デジタル加入者線(DSL)接続が正常に機能しない理由は、いろいろ考えられます。このドキュメントの目的は、障害の原因を切り分けて修復することです。トラブルシューティングの最初のステップでは、非対称デジタル加入者線(ADSL)サービスで障害が発生しているレイヤを判別します。障害が発生する可能性があるレイヤは、3 層あります。
レイヤ1:ISPのDigital Subscriber Line Access Multiplexer(DSLAM)へのDSL物理接続
レイヤ 2.1 - ATM 接続
レイヤ2.2:Point-to-Point Protocol over ATM(PPPoA)、Point-to-Point Protocol over Ethernet(PPPoE)、RFC1483ブリッジング、またはRFC1483ルーティング
レイヤ 3 - IP
トラブルシューティングを開始する対象のレイヤを判別する最も簡単な方法は、show ip interface brief コマンドを発行することです。このコマンドの出力は、設定によって若干異なります。
827-ESC#show ip interface brief Interface IP-Address OK? Method Status Protocol ATM0 unassigned YES manual up up ATM0.1 unassigned YES unset up up Ethernet0 10.10.10.1 YES manual up up
ATM0 および ATM0.1 の状態がアップで、プロトコルもアップしている場合は、レイヤ 2 のトラブルシューティングを開始します。
ATMインターフェイスがダウンしている場合、またはインターフェイスがアップし続け、ダウンし続ける(アップ状態が維持されない)場合は、レイヤ1でのトラブルシューティングを開始します。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
CD ライトが点灯している場合は、このドキュメントの「レイヤ 2 の問題」の項に進みます。
CD ライトが消灯している場合は、次の質問に進みます。
この情報を ISP に確認します。
DSL ポートが DSL ウォール ジャックへ接続されていない場合は、4 ピンまたは 6 ピン RJ-11 ケーブルを使用して、ポートとウォール ジャックを接続します。このケーブルは、一般的な電話ケーブルです。
ATM0 インターフェイスが管理上ダウンの状態になっているかどうかを確認するには、ルータの enable モードで次のコマンドを発行します。
Router#show interface atm 0 ATM0 is administratively down, line protocol is down <... snipped ...>
ATM0 インターフェイスの状態が管理上ダウンになっている場合は、ATM0 インターフェイスで no shutdown コマンドを発行します。
Router#configigure terminal Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z. Router(config)#interface atm 0 Router(config-if)#no shut Router(config-if)#end Router#write memory
ATM0 インターフェイスがダウン/ダウンの状態になっている場合は、ルータでは ADSL 回線のキャリアが検出されていません。この状態は、通常、次の 2 つの問題のいずれかを示しています。
DSL ウォール ジャックのアクティブ ピンが誤っています。
該当のウォール ジャックには、ISP からの DSL サービスが提供されていません。
Cisco DSL ルータの xDSL ポートのピン配置
RJ-11 コネクタでは、標準の RJ-11 6 ピン モジュラ ジャックを通じて、外部メディアへの xDSL 接続が提供されます。
ピン | 説明 |
---|---|
3 | XDSL_Tip |
4 | XDSL_Ring |
ルータのイネーブルモードからshow interface atm 0コマンドを発行し、ATM0インターフェイスがダウンおよびダウンしているかどうかを確認します。
Router#show interface atm 0 ATM0 is down, line protocol is down <... snipped ...>
ATM インターフェイスがダウン/ダウンの状態になっている(管理上ダウンではない)場合、DSL ウォール ジャックのピン配置を確認します。DSL ルータでは、ウォール ジャックへ ADSL 接続するために標準の RJ-11(4 ピンまたは 6 ピン)ケーブルを使用します。ADSL 信号の伝送には、RJ-11 ケーブルの中央のペア ピンが使用されます(6 ピン ケーブルのピン 3 とピン 4、または 4 ピン ケーブルのピン 2 とピン 3)。
ウォール ジャックのピンが正しいにもかかわらず、ATM0 インターフェイスがダウン/ダウンの状態になっている場合は、DSL ポートとウォール ジャックを接続している RJ-11 ケーブルを交換してください。RJ-11 ケーブルを交換してもなお、インターフェイスがダウン/ダウンの状態になっている場合は、ISP に連絡して、使用しているウォール ジャックで DSL サービスが使用可能であることを検証してもらってください。
ウォール ジャックのアクティブ ピンがわからない場合は、ISP に問い合せてください。
ADSL ケーブルに問題が無く、ピン配置も正しいことが確認できた場合は、次のステップとして、Cisco 827 用の正しい電源アダプタを使用していることを確認します。
注:827は、他の800シリーズルータと同じ電源を使用しません。
正しい電源アダプタを使用しているかどうかを確認するには、電源アダプタの背面で Output +12V 0.1A, -12V 0.1A, +5V 3A, -24V 0.12A, and -71V 0.12A の表記を確認します。電源装置に+12Vおよび–12Vフィードがない場合、これは別のCisco 800シリーズルータ用であり、827では動作しません。誤った電源装置を使用すると、Cisco 827の電源がオンになりますが、ISP DSLAMへのトレイン(接続)ができなくなります。
ここまでのレイヤ 1 のトラブルシューティング手順がすべて問題のない場合は、次のステップとして、DSL の動作モードが正しいことを確認します。ISP が使用している DMT テクノロジーがわからない場合は、dsl operating-mode auto を使用することをお勧めします。
動作モードの自動検出を設定するコマンドは、次のとおりです。
Router#configure terminal Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z. Router(config)#interface atm 0 Router(config-if)#dsl operating-mode auto Router(config-if)#end Router#write memory
この情報は、ISP または電話会社から入手します。
次の手順を実行して、正しい Virtual Path Identifier/Virtual Channel Identifier(VPI/VCI; 仮想パス識別子/仮想回線識別子)の値が、ルータに設定されているかどうかを確認します。
Cisco IOS® ソフトウェアのバージョンを検証します。
重要:これは Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.1(1)XB には当てはまりません。
Router#show version !--- Used to determine your Cisco IOS software release. Cisco Internetwork Operating System Software IOS (tm) C820 Software (C820-OSY656I-M), Version 12.1(3)XG3, EARLY DEPLOYMENT RELEASE SOFTWARE (fc1) !--- The two lines immediately preceding appear on one line on the router. TAC:Home:SW:IOS:Specials for info Copyright (c) 1986-2000 by cisco Systems, Inc. Compiled Wed 20-Dec-00 16:44 by detang Image text-base: 0x80013170, data-base: 0x80725044 <... snipped ...>
ルータでデバッグ ロギングを構成します。
Router#configure terminal Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z. Router(config)#logging console Router(config)#logging buffer Router(config)#service timestamp debug datetime msec Router(config)#service timestamp log datetime msec Router(config)#end Router#write memory Building configuration... [OK] Router#terminal monitor
ルータのデバッグをイネーブルにします。
Router#debug atm events ATM events debugging is on Router# 2d18h: 2d18h: RX interrupt: conid = 0, rxBd = 0x80C7EF74 length=52 2d18h: Data Cell received on vpi = 8 vci = 35 !--- Your VPI/VCI. 2d18h: 2d18h: RX interrupt: conid = 0, rxBd = 0x80C7EEC0 length=52 2d18h: Data Cell received on vpi = 8 vci = 35 2d18h: 2d18h: RX interrupt: conid = 0, rxBd = 0x80C7EECC length=52 2d18h: Data Cell received on vpi = 8 vci = 35 2d18h: 2d18h: RX interrupt: conid = 0, rxBd = 0x80C7EED8 length=52 2d18h: Data Cell received on vpi = 8 vci = 35
Cisco DSL ルータで debug ATM events が実行中であることを確認してから、インターネットに接続し、ISP から静的に割り当てられている IP アドレスに ping を実行します。
この IP アドレスが、Cisco DSL ルータに設定されているかどうかは、気にする必要はありません。重要なのは、ATM インターフェイスがアップ/アップの状態になっていることと、ISP から割り当てられている IP アドレスに ping を実行することです。ping テストを実行して、予想どおりの出力が表示されなかった場合は、ISP に連絡してサポートを受けてください。
ルータでデバッグをディセーブルにします。
(60 秒待ちます)
Router#undebug all !--- Used to turn off the debug events. All possible debugging has been turned off.
使用している VPI/VCI の値を確認し、必要に応じて設定を変更します。
デバッグの 60 秒間を経過しても出力が表示されない場合は、ISP に問い合せてください。
ブリッジ環境の場合は、デフォルト ゲートウェイへの ping を実行することで、接続のテストが行えます。通常、デフォルト ゲートウェイに ping が実行できれば、レイヤ 1 とレイヤ 2 のサービスが正常に機能していることが確認できます。MS-DOS ウィンドウをオープンし、デフォルト ゲートウェイに ping を実行してみます。
C:\>ping 192.168.1.1 Pinging 192.168.1.1 with 32 bytes of data: Reply from 192.168.1.1: bytes=32 time<10ms TTL=247 Reply from 192.168.1.1: bytes=32 time<10ms TTL=247 Reply from 192.168.1.1: bytes=32 time<10ms TTL=247 Reply from 192.168.1.1: bytes=32 time<10ms TTL=247 Ping statistics for 192.168.1.1: Packets: Sent = 4, Received = 4, Lost = 0 (0% loss), Approximate round trip times in milli-seconds: Minimum = 0ms, Maximum = 0ms, Average = 0ms
成功率が 80 〜 100 % であった場合は、有効なインターネット アドレス(198.133.219.25 は www.cisco.com)に ping を実行します。 PC からデフォルト ゲートウェイへの ping が実行できても、別のインターネット アドレスへの ping が実行できない場合は、スタティック デフォルト ルートが 1 つしか設定されていないことを確認します(たとえば、IP ルート 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1)。
この例では、正しいスタティックデフォルトルートがすでに存在していて、インターネットアドレスにpingできない場合は、ISPに連絡してルーティングの問題を解決してください。
pingテストが失敗すると、次のような出力が表示されます。この場合は、このドキュメントのトラブルシューティング手順を続行します。
C:\>ping 192.168.1.1 Pinging 192.168.1.1 with 32 bytes of data: Request timed out. Request timed out. Request timed out. Request timed out. Ping statistics for 192.168.1.1: Packets: Sent = 4, Received = 0, Lost = 4 (100% loss), Approximate round trip times in milli-seconds: Minimum = 0ms, Maximum = 0ms, Average = 0ms
Cisco DSL ルータが ISP にパケットを転送するには、ブリッジ インターフェイスがフォワーディング状態になっている必要があります。ブリッジ インターフェイスがブロッキング状態になっている場合は、ネットワークでループが発生しているため、まずこの問題を解決して、トラフィックを送信できるようにする必要があります。DSL ネットワークがループする一般的な原因は、ブリッジ接続された 2 つの DSL 回線が、同じ ISP に接続されているケースです。
Router#show spanning-tree Bridge group 1 is executing the ieee compatible Spanning Tree protocol Bridge Identifier has priority 32768, address 0001.96a4.a8bc Configured hello time 2, max age 20, forward delay 15 Current root has priority 32768, address 0000.0c25.36f4 Root port is 3 (ATM0), cost of root path is 1562 Topology change flag not set, detected flag not set Number of topology changes 2 last change occurred 00:00:56 ago from Ethernet0 Times: hold 1, topology change 35, notification 2 hello 2, max age 20, forward delay 15 Timers: hello 0, topology change 0, notification 0, aging 300 Port 2 (Ethernet0) of Bridge group 1 is forwarding Port path cost 100, Port priority 128, Port Identifier 128.2. Designated root has priority 32768, address 0000.0c25.36f4 Designated bridge has priority 32768, address 0001.96a4.a8bc Designated port id is 128.2, designated path cost 1562 Timers: message age 0, forward delay 0, hold 0 Number of transitions to forwarding state: 1 BPDU: sent 44, received 0 Port 3 (ATM0) of Bridge group 1 is forwarding Port path cost 1562, Port priority 128, Port Identifier 128.3. Designated root has priority 32768, address 0000.0c25.36f4 Designated bridge has priority 32768, address 0000.0c25.36f4 Designated port id is 128.17, designated path cost 0 Timers: message age 2, forward delay 0, hold 0 Number of transitions to forwarding state: 1 BPDU: sent 2, received 53 Router#
ブリッジインターフェイスが転送されていることを確認したら、ISPゲートウェイルータのレイヤ2メディアアクセスコントロール(MAC)アドレスを確認する必要があります。show bridgeコマンドを使用して、レイヤ2アドレスを確認します。このコマンドを実行すると、特定のブリッジ グループのレイヤ 2 エントリがすべて表示されます。
この例では、ブリッジ テーブルに 2 つのエントリがあります。最初のエントリは LAN の PC クライアントの MAC アドレスです。2 番目のエントリは ISP ゲートウェイ ルータ(デフォルト ゲートウェイ)の MAC アドレスです。 ISPゲートウェイルータのMACアドレスがブリッジテーブルにない場合は、ISPに連絡してネットワーク設定を確認してください。
Router#show bridge Total of 300 station blocks, 298 free Codes: P - permanent, S - self Bridge Group 1: Address Action Interface Age RX count TX count 0010.a492.e1d2 forward Ethernet0 4 163 4 0010.7bb9.bd1a forward ATM0 0 4 3 Router#
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
26-Sep-2006 |
初版 |