このドキュメントでは、Cisco 2600XM/2691/2800/3700/3800 ルータ プラットフォーム用の IP コミュニケーション高密度デジタル音声/FAX ネットワーク モジュール(NM-HDV2)の Digital Signal Processor(DSP; デジタル信号プロセッサ)の基本的な機能を検証するテクニックを説明します。DSP は、Voice over IP(VoIP)、Voice over Frame-Relay(VoFR)、および Voice over ATM(VoATM)などのパケット テレフォニー テクノロジーを使用するために必要です。 DSP は、音声のアナログからデジタル形式への変換、その逆の変換、信号のゲインおよび減衰パラメータの設定、Voice Activity Detection(VAD; 音声アクティビティ検出)動作などを実行する役割を担っています。DSP のハードウェアとソフトウェアが正しく動作していないと、コールが正常に確立されて維持されません。
IP コミュニケーション高密度デジタル音声/FAX ネットワーク モジュール(NM-HDV2)の詳細については、『Cisco 2600XM、Cisco 2691、Cisco ISR 2800 シリーズ、Cisco 3700 シリーズ、および Cisco ISR 3800 シリーズ マルチサービス アクセス ルータ用 IP コミュニケーション高密度デジタル音声/FAX ネットワーク モジュールのデータシート』、およびソフトウェア コンフィギュレーション マニュアルの『IP コミュニケーション高密度デジタル音声/FAX ネットワーク モジュール』を参照してください。
このドキュメントに関する特別な要件はありません。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
IP コミュニケーション高密度デジタル音声/FAX ネットワーク モジュール(NM-HDV2)が適切に搭載され、このネットワーク モジュールをサポートする適切な Cisco IOS(R) ソフトウェア リリースが稼働している Cisco 2600XM/2691/2800/3700/3800 音声ゲートウェイ
このドキュメントは、Cisco IOS(R) ソフトウェア リリース 12.3(11)T でテストされています。Cisco IOS の NM-HDV2 のサポートの詳細については、『NM-HDV2 IP 通信の高密度デジタル音声/FAX ネットワーク モジュールについて』を参照してください。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細については、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
次の症状は、DSP のハードウェアまたはソフトウェアの問題が原因である可能性があります。
コールの接続後の音声パスで、互いに相手の音声が聞こえない、または片方向の音声しか聞こえない。
コールの確立が失敗する(Channel Associated Signaling(CAS; 個別線信号方式)の状態遷移の適切な検出や送信ができないなど)。
音声ポートがパーク状態のまま変わらず、使用できない。
コンソールまたはルータのログに、DSP のタイムアウトを通知するエラー メッセージが表示される。
注:取り付けられている音声カードがルータで検出されない場合は、これらの音声モジュールをサポートするのに十分なパケット音声DSPモジュール(PVDM)がない可能性があります。DSP Calculator(登録ユーザ専用)を使用すると、使用しているルータの DSP の要件、および PVDM のプロビジョニングの推奨内容を確認できます。このツールは、入力として提供されたインターフェイス モジュール、コーデック設定、トランスコーディング チャネル、会議セッションに基づいて、DSP 要件を計算します。このツールは、Cisco 1751、1760、2600XM、2691、2800、3700 および 3800 プラットフォームに対して有効なさまざまな Cisco IOS ソフトウェア リリースをサポートしています。
音声の問題が DSP の誤動作または欠陥によるものであると断定する前に、シスコ音声製品の Time Division Multiplexing(TDM; 時分割多重)機能について説明しておく必要があります。TDM のクロッキング設定が適切に行われていないと、特定の音声製品を使用している特定のコール シナリオでは、甲高いノイズ音が発生したり、互いに相手の音声が聞こえない現象が発生することがあります。DSP に関するトラブルシューティングの手順を開始する前に、デジタル音声ポートのシステム クロッキングに関するこれらの点に注意して、クロッキング要件がすべて満たされていることを確認しておくことをシスコでは推奨します。
VWIC-xMFT-T1、VWIC-xMFT-E1、NM-HDV2、NM-HD-2VE、NM-HDV、AIM-VOICE-30、AIM-ATM-VOICE-30 など、一部の音声製品は TDM に対応しています。つまり、これらの製品は TDM 対応プラットフォームで TDM クロッキングに参加できることを意味しています。TDM 対応プラットフォームには、Cisco 2691、2800、3660(マルチサービス インターチェンジ(MIX)ドーターカードを使用)、3700、3800 などがあります。TDM クロッキングにより、複数のネットワーク モジュールや音声 T1/E1 コントローラを共通のクロッキング ドメインに同期化でき、あるデバイスからのビット ストリームでの他のデバイスとの同期が確保されます。TDM クロッキング オプションが正しく設定されていないと、音声が片方向だけになる、両方向とも無音声になる、モデムや FAX 機能の信頼性が低下する、さらに、エコーの発生のような音声品質の低下などの問題が発生する可能性があります。
例として、2 つの異なる NM-HDV-1T1-24 ネットワーク モジュールを Cisco 3745 音声ルータに取り付ける場合を考えます。これらはそれぞれ、ISDN PRI 経由で音声スイッチに接続されます。コールが片方の NM-HDV-1T1-24 から発信されてもう一方で終端すると、コールは正常に確立されます。ところが、音声パスで音声が流れません。これは、NM-HDV と Cisco 3745 が TDM 対応デバイスであるためです。2 つの NM-HDV ネットワーク モジュールは、Cisco 3745 で共通のクロッキング ドメインに参加するように設定する必要があります。ISDN Q.931 シグナリングは NM-HDV HDLC コントローラで処理されるため、この状況では(この状況に限っては)コールが確立します。ただし、Cisco 3745 は TDM 対応デバイスなので、RTP メディア トラフィックには、NM-HDV の DSP は使用されません。代わりに、Cisco IOSは適切な音声タイムスロットの相互接続(ドロップ&インサート)を実行して、音声パスを完成させようとします。両方のNM-HDVネットワークモジュールで、たとえばシャーシスロット1とシャーシスロット3に1つずつ、実行コンフィギュレーションでnetwork-clock-participate slot 1コマンドとnetwork-clock-participate slot 3コマンドを設定する必要があります。音声ルータの設定にこれらの必要なコマンドが指定されて初めて、双方向の音声通信が可能になります。
シスコ音声製品における TDM クロッキングの要件および考慮事項の詳細については、『IOS ベースの音声対応プラットフォームでのクロッキング設定』を参照してください。
NM-HDV2 の DSP ハードウェアまたは DSP ファームウェア(DSPware)の潜在的な問題をトラブルシューティングするには、ネットワーク モジュールで使用されている DSP のアーキテクチャを理解している必要があります。NM-HDV2 では、Packet Voice DSP Module, Generation 2(PVDM2; 第 2 世代パケット音声 DSP モジュール)製品ファミリの DSP カードを使用しています。個々の DSP は TI C5510 ベースです。これらは、Cisco IOS(R) CLI を使用して、3 つの異なるコーデックの複雑度設定のいずれかの設定で動作するように設定します。複雑度設定には、フレックス コンプレキシティ(FC)(デフォルト設定)、ミディアム コンプレキシティ(MC)、およびハイ コンプレキシティ(HC)があります。 指定したコーデックの複雑度設定に対応して、DSPware が DSP にダウンロードされ、その設定に関連する機能が提供されます。この DSPware は、Cisco IOS ソフトウェア内に組み込まれています。DSP へのダウンロードは、ルータのブート時に実行されます。NM-HDV2 ネットワーク モジュールのすべての DSP は、同じコーデックの複雑度設定で実行される必要があります。
次の表に、IP コミュニケーション高密度デジタル音声/FAX ネットワーク モジュール(NM-HDV2)で使用される DSP モジュールのバリアントと対応する製品番号の一覧を示します。
PVDM2 製品 | 説明 | コーデックの複雑度別の音声/FAX チャネルの最大数 | |||
---|---|---|---|---|---|
Flexi Complexity(FC)G.711(最適な用途) | Flexi Complexity(FC)すべてのMCおよびHCコーデック(デフォルト設定) | 中複雑度(MC)G.729A、G.729AB、G.726、G.711、クリアチャネル、GSMFR、ファックスリレー/パススルー、モデムパススルー | 高複雑度(HC)すべてのMCコーデック、およびG.723、G.728、G.729、G.729B、GSMEFR | ||
PVDM2-8 | 8 チャネル パケット FAX/音声 DSP モジュール(TI C5510 DSP を 1 つ搭載) | 8 | 4-8 | 4 | 4 |
PVDM2-16 | 16 チャネル パケット FAX/音声 DSP モジュール(TI C5510 DSP を 1 つ搭載) | 16 | 6 ~ 16 | 8 | 6 |
PVDM2-32 | 32 チャネル パケット FAX/音声 DSP モジュール(TI C5510 DSP を 2 つ搭載) | 32 | 12-32 | 16 | 12 |
PVDM2-48 | 48 チャネル パケット FAX/音声 DSP モジュール(TI C5510 DSP を 3 つ搭載) | 48 | 18-48 | 24 | 18 |
PVDM2-64 | 64 チャネル パケット FAX/音声 DSP モジュール(TI C5510 DSP を 4 つ搭載) | 64 | 24-64 | 32 | 24 |
NM-HDV2 には、PVDM2 DSP カードを装着する SIMM ソケット(バンクと呼びます)が 4 つあります。各バンクの前面にはNM-HDV2のLEDがあります。SIMMにPVDM2カードを装着すると、LEDは緑色に点灯します。
PVDM2 の上部および下部の写真
ds0-group または pri-group を設定すると、新しい音声コールが発信されるたびに、タイムスロットが DSP チャネルに動的に割り当てられます。DSP の ID は、次のようになります。
SIMM ソケット 0 の PVDM2 の DSP は、ID=1、2、3、4 です。
SIMM ソケット 1 の PVDM2 の DSP は、ID=5、6、7、8 です。
SIMM ソケット 2 の PVDM2 の DSP は、ID=9、10、11、12 です。
SIMM ソケット 3 の PVDM2 の DSP は、ID=13、14、15、16 です。
前述した音声の問題が発生すると、コンソールまたはルータのログに、次のような DSP タイムアウト メッセージが表示されることがあります。
Jan 19 23:17:11.181 EST: !!!!Timeout error pa_bay 2 dsp_err 1 Jan 19 23:17:12.325 EST: !!! cHPI Error pa_bay 2 dsp_err 3 Jan 19 23:17:13.469 EST: !!! cHPI Error pa_bay 2 dsp_err 7 Jan 19 23:17:47.181 EST: DNLD: flex_dnld_timer_consume dsp 1 is not responding, state=1, expected_event=0 Jan 19 23:17:48.325 EST: DNLD: flex_dnld_timer_consume dsp 2 is not responding, state=1, expected_event=0 Jan 19 23:17:49.469 EST: DNLD: flex_dnld_timer_consume dsp 3 is not responding, state=1, expected_event=0
上記のメッセージでは、DSP ID 1、2、および 3 からの応答が、シャーシ スロット 2 の NM-HDV2 からとなっており、これはあるべき位置ではありません。これらの DSP では、パケット音声コールを処理できません。
このドキュメントの残りのセクションの手順に従って、問題を解決します。
イネーブル モードで test voice driver の隠しコマンドを発行して、DSP にクエリーを送信します。このコマンドにより、DSP が応答するかどうかを確認します。
注:隠しコマンドは、?Tabキーを使用してコマンドを自動完了できないコマンドです。隠しコマンドは、ドキュメントには記載されていません。出力の一部は、エンジニアリング目的でのみ使用されます。隠しコマンドは、シスコではサポートしていません。
次の出力例は、スロット 1 に NM-HDV-2T1/E1 が装着され、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(11)T が稼働している Cisco 2691 ルータに対して、test voice driver の隠しコマンドを実行したときのものです。PVDM2-16はDSPバンク0に、PVDM2-32(DSPバンク1に、PVDM2-48(DSPバンク2に、PVDM2-64)はDSPバンク3にインストールされます。NM-HDV2ネットワークを使用して特定のの音声ルータのにshow diagコマンドでインストールされたモジュール。
注:コンソールを使用してゲートウェイにアクセスする場合は、コマンド出力を表示するためにロギングコンソールを有効にする必要があります。Telnet を使用してルータにアクセスしている場合、コマンド出力を確認するには、terminal monitor が有効になっている必要があります。
c2691#test voice driver Enter VPM or HDV or ATM AIM or NM-HD-xx or HDV2 slot number : 1 HDV2 Debugging Section; 1 - FPGA Registers Read/Write 2 - TDM tests 3 - 5510 DSP test 4 - DSPRM test 5 - HDLC32 test 6 - Register location check 7 - Interrupt counters. 8 - Quit Select option :
メニューからオプション 3 を選択し、続いて、表示されたオプションのテーブルから 17 を選択します。これで、Cisco IOS ソフトウェアから、DSP が応答するかどうかを確認するクエリーが DSP に送信されます。応答を受信すると、DSPはDSP N is Alive, State:4。これは、ID NのDSPが正しく機能することを宣言します。Cisco IOSソフトウェアが応答を受信しない場合、DSPはDSP N is not UP, State:を選択します。
注意:このドキュメントで説明されているテストオプションのみを使用してください。他のオプションを選択すると、ルータがリロードされたり、他の問題が発生することがあります。
次の出力例は、メニューからオプション 3 に続いて、オプション 17 を選択した後に生成された出力です。
c2691#test voice driver Enter VPM or HDV or ATM AIM or NM-HD-xx or HDV2 slot number : 1 HDV2 Debugging Section; 1 - FPGA Registers Read/Write 2 - TDM tests 3 - 5510 DSP test 4 - DSPRM test 5 - HDLC32 test 6 - Register location check 7 - Interrupt counters. 8 - Quit Select option : 3 5510 DSP Testing Section: 1 - Reset ALL DSPs 2 - Reset 1 DSP 3 - Download DSPware 4 - CHPIR Enable/Disable 5 - Display c5510 ring 6 - Show HPI RAM 7 - Show eHPI memory thru Relay command 8 - Show Controller 9 - c5510 Keepalive Enable/Disable 10 - Use PCI to download 11 - Write HPI RAM 12 - DSP application download 13 - faked dsp crash 14 - Wait in Firmware Restart Indication 15 - Display rx ring 16 - Display tx ring 17 - Display DSP Keepalive Status 18 - QUIT Select option : 17 DSP Keepalive Status Display: ============================= DSP 1 is Alive, State: 4, Keepalive Sent: 2992, Skip 2993 DSP 2 Not Exist DSP 3 Not Exist DSP 4 Not Exist DSP 5 is Alive, State: 4, Keepalive Sent: 2992, Skip 2994 DSP 6 is Alive, State: 4, Keepalive Sent: 2992, Skip 2994 DSP 7 Not Exist DSP 8 Not Exist DSP 9 is Alive, State: 4, Keepalive Sent: 2992, Skip 2993 DSP 10 is Alive, State: 4, Keepalive Sent: 2992, Skip 2993 DSP 11 is Alive, State: 4, Keepalive Sent: 2992, Skip 2993 DSP 12 Not Exist DSP 13 is Alive, State: 4, Keepalive Sent: 2992, Skip 2993 DSP 14 is Alive, State: 4, Keepalive Sent: 2992, Skip 2993 DSP 15 is Alive, State: 4, Keepalive Sent: 2992, Skip 2993 DSP 16 is not UP, State: 3, Keepalive Sent: 2951, Skip 2951 5510 DSP Testing Section: 1 - Reset ALL DSPs 2 - Reset 1 DSP 3 - Download DSPware 4 - CHPIR Enable/Disable 5 - Display c5510 ring 6 - Show HPI RAM 7 - Show eHPI memory thru Relay command 8 - Show Controller 9 - c5510 Keepalive Enable/Disable 10 - Use PCI to download 11 - Write HPI RAM 12 - DSP application download 13 - faked dsp crash 14 - Wait in Firmware Restart Indication 15 - Display rx ring 16 - Display tx ring 17 - Display DSP Keepalive Status 18 - QUIT Select option : 18 HDV2 Debugging Section; 1 - FPGA Registers Read/Write 2 - TDM tests 3 - 5510 DSP test 4 - DSPRM test 5 - HDLC32 test 6 - Register location check 7 - Interrupt counters. 8 - Quit Select option : 8 c2691#
注:メニューからオプション17を選択すると、要求された情報がレポートされ、その直後にオプションテーブルの再描画が行われます。そのため、必要な出力が、コンソールのディスプレイから消えてしまうことがあります。ターミナル ウィンドウのスクロールバーを使用し、上にスクロールして、DSP のキープアライブ ステータス出力を確認してください。
出力例では、PVDM2-16 が装着されている部分に該当する DSP バンク 0 で 1 つの C5510 DSP の存在が報告され、PVDM2-32 が装着されている部分に該当する DSP バンク 1 で 2 つの C5510 DSP の存在が報告され、といった形で処理されています。Alive と報告された DSP の数を数えます。この数がNM-HDV2に取り付けられているDSPの総数と一致していることを確認します。DSPはAliveまたはnot upと報告する必要があります。DSP がまったく応答しない場合もあります。DSP が応答しなかった場合、出力に表示されていない DSP の ID を確認します。上記の例の場合は、DSP 番号 16 だけが not UP と報告され、それ以外のすべての DSP は Alive になっています。これは、番号 16 の DSP で問題が発生していることを示しています。これは、ハードウェアまたはソフトウェアのいずれかの問題によるものです。
この手順は任意です。しかし、この手順は、問題のある T1/E1 タイムスロットやアナログ/BRI 音声ポートと無応答の DSP との関連付けには便利です。ステップ 1 から、DSP 16 が応答しないことがわかっています。DSP 16のDSPタイムアウトメッセージもロギングします。show voice dspコマンドを発行して、タイムスロットとDSPリソースがCisco 2600XM/2691/2800/3700/3800によってどのように割り当てられるかを表示します。このコマンドは、次の情報もモニタします。
タイムスロット(TS)と DSP(DSP NUM)および DSP チャネル(CH)のマッピング
送信(TX)および受信(RX)パケットのカウンタ
DSP ごとの DSP リセットの数(RST)
DSP のファームウェア バージョン
現在使用している音声コーデック
DSP チャネルの現在の状態
このコマンドは、DSP と音声ポート/タイムスロットの関連付けを実行するのに、常に役に立つというわけではありません。なぜなら、NM-HDV 製品とは異なり、ルータのブート時に DSP チャネルが音声ポート/タイムスロットに静的に割り当てられるのではなく、NM-HDV2 では、新規コールのセットアップが行われるつど、DSP チャネルが音声ポート/タイムスロットに動的に割り当てられるためです。さらに、任意の音声ポート/タイムスロットで、1 つの DSP をシグナリングに使用し、別の 1 つをメディア トラフィックに使用することができます。PVDM2 DSP が MC または HC のコーデック モードで動作するように設定されている場合、NM-HDV2 では DSP チャネルと音声ポート/タイムスロットの静的なマッピングしか実行されません。
ただし、確立されたアクティブな音声コールが存在しない場合であっても、show voice dsp コマンドの出力で、有用な情報が提供されることがあります。たとえば、CAS 音声インターフェイスのためには、PVDM2 DSP によって使用される DSPware のバージョンを確認できます。この例の show voice dsp コマンドの出力では、DSPware のバージョンは 4.4.3 です。
c2691#show voice dsp DSP DSP DSPWARE CURR BOOT PAK TX/RX TYPE NUM CH CODEC VERSION STATE STATE RST AI VOICEPORT TS ABORT PACK COUNT ==== === == ======== ======= ===== ======= === == ========= == ===== ============ ----------------------------FLEX VOICE CARD 1 ------------------------------ *DSP VOICE CHANNELS* DSP DSP DSPWARE CURR BOOT PAK TX/RX TYPE NUM CH CODEC VERSION STATE STATE RST AI VOICEPORT TS ABRT PACK COUNT ===== === == ======== ======= ===== ======= === == ========= == ==== ============ *DSP SIGNALING CHANNELS* DSP DSP DSPWARE CURR BOOT PAK TX/RX TYPE NUM CH CODEC VERSION STATE STATE RST AI VOICEPORT TS ABRT PACK COUNT ===== === == ======== ======= ===== ======= === == ========= == ==== ============ C5510 001 01 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/0:0 01 0 4/28 C5510 001 02 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/0:0 02 0 4/28 C5510 001 03 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/0:0 03 0 4/28 C5510 001 04 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/0:0 04 0 5/30 C5510 001 05 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/0:0 05 0 6/30 C5510 001 06 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/0:0 06 0 8/30 C5510 001 07 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/0:0 07 0 8/30 < SNIP> C5510 009 01 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/1:0 21 0 4/28 C5510 009 02 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/1:0 22 0 4/28 C5510 009 03 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/1:0 23 0 4/28 C5510 009 04 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/1:0 24 0 8/34 C5510 009 05 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/1:0 25 0 6/30 C5510 009 06 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/1:0 26 0 8/30 C5510 009 07 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/1:0 27 0 8/30 C5510 009 08 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/1:0 28 0 8/30 C5510 009 09 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/1:0 29 0 8/30 C5510 009 10 {flex} 4.4.3 alloc idle 1 0 1/1:0 30 0 8/30 ------------------------END OF FLEX VOICE CARD 1 ---------------------------- c2691#
この出力には、NM-HDV2に関する2つの異なる出力フィールドがあります。1つは、音声チャネルのDSPチャネルと音声ポート/タイムスロットのマッピングを報告します。もう 1 つのフィールドでは、シグナリング チャネルにおける DSP チャネルと音声ポート/タイムスロットのマッピングが報告されています。CASテレフォニーインターフェイスには常にシグナリングチャネルが割り当てられているため、NM-HDV2で使用されているDSPwareを判別できます。ただし、エントリはアクティブコールが確立された場合にのみ音声チャネル出力フィールドに表示されます。
テレフォニー インターフェイスが PRI ベースで、確立されているアクティブ コールが存在しない場合、DSPware のバージョンを確認するには、別のコマンドを使用する必要があります。PRIシグナリングは、NM-HDV2のHDLCコントローラによって管理されるため、シグナリングチャネルの音声ポート/タイムスロットのマッピングの出力フィールドはありません。隠しtest dsprm Nコマンドを発行してDSPwareのバージョンを確認します。
注:隠しコマンドは、?Tabキーを使用してコマンドを自動完了できないコマンドです。隠しコマンドは、ドキュメントには記載されていません。出力の一部は、エンジニアリング目的でのみ使用されます。隠しコマンドは、シスコではサポートしていません。
注:このドキュメントで説明されているテストオプションのみを使用してください。他のオプションを選択すると、ルータがリロードされたり、他の問題が発生することがあります。
c2691#test dsprm 1 Section: 1 - Query dsp resource and status 2 - Display voice port's dsp channel status 3 - Print dsp data structure info 4 - Change dsprm test Flags 5 - Modify dsp-tdm connection 6 - Disable DSP Background Status Query 7 - Enable DSP Background Status Query 8 - Enable DSP control message history 9 - Disable DSP control message history 10 - show dsp version 11 - Show alarm stats 12 - Enable dsprm alarm monitor 13 - Disable dsprm alarm monitor q - Quit Select option : 10 dsp[0].ver_num =4.4.3 dsp[1].ver_num =0.0.0 dsp[2].ver_num =0.0.0 dsp[3].ver_num =0.0.0 dsp[4].ver_num =4.4.3 dsp[5].ver_num =4.4.3 dsp[6].ver_num =0.0.0 dsp[7].ver_num =0.0.0 dsp[8].ver_num =4.4.3 dsp[9].ver_num =4.4.3 dsp[10].ver_num =4.4.3 dsp[11].ver_num =0.0.0 dsp[12].ver_num =4.4.3 dsp[13].ver_num =4.4.3 dsp[14].ver_num =4.4.3 dsp[15].ver_num =4.4.3 c2691#
注:show voice dspコマンドや隠しtest voice driverコマンドの出力と異なり、ここで示すDSP番号は1ではなく0で始まります。
NM-HDV2 ネットワーク モジュールの DSP を個別にリセットして、その DSP の再起動を実行できます。DSP を個別にリセットするには、EXEC モードで test dsp device コマンドを発行します。次の出力例は、DSP 16 を手動でリセットしたときのものです。
c2691#test dsp device ? <0-3> Slot id - the module id on the system. all all slots to be acted upon print print DSPs not in "show voice dsp" <cr> c2691#test dsp device 1 ? <1-16> DSP id - see "show voice dsp" all all DSP's to be acted upon print print DSPs not in "show voice dsp" <cr> c2691#test dsp device 1 16 ? dspware Download flash file system DSPware. remove Remove the specified DSP(s). reset Reset the specified DSP(s). restore Restore the specified DSP(s). c2691#test dsp device 1 16 reset ? <cr> c2691#test dsp device 1 16 reset c2691# *Dec 9 12:56:21.362 EST: %DSPRM-5-UPDOWN: DSP 16 in slot 1, changed state to up c2691#
このステップが完了すると、DSP は期待通りに機能し、音声コールの処理を再開します。ステップ 1 の DSP へのクエリーを繰り返して、DSP の状態をチェックします。DSP のエラー メッセージが引き続き表示される場合は、該当する DSP を確認し、DSP のリセット処理を繰り返します。DSP のリセット処理で問題が解決しない場合は、ステップ 4 に進みます。
依然として、DSP のエラー メッセージが表示される場合は、NM-HDV2 ネットワーク モジュールに関連するソフトウェアやハードウェアの問題があるかどうかを判別します。
通常の動作では、DSP が応答しないことが認識されると、Cisco IOS は DSP の自動回復アルゴリズムを開始して、DSP の回復を試みます。ただし、DSP を正常な動作状態に戻す処理の妨げとなるソフトウェアの不具合が見つかっています。既知の不具合で、PVDM2 DSP アーキテクチャで実行される音声機能に関連するものを次に示します。
重要なお知らせ:PVDM2-8がCisco Bug ID CSCef52639(登録ユーザ専用)に関連するホストルータの予期しないリロードを引き起こす可能性があります。
上記の不具合だけでなく、インストールしている Cisco IOS ソフトウェアや対応する DSPware にも留意してください。Cisco IOS リリース ノートを参照して、音声ゲートウェイで現在使用している Cisco IOS ソフトウェアのリリースよりも新しいリリースでの解決済みおよび未解決の注意事項の一覧を確認してください。これにより、一覧にある不具合のいずれかによって、現在の問題の症状が引き起こされているかどうかを確認できます。
これらの既知の不具合に対するソリューションが統合されたCisco IOSソフトウェアリリースを実行している場合、不具合がCisco IOS固有またはDSPware固有の場合は、NM-HDV2を取り外して再インストールすると便利ですNM-HDV2ネットワークモジュール。OIR の手順は、Cisco 3745 または 3845 の電源を再投入する方法に比べると、問題のトラブルシューティング作業の手間がかかりません。OIR で DSP の問題の解決ができない場合や、NM-HDV2 を搭載している音声ルータで OIR がサポートされていない場合は、ルータ全体をリロードします。
注意: このセクションで説明している OIR の作業を実行する場合は、メンテナンス時間をスケジュールしてください。処理中に、予想外の事態が発生する可能性もあります。
既知の不具合に対するソリューションが統合されたCisco IOSソフトウェアリリースを実行し、トラブルシューティングのOIRステップもCisco 2600XM/2691/2800/3700/3800音声ルートのリロードもDSPの問題を解決しない場合は、同じDSPがUPにならないことに注意します。
同じ DSP のエラー メッセージが常に表示されている場合は、ハードウェアの問題と思われます。問題の DSP が装着されている PVDM2 DSP カードを交換するかどうか、または PVDM2 が装着されている DSP バンク スロットに関連する問題であるのかを確認します。DSPバンクスロットに問題があると判断された場合は、NM-HDV2全体を交換する必要があります。NM-HDV2に複数のPVDM2が取り付けられている場合は、問題の発生しているPVDM2を交換してください。障害が発生したDSPがDSPバンクスロットに装着されたままになるか、元のPVDM2と一緒に移動するかを確認します。このテストの結果、PVDM2とNM-HDV2のどちらを交換すればよいかが示されます。
応答しない DSP や表示されない DSP が、手動による DSP のリセット、OIR の試行、ルータのリロードによって異なる場合、問題はソフトウェア関連のものと思われます。ソフトウェア関連の問題については、シスコ テクニカルサポート(登録ユーザ専用)でサービスリクエストをオープンし、問題のトラブルシューティングや詳細な指示に関するエンジニアによる支援を依頼してください。
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
20-Jul-2006 |
初版 |