55 Cross-connect-UPC: pass Cross-connect OAM-configuration: disabled Cross-connect OAM-state: Not-applicable Threshold Group: 5, Cells queued: 0 Rx cells: 0, TX cells: 80 TX Clp0:80, TX Clp1: 0 Rx Clp0:0, Rx Clp1: 0 Rx Upc Violations:0, Rx cell drops:0 Rx Clp0 q full drops:0, Rx Clp1 qthresh drops:0 !--- View the number of "Rx Clp0 q full drops" and "Rx Clp1 qthresh drops." !--- Output suppressed.
CISCO-ATM-CONN-MIB の次のオブジェクト ID をポールして、SNMP を経由する VC 単位の値を取り込みます。
ciscoAtmVclClp0VcqFullCellDrops:CLPビットがクリアで受信され、VC単位のキュー制限を超えたために廃棄されたセルの総数。このカウンタは、早期パケット廃棄(EPD)が無効で、FC-PFQ 機能性を持つシステムにあるときだけ有効です。
ciscoAtmVclVcqClpThreshCellDrops:VC単位のキューで廃棄しきい値(キュー制限とは対照的)を超え、CLPビットが設定されているため、廃棄されたセルの総数。このカウンタは、EPD が無効で、FC-PFQ 機能性を持つシステムにあるときだけ有効です。