このドキュメントでは、基本的な ISDN の設定例について説明します。また、一部の ISDN 設定コマンドについても説明します。これらのコマンドの詳細情報については、『ルータ製品コマンド リファレンス』を参照してください。
このドキュメントの読者は、IP ルーティングに関する基礎知識が必要です。詳細については、「新規ユーザの IP アドレス指定とサブネット設定」を参照してください。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメントの表記法の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
このドキュメントの例では Cisco 3103 (1E/1BRI)を使用ています。Cisco 3103 は、Dial-on-Demand Routing(DDR; ダイヤルオンデマンド ルーティング)リンクを介して IP をルーティングするように設定されています。
スイッチ タイプとは、メーカーやモデルではなく、スイッチ上で実行される ISDN ソフトウェアのことです。
このドキュメントでは、スタティック ルーティングが使用され、関連する必要なコマンドだけが含まれています。どのルータでも接続を開始でき、すべての IP パケットが「対象」となります。つまりルータでは、ダイヤルと、DDR アイドル タイマーのリセットを行えます。ルーティングがアップデートされると、リンクが無制限にアップされ続け、使用料金の請求が発生するため、この例では、ルーティング プロトコルは設定されていません。この設定は、使用しているプロトコルが IP だけであるホーム オフィスやリモート オフィスの接続に役立ちます。
このセクションでは、このドキュメントで説明する機能を設定するために必要な情報を提供しています。
注:この文書で使用されているコマンドの詳細を調べるには、「Command Lookup ツール」を使用してください(登録ユーザのみ)。
このドキュメントでは、次のネットワーク セットアップを使用します。
このドキュメントでは、次の構成を使用します。
リモート ルータ
メイン ルータ
リモート ルータ |
---|
hostname branch1 ! username main password secret1 ! isdn switch-type basic-dms100 ! interface Ethernet 0 ip address 131.108.64.190 255.255.255.0 ! interface BRI 0 encapsulation PPP ip address 131.108.157.1 255.255.255.0 isdn spid1 415988488501 9884885 isdn spid2 415988488602 9884886 ppp authentication chap dialer idle-timeout 300 dialer map IP 131.108.157.2 name main 4883 dialer-group 1 ! ip route 131.108.0.0 255.255.0.0 131.108.157.2 ! ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 131.108.157.2 ! dialer-list 1 protocol ip permit |
メイン ルータ |
---|
hostname main ! username branch1 password secret1 username branch2 password secret2 ! isdn switch-type basic-dms100 ! interface Ethernet 0 ip address 131.108.38.1 255.255.255.0 ! interface BRI 0 encapsulation PPP ip address 131.108.157.2 255.255.255.0 isdn spid1 415988488201 9884882 isdn spid2 415988488302 9884883 ppp authentication chap dialer idle-timeout 300 dialer map IP 131.108.157.1 name branch1 4885 dialer-group 1 ! ip route 131.108.64.0 255.255.255.0 131.108.157.1 ! |
hostname 名前
ルータの hostname は、Challenge Handshake Authentication Protocol(CHAP)メッセージを送信する場合に、あるルータを別のルータに対して特定するために使用します。
username name password secret
username コマンドは、別のルータによるチャレンジを受けた場合に CHAP シークレット メッセージを特定するために必要です。対話を行う 2 台のルータは、同じパスワードを共有する必要があります。
isdn switch-type switch-typeおよびisdn spid1 spid-number [ldn]、isdn spid2 spid-number [ldn]
このルータは、Northern Telecom DMS-100 スイッチとの接続を確立します。ステーションのサービスプロファイル識別子(SPID)は415988488501と415988488602です。これらの番号はスイッチで設定されており、ローカルサービスプロバイダーによってユーザに提供されます。9884885 と 9884886 は、2 チャンネル用の通常の電話番号です。これは通常 Local Directory Number(LDN; 市内電話番号)と呼ばれています。
isdn spid1 コマンドと isdn spid2 コマンドは、ポイントツーポイント動作で設定される AT&T 5ESS スイッチ ソフトウェアには必要ありませんが、National ISDN-1(NI-2)ソフトウェアには必要です。この文書でのスイッチ タイプとは、スイッチ上で実行されている ISDN ソフトウェアを指すもので、メーカーやモデルを指すものではありません。
必要な ISDN 固有コマンドはこれだけです。この設定の残りは、実際にはダイヤルオンデマンド ルーティング(DDR)の設定であり、他の種類の DDR インターフェイス(インバンド、非同期など)に適用されます。
対象トラフィックの定義
dialer-group group number
dialer-list dialer-group protocol protocol-name {permit | deny}
dialer-list dialer-group protocol protocol-name list access-list-number
これらのコマンドは「対象」パケット タイプを定義するために必要です。対象パケットとは、ダイヤリング シーケンスを有効にし、「アイドル タイムアウト」のタイマーをリセットするパケットです。この例では、一方の側ではすべての IP パケットが対象パケットであり、2 つの形式のコマンドを示すため、もう一方でアクセス リストが使用されます。ブランチ 1 では、すべての IP パケットが対象パケットですが、メイン ルータでは、Interior Gateway Routing Protocol(IGRP)パケット以外のパケットだけが対象パケットとなります。
ppp authentication chap
このコマンドは、このインターフェイスで CHAP 認証を使用しなければならないことを指定します。詳細については、dialer map コマンドの説明を参照してください。
dialer idle-timeout seconds
このコマンドによって、ルータは、設定した時間の間に対象トラフィックがなかったコールを切断します。アイドル タイマーをリセットするのは発信パケットだけです。
dialer map protocol name remote-name broadcast speed 56 phone-number
ダイヤラ マップは、さまざまな場合に接続可能な、複数のリモート サイトの識別に使用します。サイトごと、および使用プロトコルごとに 1 つの MAP が必要です。リモート名は、もう一方のルータのホスト名です。ブロードキャスト フラグは、指定したプロトコルのルーティング アップデートなどのブロードキャスト パケットが、指定した側に送信されるかどうかを指定します。この例では、この設定はオフです。
speedパラメータのデフォルトは64です。エンドツーエンドISDNではないネットワーク上でコールが正常に完了できるようにするには、これを56に設定します。この電話番号は、発信者番号の配信を行うネットワークでコールの発信や認証を行う場合に使用します。この番号は、「受信専用」ダイヤラ マップを作成するためには、省略することもできます。このドキュメントの例では、4 桁のオフィス間内線番号が示されていますが、任意の長さの有効な電話番号を使用できます。
ルータがインターフェイスでのカプセル化(またはパケットの送信)を正常に行うために必要な、ネットワーク レイヤとリンク レイヤのマッピングが、ダイヤラ マップによって提供されます。この例では、ダイヤラ マップに発信先の電話番号と、もう一方のルータの名前が含まれています。この名前は、CHAP を使って発信先のルータを特定するために必要不可欠です。CHAP によって一部のセキュリティも提供されますが、この基本設定では CHAP は主として発信先ルータの識別に使われています。一般的なケースでは、CHAP は発信先ルータの識別に必要です。これは発信先番号の配信が常に可能とは限らないためです。
ip route network [mask] {address | interface} [距離]
このコマンドは、パケットがネクスト ホップに適切にルーティングされるために必要な、スタティック ルーティング情報を提供します。パケットが DDR インターフェイスにルーティングされるときに要求が作成されますが、それは名前が示す通り、DDR の不可欠な要素です。
注:これは、ISDNインターフェイス上でDDRを実行する2台のルータ間のスタティックルーティングを使用するIPトラフィックに使用できる簡単な設定です。すべてのユニキャスト IP パケットによってダイヤリングのトリガが可能であり、アイドル タイマーがリセットされます。CHAP は発呼側ルータの識別に使用され、一般的なケースでは CHAP が必要です。
現在、この設定に使用できる確認手順はありません。
現在、この設定に関する特定のトラブルシューティング情報はありません。
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
09-Sep-2005 |
初版 |