E1 は、1 Mbps を超すビット レートの国際的なデジタル ハイアラーキの一部です。E1 回線は世界中、特にヨーロッパとアジアで使用されています。
すべてのデジタル ビット レートはフレーミング形式に準拠します。フレーミングとは、特定の電圧レベルまたは光学レベルとして物理ワイヤで転送される、デジタルの 0 と 1 の定義済みの構造のことです。受信インターフェイスは、新しいフレームの開始位置と、これらの 0 と 1 の解釈方法を認識している必要があります。
このドキュメントでは、Cisco Inverse Multiplexing over ATM(IMA; ATM の逆多重化)インターフェイスで使用される E1 回線の E1 フレーミング形式について説明しています。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
E1 フレームは、32 のチャネルまたはタイムスロットで構成されています。次の 2 つのタイムスロットは予約されています。
タイムスロット 0:フレーム アラインメント信号のフレーミング情報、リモート アラーム通知、5 ナショナル ビットおよびオプションの Cyclic Redundancy Check(CRC; 巡回冗長検査)ビットを伝送します。
タイムスロット 16:アウトオブバンドのシグナリング情報を伝送します。E1 のタイムスロットはすべてクリア チャネルであるため、シグナリング用のデータ タイムスロットからビットが損失することはありません。
E1 のフル ビット レートは 2.048 Mbps です。このビット レートを計算するには、32 オクテット E1 フレームに 8000 フレーム/秒を掛け合せます。タイムスロット 0 および 16 を差し引くと、E1 回線には、ユーザ データ伝送用のタイムスロットが 30 あります。つまり、ペイロード転送容量は 1.920 Mbps となります。
1 つの E1 マルチフレームは、16 の E1 フレームで構成されています。マルチフレームの目的は、タイムスロット 16 の主要な 2 つの機能をサポートするために十分なオーバーヘッド ビットを確保することです。タイムスロット 16 は、E1 がデジタル音声ストリームを送信するときにシグナリング情報を伝送します。
フレーム 0:レシーバをシグナリング チャネルに同期化し、マルチフレーム アラインメントを確立します。
フレーム 1 ~ 15:Channel Associated Signaling(CAS; 個別線信号方式)用の音声シグナリング ビットを送信します。
30 data channels × 4 signaling (ABCD) bits per channel = 15 bytes
E1 インターフェイスを定義する International Telecommunications Union Telecommunication Standardization Sector (ITU-T; 国際電気通信連合電気通信標準化部門)の重要な標準は、次のとおりです。
G.703:E1 インターフェイスの電気的特性および物理的特性を定義しています。電気的特性とは、パルス形状、インピーダンス、ピーク電圧などの仕様のことです。Cisco IMA インターフェイスでは、crc4adm および pcm30adm フレーミングによって、G.703 を基本的な電気仕様としてサポートしています。
G.704:E1 インターフェイスのフレーミング形式および 1.544 Mbps(T1)、44.736 Mbps(DS-3)などその他のビット レートを定義しています。
G.804:30 のタイムスロット内の E1 フレームに ATM セルをマッピングする方法を定義しています。これらのタイムスロットはユーザ データの伝送に使用され、予約されていません。
注: ATM フォーラム では、af-phy-0064.000 仕様で E1 フレームに ATM セルをマッピングする方法が定義されています。
非 ATM E1 インターフェイスと IMA または ATM E1 インターフェイスのフレーミングの違いを理解しておくことが重要です。非 ATM インターフェイスでは、E1 フレームに ATM セルをマッピングする方法を指定する必要がないため、別の一連のフレーミング形式が指定されます。PA-MC-2E1などのATM以外のCiscoルータインターフェイスでは、framing {crc4 | no-crc4}設定サブコマンド(次の例を参照)。
router(config-controller)# framing crc4
E1 のようなデジタル インターフェイスを介して ATM セルを送信する場合は、物理レイヤ フレームにセルをマッピングします。E1 インターフェイスの場合は、フレームにセルを直接マッピングします。ITU-T 勧告 G.804 および ATM フォーラムの af-phy-0064.000 仕様 で、ATM Direct Mapping(ADM; ATM 直接マッピング)プロセスが定義されています。 ADM では、セル ヘッダーの Header Error Check(HEC; ヘッダー エラー確認)フィールドを使用して、E1 フレームのセルの第 1 ビットが識別されます。受信側の E1 IMA インターフェイスでは、着信ビット ストリームが検査され、一連の 8 ビットに直前の 32 ビットの有効な CRC が含まれるかどうかが確認されます。
次の表は、E1 IMA フレーミング形式を示しています。名前に adm が含まれている形式が 2 つあることに注意してください。
形式の名前 | Cisco IOS(R) ソフトウェア名 | 説明 |
---|---|---|
CCS-CRC | crc4adm | E1 IMA インターフェイスの CRC4 フレーミングを指定します。 |
基本フレーム | pcm30adm | E1 IMA インターフェイスの CRC4-disabled フレーミングまたは Multiframe-no-CRC4 フレーミングを指定します。(これは PA-A3-8E1IMA のデフォルトです。) |
E1をクリア | クリア E1 | E1 IMA インターフェイスの clear-e1 フレーミングを指定します。 |
ADM の代替として、Physical Layer Convergence Protocol(PLCP; 物理レイヤ コンバージェンス プロトコル)があります。PLCP では、特別なオーバーヘッド バイトを使用して E1 フレーム内の ATM セルの最初と最後が特定されるため、実効ペイロード レートが削減されます。PLCP ではオーバーヘッドが追加されるため、PLCP の代わりに ADM が使用されます。
次に、セル マッピング機能について詳しく説明します。E1 フレームがちょうど 32 オクテットであることを思い出してください。このため、E1 IMA インターフェイスでは、ATM セルがビット 9 ~ 128 および 137 ~ 256(30 のペイロード タイムスロット)にマッピングされます。 ペイロードが 53 バイトの偶数倍ではないため、ATM セルは E1 フレームの境界を越えます。アイドル セルによって、ユーザ セルで使用されずに残っていたビット位置が埋められます。
タイムスロット 0 は、E1 インターフェイスの重要な機能を提供します。16 フレームのマルチフレームは、8 フレームのセミフレーム 2 つに分割されます。各セミフレーム内で、タイムスロット 0 は次のいずれかの形式に準拠します。
フレーム アラインメント信号:0、2、4 など偶数番号のフレーム
Cx:8 フレームの各セミフレームの Cyclic Redundancy Check 4(CRC4; 巡回冗長検査 4)ビット(指定されている C1、C2、C3、および C4)を送信します。
残りのビット:特定のビット パターンを持つフレーム アラインメント信号
フレーム アラインメント信号なし:1、3、5 など奇数番号のフレーム
Ci:6 つの CRC4 マルチフレーム アラインメント信号ビットの 1 つまたは 2 つの CRC4 エラー表示ビットの 1 つを送信します。
1:常に 1 に設定します。
A:信号消失またはフレーム同期外れを遠端に通知する黄色(リモート)アラーム信号
N:国別の制御情報用に予約されているナショナル ビット
ITU-T 仕様 G.704 および G.706 では、E1 回線での拡張エラー監視に対する CRC4 巡回冗長検査が定義されています。
注: 現在の 4 ビット CRC は、以前のセミマルチフレームから算出されています。
Cisco 2600 および 3600 シリーズ ルータ向け IMA ネットワーク モジュールでは、Multiframe-CRC4 のみがサポートされています。次の Cisco 3640 ルータの出力例では、コントローラの設定モードに入ってフレーミング形式を変更できないことが示されています。
3640-2.2(config)# controller ? % Unrecognized command
ATM フォーラムの af-phy-0064.000 標準のセクション 4.1.1.1 では、正式名である Multiframe-CRC4 が推奨されています。
3600# show controller atm0/2 Interface ATM0/2 is administratively down Hardware is ATM E1 LANE client MAC address is 0050.0f0c.1482 hwidb=0x617BEE9C, ds=0x617D498C slot 0, unit 2, subunit 2 rs8234 base 0x3C000000, slave base 0x3C000000 rs8234 ds 0x617D498C SBDs - avail 2048, guaranteed 2, unguaranteed 2046, starved 0 !--- Output suppressed. Part of IMA group 3 Link 2 IMA Info: group index is 1 Tx link id is 2, Tx link state is unusableNoGivenReason Rx link id is 99, Rx link state is unusableFault Rx link failure status is fault, 0 tx failures, 3 rx failures Link 2 Framer Info: framing is Multiframe-CRC4, line code is HDB3, impedance is 120 ohm clock src is line, payload-scrambling is enabled, no loopback line status is 0x1064; or Tx RAI, Rx LOF, Rx LOS, Rx LCD. port is active, link is unavailable 0 idle rx, 0 correctable hec rx, 0 uncorrectable hec rx 0 cells rx, 599708004 cells tx, 0 rx fifo overrun
Cisco 7x00 シリーズ ルータ用の IMA ポート アダプタでは、ルータのコマンドラインで Multiframe-CRC4 形式が crc4adm として指定されています。また、IMA ポート アダプタでは、フレーミング形式 pcm30adm および clear e1 もサポートされています。IMA E1 データ回線のフレーム タイプを選択するには、フレーミング コントローラ設定コマンドを発行します。
router(config)# controller e1 1/0 router(config-controller)# framing {crc4adm | pcm30adm | clear e1}
詳細は、『ATM の逆多重化でのマルチポート T1/E1 ATM ポート アダプタ』の「フレーミング」セクションを参照してください。
注意:シスコはclear e1フレーミング形式をサポートしていますが、使用に対する注意が必要です。この形式では、フレーミングを使用せずに2048 kbps回線だけが提供され、重要なのは、リモートアラームの送信をサポートしていない点です。ユーザペイロードの送信にタイムスロット16を使用できます。
E1 フレーミング形式の現在の設定を確認するには、E1 IMA インターフェイスで show controller atm コマンドを発行します。
7200# show controller atm 1/0 Interface ATM1/0 is up Hardware is IMA PA - E1 (2Mbps) Lane client mac address is 0090.b1f8.e454 Framer is PMC PM7344, SAR is LSI ATMIZER II Firmware rev:DG01, ATMIZER II rev:3 idb=0x61C03C58, ds=0x61C0B480, vc=0x61C2C860, pa=0x61BF9880 slot 3, unit 1, subunit 0, fci_type 0x00BB, ticks 658 400 rx buffers:size=512, encap=64, trailer=28, magic=4 linecode is HDB3 E1 Framing Mode: crc.4 adM format LBO (Cablelength) is long gain43 120db Facility Alarms: No Alarm
Variable Bit Rate Non-Real-Time(VBR-NRT; 可変ビット レート - 非リアルタイム)Permanent Virtual Connection(PVC; 相手先固定接続)では、ピーク セル レート パラメータの最大 kbps 値は 2000 kbps(2 Mbps)になります。 現在、すべてのプラットフォームでこの値が使用されています。
3640-2.2(config-if-atm-vc)# vbr-nrt ? <64-2000> Peak Cell Rate(PCR) in Kbps
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2 では(Cisco Bug ID CSCdt57977(登録ユーザ専用)を参照)、ATM IMA T1 および E1 インターフェイスに表示される帯域幅は、それぞれ 1536 kbps および 1920 kbps になります。一部ツールについては、ゲスト登録のお客様にはアクセスできない場合がありますことを、ご了承ください。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
05-Jun-2005 |
初版 |