Open Shortest Path First(OSPF)がデフォルト ルート(0.0.0.0)を生成してアドバタイズする方法は、デフォルト ルートが挿入されるエリアのタイプによって異なります。このドキュメントでは、ノーマル エリア、スタブ エリアまたは完全スタブ エリア、Not-So-Stubby Area(NSSA)について説明します。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
このドキュメントに関しては個別の前提条件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ノーマル エリア:このエリアは、標準のエリアまたはトランジット(バックボーン)エリアです。標準のエリアは、エリア内、エリア間、および外部のルートを受け入れることができるエリアとして定義されています。バックボーン エリアは、OSPF 接続のその他の領域が接続する中心的なエリアです。
注:エリア内ルートは、エリア内で渡されるアップデートを指します。エリア間ルートは、エリア間で渡される更新です。また、外部ルートは、自律システム境界ルータ(ASBR)によって別のルーティング プロトコルから OSPF ドメインに渡される更新です。
スタブ エリア:このエリアは、外部の自律システム(AS)に属するルートは受け入れません。ただし、このエリアにはエリア内とエリア間のルートがあります。スタブ エリアのルータは、エリア境界ルータ(ABR)によってエリアに挿入されるデフォルト ルートを使用して、外部ネットワークに到達します。スタブ エリアは、通常、ブランチ オフィスが他のオフィスへのルートをすべて知っている必要はなく、セントラル オフィスへのデフォルト ルートを使用してそこから他の場所に到達するように設定されます。そのため、リーフ ノード ルータのメモリ要件が減り、OSPF データベースのサイズも減少します。
エリアをスタブ エリアとして定義するには、OSPF ルータ コンフィギュレーション コマンド area <area id> stub を使用します。
完全スタブ エリア: このエリアは、エリア内とデフォルト以外のルートがこのエリアに伝搬されることを許可しません。ABR はデフォルト ルートをエリアに挿入し、このエリアに属するすべてのルータは、そのデフォルト ルートを使用してエリアの外部にトラフィックを送信します。
エリアを完全スタブ エリアとして定義するには、ABR で OSPF ルータ コンフィギュレーション コマンド area <area id> stub no-summary を使用します。
NSSA:このタイプのエリアは、スタブの特性を持ちながら一部の外部ルートがエリアにインポートされることを柔軟に許可します。スタブ エリア内のルータの 1 台が別のルーティング プロトコルを実行している外部 AS に接続されている場合を仮定すると、そのルータは ASBR になり、このエリアはスタブ エリアと呼べなくなります。ただし、このエリアが NSSA として設定されている場合は、ASBR は NSSA エリア全体にフラッディングできる NSSA 外部リンクステート アドバタイズメント(LSA)(タイプ 7)を生成します。これらのタイプ 7 LSA は、NSSA ABR でタイプ 5 LSA に変換され、OSPF ドメイン全体にフラッディングされます。
NSSA を定義するには、OSPF ルータ コンフィギュレーション コマンド area <area id> nssa を使用します。
NSSA の詳細については、「OSPF Not-So-Stubby Area(NSSA)」を参照してください。
デフォルトでは、ノーマル エリアの OSPF ルータは、デフォルト ルートをルーティング ドメインに生成しません(存在する場合でも)。OSPF ルータにデフォルト ルートを生成させるには、OSPF ルータ コンフィギュレーション モードで default-information originate [always] [metric metric-value] [metric-type type-value] [route-map map-name] コマンドを使用します。これにより、外部タイプ 2 リンクがリンクステート ID 0.0.0.0、ネットワーク マスク 0.0.0.0 で生成され、ルータが ASBR になります。
上記のコマンドでは、デフォルト ルートのメトリックとメトリック タイプが指定されます。デフォルトはmetric = 1で、metric-type = E2です。外部タイプ1およびタイプ2のルートの詳細については、『OSPF設計ガイド』の「ルートのOSPFへの再配布」セクションを参照してください。
ノーマル エリアにデフォルト ルートを挿入するには、2 つの方法があります。
ASBR のルーティング テーブルにデフォルト ルートがすでに存在する場合は、ルータ コンフィグレーション コマンド default-information originate を使用して OSPF ドメインに既存の 0.0.0.0/0 をアドバタイズできます。
ASBR にデフォルト ルートがない場合は、キーワード always を default-information originate コマンドに追加できます(default-information originate always)。
このコマンドは、0.0.0.0へのルートがあるかどうかに関係なく、デフォルトルートをOSPFドメインにアドバタイズします。alwaysキーワードを追加するもう1つの利点は、インターネットワークに安定性を追加できることです。たとえば、ASBR が RIP などの別のルーティング ドメインからデフォルト ルートを学習し、このルートがフラッピングしている場合は、always キーワードを使用しないと、ルートがフラッピングするたびに ASBR は新しいタイプ 5 LSA を OSPF ドメインに送信するので、OSPF ドメイン内が不安定になります。一方、always キーワードを使用すると、ASBR は常に OSPF ドメイン内部にデフォルトをアドバタイズするので、RIP ドメインからのデフォルト ルートのフラッピングで OSPF ドメイン内が不安定になることはありません。
OSPF でノーマル エリアにデフォルト ルートを挿入する方法のサンプル設定については、「OSPF がノーマル エリアにデフォルト ルートを挿入する方法」を参照してください。
スタブエリアと完全スタブエリアでは、スタブエリアへのABRはリンクステートID 0.0.0.0のサマリーLSAを生成します。これは、ABRに独自のデフォルトルートがない場合でも当てはまります。この場合、default-information originate コマンドを使用する必要はありません。
前述したように、外部ルートはスタブ エリア内に伝搬されず、エリア間ルート(サマリー ルート)も完全スタブ エリア内に伝搬されません。このエリア内のルータは、ABR によって生成されるデフォルト ルートを使用して、エリア外の宛先に到達します。
OSPF がデフォルト ルートをスタブ エリアまたは完全スタブ エリアに挿入する方法のサンプル設定については、『OSPF からスタブ エリアまたは完全スタブ エリアにデフォルト ルートを挿入する方法』を参照してください。
ABR は NSSA に対してデフォルト ルートを生成しますが、これはデフォルトの動作ではありません。ABR にデフォルト ルートを生成させるには、area <area id> nssa default-information originate コマンドを使用します。ABR は、リンクステート ID が 0.0.0.0 のタイプ 7 LSA を生成し、NSSA 内部にアドバタイズします。このデフォルト ルートは、NSSA 内部にタイプ 7 LSA として伝搬されます。
NSSA 内部にデフォルト ルートをアドバタイズするもう 1 つの方法では、次のコマンドを使用します:area <area id> nssa no-summary
no-summary キーワードを使用すると、NSSA ABR は NSSA 内部にエリア間ルート(タイプ 3 およびタイプ 4 サマリー ルート)をアドバタイズせず、デフォルト ルートをアドバタイズします。このデフォルト ルートは、NSSA 内部にタイプ 3 LSA として伝搬されます。
OSPF がデフォルト ルートを NSSA に挿入する方法を示すサンプル設定については、『OSPF が Not-So-Stubby Area にデフォルト ルートを挿入する方法』を参照してください。
NSSA にデフォルト ルートを生成する方法の詳細については、「NSSA のデフォルト ルート」(「OSPF Not-So-Stubby Area(NSSA)」)を参照してください。