ルータ インターフェイスは、シリアルからイーサネット、ATM にいたるどのようなタイプでも、show interface atm コマンドの出力で多数の入力廃棄を報告することがあります。次の出力例では、カウンタが最後にクリアされた時点から、PA-A3 ATM ポートアダプタで 675 回の入力廃棄が発生したことを示しています。
7200-17# show interface atm 4/0 ATM4/0 is up, line protocol is up Hardware is ENHANCED ATM PA Internet address is 10.10.203.2/24 MTU 4470 bytes, sub MTU 4470, BW 149760 Kbit, DLY 80 usec, reliability 255/255, txload 1/255, rxload 1/255 NSAP address: 47.009181000000009021449C01.777777777777.77 Encapsulation ATM, loopback not set Keepalive not supported Encapsulation(s): AAL5 4096 maximum active VCs, 7 current VCCs VC idle disconnect time: 300 seconds Signalling vc = 5, vpi = 0, vci = 5 UNI Version = 4.0, Link Side = user 0 carrier transitions Last input 00:00:05, output 00:00:05, output hang never Last clearing of "show interface" counters never Input queue: 0/75/675/0 (size/max/drops/flushes); Total output drops: 0 Queueing strategy: Per VC Queueing 5 minute input rate 0 bits/sec, 0 packets/sec 5 minute output rate 0 bits/sec, 0 packets/sec 44060 packets input, 618911 bytes, 0 no buffer Received 0 broadcasts, 0 runts, 0 giants, 0 throttles 0 input errors, 0 CRC, 0 frame, 0 overrun, 0 ignored, 0 abort 65411 packets output, 1554954 bytes, 0 underruns 0 output errors, 0 collisions, 0 interface resets 0 output buffer failures, 0 output buffers swapped out
ユーザは通常、入力廃棄をパフォーマンスの低下として報告します。ユーザの期待するネットワーク応答時間を満たすことは重要な設計目標であるため、入力廃棄の原因を理解することはトラブルシューティング上の重要な目標になります。この文書では、ATM インターフェイスでの入力廃棄について理解し、そのトラブルシューティングを行うために必要な情報を提供します。
注:PA-A3 ATMポートアダプタの入力エラーのトラブルシューティングについては、ここをクリックしてください。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
Cisco IOS(R) ソフトウェアのスイッチング方式は、ルータが入力(着信)インターフェイスから出力(発信)インターフェイスにパケットをどのように転送するのかを規定しています。
Cisco IOSソフトウェアスイッチングの最も好ましくない方法は、プロセススイッチングです。この方式では、中央の CPU が宛先 IP アドレスに基づいて完全なルーティング テーブルのルックアップを実行します。プロセス交換では、ルータはファースト スイッチングや Cisco Express Forwarding(CEF)などの望ましいルート キャッシュ方式を使用して、フォワーディング決定を処理することができません。その結果、ルータは SRAM(7xxx プラットフォームでは MEMD とも呼ばれます)内の I/O バッファから DRAM 内のシステム バッファにパケットをコピーせざるをえなくなります。 ここには、Cisco IOS のソフトウェア コード、データ構造、およびダイナミック テーブルが格納されています。
ATM および非 ATM インターフェイスでは、インターフェイスに割り当てられたパケット バッファ数を使い切った場合やその最大しきい値に達した場合に、システムが入力キュー廃棄をカウントすることがあります。ルート キャッシュ方式の使用時には、パケットは SRAM やパケット メモリに格納されます。プロセス交換の使用時には、パケットは DRAM に格納されます。
詳細は、『入力キュードロップと出力キュードロップのトラブルシューティング』を参照してください。
show interface atmコマンドの出力には、入力キューの廃棄に加えて、スロットル数が多く表示されることがあります。入力キュー廃棄はパケットがプロセス交換されているときに起こります。スロットル カウンタが増えるのは、システム バッファは使用可能であるのに、インターフェイスの入力保留キュー内で処理を待っているパケットがすでに最大数に達している場合です。ルータは一時的にそのインターフェイスを無効にし、その間にすでにキューに溜まっているパケットを取り出して処理します。
スロットルのトラブルシューティングを行う際は、多くのパケットがプロセス交換されている根本的な原因を突き止めます。
show interface atmコマンド出力のflushesカウンタは、選択的パケット廃棄(SPD)の一部として増加します。SPDは、ルータのIPプロセスキューに選択的パケット廃棄ポリシーを実装します。そのため、これが適用されるのはプロセス スイッチのトラフィックだけです。
SPD の目的は、IP 入力キューがいっぱいになったときにもルーティング更新やキープアライブなどの重要な制御パケットが廃棄されないことを保証することです。IP 入力キューのサイズが最小しきい値と最大しきい値の間にあるときは、一定の廃棄確率に基づいて通常の IP パケットが廃棄されます。このランダムな廃棄は SPD フラッシュと呼ばれます。
LANエミュレーション(LANE)環境では、プロセス交換トラフィックに対してのみフラッシュカウンタが増加します。LANEはCEFでサポートされています。フラッシュの増加をトラブルシューティングするには、show ip interface atmコマンドを発行して、パケットがどのようにIOSスイッチングされているかを判別します。また、LANE Data Direct VCが形成されていることを確認します。show lane client出力コマンドの出力をキャプチャします。
show atm vc {vcd#}コマンドの出力には、InPktDropsカウンタが表示されます。
7200-1# show atm vc 200 atm6/0: VCD: 200, VPI: 5, VCI: 200 UBR, PeakRate: 44209 AAL5-LLC/SNAP, etype:0x0, Flags: 0xC20, VCmode: 0x0 OAM frequency: 0 second(s) InARP DISABLED Transmit priority 4 InPkts: 0, OutPkts: 0, InBytes: 0, OutBytes: 0 InPRoc: 0, OutPRoc: 0, Broadcasts: 0 InFast: 0, OutFast: 0, InAS: 0, OutAS: 0 InPktDrops: 157, OutPktDrops: 0 CrcErrors: 0, SarTimeOuts: 0, OverSizedSDUs: 0 OAM cells received: 0 OAM cells sent: 0 Status: UP
インターフェイスでの入力キュー廃棄はプロセス交換パケット数が多いことを示唆しますが、VC カウンタの InPktDrops が 0 以外の値を示すときは、ATM インターフェイスが個々の Virtual Circuit(VC; 仮想回線)用のパケット バッファを使い切っているか、または VC 間で共有できる VC バッファの総数を超えていることを示唆します。PA-A3 の場合、このような廃棄は PA-A3 ドライバが次の 2 つのスロットル メカニズムのいずれかを実装している結果として起こります。
PA-A3は、VCがReceive Segmentation And Reassembly(SAR)共通プールから使用できるパケットバッファの数にクォータを設定します。このクォータは、設定されたトラフィックシェーピングレートに基づいて異なる「受信クレジット」値に相当します。また、このように割り当て量を設定することで、1 つの VC が過負荷状態になったときにすべてのバッファ リソースが枯渇する事態を防ぎます。PA-A3 ドライバは、パケットを受信してプロセッサか出力インターフェイスのどちらかに転送するときに、バッファ クレジットを 1 減らします。プロセッサか出力インターフェイスのどちらかがパケット バッファを VC のプールに戻すと、PA-A3 ドライバはクレジットを戻します。VC で輻輳が発生した場合やクレジットを使い切った場合、PA-A3 はそれ以降のパケットをすべて廃棄し、InPktDrops カウンタを増やします。
PA-A3 は、アダプタ自身がパケット バッファを使い切ったときに ATM VC のトラフィックを抑制します。輻輳したVCが多数存在するATMインターフェイスでは、VC単位のクォータが重複し、排他的ではないため、アダプタはパケットバッファを非常に簡単に使い切ることができます。つまり、VC単位のクォータで指定されたバッファの合計数が、PA-A3で実際に使用可能なバッファの合計数を超えています。すべてのPA-A3バッファが使用中の場合、フレーマのFIFOキューは着信セルを保持します。輻輳が続くと、これらのセルのためにオーバーランが生じることがあります。そのようなバックプレッシャ状態に陥ると、フレーマーの FIFO がセルを廃棄することがあり、これが Cyclic Redundancy Check(CRC; 巡回冗長検査)エラーの原因となります。
InPktDrops は、パケットがホスト インターフェイスに到達する前に廃棄された数をカウントします。ホスト インターフェイスが SAR バッファからパケットを受信するまで、パケットはインターフェイス統計情報に登録されません。そのため、show atm vc コマンドでは廃棄が見られるものの、show interface atm コマンドでは、廃棄はまったくまたはほとんどみられません。
show controllers atm コマンドでは、ATM インターフェイスでオンボードのリアセンブリ バッファが不足しかけているかどうかを確認できる 3 つの便利なカウンタが表示されます。これらは次の太字で強調表示されています。
注:Rx_countはRx_thresholdを大きく下回る必要があります。
C7200# show controller atm 1/0 Interface atm1/0 is up Hardware is ENHANCED ATM PA - SONET OC3 (155Mbps) dfs is enabled, hwidb->ip_routecache = 0x15 lane client mac address is 0060.3e73.e640 active HSRP group: Framer is PMC PM5346 S/UNI-155-LITE, SAR is LSI ATMIZER II !--- Output suppressed. Control data: Rx_max_spins=2, max_tx_count=17, TX_count=4 Rx_threshold=1366, Rx _count=15, TX_threshold=4608 TX bfd write indx=0x11, Rx _pool_info=0x6066A3E0 !--- Output suppressed.
カウンタ | 説明 |
Rx_threshold | PA-A3 ドライバまたは出力ポート アダプタが、設定された VC の間の受信パケットの使用を制限しなくても保持できる最大の受信パケット数。任意の VC に過剰なパケット バッファが割り当てられて、その他の VC によってパケットの受信が阻止されるのを防ぐために、PA-A3 は受信パケット バッファ調整メカニズムを使用しています。PA-A3 ドライバまたは出力インターフェイスで保持されている受信パケットの総数がこのしきい値を超えると、PA-A3 で受信される次のパケットがチェックされ、1 つの VC で過剰なパケット バッファが占有されていないかが調べられます。過剰なパケット バッファが占有されている場合、PA-A3 は、この違反 VC で保持されている受信パケットの総数が割り当て量を下回るまで、着信パケットを廃棄します。 |
Rx_max_spins | 内部的には、PA-A3 のマイクロコードは受信割り込みを示すことで PA-A3 ドライバに着信パケットの到着を知らせます。PA-A3 ドライバは受信割り込みを検知した後、できるだけ多くのパケットを受信リングから排出します。このカウンタは、1 回の割り込みで PA-A3 ドライバにより排出された受信パケットの最大数を記録します。 |
Rx_count | ドライバにより現在保持されている受信またはリアセンブリ パケットの総数。 |
VCのリアセンブルバッファクレジットの超過に加えて、ATMインターフェイスは次の理由でパケットをドロップする可能性があります。
宛先プレフィクスへの経路がない
ARP エントリが不完全である
ACL に設定されているポリシー
Cisco IOSソフトウェアの特定のバージョンでは、PA-A3ドライバがこれらの廃棄をVC入力パケット廃棄としてカウントし、VC単位のInPktDropカウンタを増加させています。この問題は表面的なものであり、パフォーマンスへの影響はありません。この問題は、PA-A3-OC3/T3のバグID CSCdu23066、およびPA-A3-OC12のバグID CSCdw78297で解決されています。
Cisco DDTS の CSCdm54053 では、show interface の出力に、サブインターフェイスのパケット入力および出力カウンタが負の数で表示される問題が解決されています。この修正は、Cisco IOS ソフトウェア バージョン 12.0(6)や 12.0(7)XE2 などの各種バージョンに実装されています。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
15-Nov-2007 |
初版 |