スペクトル アナライザは、オシロスコープと同様に、シグナルの観察に使用する基本的なツールです。オシロスコープでは、時間領域に対する観察ウィンドウが表示されるのに対し、スペクトル アナライザでは、周波数領域に対するウィンドウが表示されます。スペクトル アナライザは、デジタル変調されたキャリアの振幅を測定するのに便利です。ただし、注意深く作業しないと容易に間違いを犯します。このドキュメントでは、デジタル変調されたキャリアの振幅を正確に測定するための手順を順を追って説明しています。
この文書を読むには、次の知識が必要です。
Data-over-Cable Service Interface Specifications(DOCSIS; データオーバーケーブル サービス インターフェイス仕様)プロトコル。
uBR シリーズ ルータ上の Cisco IOS(R) Command Line Interface(CLI; コマンドライン インターフェイス)。
スペクトル アナライザおよびケーブル環境でのスペクトル アナライザの使用と機能。
アップコンバータおよびケーブル ヘッドエンドでのアップコンバータの使用と機能。
無線周波数(RF)テクノロジー。たとえば、MHz、dBmV、dB、IF、QAM、および減衰など。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
HP 8591C ケーブル TV アナライザ
GI C6U アップコンバータ
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。一般的なアップコンバータの設定と操作および測定手順についての詳細は、アップコンバータとスペクトル アナライザに添付されている手順書を参照してください。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
このドキュメントで説明されている手順は、GI C6U と HP 8591C ケーブル TV アナライザを使用した例です。製造元やモデルが異なると、設定手順が異なる場合があります。また、表示されている周波数は例に過ぎず、お客様のインストール サイトで使用されている周波数は、これとは異なる場合が多いものと考えられます。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
6 MHz のダウンストリーム QAM キャリアは、農場でよく見られる干し草(ヘイ)を積み上げたものに似ているので、ヘイスタック(干し草の山)と呼ばれることがよくあります。ヘイスタックは、連続的な MPEG ビット ストリームです。次の図では、画面の中央付近にある 2 つのデジタル チャネル(QAM)に数個のアナログ チャネル(VSB 変調)が続いています。 この作業の目的は、QAM シグナルの振幅を測定するだけでなく、6 MHz キャリア内に含まれる合計出力も測定することです。これは、高さではなく、シグナル(ヘイスタック)内の面積を測定する必要があるのに似ています。
ヘイスタックの図を次に示します。
ダウンストリーム チャネルの出力を測定する際には、『設定ガイド』を参照してください。このガイドには、ダウンストリーム チャネルの出力を測定するための次の 2 つの方法が説明されています。
このドキュメントでは、両方の方式の手順を順を追って説明しています。
方法 1 では、HP8591C をスペクトル アナライザ モードで使用します。方法 2 では、HP8591C を CATV モードで使用します。
次の写真は、アップコンバータの外観を示しています。C6U には、同じシャーシに 2 つのアップコンバータが備わっているため、A サイドと B サイドがあります。慣例により、ケーブル業界では、一般にデジタル変調されたキャリアの周波数をキャリアの中心周波数で表します。C6U のデジタル表示には、それに相当する目視キャリア周波数が表示されており、目的とする中心周波数より 1.75 MHz 下に C6U を設定する必要があります。
次の写真は、アップコンバータの前面の外観を示しています。
次の写真は、アップコンバータの背面の外観を示しています。
アップコンバータを設定するには、次の手順を実行します。
使用する中心周波数を選択します。詳細は、『NTSC frequency tables』を参照してください。
GI アップコンバータで、A か B のどちらか正しいモジュールを選択します。
[↑] ボタンまたは [↓] ボタンを使用して、表示の左側に A か B が表示されるまでメニューをスクロールします。ENT キーを押してモジュールを選択します。選択したモジュールの IF LED が点滅します。
メイン メニューで、周波数および次に示す他の必要なパラメータを設定できます。必ず中心周波数より 1.75 Mhz 低いビデオ キャリア周波数を使用してください(他のアップコンバータを使用する場合には、その中心周波数、またはビデオ キャリア周波数のどちらかを使用することになります)。
INPUT メニューまで上下にスクロールして入力を選択します。ここは、IF 用に設定される必要があります。そうなっていない場合は、[→] キーを押して、入力オプションを点滅させます。[↑] キーまたは [↓] キーを使用して、IF を選択し、ENT キーを押して変更を受け入れます。
[↑] キーまたは [↓] キーを使用して、OPTIONS メニューまでスクロールします。メニューに入るには [→] を使用し、メニューから出るには [←] を使用します。メニューに入ります。
[↑] キーまたは [↓] キーを使用して、オプション メニューをスクロールし、次のオプションを確認します。
IDLE: OFF RF: ON MODE: FREQ IAGC: OFF IMG: (Manual if gain, no need to change this) MODE: DIG RF Power: Press the right arrow to adjust this. The up/down arrows will increment/decrement the power output.
ケーブルを接続するには、次の手順を実行します。
ケーブル ラインカードのダウンストリーム IF 出力を、10 dB の減衰器を使った上で、C6U アップコンバータの IF 入力に接続します。
C6C アップコンバータの前面にある –20 dB RF テスト ポートにスペクトル アナライザを接続します。出力を測定するときには、実際の出力は測定結果よりも 20 dB 高くなります。(中断したりノイズが乗ったりすることなく、シグナルをモニタリングできるので、CATV 業界では –20 dB のテストポートが一般的に使用されています。)
スペクトル アナライザ モードでチャネル出力オプションを使用して、ダウンストリーム RF シグナルを測定するには、次の手順を実行します。
C6U アップコンバータを 625.25 MHz に設定します。
8:1 のスプリッタを使用して、アップコンバータからの RF 出力をスペクトル アナライザに接続します。
HP8591C スペクトル アナライザの電源をオンにします。アナライザには、次のように表示されます。
一番上のソフト キーを押して、SPECTRUM ANALYZER モードを選択します。
周波数を 627 MHz(ビデオ チャネル 1 の中心周波数、C6U に設定されているビデオ キャリアよりも 1.75 MHz 高い)に設定します。 次の指示を実行します。
FREQUENCY キーを押します。
数字のキーパッドで 6 2 7 と入力します。
数字のキーパッドの右側にある MHz ボタンを押します。
スパンを 10 MHz に設定します。次の指示を実行します。
SPAN ボタンを押します。
数字のキーパッドで 1 0 と入力します。
数字のキーパッドの右側にある MHz ボタンを押します。次のように表示されます。
表示振幅を変更します。次の指示を実行します。
AMPLITUDE ボタンを押します。
下のノブを回し(増やすには反時計方向、減らすには時計方向)、表示の上から 2 番目の線にヘイスタックの上部を合わせます。次のように表示されます。
ビデオ アベレージングを使用してチャネル出力を測定します。
Meas/User キー(Instrument State Key セクション)を押します。
ソフト キーを次の順序で押します。POWER MENU -> SETUP -> VID AVG(下線の引かれたオプションが OFF から ON に変わります)-> CHANNEL BANDWIDTH。
数字のキーパッドで 6 を入力します。
数字のキーパッドの右側にある MHz ボタンを押します。
Previous Menu のソフト キーを押します。
CHANNEL POWER のソフト キーを押します。次のように表示されます。
注:電源レベル–2.46 dBmVは、ディスプレイの左上に表示され、上のポインタが表示されます。ビデオ アベレージング機能を使用している際には、出力レベルが約 2.5 dB 低くなっていることを念頭においてください。ビデオ アベレージングを OFF にすると、出力は -2.46 dBmV より約 2.5 dB 高くなります。すべての出力測定(スペクトル アナライザと CATV モード)のビデオ アベレージングを OFF にしてください。前述のように、ビデオ アベレージングがオンの時とオフの時の測定値には、約 2.5 dB の差があります。正しい出力レベルの結果が得られるのは、ビデオ アベレージングがオフの時です。
ダウンストリーム RF シグナルを CATV モードで測定するには、次の手順に従ってください。
ケーブル インターフェイス カードのダウンストリーム出力をアップコンバータの入力コネクタに接続します。
スペクトラム アナライザをアップコンバータの RF 出力に接続します。
アップコンバータの出力レベルを製造元の推奨する設定に合せます。一般的な出力振幅は、+50 ~ +58 dBmV の範囲です。ただし、DOCSIS では +61 dBmV の高レベルが指定されます。
アップコンバータの周波数を 439.25 に設定します。
装置の左下の角にある LINE ボタンを押して、アナライザの電源をオンにします。
CATV Analyzer ソフト キー ボタンを選択します。このボタンは、画面の右側の 3 番目のソフト キー ボタンです。
channel measure ソフト キーを選択します。このボタンは、画面の右側の 2 番目のソフト キーです。次のように表示されます。
チャネル60を選択します。6、0、Enterを押します。RF の中心周波数は 441 MHz(チャネル 60)なので、GI アップコンバータには 439.25 MHz と表示されます。ヘイスタックが次のように表示されます。
一番下の main ソフト キーを 2 回押すと、Main 3 of 3 と表示されます。
右側の 5 番目のボタンに割り当てられている Digital Power ソフト キーを押します。数字が表示される明るい緑色の正方形が下部に表示されます。次のように表示されます。
下部にある 59.8 dBmV という数字に注目してください。これが、出力レベルを示しています。
注:スペクラムアナライザモードで見られるように、ビデオアベレージングを使用する場合、電力レベルは約2.5 dBが59.8 dBmVを超えます。すべての出力測定(スペクトル アナライザと CATV モード)のビデオ アベレージングを OFF にしてください。前述のように、ビデオ アベレージングがオンの時とオフの時の測定値には、約 2.5 dB の差があります。正しい出力レベルの結果が得られるのは、ビデオ アベレージングがオフの時です。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
04-Oct-2005 |
初版 |