このドキュメントの目的は、Cisco ルータでの IP 用の Intermediate System-to-Intermediate System(IS-IS)の基本設定例を示すことです。また、設定の他に、代表中継システム(DIS)の選出情報や IS-IS データベース情報などの各種 IS-IS 情報のモニタリング方法についても説明しています。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの情報は、Cisco IOS ® ソフトウェア リリース 12.1(5)T9 に基づくものです。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
このセクションでは、このドキュメントで説明する機能を設定するために必要な情報を提供しています。
注: このドキュメントで使用されているコマンドの詳細を調べるには、Command Lookup Tool(登録ユーザ専用)を使用してください。
Cisco ルータで IP 用の IS-IS を有効にし、他の IS-IS 対応ルータとの間でルーティング情報を交換するには、次の 2 つの作業を行う必要があります。
IS-IS プロセスの有効化とエリアの割り当て
インターフェイスでの IP ルーティング用 IS-IS の有効化
他の設定作業はオプションですが、上記の 2 つの作業は必須です。オプションの設定作業の詳細については、「Integrated IS-IS の設定」を参照してください。
このドキュメントでは、次のネットワーク セットアップを使用します。
このドキュメントでは、次の構成を使用します。
以降の設定例では、上記のトポロジに含まれるすべてのルータに次のパラメータを設定しています。
エリア 49.0001
レベル 1(L1)およびレベル 2(L2)ルータ(特に指定のない限り、これがデフォルトです)
オプション パラメータなし
IP 用の IS-IS のみを実行
ループバック インターフェイス(ループバックは IS-IS によってアドバタイズされます。ループバックでは IS-IS は有効ではありません)
ルータ 1 |
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! interface Loopback0 ip address 172.16.1.1 255.255.255.255 !--- Creates loopback interface and assigns !--- IP address to interface Loopback0. ! interface Ethernet0 ip address 172.16.12.1 255.255.255.0 ip router isis !--- Assigns IP address to interface Ethernet0 !--- and enables IS-IS for IP on the interface. ! router isis passive-interface Loopback0 net 49.0001.1720.1600.1001.00 ! !--- Enables the IS-IS process on the router, !--- makes loopback interface passive !--- (does not send IS-IS packets on interface), !--- and assigns area and system ID to router. |
ルータ 2 |
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! interface Loopback0 ip address 172.16.2.2 255.255.255.255 !--- Creates loopback interface and assigns !--- IP address to interface Loopback0. ! Interface Ethernet0 ip address 172.16.12.2 255.255.255.0 ip router isis !--- Assigns IP address to interface Ethernet0 !--- and enables IS-IS for IP on the interface. ! Interface Serial0 ip address 172.16.23.1 255.255.255.252 ip router isis !--- Assigns IP address to interface Serial0 !--- and enables IS-IS for IP on the interface. ! router isis passive-interface Loopback0 net 49.0001.1720.1600.2002.00 ! !--- Enables the IS-IS process on the router, !--- makes loopback interface passive !--- (does not send IS-IS packets on interface), !--- and assigns area and system ID to router. |
Router 3 |
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! interface Loopback0 ip address 172.16.3.3 255.255.255.255 !--- Creates loopback interface !--- and assigns IP address to !--- interface Loopback0. ! Interface Serial0 ip address 172.16.23.2 255.255.255.252 ip router Isis !--- Assigns IP address to !--- interface Serial0 and enables !--- IS-IS for IP on the interface. ! router isis passive-interface Loopback0 net 49.0001.1234.1600.2231.00 ! !--- Enables the IS-IS process on the router, !--- makes loopback interface passive !--- (does not send IS-IS packets on interface), !--- and assigns area and system ID to router. |
Cisco ルータでは、IS-IS の状態を監視するためにさまざまな show コマンドを使用できます。このドキュメントでは、上記のルータ設定に基づいて、より基本的ないくつかのコマンドの使用方法を説明します。
アウトプット インタープリタ ツール(登録ユーザ専用)(OIT)は、特定の show コマンドをサポートします。OIT を使用して、show コマンドの出力の分析を表示します。
特定のルータの隣接関係を表示するには、show clns neighbor コマンドを使用します。ルータ 1(R1)およびルータ 2(R2)におけるこのコマンドの出力結果を次に示します。
R1# show clns neighbor System Id Interface SNPA State Holdtime Type Protocol R2 Et0 0000.0c47.b947 Up 24 L1L2 ISIS R2# show clns neighbor System Id Interface SNPA State Holdtime Type Protocol R1 Et0 0000.0c09.9fea Up 24 L1L2 ISIS R3 Se0 *HDLC* Up 28 L1L2 ISIS
上記の例では、R1はE0インターフェイスのR2を認識し、隣接関係タイプはL1L2です。R1とR2はデフォルト設定で設定されているため、L1とL2 helloの両方を送受信します。
R2 は E0 インターフェイスで R1 を、S0 インターフェイスでルータ 3(R3)をそれぞれ認識しています。隣接関係タイプについては、R1 の場合と同じように説明されます。
R1とR2は同じイーサネットインターフェイス上にあるため、L1とL2の両方にDISがあります。これを確認するには、次に示すように、ルータ1でshow clns interface <int>コマンドを使用します。
R1# show clns interface ethernet 0 Ethernet0 is up, line protocol is up Checksums enabled, MTU 1497, Encapsulation SAP Routing Protocol: ISIS Circuit Type: level-1-2 Interface number 0x0, local circuit ID 0x1 Level-1 Metric: 10, Priority: 64, Circuit ID: R2.01 Number of active level-1 adjacencies: 1 Level-2 Metric: 10, Priority: 64, Circuit ID: R2.01 Number of active level-2 adjacencies: 1 Next ISIS LAN Level-1 Hello in 5 seconds Next ISIS LAN Level-2 Hello in 1 seconds
上記の出力では、R2 が DIS です。したがって、R2(DIS)が、ゼロ以外の LSP-ID(R2.01)で表される疑似ノード Link State Packet(LSP; リンクステート パケット)を生成します。
Metric/Priority が L1/L2 のどちらのルータでも同じであるため、LAN セグメントで Subnetwork Points of Attachment(SNPA)アドレスの最も大きいものが DIS として選出されます。SNPA アドレスはデータ リンク アドレスを意味するので、この例では MAC アドレスが SNPA アドレスになります。その他のデータ リンク アドレスの例には、X.25 アドレスやフレームリレー DLCI などがあります。
DIS は両方のレベルで選出されます。また、バックアップ DIS が存在しない点に注意してください。この点については、バックアップ Designated Router(DR; 代表ルータ)のある Open Shortest Path First(OSPF)とは異なります。
上記の出力でその他に注意すべき情報には次のようなものがあります。
回線タイプ:L1L2
L1 および L2 のメトリックと優先順位がデフォルト値:10 と 64
L1 および L2 の隣接関係:1(イーサネット インターフェイスから見た R1 の視点 - R2 しか存在しない)
L1 および L2 の IS-IS LAN hello
最大伝送ユニット(MTU):1497。これは、Open Systems Interconnection(OSI; 開放型システム間相互接続)IS-IS ヘッダーが 3 バイトの 802.2 ヘッダー内にカプセル化されるためです。
show isis database (detail) コマンドは、IS-IS データベースの内容を表示します。R2で発行されたこのコマンドの出力を次に示します。IS-ISはリンクステートプロトコルであるため、リンクステートデータベースは同じエリア内のすべてのルータで同じである必要があります。
R2# show isis database ISIS Level-1 Link State Database: LSPID LSP Seq Num LSP Checksum LSP Holdtime ATT/P/OL R1.00-00 0x0000008B 0x6843 55 0/0/0 R2.00-00 * 0x00000083 0x276E 77 0/0/0 R2.01-00 * 0x00000004 0x34E1 57 0/0/0 R3.00-00 0x00000086 0xF30E 84 0/0/0 ISIS Level-2 Link State Database: LSPID LSP Seq Num LSP Checksum LSP Holdtime ATT/P/OL R1.00-00 0x00000092 0x34B2 41 0/0/0 R2.00-00 * 0x0000008A 0x7A59 115 0/0/0 R2.01-00 * 0x00000004 0xC3DA 50 0/0/0 R3.00-00 0x0000008F 0x0766 112 0/0/0
上記の出力には、注意すべき点がいくつかあります。LSP-ID から説明します。
LSP-ID の R1.00-00 はR1/00/00 の 3 つの部分に分けられます。
R1 = システム ID。
00 = 疑似ノードの場合はゼロ以外の値。R2.01-00 は疑似ノード LSP です。
00 = フラグメント番号。この例では、フラグメント番号はすべて 00 です。これは、すべてのデータがこの LSP フラグメントに収められていて、追加のフラグメントを作成する必要がなかったことを示します。情報が最初の LSP に収まらない場合は、01 や 02 などの追加の LSP フラグメントが作成されます。
* は、このルータ、つまり show コマンドを発行したこのルータによって生成された LSP を表します。また、このルータは L1 および L2 ルータであるため、L1 と L2 のデータベースが保持されています。
特定の LSP の詳細情報を表示するには、detail キーワードを使用します。次に例を示します。
R2# show isis database R2.00-00 detail ISIS Level-1 LSP R2.00-00 LSPID LSP Seq Num LSP Checksum LSP Holdtime ATT/P/OL R2.00-00 * 0x00000093 0x077E 71 0/0/0 Area Address: 49.0001 NLPID: 0xCC Hostname: R2 IP Address: 172.16.2.2 Metric: 10 IP 172.16.12.0 255.255.255.0 Metric: 0 IP 172.16.2.2 255.255.255.255 Metric: 10 IP 172.16.23.0 255.255.255.252 Metric: 10 IS R2.01 Metric: 10 IS R3.00 ISIS Level-2 LSP R2.00-00 LSPID LSP Seq Num LSP Checksum LSP Holdtime ATT/P/OL R2.00-00 * 0x0000009A 0x5A69 103 0/0/0 Area Address: 49.0001 NLPID: 0xCC Hostname: R2 IP Address: 172.16.2.2 Metric: 10 IS R2.01 Metric: 10 IS R3.00 Metric: 10 IP 172.16.23.0 255.255.255.252 Metric: 10 IP 172.16.1.1 255.255.255.255 Metric: 10 IP 172.16.3.3 255.255.255.255 Metric: 0 IP 172.16.2.2 255.255.255.255 Metric: 10 IP 172.16.12.0 255.255.255.0
上記の出力は、このルータのループバックアドレスが値0でアドバタイズされていることを示しています。これは、ルータIS-ISプロセスでpassive-interfaceコマンドでループバックがアドバタイズされ、ループバックインターフェイス自体がIS-ISに対して有効になっていないためです。他の IP プレフィクスの値はすべて 10 です。これは、IS-IS が動作しているインターフェイスでのデフォルト コストです。
現在、この設定に使用できる確認手順はありません。
現在、この設定に関する特定のトラブルシューティング情報はありません。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
10-Aug-2005 |
初版 |