このドキュメントでは、ケーブル モデムがオフラインになる原因を判別するトラブルシューティング手順を説明します。ほとんどの場合、プラントの問題または搬送波対雑音比の低さが原因であるため、特にこれらの問題を中心に説明します。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
このドキュメントに関しては個別の前提条件はありません。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
Cisco ハードウェア uBR7246 VXR(NPE300)プロセッサ(リビジョン C)
Cisco IOS®ソフトウェア(UBR7200-K1P-M)、バージョン12.1(9)EC
CVA122 Cisco IOS ソフトウェア 12.2(2)XA
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ケーブル モデムが接続されて稼動した後、オンライン状態を維持するには、次の 3 つが必要です。
搬送波対雑音比が、常時、アップストリームでは 25 dB より大きく、ダウンストリームでは 35 dB より大きいクリーンな RF プラント。
30 秒ごとの CMTS からのユニキャスト ポーリング(キープアライブ)。 これは、このモデムに割り当てられている SID のユニキャスト送信チャンスで、CMTS に RNG-REQ を送信できます。ケーブル モデムが T4 の秒数(30 秒)以内にユニキャスト送信チャンスを受信しなかった場合、ケーブル モデムはタイムアウトして、MAC レイヤを再初期化する必要があります。そのため、ダウンストリームで(RF の)問題が発生すると、ケーブル モデムでこのユニキャスト送信チャンスが確認できなくなり、オフラインになる場合があります。
CMTS が、ユニキャスト送信チャンスに対する応答を CM から受信しなかった場合、CMTS は、モデムへのポーリングを 16 回、短時間の間に実行して、再試行の応答を待ちます。この再試行の実行後も応答がなかった場合、CMTS では、モデムがオフラインであると見なします。
DOCSIS 仕様に基づく場合、稼動を維持するには、RF プラントのアップストリームとダウンストリームが次の要件に従う必要があります。
設定パラメータ
使用されているダウンストリームおよびアップストリームの周波数
dB の単位でのノイズの測定。この値が許容範囲内で正しいことを確認してください。ノイズの制限の表は、次の表に含まれています。
アップストリームの仕様 | DOCSIS の仕様 1 |
---|---|
システム/チャネル | |
周波数の範囲 | 5 ~ 42 MHz(北米) 5 ~ 65 MHz(ヨーロッパ) |
最も遠い CM から最も近い CM または CMTS までの伝送遅延。 | 0.800ミリ秒未満 |
搬送波対雑音比 | 25 dB |
搬送波対受信電力比 | > 25 dB |
搬送波対干渉波比 | > 25 dB(QPSK2)3 > 25 dB(16 QAM4)3 |
搬送波ハム変調 | < -23 dBc5 (7%) |
バースト雑音 | ほとんどの場合、1 kHz の平均レートで 10 マイクロ秒以下 |
振幅リプル | 0.5 dB/MHz |
グループ遅延リプル | 200 ns/MHz |
微小反射(シングル エコー) | -10 dBc @ < 0.5 µSec -20 dBc @ < 1.0 µSec -30 dBc @ > 1.0 µSec |
季節間/日次の信号レベル変動 | 最小値と最大値の差が 8 dB 以下。 |
デジタル信号レベル | |
ケーブル モデムから(アップストリーム) | +8 ~ +58 dBmV(QPSK) +8 ~ +55 dBmV(16 QAM) |
モデム カードへの入力振幅(アップストリーム) | -16 ~ +26 dBmV(シンボルレートによって異なる)。 |
隣接ビデオ信号相対信号 | -6 ~ -10 dBc |
1 DOCSIS仕様は、DOCSIS準拠の双方向データオーバーケーブルシステムのベースライン設定です。
2 QPSK = Quadrature Phase-Shift Keying(4 位相偏移変調):2 つのデジタル ビットをコードするのに 4 つの位相状態を使用して、デジタル信号を無線周波数キャリア信号に変調する方式。
3 これらの設定は、デジタル搬送波に対する相対値として計測されています。会社のポリシー、ケーブル ネットワークの初期設定などに基づいて、アナログ ビデオ信号との関係で 6 ~ 10 dB を追加します。
4 QAM = Quadrature Amplitude Modulation(直交振幅変調):振幅と位相コードにより、デジタル信号を無線周波数キャリア信号に変調する方法。
5 dBc = 搬送波に対する相対デシベル値。
DOCSIS ケーブル ダウンストリーム RF の仕様ダウンストリームの仕様 | DOCSIS の仕様 1 |
---|---|
システム/チャネル | |
RF チャネル スペーシング(帯域幅) | 6 MHz |
伝送遅延 2 | 0.800 ミリ秒(msec) |
搬送波対雑音比 | 35 dB |
全電力の搬送波対干渉波比(離散的かつ広帯域の入力信号) | 35 dB以上 |
複合トリプル ビート ディストーション | < -50 dBc3 |
二次搬送波 | < -50 dBc |
混変調レベル | < -40 dBc |
振幅リプル | 6 MHz で 0.5 dB |
グループ遅延 | 6 MHz で 75 ns 4 |
主要なエコー方向への微小反射 | -10 dBc @ < 0.5 µsec -15 dBc @ < 1.0 µSec -20 dBc @ < 1.5 µSec -30 dBc @ > 1.5 µSec |
搬送波ハム変調 | < -26 dBc(5%) |
バースト雑音 | 10 kHz の平均レートで 25 マイクロ秒未満 |
季節間/日次の信号レベル変動 | 8 dB |
信号レベルのスロープ(50 〜 750 MHz) | 16 dB |
CM 入力でのアナログ ビデオ搬送波の最大レベル(上記の信号レベルの変動を含む) | +17 dBmV |
CM 入力でのアナログ ビデオ搬送波の最小レベル(上記の信号レベルの変動を含む) | -5 dBmV |
デジタル信号レベル | |
ケーブル モデムへの入力(レベルの範囲、1 チャネル) | -15 ~ +15 dBmV |
隣接ビデオ信号相対信号 | -6 ~ -10 dBc |
1 DOCSIS の仕様は、DOCSIS 準拠の双方向データオーバーケーブル システムの基準となる設定です。
2 伝送遅延は、ケーブルのヘッドエンドから最も遠いカスタマーおよびバックまでの「ラウンドトリップ」と定義されています。
3 dBc = 搬送波に対する相対デシベル値。
4 ns = ナノ秒。
注: ヨーロッパ標準のための完全な仕様については、「RF仕様 」を参照してください。
ケーブル プラントの RF の問題のトラブルシューティングについては、『CMTS における RF または設定の問題の特定』を参照してください。スペクトル アナライザを使用した RF 測定については、『Cisco uBR7200 シリーズ ルータとケーブル ヘッドエンドの接続』を参照してください。
CMTS は、各 CM に対して、T4 の秒数ごとに最低 1 回は定期レンジングのチャンスを提供する必要があります。CMTS は、CM のタイムアウトなしで MAP が失われる可能性のある T4 よりも十分に短い間隔で、定期レンジングのチャンスを送信する必要があります。この「サブインターバル」のサイズは CMTS に依存します。CM は、定期レンジングのチャンスを受信しないまま T4 の秒数を経過した場合、MAC を再初期化する必要があります。T4 のデフォルト値は 30 秒です。
T4 は、「ユニキャスト レンジング チャンスの待機時間」と定義されています。 これは、モデムが、自分専用の送信チャンスを CMTS から取得するために待機している時間です。この値は、SP-RFIv1.1-I03-991105 により、最小値が 30 秒、最大値が 35 秒と定義されています。
T4 のタイムアウトによって、UBR9xx モデムがオフラインになると、debug cable mac log に次のエラー メッセージが表示されます。
router#debug cable mac log verbose .... 11:05:07: 39907.082 CMAC_LOG_T4_TIMER 11:05:07: %UBR900-3-RESET_T4_EXPIRED: R04.0 Received Response to Broadcast Maintenance Request, But no Unicast Maintenance opportunities received. T4 timeout. 11:05:07: 39907.090 CMAC_LOG_RESET_T4_EXPIRED ....
通常、これは RF の問題を示しているので、この問題を中心にトラブルシューティングを行います。
CMTS は、応答を受信するか、リトライ数(デフォルトは 16)を終了するまで、CM に対してポーリングを繰り返します。リトライ数を終了すると、CM はポーリング リストから削除されて、オフラインであると見なされます。
モデムが常時レンジングを実行しているかどうかを検出するには、show cable flap-list コマンドを使用します。
アップストリームの使用率が高すぎたり、一つのアップストリームに接続されているモデムが多すぎる場合は、一部のモデムで、定期レンジングの要件を満たすのに必要な帯域幅や送信チャンスを確保できずに、T4 のタイムアウトが発生する可能性があります。
経験的には、お客様が DOCSIS 標準に基づいたケーブル ネットワークでデータの配信を成功させるためには、さまざまな要因を考慮する必要があります。確実に成功させるための基本的なポイントは、お客様を適当な範囲内でドメインに戻ってくるようにすることです。アップストリーム ポート 1 つあたりの Homes Passed(HHP)を適切なレベルに留めておくことで、配信の成功率や維持費を大幅に改善したり、顧客満足度を向上させることができます。最適なパフォーマンスを実現するために、ファイバ ノード 1 つあたりの Home Passed を 2000 とし、アップストリーム ポート 1 つあたりの加入者のケーブル モデムを 200 台に抑えて、通過率を 10 % 以下にすることをお勧めします。これは配信のための非常に効果的なフレームワークです。
ユーザの最大数の詳細については、「CMTSごとの最大ユーザ数」を参照してください。
RF プラント内のノイズを確認するには、show interface cable slot/port upstream n コマンドを次のように使用します。修正不能なエラー、ノイズ、および微小反射のカウンタが高く、急速に増加している場合は、一般的には RF プラントにノイズが存在することを示唆していますCMTS で次のコマンドを実行すると、アップストリームの使用率を確認できます。
VXR# show interfaces cable 6/1 upstream 0 Cable6/1: Upstream 0 is up Received 22 broadcasts, 0 multicasts, 247822 unicasts 0 discards, 1 errors, 0 unknown protocol 247844 packets input, 1 uncorrectable 0 noise, 0 microreflections Total Modems On This Upstream Channel : 5 (5 active) Default MAC scheduler Queue[Rng Polls] 0/64, fifo queueing, 0 drops Queue[Cont Mslots] 0/52, FIFO queueing, 0 drops Queue[CIR Grants] 0/64, fair queueing, 0 drops Queue[BE Grants] 0/64, fair queueing, 0 drops Queue[Grant Shpr] 0/64, calendar queueing, 0 drops Reserved slot table currently has 0 CBR entries Req IEs 360815362, Req/Data IEs 0 Init Mtn IEs 3060187, Stn Mtn IEs 244636 Long Grant IEs 7, Short Grant IEs 1609 Avg upstream channel utilization : 0% Avg percent contention slots : 95% Avg percent initial ranging slots : 2% Avg percent minislots lost on late MAPs : 0% Total channel bw reserved 0 bps CIR admission control not enforced Admission requests rejected 0 Current minislot count : 40084 Flag: 0 Scheduled minislot count : 54974 Flag: 0 VXR#
Received broadcasts | このアップストリーム インターフェイスを介して受信したブロードキャスト パケット |
multicasts | このアップストリーム インターフェイスを介して受信したマルチキャスト パケット |
Unicasts | このインターフェイスを介して受信したユニキャスト パケット |
Discards | このインターフェイスで廃棄されたパケット |
Errors | パケットのアップストリーム伝送を妨げたエラーの総数 |
[不明(Unknown)] | Cisco uBR7246 にとって未知のプロトコルを使用して生成された受信パケット。ノイズ アップストリーム パケットは、回線ノイズによって破損します。 |
Packets input | アップストリーム インターフェイスを介して、エラーなしで受信されたパケット |
Corrected | アップストリーム インターフェイスを介して受信されたエラー パケットで、修正されたもの。 |
Uncorrectable | アップストリーム インターフェイスを介して受信されたエラー パケットで、修正されていないもの。 |
Noise | 回線ノイズによって破損したアップストリーム パケット |
マイクロリフレクション | 微小反射によって破損したアップストリーム パケット |
Total Modems On This Upstream Channel | 現在このアップストリーム チャネルを共有しているケーブル モデムの数。このフィールドは、このうちのアクティブなモデムの数も示しています。 |
Rng Polls | レンジングのポーリング数を示す MAC スケジューラ キュー |
Cont Mslots | MAPS 内の強制コンテンション要求スロットの数を示す MAC スケジューラ キュー |
CIR Grants | 保留中の CIR 式グラントの数を示す MAC スケジューラ キュー。 |
BE Grants | 保留中のベストエフォート型のグラントの数を示す MAC スケジューラ キュー。 |
Grant Shpr | トラフィック シェーピング用にバッファされたグラントの数を示す MAC スケジューラ キュー |
Reserved slot table | コマンドが発行された時に、MAO スケジューラは予約スロット テーブルに 2 つの CBR スロットを許可。 |
Req IEs | MAPS で送信された要求 IE の実行カウンタ |
Req/Data lEs | MAPS で送信された要求またはデータ IE のカウンタ |
Init Mtn IEs | 初期メンテナンス lE のカウンタ |
Stn Mtn IES | ステーション メンテナンス(レンジング ポール)lE の数 |
Long Grant lEs | ロング グラント lE の数 |
ShortGrmg lEs | ショート グラント lE の数 |
Avg upstream channel utilization | アップストリーム チャネルの帯域幅の平均使用率。100 % に近い場合は、T4 のタイムアウトを確認してください。 |
Avg percent contention slots | コンテンション メカニズムを使用して、モデムが帯域幅を要求するために使用できるスロットの平均的な使用可能率。同時に、ネットワーク上での使用されていない容量の合計も示します。 |
Avg percent initial ranging slots | 初期のレンジング状態でのスロットの平均的な割合 |
Avg percent minislots lost on late Maps | MAP 割り込みが遅すぎるために失われたスロットの平均的な割合 |
Total channel bw reserved | このアップストリーム チャネルを共有する帯域予約が必要なすべてのモデムによって予約された帯域幅の合計。これらのモデムに対するサービス クラスによって、保証されたアップストリーム レートとしてゼロ以外の値がいくつか指定されます。これらのモデムのいずれかがアップストリームに対して許可された場合、このフィールドの値は保証されたアップストリーム レート値だけ増分されます。 |
注: ノイズと微小反射のカウンタを確認してください。これらの値は非常に低くなければなりません、また通常のケーブル プラントでは、増加はゆっくりである必要があります。これらの値が高く、急速に増加しているのは、RF プラントの問題の典型的な兆候です。
注:修正不能エラーをチェックしてください。これらは、RF プラントでのノイズによる問題の典型的な兆候です。受信されたアップストリームの SNR レベルをチェックしてください。
注: これは最大でも 200 前後にとどめるようにしてください。
Cisco IOS ソフトウェア v12.1 より前のバージョンで、Cisco uBR7200 シリーズのケーブル インターフェイスのルーティング プロトコルを設定する場合は、変更内容を有効にするには、Cisco IOS ソフトウェアでインターフェイスをリセットする必要があることに注意してください。これにより、その特定ダウンストリームでのすべてのケーブル モデムが再初期化されてしまうので、ダウンストリームでのデータの送信に影響が及ぶ可能性があります。そのため、ケーブル インターフェイスで router rip などのインターフェイスの設定コマンドを使用するのは、影響を受ける加入者がきわめて少数である場合だけにとどめる必要があります。