2015 年 10 月 「必要なハードウェア/ソフトウェア要件」と「システムの前提条件」を更新
本ドキュメントでは、GW ルータで IPv6 パス スルー機能を使用し、LAN 側の端末が WAN 側からの RA (Router Advertisement) を受信することによって IPv6 プレフィックスを自動取得する方法を紹介します。
オフィスや家庭において、GW ルータが ISP(インターネット サービス プロバイダー)と PPPoE 方式でインターネット接続をして、 回線提供者が網内で IPv6 サービスを提供している環境を前提とします。また、この IPv6 パス スルーの設定は、IPv4/PPPoE が既に設定されている状態でおこないます。
ルータを ONU や ADSL モデムなどに接続し、PPPoE にてサービス プロバイダーに接続します。一つの IP アドレスを動的に払い出す端末型払い出しとし、LAN 側セグメントは NAT によりインターネットに接続します。
この接続環境において、さらに以下のような要求の端末が同一セグメントにある場合を想定します。
ISR G2 はすべてオンボードにて、2FE(または GE)を具備します。ISR G2 シリーズにて本構成が実現可能なハードウェア/ソフトウェアの組み合わせは以下になります。
プラットホーム | 必要なハードウェア*1 | IOS |
---|---|---|
841M | N/A | 15.5(3)M 以降 |
1900 シリーズ (1921/1941) |
EHWIC-D-8ESG EHWIC-4ESG HWIC-D-9ESW HWIC-4ESW などの EHWIC/HWIC Ethernet モジュール |
15.2(3)T 以降 |
2900 シリーズ (2901/2911/2921/2951) |
上記 EHWIC/HWIC および SM-D-ES3G-48 SM-ES3G-24 などのサービス モジュール |
|
3900 シリーズ (3925/3925E/3945/3945E) |
*1 詳細は「Interfaces and Modules」を参照してください。
本構成では ISR892J IOS15.2(3)T を使用しています。
また 15.2(3)T 以前の設定方法は以下を参考してください。
フレッツ ネクスト接続設定例(ルーテッド ポートの場合) - ルータ : Cisco 800 シリーズ ルータ
フレッツ ネクスト接続設定例(SVI の場合) - ルータ : Cisco 800 シリーズ ルータ
15.2(3)T 以降より BVI インターフェイスでの PPPoE が可能になり、IPv6 パススルーの設定がより簡潔になりました。
hostname 892j-PPPoE-BVI
!
ip cef
no ipv6 cef
!
bridge irb
!
interface BRI0
no ip address
encapsulation hdlc
shutdown
isdn termination multidrop
!
interface FastEthernet0
no ip address
!
#(Fa0-7 は同一設定のため、以下省略)
!
interface FastEthernet8
no ip address
duplex auto
speed auto
bridge-group 1
bridge-group 1 input-type-list 200
!
interface GigabitEthernet0
no ip address
duplex auto
speed auto
bridge-group 1
!
interface Vlan1
no ip address
bridge-group 1
!
interface Dialer1
ip address negotiated
ip mtu 1454
ip nat outside
ip virtual-reassembly in
encapsulation ppp
dialer pool 1
dialer-group 1
ppp authentication chap callin
ppp chap hostname cisco
ppp chap password 0 cisco@example.com
!
interface BVI1
ip address 192.168.1.254 255.255.255.0
ip nat inside
ip virtual-reassembly in
ip tcp adjust-mss 1414
pppoe-client dial-pool-number 1
!
no ip http server
no ip http secure-server
ip forward-protocol nd
!
ip nat inside source list 1 interface Dialer1 overload
ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 Dialer1
!
access-list 1 permit 192.168.1.0 0.0.0.255
access-list 200 permit 0x86DD 0x0000
!
dialer-list 1 protocol ip permit
control-plane
!
bridge 1 protocol ieee
bridge 1 route ip
!
line con 0
exec-timeout 0 0
logging synchronous
line aux 0
line vty 0 4
transport input all
!
グローバル コンフィグレーション コマンド
IRB をイネーブルにします。トラフィックのブリッジングを有効にします。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
インターフェイスにブリッジ グループ番号 1 をアサインします。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
"access-list 200"で定義されたトラフィック パターンを本インターフェイスに適用します。
グローバル コンフィグレーション コマンド
イーサ タイプ 0x86DD (IPv6) のトラフィックがマッチするアクセス リストです。
グローバル コンフィグレーション コマンド
ブリッジ グループ番号 1に対応する BVI を設定します。各ブリッジ グループに対応させることができる BVI は、1 つだけです。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
このコマンドにより、論理インターフェイス Dialer1 を使って、PPPoE セッションを確立するように設定します。
Dialer1 インターフェイスに設定されている"dialer pool 1"と"pppoe-client dial-pool-number 1"コマンドの番号 1 が対応します。
グローバル コンフィグレーション コマンド
Dialer 1 論理インターフェイスを定義します。PPPoE セッションは、この Dialer インターフェイスにより終端されます。また、PPPoE セッションはダイアラの動作により確立要求されます。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
パケットの最大送信サイズを定義します。この事例では、Dialer1 インターフェイスから送信されるパケットの最大サイズは 1454 バイトに調整されます。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
このインターフェイスは PPP カプセル化によりパケットの入出力をします。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
Dialer1 論理インターフェイスと実際に PPPoE 接続する物理インターフェイスが紐付けられます。
"dialer pool 1"と FastEthernet0 インターフェイスの"pppoe-client dial-pool-number 1"コマンドの番号 1 が対応します。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
PPP セッション確立時に IP アドレスがダイナミックにインターフェイスに対してアサインされます。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
"dialer-list 1"で定義されたトラフィックパターンを本 Dialer インターフェイスに適用します。
このトラフィックがダイアル対象として認識され本 Dialer インターフェイスから出て行くときに、PPPoE セッションの確立要求を起動します。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
ISP にアクセスする際の認証方法を CHAP に指定します。"callin"パラメータにより、認証は ISP によるユーザー認証の片方向のみ行われます。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
PPP の CHAP または PAP 認証(本事例では CHAP)を行なう際に必要なユーザー名を設定します。
このユーザー名の @ 以下 (ispid) により、接続先 ISP を判別します。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
PPP の CHAP または PAP 認証(本事例では CHAP)を行なう際に必要なパスワードを設定します。本事例では、"cisco"というパスワードを設定しています。
インターフェイス コンフィグレーション コマンド
このインターフェイスを通過する TCP セッションは、TCP の最大セグメント サイズが 1414 バイトでネゴシエーションがおこなわれるようになります。指定できる最大セグメントサイズは、500 バイトから 1460 バイトの間になります。
グローバル コンフィグレーション コマンド
スタティック デフォルト ルートとして Dialer1 が指定されます
グローバル コンフィグレーション コマンド
dialer-list に適用させるトラフィックを指定します。
グローバル コンフィグレーション コマンド
ブリッジグループ番号 1 をアサインし、IEEE 802.1D スパニング ツリー プロトコルを適用します。
グローバル コンフィグレーション コマンド
IP をルーティング対象にします。
PPPoE 使用時の MTU サイズは、通常時よりも小さくなります。(フレッツでは、1454 バイトを推奨)そのため、MTU サイズを変更すると共に、TCP の MSS(最大セグメント サイズ)の値をそれに合わせて調整することが必要となる点に注意してください。
PPP MTU/MRU は PPP セッション確立においての必須項目ではありませんが、LCP ネゴシエーションで通知される MRU に合致していないと受け入れる事ができないサービスが存在します。Dialer interface にて以下のコマンドを追記し、通知される MRU に合わす事が可能になります。
ppp mtu adaptive
実際に導入し、運用される際には障害解析などの観点により以下のようなコマンドも追加する事を推奨します。
service timestamps debug datetime localtime msec service timestamps log datetime localtime msec clock timezone JST 9 ! logging buffered 512000 debugging ! clock calendar-valid
本設定では IPv6 (0x86DD) のパケット(ソース MAC アドレス AAA, ディスティネーション MAC アドレス BBB)は入力インターフェイス (FE8) より、同一の Bridge-group をもつインターフェイス (interface giga0) にブリッジされます。
本設定では FE8 に IPv6 専用端末を接続することを想定しているため、IPv6 以外のイーサ タイプを持つパケットはフィルタされます。
また VLAN1 (FE0-7) に入力された IPv4 パケット (0x0800) や ARP パケット (0x0806) は”bridge 1 route ip”があるため、BVI インターフェイスへルーティング処理されます。
BVI インターフェイスで Dialer インターフェイスでとルーティングされるケースではアドレス変換 (NAT) をおこないます。
その後ダイアラ インターフェイスにて PPPoE ヘッダーを追加し、WAN インターフェイス (GE0) へ出力をおこないます。