このドキュメントでは、Cisco uBR72XX シリーズ ルータのハードウェア アーキテクチャとソフトウェア アーキテクチャの概要について説明します。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
このドキュメントに関しては個別の前提条件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
uBR7200 シリーズのユニバーサル ブロードバンド ルータは、シスコのケーブル モデム終端システム(CMTS)ソリューションで構成されています。次の 3 種類のシャーシを使用できます。Cisco uBR7223、Cisco uBR7246、および Cisco uBR7246VXR。
uBR7223:レガシー ミッドプレーンを搭載した 2 スロット シャーシ。
uBR7246:レガシー ミッドプレーンを搭載した 4 スロット シャーシ。
uBR7246VXR:VXR ミッドプレーンを搭載した 4 スロット シャーシ。
uBR7246
uBR7246VXR
ルータはデータオーバーケーブル サービス インターフェイス仕様(DOCSIS)に基づいており、双方向 CATV および IP バックボーン ネットワークを通じてデータおよびデジタル化された音声の接続をサポートします。
uBR7200 シリーズのユニバーサル ブロードバンド ルータには次が含まれます。
無線周波数(RF)ケーブル設備に接続するケーブル モデム カード。
IP バックボーンおよび外部ネットワークに接続するポート アダプタ。
ルータのミッドプレーン全体で T1 クロック信号のロックおよび伝搬を可能にする Cisco ケーブル クロック カード(UBR VXR のみ)。
シャーシのシステム管理機能を実行するネットワーク プロセッシング エンジン(NPE)1 つ。
データ端末装置(DTE)を接続するコンソール ポートを搭載した入出力(I/O)コントローラ、データ通信装置(DCE)を接続する補助ポート、リモートから複数のシステムおよびブート ヘルパー イメージをロードして格納するためのフラッシュ メモリ カードを保持する Personal Computer Memory Card International Association(PCMCIA)スロット(2 スロット)、ネットワークとの 100 Mbps 接続を提供するオプションのファスト イーサネット ポート。
ルータに電力を供給する電源。
uBR7223 には 550W の AC 入力電源か DC 入力電源が 1 つ搭載されています。
uBR7246VXR および uBR7246 では、オプションの 2 台目の電源装置を搭載して負荷分散および電源の冗長性を確保できます。
電源の電力を I/O コントローラに供給するミッドプレーン(トリプル PCI バス)は、PCI(ペリフェラル コンポーネント インターコネクト)バスをポート アダプタからパケット Static Random-Access Memory(SRAM)(NPE-150 および NPE-20)、または同期 DRAM(SDRAM)(NPE-300)にブリッジし、PCI バス間のトラフィックを調整して、PCI バス上のポート アダプタのクロック信号を生成します。
シャーシに冷気を取り込んで適切な動作温度を保つ内部ファンが格納されたファン トレイ。
uBR7223 のファン トレイには 4 つのファンが搭載されています。
uBR7246VXR および uBR7246 のファン トレイには、7 つのファンが搭載されています。
ケーブル モデム カード、ポート アダプタ、クロック カード、NPE、I/O コントローラ、および電源は、それぞれのシャーシ スロットに挿入して、ルータのミッドプレーンに直接接続します。接続するための内部ケーブルはありません。ミッドプレーンは電源からの電力を、I/O コントローラ、ケーブル モデム カード、ポート アダプタ、クロック カード、ファン トレイ、および NPE に供給します。
詳細については、「Cisco uBR7200 シリーズの概要」を参照してください。
NPE には、メインメモリ、CPU、PCI メモリ(Static Random-Access Memory(SRAM)、ただし NPE-100 のみ DRAM を使用)、および PCI バスの制御回路が搭載されています。ネットワーク プロセッシング エンジンは次のコンポーネントで構成されています。
縮小命令セット コンピュータ(RISC)マイクロプロセッサ。次の表に詳細を示します。
ネットワーク プロセッシング エンジン | マイクロプロセッサ | 内部クロック速度 |
NPE-150 | R4700 | 100 および 150 MHz |
NPE-175 | RM5270 | 200 MHz |
NPE-200 | R5000 | 200 MHz |
NPE-225 | RM5271 | 262 MHz |
NPE-300 | RM7000 | 262 MHz |
NPE-400 | RM7000 | 350 MHz |
システム コントローラ。
NPE-150 および NPE-200 には、ネットワーク プロセッシング エンジン上の DRAM とパケット SRAM の間のデータ転送に Direct Memory Access(DMA; ダイレクト メモリ アクセス)を使用するシステム コントローラが搭載されています。
NPE-300 には、2 基のシステム コントローラが搭載されており、2 基のミッドプレーンと 1 基の I/O コントローラの PCI バスへのプロセッサからのアクセスが実現されています。また、このシステム コントローラにより、2 基のミッドプレーンの PCI バスのいずれかで、ポート アダプタから SDRAM へのアクセスも可能になっています。
アップグレード可能なメモリ モジュール
NPE-150、および NPE-200 は、DRAM を使用して、ルーティング テーブル、ネットワーク アカウンティング アプリケーション、プロセス スイッチング用の情報パケット、および SRAM オーバーフロー用のパケット バッファを保存します(パケット SRAM を使用しない NPE-100 を除く)。 標準構成では 32 MB ですが、Single In-line Memory Module(SIMM; シングル インライン メモリ モジュール)のアップグレードで最大 128 MB まで拡張できます。
NPE-300 では、ネットワーク インターフェイスで送受信されるすべてのパケットの保存に SDRAM を使用します。この SDRAM には、ルーティング テーブルとネットワーク アカウンティング アプリケーションも保存されます。このシステムには独立した 2 基の SDRAM メモリ アレイが搭載されているので、ポート アダプタとプロセッサからの同時アクセスが可能です。NPE-300 では、最初の 32 MB SIMM だけは固定構成になっている点に注意してください。
ファスト スイッチングに備えた情報パケットを保存するためのパケット SRAM
NPE-150 には、1 MB の SRAM が搭載されています。
NPE-200 には、4 MB の SRAM が搭載されています。
NPE-300 には、パケット SRAM は搭載されていません。
キャッシュ メモリ。
NPE-150、および NPE-200 には、マイクロプロセッサの 2 次キャッシュとして機能する統合キャッシュ SRAM が搭載されています(1 次キャッシュはマイクロプロセッサに内蔵されています)。
NPE-300 には 3 つのレベルのキャッシュがあります。マイクロプロセッサ内蔵の一次および二次キャッシュとデータおよび命令用に追加の高速ストレージを提供する 2-MB の三次次外部キャッシュです。
シャーシから排出される冷気をモニタする環境センサー× 2
Cisco IOS® ソフトウェア ブート用に十分なコードを保存するブート ROM。NPE-200 と NPE-300 にはブート ROM が内蔵されています。
詳細については、次を参照してください。
「Network Processing Engine & Network Services Engine Documentation」
「Network Processing Engine and Network Services Engine Installation and Configuration」
uBR7200 シリーズ ルータでは、DRAM、SDRAM、および SRAM メモリを NPE 上でさまざまに組み合わせて使用しています。利用可能なメモリは次の 3 つのメモリ プールに分けられます。プロセッサ プール、I/O プール、および PCI プール(NPE-300 の I/O-2)です。
show memory コマンドの出力例を次に示します。
この例では、64 MB DRAM 内蔵の NPE 200 を搭載した uBR7246 が使用されています。
ubr7246-A# show memory Head Total(b) Used(b) Free(b) Lowest(b) Largest(b) Processor 612544C0 35306304 9386596 25919708 25692256 24872952 I/O 3400000 12582912 3416092 9166820 8750448 8818300 PCI 4B000000 4194312 2245784 1948528 1948528 1948476
この例では、256 MB DRAM 内蔵の NPE 300 を搭載した uBR7246VXR が使用されています。
uBR7246VXR-1# show memory Head Total(b) Used(b) Free(b) Lowest(b) Largest(b) Processor 6184CA00 234567168 11795676 222771492 222646900 222652544 I/O 20000000 33554432 524296 33030136 32998448 33019132 I/O-2 F800000 8388608 2243588 6145020 5817032 6133436
次に show version コマンドの例を示します。このコマンドを実行すると、システムのハードウェア構成、ソフトウェア バージョン、およびコンフィギュレーション ファイルとブート イメージの名前とソースが表示されます。
uBR7200# show version Cisco Internetwork Operating System Software IOS (tm) 7200 Software (UBR7200-K8P-M), Version 12.2(5.4)T, MAINTENANCE INTERIE TAC Support: http://www.cisco.com/tac Copyright (c) 1986-2001 by cisco Systems, Inc. Compiled Fri 21-Sep-01 19:32 by ccai Image text-base: 0x600089C0, data-base: 0x61688000 ROM: System Bootstrap, Version 11.1(10) [dschwart 10], RELEASE SOFTWARE (fc1) BOOTLDR: 7200 Software (UBR7200-BOOT-M), Version 11.3(6)NA1, EARLY DEPLOYMENT R Meowth uptime is 13 weeks, 3 days, 6 hours, 38 minutes System returned to ROM by power-on System image file is "slot0:ubr7200-k8p-mz.122-5.4.T" cisco uBR7246 (NPE150) processor (revision B) with 57344K/8192K bytes of memory. Processor board ID SAB03040053 R4700 CPU at 150Mhz, Implementation 33, Rev 1.0, 512KB L2 Cache 6 slot midplane, Version 1.0 Last reset from power-on X.25 software, Version 3.0.0. Primary Rate ISDN software, Version 1.1. 4 Ethernet/IEEE 802.3 interface(s) 24 Serial network interface(s) 4 Channelized T1/PRI port(s) 3 Cable Modem network interface(s) 125K bytes of non-volatile configuration memory. 1024K bytes of packet SRAM memory. 20480K bytes of Flash PCMCIA card at slot 0 (Sector size 128K). 4096K bytes of Flash internal SIMM (Sector size 256K). Configuration register is 0x2102
プロセッサ メモリ:このプールは、IOS ソフトウェアのコード、ルーティング テーブル、およびシステム バッファを保存するのに使用されます。NPE-150 および NPE-200 の場合は、DRAM から割り当てられます。NPE-300 の場合は、SDRAM バンク 0 から割り当てられます。
I/O メモリ:このプールはパーティクル プールに使用されます。インターフェイス プライベート プールおよびパブリック パーティクル プールは両方ともこのメモリから割り当てられます。このメモリのサイズは、NPE のタイプによって異なります。NPE-150 と NPE-200 とでは、I/O メモリに使用する DRAM サイズの決定方法が異なります。NPE-300 では SDRAM バンク 1 が使用され、サイズは 32 MB に固定されています。
PCI メモリ:この小さなプールは、主にインターフェイスの送受信リング用に使用されます。高速インターフェイスのプライベート インターフェイス パーティクル プールを割り当てるために使用される場合があります。NPE-300 システムでは、このプールは SDRAM で作成されます。NPE-150 および NPE-200 では、すべて SRAM で作成されます。
メモリの位置とメモリ テーブルの仕様についての詳細は、「メモリの位置と仕様」を参照してください。このリンクから、NPE/NSE それぞれの、メモリ関連のガイドラインと制限の一部も確認できます。
I/O コントローラは、uBR7200 ルータのシステム メモリ機能および環境モニタリング機能を、ネットワーク プロセッシング エンジンと分担しています。
I/O コントローラは、次のコンポーネントで構成されています。
ローカルおよび補助コンソール ポート用デュアル EIA/TIA-232 チャネル。このコンソール ポートには、完全な DCE 機能と DB-25 レセプタクルがあります。補助ポートには、完全な DTE 機能と DB-25 コネクタがあります。
100 Mbps 全二重または半二重に設定可能なオプションのファスト イーサネット ポート(デフォルトは半二重)。 ファスト イーサネット ポートには、MII レセプタクルと RJ-45 レセプタクルが備え付けられています。
NVRAM:システム コンフィギュレーションおよび環境モニタリング ログが保存されます。電源が接続解除されると、NVRAM はリチウム電池を使用して内容を維持します。
タイプ II フラッシュ メモリ カード用 PCMCIA スロット(2 スロット)。
ブート ヘルパー イメージとデフォルト IOS ソフトウェア イメージの保存用フラッシュ メモリ SIMM およびフラッシュ メモリ カード。
uBR7200# show flash -#- ED --type-- --crc--- -seek-- nlen -length- -----date/time------ name 1 .. image FB8463E9 857AF0 25 8616560 Sep 16 2001 06:14:14 ubr7200-k1pC 2 .. image 9DE70200 112EC88 24 9269528 Sep 16 2001 06:40:07 ubr7200-k8pT 2691960 bytes available (17886344 bytes used)
IOS ソフトウェア ブート用に十分なコードを保存する Erasable Programmable Read-Only Memory(EPROM)。
uBR7200 シリーズのシャーシに出入りする冷気をモニタリングする環境センサー 2 つ環境ステータス情報(電源、ファン ステータス、温度情報など)およびシステムで使用できる電力量に関する情報を表示するコマンド。
uBR7200# show environment all Power Supplies: Power supply 1 is AC Revision C0. Unit is on. Power supply 2 is empty. Temperature readings: chassis inlet measured at 21C/69F chassis outlet 1 measured at 22C/71F chassis outlet 2 measured at 23C/73F chassis outlet 3 measured at 34C/93F chassis outlet 4 measured at 21C/69F chassis outlet 5 measured at 22C/71F Voltage readings: +3.5 V measured at +3.45 V +5.2 V measured at +5.12 V +12.2 V measured at +12.12 V -12.2 V measured at -12.32 V +16 V measured at +16.05 V -16 V measured at -16.83 V
次の表に、I/O コントローラの説明の詳細を示します。
I/O コントローラの説明製品番号 | 説明 |
UBR7200-I/O-FE | ファスト イーサネット ポート X 1 |
UBR7200-I/O | ファスト イーサネット ポートなし |
注:7200シリーズのI/Oコントローラは、uBR7200シリーズのI/Oコントローラと同じではありません。7200 シリーズのコントローラは、uBR7200 ではサポートされていません。
詳細は、次のリンクを参照してください。
ポート アダプタとは、物理メディア上のパケットを送受信する回路が搭載されたモジュラ インターフェイス コントローラのことです。
uBR7200 ルータに備え付けられているポート アダプタ(PA)は、活性挿抜(OIR)に対応しています。 これらのポート アダプタはホットスワップ可能です。
次の表に、uBR7200 シリーズでサポートされているポート アダプタの一覧を示します。
製品番号 | 説明 |
PA-2FEISL-FX= | 2 ポート ファスト イーサネット 100BASE FX |
PA-2FEISL-TX= | 2 ポート ファスト イーサネット 100BASE TX |
PA-2H= | 2 ポート HSSI |
PA-4E= | 4 ポート イーサネット 10 BASET |
PA-8E= | 8 ポート イーサネット 10 BASET |
PA-A3-OC3MM= | 1 ポート ATM 拡張 OC3C/STM1 マルチモード |
PA-A3-OC3SMI= | 1 ポート ATM 拡張 OC3C/STM1 シングルモード(IR) |
PA-A3-OC3SML= | 1 ポート ATM 拡張 OC3C/STM1 シングルモード(LR) |
PA-FE-TX= | 1 ポート ファスト イーサネット 100BASE TX |
PA-FE-FX= | 1 ポート ファスト イーサネット 100BASE FX |
PA-H= | 1 ポート HSSI |
PA-POS-OC3MM= | 1 ポート Packet over SONET OC3C/STM!マルチモード |
PA-POS-OC3SMI= | 1 ポート Packet over SONET OC3C/STM!シングルモード(Singlemode) |
PA-POS-OC3SML= | 1 ポート Packet over SONET OC3C/STM!シングルモード(LR) |
PA-SRP-OC12MM= | DPT-OC12 マルチモード |
PA-SRP-OC12SMI= | DPT-OC12 シングルモード(IR) |
PA-SRP-OC12SML= | DPT-OC12 シングルモード(LR) |
PA-GE | ギガビット イーサネット |
UBR-CLK-T1= | UBR-VXR 用ナショナル クロック カード* |
詳細は、次のリンクを参照してください。
Cisco ケーブル モデム カードは、IF/RF アップコンバータと組み合わることにより、ケーブル ヘッドエンドと DOCSIS 準拠ケーブル モデムの間、または EuroDOCSIS 準拠ケーブル モデムとセットトップ ボックス(STB)の間の RF インターフェイスとして機能します。
ケーブル モデム カードはユニバーサル ブロードバンド ルータのミッドプレーンに直接接続します。uBR7200 シリーズに備え付けられているケーブル モデム カードは、活性挿抜(OIR)に対応しています。 これらのポート アダプタはホットスワップ可能です。次の表に、製品番号と説明の一覧を示します。
製品番号 | 説明 |
UBR-MC11C= | ダウンストリーム X 1、アップストリーム X 1 |
UBR-MC12C= | ダウンストリーム X 1、アップストリーム X 2 |
UBR-MC14C= | ダウンストリーム X 1、アップストリーム X 4 |
UBR-MC16C= | ダウンストリーム X 1、アップストリーム X 6 |
UBR-MC16E= | 8 MHZ、ダウンストリーム X 1、アップストリーム X 6 |
UBR-MC16S= | スペクトラム管理、ダウンストリーム X 1、アップストリーム X 6 |
UBR-MC28C= | ダウンストリーム X 2、アップストリーム X 8 |
ブート プロセス中に、システム LED を観察して問題を判別します。
電源モジュールのスイッチをオンにしてシステムを起動すると、次のような状態になります。
ただちに、ファンの動作音が聞こえます。
電源装置の緑のOK LED(シャーシ背面)は、電源スイッチをオン(|)の位置に配置するとすぐに点灯し、通常のシステム動作時は点灯したままになります。
I/O コントローラの LED が点灯します。
各ポート アダプタの enabled LED が点灯します。uBR7246VXR の場合は、クロック カードの enable LED もこの時点で点灯します。
ネットワーク プロセッシング エンジンがケーブル モデム カードの初期化を完了すると、各ケーブル モデム カードの enable LED が点灯します。
すべての LED が点灯してシステムが正常に起動したことが示されたら、コンソール画面に初期システム バナーが表示されます。
ブート シーケンスがここで説明したものと異なる場合は、「起動の問題を特定する」で詳細を参照してください。
詳細については、「Cisco uBR72xx / uBR7246 VXR ユニバーサル ブロードバンド ルータのハードウェア トラブルシューティング」を参照してください。