このドキュメントでは、ドメインまたは DNIS の情報なしで、ユーザごとの VPDN を設定する設定例について説明します。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
Cisco IOS(R) ソフトウェア リリース 12.1(4) 以降
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.1(4)T 以降
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメントの表記法の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
Virtual Private Dial-up Network(VPDN; バーチャル プライベート ダイヤルアップ ネットワーク)を使用する場合は、Network Access Server(NAS; ネットワーク アクセス サーバ)(L2TP アクセス コンセントレータ、つまり LAC)が、ユーザ独自の情報に基づいてホーム ゲートウェイ(LNS)への VPDN トンネルを確立します。この VPDN トンネルには、Level 2 Forwarding(L2F; レベル 2 転送)または Layer 2 Tunneling Protocol(L2TP; レイヤ 2 トンネリング プロトコル)を使用できます。 VPDN トンネルを使用する必要があるかどうかを判断するには、次のことを調べます。
ユーザ名の一部にドメイン名が含まれているかどうか。たとえば、tunnelme@cisco.com というユーザ名を使用すると、cisco.com 用のトンネルに NAS がこのユーザを転送します。
Dialed Number Information Service(DNIS; 着信番号情報サービス)。 この機能は、着信番号に基づいたコール転送機能です。つまり、特定の着信番号が設定されたすべてのコールを適切なトンネルに NAS が転送できます。たとえば、着信コールの着信番号が 5551111 の場合には、VPDN トンネルにコールを転送し、5552222 へのコールの場合には、転送しないようにできます。この機能を使用するには、電話会社のネットワークから着信番号情報が配信される必要があります。
VPDN の設定の詳細については、『VPDN について』を参照してください。
一部の状況では、ドメイン名が必要かどうかに関係なく、VPDN トンネルをユーザ名ごとに起動する必要がある場合があります。たとえば、ciscouser というユーザは cisco.com にトンネリングされ、他のユーザは NAS でローカルに終端されるような場合があります。
注:このユーザ名には、前の例のようなドメイン情報は含まれません。
VPDN のユーザごとの設定機能では、Authentication, Authorization, and Accounting(AAA; 認証、認可、アカウンティング)サーバにルータが初めて接続されるときに、構造化されたユーザ名全体が AAA サーバに転送されます。この処理により、共通ドメイン名や DNIS を使用する個々のユーザのトンネル属性を Cisco IOS ソフトウェアがカスタマイズできるようになります。
このセクションでは、このドキュメントで説明する機能を設定するために必要な情報を提供しています。
注:この文書で使用されているコマンドの詳細を調べるには、「Command Lookup ツール」を使用してください(登録ユーザのみ)。
このドキュメントでは、次のネットワーク セットアップを使用します。
ユーザごとの VPDN をサポートするために NAS(LAC)に必要な VPDN コマンドは、vpdn enable と vpdn authen-before-forward というグローバル設定コマンドだけです。vpdn authen-before-forward コマンドは、転送を決定する前に、完全なユーザ名を認証するように NAS(LAC)に指示します。次に、この個々のユーザのAAAサーバから返された情報に基づいて、VPDNトンネルが確立されます。AAAサーバからVPDN情報が返されない場合、ユーザはローカルで終了します。このセクションの設定には、ユーザ名にドメイン情報が含まれていないときにトンネルをサポートするために必要なコマンドが示されています。
注:この設定は包括的ではありません。関連する VPDN、インターフェイス、および AAA のコマンドだけです。
注:可能なすべてのトンネルプロトコルとAAAプロトコルについて説明することは、このドキュメントの範囲外です。そのため、この設定では、AAA RADIUS サーバを使用した L2TP トンネルが実装されています。他のトンネル タイプや AAA プロトコルを設定する場合は、ここで説明されている原則や設定を適用して設定してください。
このドキュメントでは、次の設定を使用しています。
VPDN NAS(LAC)
VPDN NAS(LAC) |
---|
aaa new-model aaa authentication ppp default group radius !--- Use RADIUS authentication for PPP authentication. aaa authorization network default group radius !--- Obtain authorization information from the Radius server. !--- This command is required for the AAA server to provide VPDN attributes. ! vpdn enable !--- VPDN is enabled. vpdn authen-before-forward !--- Authenticate the complete username before making a forwarding decision. !--- The LAC sends the username to the AAA server for VPDN attributes. ! controller E1 0 pri-group timeslots 1-31 ! interface Serial0:15 dialer rotary-group 1 !--- D-channel for E1 0 is a member of the dialer rotary group 1. ! interface Dialer1 !--- Logical interface for dialer rotary group 1. ip unnumbered Ethernet0 encapsulation ppp dialer in-band dialer-group 1 ppp authentication chap pap callin ! radius-server host 172.22.53.201 !--- The IP address of the RADIUS server host. !--- This AAA server will supply the NAS(LAC) with the VPDN attributes for the user. radius-server key cisco !--- The RADIUS server key. |
Cisco Secure for Unix(CSU)RADIUS サーバのユーザ設定の一部を次に示します。
NAS でローカルに終端されるユーザ。
user1 Password = "cisco" Service-Type = Framed-User
VPDN セッションを確立する必要があるユーザ。
user2 Password = "cisco" Service-Type = Framed-User, Cisco-AVPair = "vpdn:ip-addresses=172.22.53.141", Cisco-AVPair = "vpdn:l2tp-tunnel-password=cisco", Cisco-AVPair = "vpdn:tunnel-type=l2tp"
NAS(LAC)は、Cisco-AVPair VPDN で指定された属性を使用して、ホーム ゲートウェイへの VPDN トンネルを開始します。NAS からの VPDN トンネルを受け入れるようにホーム ゲートウェイが設定されていることを確認してください。
ここでは、設定が正しく機能していることを確認するために使用する情報を示します。
一部の show コマンドはアウトプット インタープリタ ツールによってサポートされています(登録ユーザ専用)。このツールを使用することによって、show コマンド出力の分析結果を表示できます。
show caller user:使用するTTY回線、非同期インターフェイス(シェルフ、スロット、またはポート)、DS0チャネル番号、モデム番号、割り当てられたIPアドレス、PPPおよびPPPバンドルパラメータなど、特定のユーザのパラメータを表示します。ご使用の Cisco IOS ソフトウェア バージョンでこのコマンドがサポートされていない場合は、show user コマンドを使用してください。
show vpdn:アクティブなL2FおよびL2TPプロトコルトンネルに関する情報と、VPDN内のメッセージ識別子を表示します。
コールが接続されたら、show caller user username コマンドおよび show vpdn コマンドを使用して、コールが正常に接続されていることを確認します。次に出力例を示します。
maui-nas-02#show caller user vpdn_authen User: vpdn_authen, line tty 12, service Async Active time 00:09:01, Idle time 00:00:05 Timeouts: Absolute Idle Idle Session Exec Limits: - - 00:10:00 Disconnect in: - - - TTY: Line 12, running PPP on As12 DS0: (slot/unit/channel)=0/0/5 Line: Baud rate (TX/RX) is 115200/115200, no parity, 1 stopbits, 8 databits Status: Ready, Active, No Exit Banner, Async Interface Active HW PPP Support Active Capabilities: Hardware Flowcontrol In, Hardware Flowcontrol Out Modem Callout, Modem RI is CD, Line is permanent async interface, Integrated Modem Modem State: Ready User: vpdn_authen, line As12, service PPP Active time 00:08:58, Idle time 00:00:05 Timeouts: Absolute Idle Limits: - - Disconnect in: - - PPP: LCP Open, CHAP (<- AAA) IP: Local 172.22.53.140 VPDN: NAS , MID 4, MID Unknown HGW , NAS CLID 0, HGW CLID 0, tunnel open !--- The VPDN tunnel is open. Counts: 85 packets input, 2642 bytes, 0 no buffer 0 input errors, 0 CRC, 0 frame, 0 overrun 71 packets output, 1577 bytes, 0 underruns 0 output errors, 0 collisions, 0 interface resets maui-nas-02#show vpdn L2TP Tunnel and Session Information Total tunnels 1 sessions 1 LocID RemID Remote Name State Remote Address Port Sessions 6318 3 HGW est 172.22.53.141 1701 1 LocID RemID TunID Intf Username State Last Chg Fastswitch 4 3 6318 As12 vpdn_authen est 00:09:33 enabled !--- The tunnel for user vpdn_authen is in established state. %No active L2F tunnels %No active PPTP tunnels %No active PPPoE tunnel
ここでは、設定のトラブルシューティングに使用できる情報を示します。
注:debugコマンドを発行する前に、『debugコマンドの重要な情報』を参照してください。
debug ppp authentication:PPP認証プロトコルメッセージを表示し、Challenge Handshake Authentication Protocol(CHAP)パケット交換やPassword Authentication Protocol(PAP)交換を含みます。
debug aaa authentication:AAA/RADIUS認証に関する情報を表示します。
debug aaa authorization:AAA/RADIUS認可に関する情報を表示します。
debug radius - RADIUS に関連するデバッグの詳細情報を表示します。debug radius のメッセージをデコードするには、アウトプットインタープリタ(登録ユーザ専用)を使用します。たとえば、「debug の出力例」のセクションを参照してください。どの属性がネゴシエートされているかを判断するには、debug radius の出力情報を使用します。
debug tacacs:TACACS+に関連する詳細なデバッグ情報を表示します。
debug vpdn event:VPDNの通常のトンネル確立またはシャットダウンの一部であるL2xエラーとイベントを表示します。
debug vpdn error:VPDNプロトコルエラーを表示します。
debug vpdn l2x-event:VPDNの通常のトンネル確立またはシャットダウンの一部である詳細なL2xエラーおよびイベントを表示します。
debug vpdn l2x-error:VPDN L2xプロトコルエラーを表示します。
次に、正常なコールの debug 出力を示します。この例では、VPDN トンネルの属性を Radius サーバから NAS が取得していることに注意してください。
maui-nas-02#show debug General OS: AAA Authentication debugging is on AAA Authorization debugging is on PPP: PPP authentication debugging is on VPN: L2X protocol events debugging is on L2X protocol errors debugging is on VPDN events debugging is on VPDN errors debugging is onRadius protocol debugging is on maui-nas-02# *Jan 21 19:07:26.752: %ISDN-6-CONNECT: Interface Serial0:5 is now connected to N/A N/A !--- Incoming call. *Jan 21 19:07:55.352: %LINK-3-UPDOWN: Interface Async12, changed state to up *Jan 21 19:07:55.352: As12 PPP: Treating connection as a dedicated line *Jan 21 19:07:55.352: As12 AAA/AUTHOR/FSM: (0): LCP succeeds trivially *Jan 21 19:07:55.604: As12 CHAP: O CHALLENGE id 1 len 32 from "maui-nas-02" *Jan 21 19:07:55.732: As12 CHAP: I RESPONSE id 1 len 32 from "vpdn_authen" !--- Incoming CHAP response from user vpdn_authen. *Jan 21 19:07:55.732: AAA: parse name=Async12 idb type=10 tty=12 *Jan 21 19:07:55.732: AAA: name=Async12 flags=0x11 type=4 shelf=0 slot=0 adapter=0 port=12 channel=0 *Jan 21 19:07:55.732: AAA: parse name=Serial0:5 idb type=12 tty=-1 *Jan 21 19:07:55.732: AAA: name=Serial0:5 flags=0x51 type=1 shelf=0 slot=0 adapter=0 port=0 channel=5 *Jan 21 19:07:55.732: AAA/ACCT/DS0: channel=5, ds1=0, t3=0, slot=0, ds0=5 *Jan 21 19:07:55.732: AAA/MEMORY: create_user (0x628C79EC) user='vpdn_authen' ruser='' port='Async12' rem_addr='async/81560' authen_type=CHAP service=PPP priv=1 *Jan 21 19:07:55.732: AAA/AUTHEN/START (4048817807): port='Async12' list='' action=LOGIN service=PPP *Jan 21 19:07:55.732: AAA/AUTHEN/START (4048817807): using "default" list *Jan 21 19:07:55.732: AAA/AUTHEN/START (4048817807): Method=radius (radius) *Jan 21 19:07:55.736: RADIUS: ustruct sharecount=1 *Jan 21 19:07:55.736: RADIUS: Initial Transmit Async12 id 6 172.22.53.201:1645, Access-Request, len 89 *Jan 21 19:07:55.736: Attribute 4 6 AC16358C *Jan 21 19:07:55.736: Attribute 5 6 0000000C *Jan 21 19:07:55.736: Attribute 61 6 00000000 *Jan 21 19:07:55.736: Attribute 1 13 7670646E *Jan 21 19:07:55.736: Attribute 30 7 38313536 *Jan 21 19:07:55.736: Attribute 3 19 014CF9D6 *Jan 21 19:07:55.736: Attribute 6 6 00000002 *Jan 21 19:07:55.736: Attribute 7 6 00000001 *Jan 21 19:07:55.740: RADIUS: Received from id 6 172.22.53.201:1645, Access-Accept, len 136 *Jan 21 19:07:55.740: Attribute 6 6 00000002 *Jan 21 19:07:55.740: Attribute 26 40 0000000901227670 *Jan 21 19:07:55.740: Attribute 26 40 0000000901227670 *Jan 21 19:07:55.740: Attribute 26 30 0000000901187670
VPDN トンネルに必要な Attribute Value Pair(AVP; 属性値ペア)は、RADIUS サーバからプッシュされます。ただし、debug radius では、AVP とその値がコード化されて出力されます。前述の出力の太字部分をアウトプットインタープリタ(登録ユーザ専用)に貼り付けることができます。 次に太字で示すデコードされた情報がアウトプットインタープリタから出力されます。
Access-Request 172.22.53.201:1645 id 6 Attribute Type 4: NAS-IP-Address is 172.22.53.140 Attribute Type 5: NAS-Port is 12 Attribute Type 61: NAS-Port-Type is Asynchronous Attribute Type 1: User-Name is vpdn Attribute Type 30: Called-Station-ID(DNIS) is 8156 Attribute Type 3: CHAP-Password is (encoded) Attribute Type 6: Service-Type is Framed Attribute Type 7: Framed-Protocol is PPP Access-Accept 172.22.53.201:1645 id 6 Attribute Type 6: Service-Type is Framed Attribute Type 26: Vendor is Cisco Attribute Type 26: Vendor is Cisco Attribute Type 26: Vendor is Cisco *Jan 21 19:07:55.740: AAA/AUTHEN (4048817807): status = PASS ... ... ... *Jan 21 19:07:55.744: RADIUS: cisco AVPair "vpdn:ip-addresses=172.22.53.141" *Jan 21 19:07:55.744: RADIUS: cisco AVPair "vpdn:l2tp-tunnel-password=cisco" *Jan 21 19:07:55.744: RADIUS: cisco AVPair "vpdn:tunnel-type=l2tp" *Jan 21 19:07:55.744: AAA/AUTHOR (733932081): Post authorization status = PASS_REPL *Jan 21 19:07:55.744: AAA/AUTHOR/VPDN: Processing AV service=ppp *Jan 21 19:07:55.744: AAA/AUTHOR/VPDN: Processing AV ip-addresses=172.22.53.141 *Jan 21 19:07:55.744: AAA/AUTHOR/VPDN: Processing AV l2tp-tunnel-password=cisco *Jan 21 19:07:55.744: AAA/AUTHOR/VPDN: Processing AV tunnel-type=l2tp !--- Tunnel information. !--- The VPDN Tunnel will now be established and the call will be authenticated. !--- Since the debug information is similar to that for a normal VPDN call, !--- the VPDN tunnel establishment debug output is omitted.
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
04-Feb-2010 |
初版 |