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日本語による情報は、英語による原文の非公式な翻訳であり、英語原文との間で内容の齟齬がある場合には、英語原文が優先します。
概要
Cisco IOS XR ソフトウェアのマルチキャスト トレースルート バージョン 2(Mtrace2)機能に脆弱性があり、認証されていないリモートの攻撃者が、影響を受けるデバイスの UDP パケットメモリを使い果たす可能性があります。
この脆弱性は、Mtrace2 コードがパケットメモリを適切に処理しないために発生します。攻撃者は、細工を施したパケットを該当デバイスに送信することで、この脆弱性をエクスプロイトできる可能性があります。エクスプロイトに成功すると、攻撃者は着信 UDP パケットメモリを使い果たす可能性があります。影響を受けるデバイスは、より上位の UDP ベースのプロトコルパケットを処理できなくなり、サービス妨害(DoS)状態を引き起こす可能性があります。
注:この脆弱性は、IPv4 または IPv6 のどちらでもエクスプロイトされる可能性があります。
シスコはこの脆弱性に対処するソフトウェアアップデートをリリースしています。この脆弱性に対処する回避策はありません。
このアドバイザリは、次のリンクより確認できます。
https://sec.cloudapps.cisco.com/security/center/content/CiscoSecurityAdvisory/cisco-sa-pak-mem-exhst-3ke9FeFy
このアドバイザリは、Cisco IOS XR ソフトウェア セキュリティ アドバイザリ バンドル公開の 2024 年 9 月のリリースの一部です。アドバイザリとリンクの一覧については、Cisco Event Response: September 2024 Semiannual Cisco IOS XR Software Security Advisory Bundled Publication を参照してください。
該当製品
脆弱性のある製品
この脆弱性は、Cisco IOS XR ソフトウェアの脆弱なリリースを実行し、Mtrace2 パケットを処理しているシスコデバイスに影響を及ぼします。
リリース 7.7.1 より前の Cisco IOS XR ソフトウェアリリースは影響を受けません。
Cisco IOS XR ソフトウェアリリース 7.7.1 ~ 7.11.2 は、マルチキャスト RPM Packet Manager(RPM)がデバイスにインストールされてアクティブになっている場合、マルチキャスト設定に関係なく影響を受けます。
Cisco IOS XR ソフトウェアリリース 24.1.1 以降は、マルチキャスト RPM がインストールされてアクティブになっており、デバイスでマルチキャストが設定されている場合に影響を受けます。マルチキャストが設定されていない場合、デバイスは脆弱ではありません。
脆弱性が存在する Cisco ソフトウェアリリースについては、このアドバイザリの「修正済みソフトウェア」セクションを参照してください。
マルチキャスト RPM がアクティブかどうかの確認
マルチキャスト RPM がアクティブかどうかを確認するには、show install active summary | include mcast コマンドを使用します。このコマンドで空の出力が返された場合、マルチキャスト RPM はアクティブではありません。
Mtrace2 処理が有効になっているかどうかの確認
デバイスがMtrace2パケットを処理しているかどうかを確認するには、show lpts pifib hardware entry brief location <LC> | include 33433 コマンドおよび show lpts pifib entry brief | include 33433 コマンドを使用して、Mtrace2 ポート用に LPTS エントリが作成されているかどうかを確認します。両方のコマンドが空の出力を返す場合、デバイスは Mtrace2 パケットを処理していません。
次の例では、デバイスが LPTS エントリを作成し、Mtrace2 パケットを処理します。
RP/0/RP0/CPU0:Router#show lpts pifib hardware entry brief location 0/0/CPU0 | include 33433 | |||||||||||||
IPV4 any | 任意 | 任意 | 0 | 17 | 33433 | 0 | 0 | UDP-listen | Dlvr RP0 | LOW | 0 | 0 | 0-default |
IPV4 any | 任意 | 任意 | 0 | 17 | 33433 | 0 | 1 | UDP-listen | Dlvr RP0 | LOW | 0 | 0 | 0-default |
IPV4 any | 任意 | 任意 | 0 | 17 | 33433 | 0 | 2 | UDP-listen | Dlvr RP0 | LOW | 0 | 0 | 0-default |
IPV4 any | 任意 | 任意 | 0 | 17 | 33433 | 0 | 0 | UDP-listen | Dlvr RP0 | LOW | 0 | 0 | 0-default |
IPV4 any | 任意 | 任意 | 0 | 17 | 33433 | 0 | 1 | UDP-listen | Dlvr RP0 | LOW | 0 | 0 | 0-default |
IPV4 any | 任意 | 任意 | 0 | 17 | 33433 | 0 | 2 | UDP-listen | Dlvr RP0 | LOW | 0 | 0 | 0-default |
RP/0/RP0/CPU0:Router# |
RP/0/RP0/CPU0:Router# show lpts pifib entry brief | include 33433
IPv4 default UDP any 0/RP0/CPU0 any,33433 any
IPv6 default UDP any 0/RP0/CPU0 any,33433 any
注:Cisco IOS XR ソフトウェア上の Mtrace2 は、標準 RFC ポートの 33435 ではなく、非標準ポートの 33433 を使用します。
脆弱性を含んでいないことが確認された製品
このアドバイザリの脆弱性のある製品セクションに記載されている製品のみが、この脆弱性の影響を受けることが分かっています。
シスコは、この脆弱性が以下のシスコ製品には影響を与えないことを確認しました。
- IOS ソフトウェア
- IOS XE ソフトウェア
- NX-OS ソフトウェア
詳細
次の例に示すように、show packet memory コマンドを使用して、パケットメモリに現在保持されているパケット数を確認できます。
RP/0/RP0/CPU0:#show packet-memory summary
ProcId JobId Count Percentage Process
4916 328 9 0.18% tcp
4512 1241 1125 22.46% igmp
4527 1246 3875 77.36% mld
通常動作中は、パケット数は少なくなります。mld プロセスまたは igmp プロセスのパケット数が、そのコマンドを何度か実行する間に確実に増加するか、一度も減少しない場合、デバイスはこの脆弱性の影響を受けます。
回避策
この脆弱性に対処する回避策はありません。ただし、この脆弱性に対しては緩和策があります。
Cisco IOS XR リリース 7.7 ~ 7.11 で RPM を非アクティブ化する
デバイスにマルチキャスト設定が必要ない場合は、マルチキャスト RPM を非アクティブにして削除します。これにより、脆弱な UDP ポートが閉じられます。
この例では、マルチキャストパッケージ asr9k-mcast-x64-2.0.0.0-r7921.x86_64.rpm が非アクティブ化されます。
Router# show install active summary | include mcast
asr9k-mcast-x64-2.0.0.0-r7921.x86_64.rpm
Router# install deactivate asr9k-mcast-x64-2.0.0.0-r7921.x86_64.rpm synchronous
Router# install commit
インフラストラクチャ アクセス コントロール リスト(iACL)を使用してポート 33433 をブロックする
インフラストラクチャ デバイスを保護し、直接的なインフラストラクチャ攻撃のリスク、影響、および効果を最小限に抑えるために、管理者は、iACL を導入してインフラストラクチャ機器に送信されるトラフィックにポリシーを適用することが推奨されます。管理者は、既存のセキュリティポリシーと設定に従って、インフラストラクチャ デバイスに送信された承認済みトラフィックのみを明示的に許可することで、iACL を構築できます。インフラストラクチャ デバイスの保護を最大にするには、IP アドレスが設定されているすべてのインターフェイスの入力方向で配備済みの iACL を適用する必要があります。攻撃が信頼できるソースアドレスから発生した場合、iACL の緩和策ではこの脆弱性を完全に防御することはできません。
iACL ポリシーは、影響を受けるデバイスの UDP ポート 33433 に送信される不正な Mtrace2 通信パケットを拒否します。次の例では、192.168.60.0/24 が、影響を受けるデバイスによって使用される IP アドレス空間です。許可されていないトラフィックをすべて拒否する前に、ルーティングと管理アクセスに必要なトラフィックを許可するように注意する必要があります。可能な限り、インフラストラクチャ アドレス空間は、ユーザーセグメントやサービスセグメントのアドレス空間とは区別する必要があります。このようにアドレスを設定することで、iACL の構築と配備が容易になります。
注:Mtrace2 は IPv6 もサポートしているため、デバイスに IPv6 が設定されている場合は、対応する IPv6 の iACL が必要です。
注:シスコは Mtrace2 に UDP ポート 33435 ではなく 33433 を使用します。
ipv4 access-list Infrastructure-ACL-Policy
!
!-- The following vulnerability-specific access control entries
!-- (ACEs) can drop Mtrace version 2 communication packets
! deny udp any 192.168.60.0 0.0.0.255 eq 33433
!
!-- Explicit deny ACE for traffic sent to addresses configured
!-- within the infrastructure address space
! deny ip any 192.168.60.0 0.0.0.255
!
!-- Permit or deny all other Layer 3 and Layer 4 traffic in
!-- accordance with existing security policies and configurations
!
!-- Apply iACL to interfaces in the ingress direction
!
interface GigabitEthernet0/0 ipv4 access-group Infrastructure-ACL-Policy in
iACL の詳細については、『Protecting Your Core: Infrastructure Protection Access Control Lists』を参照してください。
IGMP および MLD プロセスを再起動する
デバイスがメモリ不足になる前に、Internet Group Management Protocol(IGMP)プロセスまたはマルチキャストリスナー検出(MLD)プロセス、あるいは両方のプロセスを再起動することで、他のプロセスが影響を受けないようにすることができます。(詳細については、「詳細」の項を参照してください。) これらのプロセスを再起動しても、デバイスが UDP メモリをリークするのを防ぐことはできません。
process restart mld または process restart igmp コマンドを使用して、それぞれのプロセスを再起動します。
これらの緩和策は導入されており、テスト環境では実証済みですが、お客様は、ご使用の環境および使用条件において適用性と有効性を判断する必要があります。また、導入されている回避策または緩和策が、お客様固有の導入シナリオおよび制限に基づいて、ネットワークの機能やパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があることに注意してください。回避策や緩和策は、ご使用の環境への適用性と環境への影響を評価した後で導入してください。
修正済みソフトウェア
シスコはこのアドバイザリに記載された脆弱性に対処する無償のソフトウェアアップデートをリリースしています。通常のソフトウェアアップデートが含まれるサービス契約をお持ちのお客様は、通常のアップデートチャネルからセキュリティ修正を取得する必要があります。
お客様がインストールしたりサポートを受けたりできるのは、ライセンスをご購入いただいたソフトウェア バージョンとフィーチャ セットに対してのみとなります。そのようなソフトウェアアップグレードをインストール、ダウンロード、アクセスまたはその他の方法で使用した場合、お客様は以下のリンクに記載されたシスコのソフトウェアライセンスの条項に従うことに同意したことになります。
https://www.cisco.com/c/en/us/products/end-user-license-agreement.html
また、お客様がソフトウェアをダウンロードできるのは、ソフトウェアの有効なライセンスをシスコから直接、あるいはシスコ認定リセラーやパートナーから取得している場合に限ります。通常、これは以前購入したソフトウェアのメンテナンス アップグレードです。無償のセキュリティ ソフトウェア アップデートによって、お客様に新しいソフトウェア ライセンス、追加ソフトウェア フィーチャ セット、またはメジャー リビジョン アップグレードに対する権限が付与されることはありません。
Cisco.com の シスコサポート & ダウンロードページには、ライセンスとダウンロードに関する情報が記載されています。このページには、[マイデバイス(My Devices)] ツールを使用するお客様のカスタマーデバイスサポート範囲も表示できます。
ソフトウェアのアップグレードを検討する際には、シスコ セキュリティ アドバイザリ ページで入手できるシスコ製品のアドバイザリを定期的に参照して、侵害を受ける可能性とアップグレード ソリューション一式を確認してください。
いずれの場合も、アップグレードするデバイスに十分なメモリがあること、および現在のハードウェアとソフトウェアの構成が新規リリースで引き続き正しくサポートされていることを十分に確認してください。不明な点については、Cisco Technical Assistance Center(TAC)もしくは契約しているメンテナンスプロバイダーにお問い合わせください。
サービス契約をご利用でないお客様
シスコから直接購入したがシスコのサービス契約をご利用いただいていない場合、また、サードパーティベンダーから購入したが修正済みソフトウェアを購入先から入手できない場合は、Cisco TAC(https://www.cisco.com/c/ja_jp/support/web/tsd-cisco-worldwide-contacts.html)に連絡してアップグレードを入手してください。
無償アップグレードの対象製品であることを証明していただくために、製品のシリアル番号と、本アドバイザリの URL をご用意ください。
修正済みリリース
次の表では、左の列にシスコ ソフトウェア リリースまたはトレインを記載しています。右側の列は、リリース(トレイン)がこのアドバイザリに記載されている脆弱性の影響を受けるかどうか、およびこの脆弱性に対する修正を含む最初のリリースを示しています。
Cisco IOS XR ソフトウェア リリース | First Fixed Release(修正された最初のリリース) |
---|---|
7.6 以前 | 影響なし。 |
7.7 ~ 7.10 | 修正済みリリースに移行。 |
7.11 | 7.11.21(2024 年 10 月) |
24.1 | 修正済みリリースに移行。 |
24.2 | 24.2.2(2024 年 9 月) |
24.3.1 以降 | 影響なし。 |
シスコはこの脆弱性に対処する次の umbrella SMU もリリースしています。次の表に記載されていないリリース向けの SMU を必要とするお客様は、サポート部門にご連絡ください。
Cisco IOS XR ソフトウェア リリース | Platform | SMU 名 |
---|---|---|
7.7.2 | IOSXRWBD | iosxrwbd-7.7.2.CSCwm05729 |
7.11.2 | IOSXRWBD NCS5500 |
iosxrwbd-7.11.2.CSCwm05729 ncs5500-7.11.2.CSCwm05729 |
24.1.2 | 8000 シリーズ | 8000-24.1.2.CSCwm05729 |
Product Security Incident Response Team(PSIRT; プロダクト セキュリティ インシデント レスポンス チーム)は、このアドバイザリに記載されている該当するリリース情報と修正されたリリース情報のみを検証します。
不正利用事例と公式発表
Cisco PSIRT では、本アドバイザリに記載されている脆弱性の不正利用事例やその公表は確認しておりません。
出典
この脆弱性は Cisco TAC サポートケースの解決中に発見されました。
URL
改訂履歴
バージョン | 説明 | セクション | ステータス | 日付 |
---|---|---|---|---|
1.0 | 初回公開リリース | — | Final | 2024 年 9 月 11 日 |
利用規約
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