モデム接続のトラブルシューティングを行うときには、クライアント モデム、電話会社のネットワーク、ネットワーク アクセス サーバ(NAS)という3 つの主な領域を評価することが重要です。 接続のいずれかの側にモデムがあり、電話会社のネットワークが適切に機能していることを確認する必要があります。これは、この 2 つに関連する問題がモデム接続に影響を及ぼす可能性があるためです。このドキュメントでは、クライアント モデムに関連する問題についての調整とトラブルシューティングの方法について説明します。
このドキュメントの読者は次のトピックについての専門知識を有している必要があります。
NAS および電話会社関連の問題のトラブルシューティング手順。
NAS および電話会社関連のトラブルシューティング手順については、以下のドキュメントを参照してください。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
接続のサーバ側の確認が完了したら、クライアントのモデムまたは接続で問題が発生している可能性があるかどうかを調べてください。多くの場合、特定の電話回線と特定のクライアント モデムがデジタル モデムに接続されている場合に、この電話回線とモデムに問題があることがあります。問題には、トレインアップ失敗、またはトレインアップは成功したがスループットが低い場合や接続解除が早すぎる場合などがあります。
電話回線が機能しており、サーバ モデムが定常状態であることを前提として、クライアント モデムの問題を修正できます。修正するには、クライアント モデムのコードを改善するか、またはクライアント モデムを再設定する必要があります。
まず、クライアントが使用するモデムの種類を判別します。ベンダー、ハードウェア モデル、ソフトウェア(ファームウェア)バージョン、および採用されているモデム チップセットを確認します。モデム ベンダーの数は数百にのぼりますが、チップセットは約 12 種類程度です。
詳細については『クライアント モデム ファームウェアの概要』を参照してください。
モデム ベンダーとハードウェア モデルの詳細は、モデム本体とモデムのパッケージに必ず記載されています。米国で販売されているモデムの場合、FCC ID および Part 68 登録番号がモデムのパッケージに記載されています。詳細については、FCC ID Search Help Page を参照してください。
採用されているチップセットを確認するには、ATI コマンドを使用します。HyperTerminal を使用してモデムの COM ポートに接続し、ATI0 コマンドから ATI11 コマンドまでを実行します。一部のコマンドでエラーが発生することがありますが、通常これは根拠のある推測のための十分な情報を提供します。
モデム タイプを確認する際に役立つリンクを以下に示します。
モデム コードをアップグレードする場合は、チップセットの製造元ではなくモデム ベンダーにお問い合わせください。モデム コードのアップグレードについては、以下のモデム製造元の Web サイトを参照してください。
www.56k.com (関連情報については、Modem Makers と Firmware Updates をクリックしてください)。
56Kモデムのトラブルシューティング (インタラクティブモデムトラブルシュータを含む )
LT winmodem(Mars/Apollo コントローラなしのモデム)の場合は、ベンダーではなく共通コードを使用してください。
警告:クライアントのモデムコードをアップグレードしても、問題が解決する保証はありません。場合によっては、モデムのアップグレードによってモデムが使用できなくなることがあります。
クライアント モデムにパフォーマンスの問題がある場合は、低速な変調を使用するか、または選択されている変調の範囲で低速なレートを使用するようにモデムを設定できます。
以下に、いくつかの例を示します。
問題 1:クライアントが V.90、49333 で接続しているが、接続解除が早すぎる(2 分経過後)という問題が発生している。
解決策 1:V.90 受信速度を低く(例:44000)制限するようにクライアントを設定します。 クライアントのパフォーマンスがまだ不安定である場合は、V.34 以下を使用するようにクライアントを設定します。
問題 2:クライアントが V.90 でトレインアップを試行するが、トレインアップに失敗する。
解決策 2:K56Flex、V.34 以下を使用するようにクライアントを設定します。それでもトレインアップが失敗する場合は、最大V.34レート21600で接続するようにクライアントを設定します。それでも失敗する場合は、V.32bis以下のみを使用するようにクライアントを設定します。この方法でも失敗する場合は、V.22bis 以下だけを使用するようにクライアントを設定します。この方法でも失敗する場合は、新しいモデムと電話回線を入手してください。
モデム ベンダーはモデムのドキュメントを提供する必要があります。入手できない場合は、詳細について以下のリンクを参照してください。
クライアント モデムを再設定する場合は、Windows Dial Up Networking(DUN)ではなく HyperTerminal(あるいはその他のターミナル プログラム)を使用してください。 これは、DUN では通常、発信コールの詳細が表示されないためです。
必要に応じて、端末ダイヤルインを許可するように NAS 回線を一時的に再設定します。つまり、非同期インターフェイスで async mode dedicated が設定されている場合は、async mode interactive に変更し、回線に autoselect ppp を設定してください。認証、認可、およびアカウンティング(AAA)を使用する場合は、インタラクティブ ログインを許可するように AAA サーバを調整する必要があることがあります。
クライアント PC でターミナル プログラムを開始します。HyperTerminal を使用する場合は新規接続を作成します。名前とアイコンを作成します。[Connect To] パネルで [Connect using COM port] を選択します。
この COM ポートは、モデムが接続されている COM ポートです。[COM Properties] パネルで、[Bits per second] を [115200]、[Data bits] を [8]、[parity] を [None]、[Stop bits] を [1]、[Flow Control] を [Hardware] に設定します(詳細については、「HyperTerminal セッションの例」セクションを参照してください)。 AT コマンドを入力し、OK 応答が表示されることを確認します。応答が表示されない場合は、ケーブルに問題があるか、モデムが古いか、または COM プロパティで速度を低くする必要があります。
モデムを出荷時の初期状態にリセットします(使用可能であれば、ハードウェア フロー制御テンプレートを使用してください)。 通常はAT&FまたはAT&F1です。工場出荷時のデフォルト設定でこれらの設定を使用しない場合は、モデムを設定して、接続時にデータ通信機器(DCE)レート情報を提供します(通常TW2)。
パフォーマンス ベースラインを設定するため、ATDTnnnnnnn コマンドを使用して NAS に手動でダイヤルインします。例については、『モデム パフォーマンスの検証』の「AS5x00 ケース スタディ」を参照してください。
HyperTerminal を COM ポート経由でモデムに接続するセッションの例を以下に示します。このセクションで説明する手順は、ほとんどの Windows システムに適用されます。
[Start] メニューで、[Programs] > [Accessories] をポイントし、[HyperTerminal] を選択します。
注:ハイパーターミナルがメニューに表示されない場合は、Windows CD-ROMからインストールする必要があります。
Hypertrm.exe ファイルをダブルクリックします。[Connection Description] ダイアログボックスが表示されます(図 1 を参照)。
図1 - [Connection Description]ダイアログボックス
適切な名前とアイコンを選択します。
[OK] をクリックします。
[Phone Number] ダイアログボックスが表示されます(図 2 を参照)。 HyperTerminal は発信コールを想定し、電話番号の入力を求めます。ドロップダウン リストから使用する COM ポートを選択します。
図2 - [Phone Number]ダイアログボックス
選択すると、[Port Properties] ダイアログボックスが表示されます。
COM ポートの速度を 115200 ビット/秒に設定します。これは、モデムがデータ端末機器(DTE)リンクを介して通信できる最高速度であるためです(図 3 を参照)。
図3 - COMポートを115200ビット/秒に設定
注:この速度は、モデムが相互に通信するために使用する接続速度ではありません。これは、PC とモデムを接続する非同期モデム ケーブルの速度です。
[OK] をクリックします。
ターミナル ウィンドウが表示されます。
次の例は、3 ~ 11の番号が付けられたATIコマンドを使用するセッションの例です。この例には、入力された内容と、シスコのラボでモデムからの応答が含まれています。
at OK ati3 U.S. Robotics 56K FAX V4.6.6 OK ati4 US Robotics 56K FAX Settings... B0 E1 F1 M1 Q0 V1 X1 Y0 BAUD=38400 PARITY=N WORDLEN=8 DIAL=TONE ON HOOK CID=0 &A1 &B1 &C1 &D2 &G0 &H0 &I0 &K1 &M4 &N0 &P0 &R1 &S0 &T5 &U0 &Y1 S00=001 S01=000 S02=043 S03=013 S04=010 S05=008 S06=002 S07=060 S08=002 S09=006 S10=014 S11=070 S12=050 S13=000 S15=000 S16=000 S18=000 S19=000 S21=010 S22=017 S23=019 S25=005 S27=000 S28=008 S29=020 S30=000 S31=128 S32=002 S33=000 S34=000 S35=000 S36=014 S38=000 S39=000 S41=000 S42=000 LAST DIALED #: T95558653 OK ati5 US Robotics 56K FAX NVRAM Settings... Template Y0 DIAL=TONE B0 F1 M1 X1 BAUD=38400 PARITY=N WORDLEN=8 &A1 &B1 &G0 &H0 &I0 &K1 &M4 &N0 &P0 &R1 &S0 &T5 &U0 &Y1 S00=001 S02=043 S03=013 S04=010 S05=008 S06=002 S07=060 S08=002 S09=006 S10=014 S11=070 S12=050 S13=000 S15=000 S19=000 S21=010 S22=017 S23=019 S25=005 S27=000 S28=008 S29=020 S30=000 S31=128 S32=002 S33=000 S34=000 S35=000 S36=014 S38=000 S39=000 S41=000 S42=000 Strike a key when ready . . . Template Y1 DIAL=TONE B0 F1 M1 X4 BAUD=115200 PARITY=N WORDLEN=8 &A3 &B1 &G0 &H2 &I2 &K1 &M4 &N0 &P0 &R1 &S0 &T5 &U0 &Y1 S00=001 S02=043 S03=013 S04=010 S05=008 S06=002 S07=060 S08=002 S09=006 S10=014 S11=070 S12=050 S13=000 S15=000 S19=000 S21=010 S22=017 S23=019 S25=005 S27=000 S28=008 S29=020 S30=000 S31=128 S32=002 S33=000 S34=000 S35=00 S36=014 S38=000 S39=000 S41=000 S42=000 STORED PHONE #0: #1: #2: #3: OK ati6 US Robotics 56K FAX Link Diagnostics... Chars sent 0 Chars Received 80 Chars lost 0 Octets sent 0 Octets Received 82 Blocks sent 0 Blocks Received 2 Blocks resent 0 Retrains Requested 0 Retrains Granted 0 Line Reversals 0 Blers 0 Link Timeouts 0 Link Naks 0 Data Compression V42BIS 2048/32 Equalization Long Fallback Enabled Protocol LAPM Speed 24000/26400 Last Call 00:00:06 Disconnect Reason is DTR dropped OK ati7 Configuration Profile... Product type US/Canada External Product ID: 00178600 Options V32bis,V.34+,x2,V.90 Fax Options Class 1/Class 2.0 Line Options Caller ID, Distinctive Ring Clock Freq 92.0Mhz Eprom 256k Ram 32k EPROM date 5/26/98 DSP date 5/26/98 EPROM rev 4.6.6 DSP rev 4.6.6 OK ati8 OK ati9 (1.0USR2040\\Modem\PNPC107\US Robotics 56K FAX EXT)FF OK ati10 ERROR ati11 US Robotics 56K FAX Link Diagnostics ... Modulation V.34 Carrier Freq (Hz) 1959/1959 Symbol Rate 3429/3429 Trellis Code 64S-4D/64S-4D Nonlinear Encoding ON/ON Precoding ON/ON Shaping ON/ON Preemphasis (-dB) 8/6 Recv/Xmit Level (-dBm) 32/10 Near Echo Loss (dB) 32 Far Echo Loss (dB) 49 Carrier Offset (Hz) 294 Round Trip Delay (msec) 7 Timing Offset (ppm) -1440 SNR (dB) 32 Speed Shifts Up/Down 0/0 Status : OK
接続からシスコのテスト システムへの出力を以下に示します。最初にスピーカーをオンにし、DCE レート情報レポートを有効にします。
atw2m1 ERROR
US Robotics のモデムでは w2 は必要ありません。
atm1 OK
次に、スタティック ラボにダイヤルインします。
at OK atdt914085703932 NO CARRIER
標準接続が失敗したように見えます。この場合、回線に雑音があるため、モデムを出荷時の初期状態(&f)に設定し、スピーカーをオンにし(m1)、at&fm1&n14 コマンドを使用してモデム速度を 28.8(&n14)に制限します。
ダイヤルインを再試行します。接続が正常に完了すると、次のように出力されます。
atdt914085703932 CONNECT 28800/ARQ Welcome! Please login with username cisco, password cisco, and type the appropriate commands for your test: ppp - to start ppp slip - to start slip arap - to start arap access-3 line 29 MICA V.90 modems User Access Verification Username: cisco Password: access-3>
新しい設定で接続が動作しているものと判別しました。次に、モデムのダイヤルアップ ネットワーク接続の設定を更新し、変更内容を反映する必要があります。
モデムの問題のトラブルシューティングを支援するため、modemlog(windows\modemlog.txt)を作成するように Windows を設定します。 この設定は、DUN や HyperTerminal などの Telephone Application Programmable Interface(TAPI)対応プログラムでのみ機能します。
次に示す手順に従い、モデム ロギングを設定します。Windows 95/98 システムの場合はカスタマー パラメータを設定します。
[Start] メニューで [Control Panel] をポイントし、[Modems] を選択します。
[Modems Properties] ダイアログボックスが表示されます。
モデムを選択し、[Properties] ボタンをクリックします(図 4 を参照)。
図4 – モデムの選択
[Modem type Properties] ダイアログボックスが表示されます。
[Connection] タブを選択し、[Advanced] ボタンをクリックします(図 5 を参照)。
図5 - [Specify Advanced Connection Settings]
[Advanced Connection Settings] ダイアログボックスが表示されます。
[Record a log file] チェックボックスにチェックマークを付け、モデム ロギング機能を有効にします(図 6 を参照)。
モデム接続に必要なその他の設定がある場合は、[Extra settings] テキスト ボックスにそのコマンドを入力します。「HyperTerminal セッションの例」セクションの例に基づき、&n14 コマンドが追加されています。
図6:追加設定の指定とモデムロギングの有効化
[OK] をクリックします。
Windows NT 4.0 でのモデム ロギングとカスタム設定の手順は、上記の手順に似ています。ファイル名は modemlog_modemname.txt です。ファイルはシステムのルート ディレクトリにあります(特に設定していない限り、通常これは winnt ディレクトリです)。 Windows NT 3.x では Registry Editor を変更してモデム ロギングと設定を有効にします。
PC で接続解除が早すぎる問題を診断する場合、リンク経由で PPP レベルで送信される情報のタイプを把握しておくと便利です。Windows 95/98 では、PPP アダプタの使用時には常に PPP ログ ファイル(/windows/ppplog.txt)を作成できます。
[Start] メニューで [Control Panel] をポイントし、[Network] を選択します。
[Network] ダイアログボックスが表示されます。
ネットワーク コンポーネントのリストから [Dial-Up Adapter] を選択し、[Properties] ボタンをクリックします(図 7 を参照)。
図7 - [Network]ダイアログボックス
[Dial-Up Adapter Properties] ダイアログボックスが表示されます。
[Advanced] タブを選択します。[Property] リストから [Record a log file] を選択します。[Value] ドロップダウン リストから [Yes] を選択します(図 8 を参照)。
図8 – ダイヤルアップアダプタのPPPロギングの有効化
[OK] をクリックして操作を完了します。
システムをリブートします。
Windows NT では、レジストリを編集して PPP ロギングをオンにします。