モジュラ QoS CLI は、サービス ポリシーを作成して、作成したポリシーをインターフェイス、サブインターフェイス、および ATM やフレームリレーの Virtual Circuit(VC; 仮想回線)に適用できる、Command-Line Interface(CLI; コマンドライン インターフェイス)構造です。トラフィック ポリシーには、トラフィック クラスと 1 つ以上の QoS 機能が含まれます。トラフィック クラスは、トラフィックを分類するために使用します。一方、サービス ポリシーの QoS 機能は、分類されたトラフィックの処理方法を決めるために使用します。
このドキュメントでは、ATM インターフェイスでサービス ポリシーを適用する箇所を明確に説明します。サービス ポリシーは、ATM インターフェイス上で差別化サービスを行う IP to ATM Class of Service(CoS; サービス クラス)フィーチャ セットに含まれます。IP to ATM CoS の詳細は、「IP to ATM サービス クラスの概要」および「IP to ATM サービス クラスの設定」を参照してください。このドキュメントでは、IP to ATM CoS および MQC のコマンドについて理解していることを前提としています。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
Cisco IOS(R) ソフトウェア リリース 12.2 および 12.2T では、ATM インターフェイスは、メイン インターフェイス、サブインターフェイス、および VC の 3 つの論理インターフェイスでサービス ポリシーをサポートします。どの論理インターフェイスを選択するかは、トラフィック ポリシーのどの QoS 機能を適用するかによって決まります。次の表を参照して、サービス ポリシーを適用する箇所を判断します。
サービス ポリシー | メイン インターフェイス | サブインターフェイス | VC |
---|---|---|---|
キューイングだけによるサービス ポリシー | Yes | - | Yes |
キューイングおよびシェーピングによるサービス ポリシー | Yes | Yes | Yes |
サブインターフェイスと PVC の両方にポリシーを適用しようとすると、Cisco IOS ソフトウェアでは次のログ メッセージが表示されます。サブインターフェイスと PVC の組み合せは許可されていないためです。
注:このメッセージを表示するには、logging consoleコマンドをグローバルコンフィギュレーションモードから設定する必要があります。
3640-105(config)#int atm 1/0.1 point 3640-105(config-subif)#service-policy output leslie 3640-105(config-subif)# 2w5d: Attaching service policy to sub-interface and pvc concurrently is not allowed
一般に、キュー関連の機能は、超過パケットのキューイングによって帯域幅の制限されたトラフィック ストリームを作成するために、親ポリシーでのシェーピングに従った階層型のポリシーに限定して適用されます。これらの機能は、random-detect、bandwidth、priority、および fair-queue のコマンドによって適用します。言い換えると、キューイング メカニズムが適用されるのは、シェーピング メカニズムによってキューに抑制されているパケットです。サブインターフェイスは本質的に輻輳の状態をサポートしないため、シェーピングを使用できず、キューイングだけを指定するサービス ポリシーは、どのタイプのサブインターフェイスにも直接適用できません。代わりに、クラスベース シェーピングを使用して、まずシェーピングをサブインターフェイスに適用する必要があります。ATM サブインターフェイスに設定されているサービス ポリシーが、シェーピングを使用しないキューイングを適用している場合、Cisco IOS ソフトウェアでは次のログ メッセージが表示されます。
注:このメッセージを表示するには、logging consoleコマンドをグローバルコンフィギュレーションモードから設定する必要があります。
7200-16(config)#int atm 5/0.20 7200-16(config-subif)#pvc 1/20 7200-16(config-if-atm-vc)#exit 7200-16(config-subif)#service-policy output queuenoshape CBWFQ : Not supported on subinterfaces
ただし、VCはvbr-nrt、vbr-rt、cbr、またはabrコマンドを使用してネイティブATMレイヤシェーピングをサポートするため、ATM VCでは同じポリシーが受け入れられます。
7200-16(config)#int atm 5/0.20 7200-16(config-subif)#pvc 1/50 7200-16(config-if-atm-vc)#vbr-nrt 100 100 94 7200-16(config-if-atm-vc)#service-policy output queuenoshape 7200-16(config-if-atm-vc)#end 7200-16#show policy-map int atm 5/0.20 ATM5/0.20: VC 1/50 - Service-policy output: queuenoshape Class-map: leslie (match-all) 0 packets, 0 bytes 5 minute offered rate 0 bps, drop rate 0 bps Match: any Queueing Strict Priority Output Queue: Conversation 24 Bandwidth 50 (kbps) Burst 1250 (Bytes) (pkts matched/bytes matched) 0/0 (total drops/bytes drops) 0/0 Class-map: class-default (match-any) 0 packets, 0 bytes 5 minute offered rate 0 bps, drop rate 0 bps Match: any
次のセクションを参照して、shape コマンドをサポートするルータ プラットフォームに関する制限を確認してください。
PA-A3 ポート アダプタおよび ATM ネットワーク モジュールなどの 2600 および 3600 シリーズ用の新しい ATM インターフェイス ハードウェアでは、Virtual Circuit(VC; 仮想回線)ごとに個別のパケット キューが作成されます。 VC 単位のキューの目的は、輻輳している 1 つの VC が全メモリ リソースを消費した結果、他の VC がリソース不足に陥らないようにすることです。したがって、必然的にサービス ポリシーを適用する場所は、VC 設定モードの PVC レベルになります。VC 単位のキューイングの詳細は、「PA-A3 および NM-1A の ATM インターフェイスにおける VC 単位の送信キューイングに関する理解」を参照してください。
一方、set コマンドでパケット マーキングを適用したり、police コマンドでトラフィック ポリシングを適用するサービス ポリシーの場合は、ATM サブインターフェイスにポリシーを適用することを選択できます。
旧型の ATM ハードウェアは、VC 単位のキューをサポートしません。たとえば、PA-A1 は、キャンパス LAN Emulation(LANE; LAN エミュレーション)環境で使用するように設計されており、インターフェイスレベルのキューだけをサポートします。したがって、PA-A1 メイン インターフェイスを 1 本の「太いパイプ」として扱い、キューイング機能によってサービス ポリシーをメイン インターフェイスに適用するように選択する場合があります。詳細は、「IP to ATM CoS に対する ATM ハードウェア サポートの理解」を参照してください。
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2(4)T および 12.2(2) の場合、ATM インターフェイスおよびフレームリレー インターフェイスは、1 つのポリシー、または特定の組み合せられた複数のポリシーをサポートします。
Cisco 7500 シリーズ以外のプラットフォームにある ATM インターフェイスは、1 つの論理インターフェイスでだけ入力サービス ポリシーをサポートします。サービス ポリシーを、メイン インターフェイスとそのメイン インターフェイスのサブインターフェイスの両方に適用することは、サポートされません。推奨どおりに、PVC レベルでのサービス ポリシーの適用を選択すると、PVC ごとに固有の入力サービス ポリシーをサポートできます。
Cisco 7500 シリーズ以外のプラットフォームの ATM インターフェイスは、同時に 2 つまでの論理インターフェイスで出力サービス ポリシーをサポートします。次の表では、有効な組み合わせを示します。
メイン インターフェイス | サブインターフェイス | PVC |
---|---|---|
Yes | - | Yes |
Yes | Yes | - |
出力サービス ポリシーを VC に適用してから、サブインターフェイスに適用すると、最初に適用したポリシーだけが有効になります。
Cisco 7500 シリーズでは分散アーキテクチャが使用されています。これにより、パケット転送の判断が Route Switch Processor(RSP; ルート スイッチ プロセッサ)から VIP へ移されるため、パケットの高スループットが確保されます。また、このアーキテクチャでは、処理の負荷が VIP の個々のプロセッサに分散されるため、QoS などの大規模な拡張 IP サービスを実装できます。
インターフェイスのハードウェアに応じて、Cisco 7500 シリーズは、次の 2 つの形式の QoS をサポートできます。
有効にする方法 | サポートされる場所 | 処理される場所 | |
---|---|---|---|
RSP ベース | レガシー インターフェイス プロセッサで自動的にオンになる。 | レガシー インターフェイス プロセッサ。VIP では有効でなくなった。 | RSP の CPU |
VIP ベース(分散型) | 次の 2 つのコマンドが設定された場合は自動
|
VIP | VIP の CPU |
一般的に、VIP ベースの QoS メカニズムは、bandwidth、priority、shape、および police などのコマンドをはじめとする、モジュラ QoS CLI(MQC)によって適用されます。このメカニズムは、Cisco IOS ソフトウェアの 3 つのリリース群に導入されています。
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.0(XE)。後に、12.1(E) となる。
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.0(9)S
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.1(5)T。後に、12.2 メインラインおよび 12.2T となる。
上記のリリースでは、サービス ポリシーを直接 ATM の PVC に適用して、VC 単位の機能を実現します。police、set、bandwidth、priority、および shape などのすべての MQC コマンドがサポートされています。また、ATM のサブインターフェイスにポリシーを適用するように選択し、かつそのサブインターフェイスに 1 つの ATM PVC がある場合、ポリシーを PVC に適用したときと同じ動作が得られます。ポリシーは、直接 PVC に適用できるので、一般的には、サブインターフェイスに適用しても意味がありません。シスコでは、下位互換性の目的で、PA-A3 のサブインターフェイスへのサービス ポリシーの適用をサポートします。
次の表に、Cisco 7500 シリーズの PA-A3 の論理インターフェイスでサポートされるサービス ポリシーの変遷を示します。
Release | 拡張機能 |
---|---|
12.0(5)T | さまざまなインターフェイス タイプにおいて、Class-Based Weighted Fair Queueing(CBWFQ; クラスベース均等化キューイング)を Cisco IOS ソフトウェアに導入する。 |
12.0(5)XE1 | PA-A3 上でサブインターフェイスの CBWFQ を導入。 |
12.0(5)XE2 | PA-A3 のサービス ポリシーの統計情報を表示する、show interface fair-queue コマンドを、show policy-map コマンドに変更。 |
12.0(7)XE | 個々の VC 上の PA-A3 に、CBWFQ および Low Latency Queueing(LLQ; 低遅延キューイング)を導入。Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.0(7)XE は、"X" または短期間のリリースです。X リリースはすべて、後続の T リリースに吸収されます。Cisco IOSソフトウェアリリース12.0(7)XEは、12.1(5)TのTトレインにマージされました。したがって、Cisco 7500 シリーズの場合、MQC ベースの VC 単位キューイング機能は、12.1 メインラインおよび 12.1(5)T よりも前のすべての 12.1T リリースでは利用できません。 |
show interface atmコマンドで「Queuing strategy:fifo」と表示されます。キューイング戦略が反映するのは、Cisco 7500 シリーズの RSP に関する表示であって、分散サービスの状態ではありません。show policy interface コマンドを使用して、期待される機能を確認します。
7500#show interface atm 3/0 ATM3/0 is up, line protocol is up (looped) Hardware is ENHANCED ATM PA Internet address is 10.10.1.2/24 MTU 4470 bytes, sub MTU 4470, BW 44209 Kbit, DLY 190 usec, reliability 255/255, txload 1/255, rxload 1/255 Encapsulation ATM, loopback set Keepalive not supported Encapsulation(s): AAL5 4096 maximum active VCs, 5 current VCCs VC idle disconnect time: 300 seconds Signalling vc = 1, vpi = 0, vci = 5 UNI Version = 4.0, Link Side = user 0 carrier transitions Last input 00:00:17, output 00:00:17, output hang never Last clearing of "show interface" counters 2d12h Input queue: 0/75/0/0 (size/max/drops/flushes); Total output drops: 0 Queueing strategy: fifo 5 minute input rate 0 bits/sec, 0 packets/sec 5 minute output rate 0 bits/sec, 0 packets/sec [output omitted]
ATM インターフェイスでは、vbr-nrt や abr のコマンドによって、ネイティブ ATM レイヤのシェーピングをサポートします。さらに、ATM インターフェイス経由で転送される特定の IP レイヤのフローやサブネットをシェーピングすることを選択する場合もあります。Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2(8)T の時点では、分散 QoS サービスを実行する Cisco 7500 シリーズだけが、Cisco IOS 12.2 メインライン、12.1E および 12.0S リリース群でそのような設定をサポートします。
この設定では、通常、親レイヤでのシェーピング、および子レイヤでのキューイングによって階層型ポリシーが使用されます。次に設定例を示します。
shape コマンドによる階層型ポリシーの設定例 |
---|
policy-map child class prec2 bandwidth percent 60 class prec4 bandwidth percent 20 class class-default fair-queue ! policy-map parent class prec24 shape average 10240000 40960 40960 service-policy child ! interface ATM5/0/0.1 point-to-point pvc 1/101 vbr-nrt 50000 50000 94 service-policy output parent |
Cisco 3600、2600シリーズ、およびその他の非分散プラットフォームでは、ATMルータインターフェイスでshapeコマンドを使用したクラスベースのシェーピングはサポートされません。機能要求が送信されました。回避策としては、police コマンドを適用するサービス ポリシーを使用して、VC 単位のクラスベース ポリシングを設定します。この設定の場合、子キューイング ポリシーを作成しません。ポリシング機能がパケットをドロップするか転送するだけで、バースト パラメータを超過したものはキューイングされないからです。Cisco 7200および7500は、12.0(26)S以降のSトレインでのみ、ATM VCのクラスベースシェーピングをサポートします。
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2(2)T の場合、バック プレッシャの新しい形式が PA-A3 に導入されており、Tag VC(TVC)などの Unspecified Bit Rate(UBR; 未指定ビット レート)セットを経由するタグスイッチング インターフェイスでのキューイングがサポートされます。 輻輳をフィードバックする、この設定で唯一のしくみは、TVC のセット全体に対しては動作しますが、VC 単位には動作しません。
シスコでは、Cisco ルータ内の IP ベース QoS の拡張機能の設定および監視用として、2 つのグラフィカル ユーザ インターフェイス ツールを用意しています。これらのツールを使用すると、QoS の設定と監視を簡単に実行できます。
QoS Device Manager(QDM)2.1は、サブインターフェイスおよびメインインターフェイスにのみサービスポリシーを適用できます。サービスポリシーをVCレベルで適用することはできません。詳細は、「リリース ノート」を参照してください。2002 年 8 月の時点では、VC レイヤのサービス ポリシーを QDM 内から設定する計画はありません。
QoS Policy Manager 2.1 には、1 つの VC がある ATM ポイントツーポイントのサブインターフェイスに対してサービス ポリシーを設定するためのサポートが導入されています。詳細については、『Release Notes and Installation Guide for CiscoWorks2000 QoS Policy Manager 2.1』を参照してください。QPM 3.0はVC層サービスポリシーの設定をサポートします。
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
05-Jun-2005 |
初版 |