このドキュメントでは、基本的な Multiprotocol Label Switching(MPLS; マルチプロトコル ラベル スイッチング)ネットワークの設定方法について説明します。VPN や Traffic Engineering(TE; トラフィック エンジニアリング)などの高度な機能を設定する方法の詳細については、MPLS のサポート ページの『Configuration Examples and TechNotes』を参照してください。
MPLS の基本的な動作に精通していることが推奨されます。MPLS の概要については、「マルチプロトコル ラベル スイッチングの概要」を参照してください。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
Cisco IOS® ソフトウェア リリース 12.2(28)
Cisco 3600 ルータ
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
一般に MPLS ネットワークは、Label Switch Router(LSR; ラベル スイッチ ルータ)と呼ばれる MPLS 対応のルータから成るバックボーン ネットワークです。 通常このネットワークはコア LSR とエッジ LSR から構成されており、エッジ LSR がパケットにラベルを付加します。
次に MPLS ネットワークのセットアップ メカニズムを示します。
それぞれの LSR のルーティング テーブルが、Interior Gateway Protocol(IGP; 内部ゲートウェイ プロトコル)を使って計算されます。MPLS TE を導入する予定の場合は、Open Shortest Path First(OSPF)や Intermediate System-to-Intermediate System(IS-IS)などのリンクステート プロトコルが必要です。
Label Distribution Protocol(LDP; ラベル配布プロトコル)によって経路とラベルのバインディングがアドバタイズされます。これらのバインディングはルーティング テーブルと照らし合わせてチェックされます。LDP から学習された経路(プレフィクス/マスクとネクストホップ)が、IGP から学習されたルーティング テーブル内の経路と一致する場合は、LSR の Label Forwarding Information Base(LFIB; ラベル転送情報ベース)内にエントリが作成されます。
LSR では次の転送メカニズムが使用されます。
ラベルがないパケットがエッジ LSR で受信されると、Cisco Express Forwarding テーブルがチェックされて、必要に応じてパケットにラベルが付けられます。この LSR を入力 LSR と呼びます。
コア LSR のインバウンド インターフェイスにラベル付きパケットが到達すると、LFIB によってアウトバウンド インターフェイスと新しいラベルが提供され、アウトバウンド パケットに関連付けられます。
最後の LSR の前に位置するルータ(ペナルティメイト ホップ)がラベルを取り除き、ラベルなしでパケットを送信します。最後のホップを出力 LSR と呼びます。
次の図は、このネットワークのセットアップを示しています。
このセクションでは、このドキュメントで説明する機能を設定するために必要な情報を提供しています。
注:このドキュメントで使用されているコマンドの詳細を調べるには、Command Lookup Tool(登録ユーザ専用)を使用してください。
このドキュメントでは、次のネットワーク セットアップを使用します。
この手順をクイック コンフィギュレーション ガイドとして使用してください。
ネットワークを通常どおりにセットアップします。MPLS では、転送ベースを作成するために標準の IP 接続が必要です。
ルーティング プロトコル(OSPF または IS-IS)が正常に動作していることを確認します。これらのコマンドは、次のセクションの設定では斜体で表示されます。
一般設定モードで ip cef を有効にします(ip cef distributed が使用可能である場合は、これを使用するとパフォーマンスが向上します)。これは次のセクションの設定で太字で表示されています。
一般設定モードで各インターフェイスに対して mpls ip(または古い Cisco IOS ソフトウェア リリースの場合は tag-switching ip )を有効にします(次のセクションの設定では太字で表示)。mpls ip コマンドを使用した場合でも、一部の Cisco IOS ソフトウェア リリースでは show running の出力にこのコマンドが tag-switching ip と表示されることがあります(次のセクションの設定を参照)。
注:LSRには、32ビットのアドレスマスクを持つ(アップ)ループバックインターフェイスが必要で、これらのインターフェイスはグローバルIPルーティングテーブルで到達可能である必要があります。
このドキュメントでは、次の構成を使用します。
Pomerol |
---|
! version 12.2 ! hostname Pomerol ! ip subnet-zero ! ip cef ! interface Loopback0 ip address 10.10.10.3 255.255.255.255 ! interface Serial2/0 ip address 10.1.1.21 255.255.255.252 tag-switching ip ! interface Serial3/0 ip address 10.1.1.6 255.255.255.252 tag-switching ip ! interface Serial4/0 ip address 10.1.1.9 255.255.255.252 tag-switching ip ! router ospf 10 log-adjacency-changes network 10.0.0.0 0.255.255.255 area 9 ! ip classless ! end |
Pulligny |
---|
! version 12.2 ! hostname Pulligny ! ! ip subnet-zero ! ip cef ! interface Loopback0 ip address 10.10.10.2 255.255.255.255 ! interface Serial2/0 ip address 10.1.1.2 255.255.255.252 tag-switching ip ! interface Serial3/0 ip address 10.1.1.10 255.255.255.252 tag-switching ip ! router ospf 10 log-adjacency-changes network 10.0.0.0 0.255.255.255 area 9 ! ip classless ! end |
Pauillac |
---|
! version 12.2 ! hostname Pauillac ! ip subnet-zero ! ip cef ! interface Loopback0 ip address 10.10.10.1 255.255.255.255 ! interface Serial2/0 ip address 10.1.1.13 255.255.255.252 tag-switching ip ! interface Serial3/0 ip address 10.1.1.17 255.255.255.252 tag-switching ip ! interface Serial4/0 ip address 10.1.1.1 255.255.255.252 tag-switching ip ! interface Serial5/0 ip address 10.1.1.5 255.255.255.252 tag-switching ip ! router ospf 10 log-adjacency-changes network 10.0.0.0 0.255.255.255 area 9 ! ip classless ! end |
ペスカーラ |
---|
! version 12.2 ! hostname Pescara ! ip subnet-zero ! ip cef ! interface Loopback0 ip address 10.10.10.4 255.255.255.255 ! interface Serial2/0 ip address 10.1.1.14 255.255.255.252 tag-switching ip ! router ospf 10 log-adjacency-changes network 10.0.0.0 0.255.255.255 area 9 ! ip classless ! end |
ペーザロ |
---|
! version 12.2 ! hostname Pesaro ! ip subnet-zero ! ip cef ! interface Loopback0 ip address 10.10.10.6 255.255.255.255 ! interface Serial2/0 ip address 10.1.1.22 255.255.255.252 tag-switching ip ! router ospf 10 log-adjacency-changes network 10.0.0.0 0.255.255.255 area 9 ! ip classless ! end |
Perugia |
---|
! version 12.2 ! hostname Perugia ! ip subnet-zero ! ip cef ! interface Loopback0 ip address 10.10.10.5 255.255.255.255 ! interface Serial2/0 ip address 10.1.1.18 255.255.255.252 tag-switching ip ! router ospf 10 log-adjacency-changes network 10.0.0.0 0.255.255.255 area 9 ! ip classless ! end |
この項では、設定が正常に動作しているかどうかを確認する際に役立つ情報を紹介しています。
また、「IS-IS を使用した MPLS の基本設定の設定例」で使用されているコマンドも適用できます。
この設定例を説明するために、Pomerol LSR 上の 10.10.10.4 などの特定の宛先を取り上げます。
一部の show コマンドはアウトプット インタープリタ ツールによってサポートされています(登録ユーザ専用)。このツールを使用することによって、show コマンド出力の分析結果を表示できます。
show ip route:これを使用して、IP ルーティング テーブル内のこの宛先の IP ルートを検査します:
Pomerol#show ip route 10.10.10.4 Routing entry for 10.10.10.4/32 Known via "ospf 10", distance 110, metric 129, type intra area Last update from 10.1.1.5 on Serial3/0, 17:29:23 ago Routing Descriptor Blocks: * 10.1.1.5, from 10.10.10.4, 17:29:23 ago, via Serial3/0 Route metric is 129, traffic share count is 1
show mpls forwarding-table:MPLS 転送テーブルの検査に使用されます。このテーブルは、標準的な IP ルーティング用の IP ルーティング テーブルのラベル スイッチングに相当します。インバウンド/アウトバウンド ラベルとパケットの説明が含まれています。
Pomerol#show mpls forwarding-table Local Outgoing Prefix Bytes tag Outgoing Next Hop tag tag or VC or Tunnel Id switched interface 16 Pop tag 10.1.1.12/30 636 Se3/0 point2point 17 Pop tag 10.10.10.1/32 0 Se3/0 point2point 18 21 10.10.10.4/32 0 Se3/0 point2point 19 Pop tag 10.1.1.0/30 0 Se4/0 point2point Pop tag 10.1.1.0/30 0 Se3/0 point2point 20 Pop tag 10.10.10.6/32 612 Se2/0 point2point 21 Pop tag 10.1.1.16/30 0 Se3/0 point2point 22 16 10.10.10.5/32 0 Se3/0 point2point 23 Pop tag 10.10.10.2/32 0 Se4/0 point2point
show mpls forwarding-table detail:MPLS 転送テーブルの詳細を確認するために使用されます:
Pomerol#show mpls forwarding-table 10.10.10.4 32 detail Local Outgoing Prefix Bytes tag Outgoing Next Hop tag tag or VC or Tunnel Id switched interface 18 21 10.10.10.4/32 0 Se3/0 point2point MAC/Encaps=4/8, MRU=1500, Tag Stack{21} 0F008847 00015000 No output feature configured Per-packet load-sharing
show mpls ldp bindings または show tag-switching tdp bindings(使用する Cisco IOS ソフトウェア リリースのバージョンに基づく):特定の宛先に関連付けられているラベルを確認するために使われます。ローカル バインディングとリモート バインディングの両方を表示できます。
Pomerol#show tag-switching tdp bindings 10.10.10.4 32 tib entry: 10.10.10.4/32, rev 14 local binding: tag: 18 remote binding: tsr: 10.10.10.1:0, tag: 21 remote binding: tsr: 10.10.10.2:0, tag: 23 remote binding: tsr: 10.10.10.6:612, tag: 20
各転送クラスのラベルは、優先(最短)パス上にない場合でも、各 LSR で確立されることに注意してください。その場合、10.10.10.4/32 宛てのパケットは 10.10.10.1(ラベル 21)または 10.10.10.2(ラベル 23)で伝送可能です。 最初の方法が最短なので、LSR では最初の方法が選択されます。この決定は、標準の IP ルーティング テーブル(この場合は OSPF を使用して作成される)を使って行われます。
show ip cef detail:Cisco Express Forwarding が適切に動作してタグが正しく交換されることを確認するために使われます:
Pomerol#show ip cef 10.10.10.4 detail 10.10.10.4/32, version 37, cached adjacency to Serial3/0 0 packets, 0 bytes tag information set local tag: 18 fast tag rewrite with Se3/0, point2point, tags imposed: {21} via 10.1.1.5, Serial3/0, 0 dependencies next hop 10.1.1.5, Serial3/0 valid cached adjacency tag rewrite with Se3/0, point2point, tags imposed: {21}
MPLS のトラブルシューティングについては、「MPLS のトラブルシューティング」を参照してください。
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
10-Aug-2005 |
初版 |