このドキュメントでは、Cisco ルータおよびエンタープライズ スイッチ上での Packet over SONET(POS)の自動保護スイッチング(APS)の重要な部分である Protect Group Protocol(PGP)について説明します。
このドキュメントには特定の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
ベルコア(現在は Telcordia)の資料「TR-TSY-000253, SONET Transport Systems;Common Generic Criteria, Section 5.3」では、自動保護スイッチング(APS)を定義しています。 この機能に使用される保護メカニズムのアーキテクチャは、冗長回線ペアが現用回線と保護回線で構成される 1+1 アーキテクチャとなっています。
以下の図に、有効な SONET 保護設定を示します。保護インターフェイスと現用インターフェイスがそれぞれ異なるポートにある場合は、Cisco POS 保護スキームを設定できます。これらのポートは同じルータ上のポートにすることも、同じルータの同じライン カード上のポートにすることもできます。ただし、その場合には、ルータ インターフェイスまたはリンクの障害に対する保護対策が必要です。ほとんどの実稼働環境への導入では、現用インターフェイスと保護インターフェイスを別々のルータ上に配置します。このような 2 台のルータを使用した APS 設定では、PGP のようなプロトコルが必要です。PGP は現用ルータと保護ルータの間のプロトコルを定義するものです。
Cisco IOS® ソフトウェア リリース 12.0(10)S 以降、PGP の 2 つのバージョンが使用できるようになりました。現用ルータと保護ルータは同じ PGP バージョンを使用して、ネゴシエーション メッセージをアウトオブバンド通信リンクで交換する必要があります。ネゴシエーション中に、保護ルータは複数の PGP バージョンを番号の高いほうから順に送信します。現用ルータは、自分のバージョンより大きいバージョン番号の Hello メッセージを無視し、それ以外のメッセージには応答します。Hello メッセージに応答した後、現用ルータはそのバージョン番号を以降のすべての応答で使用します。
現在の Cisco IOS リリースでは、現用ルータと保護ルータが同じ IOS リリースを実行する必要はありません。したがって、現用ルータと保護ルータをそれぞれ独立してアップグレードすることができます。
Cisco IOS ソフトウェアはバージョンの不一致を検出すると、次のようなログ メッセージを出力します。
Sep 10 06:34:25.305 cdt: %SONET-3-MISVER: POS4/0: APS version mismatch. WARNING: Loss of Working-Protect link can deselect both protect and working interfaces. Protect router requires software upgrade for full protection. Sep 10 06:34:25.305 cdt: %SONET-3-APSCOMMEST: POS4/0: Link to protect channel established - protocol version 0 Sep 10 06:34:33.257 cdt: %SONET-3-APSCOMMEST: POS4/0: Link to protect channel established - protocol version 1
このリンクでパフォーマンスの劣化と高い率でのパケット損失が発生している場合、現用ルータと保護ルータ間の APS バージョン ネゴシエーションは失敗します。その結果、両方のルータが「down-rev」の PGP バージョンを採用することになります。この問題の原因は、破損したネゴシエーション メッセージにあります。PGP 通信リンクで高い率でのパケット損失が発生していると、現用ルータは保護ルータから送信された、バージョン番号をアドバタイズする Hello メッセージを受け取れない場合性があります。その場合、後続の down-rev メッセージしか確認できません。このシナリオでは、現用ルータと保護ルータの両方が低いバージョン番号に限定されることになります。Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.0(21)S ではこの問題を回避するために、必要に応じて即時の再ネゴシエーションを行います。
IOS ソフトウェア リリース 12.0(21)S より前のリリースを使用していて、この問題が発生した場合は、以下の回避策を使用して通常の PGP バージョンを復元してください。この手順は、2 つのルータ間で信頼性の高いリンクが確立された後に実行します。
現用インターフェイスが選択されていることを確認します。それには、aps force 0 コマンドを使用できます。
保護インターフェイスをシャットダウンします。現用インターフェイスが保護インターフェイスとの通信を失ったと宣言するのに十分な時間、ダウン状態のままにします。
保護インターフェイスで no shutdown コマンドを使用して、プロトコル ネゴシエーションを再開します。
PGP 通信障害は、次のいずれかの理由で発生する可能性があります。
現用ルータの障害
保護ルータの障害
PGP チャネルの障害
PGP チャネルの障害は、次のいずれかの理由で発生する可能性があります。
トラフィックの輻輳
アラームによるインターフェイス障害
インターフェイスのハードウェア障害
輻輳を最小限に抑え、PGP チャネル障害を回避するために、PGP のインターフェイスの帯域幅を増やすという方法もあります。現用ルータは、Hello メッセージの送信間隔ごとに保護ルータから Hello メッセージを受信するものと想定します。現用ルータが Hello メッセージを受信しないまま、ホールド間隔で指定された時間間隔が経過すると、現用ルータは PGP 障害が発生したと想定し、APS を中断します。同様に、保護ルータが Hello 確認応答を現用ルータから受信しないまま、ホールド間隔タイマーの間隔が経過すると、保護ルータは PGP 障害を宣言し、スイッチオーバーが発生することがあります。
POS APS は「厳密な」SONET APS とは異なります。POS APS では、追加のコンフィギュレーション コマンドで PGP のパラメータを設定できます。
Hello タイマーとホールド タイマーの設定を変更するには、aps timers コマンドを使用します。Hello タイマーは Hello パケットの送信間隔を定義します。ホールド タイマーは、保護インターフェイス プロセスが現用インターフェイスのルータがダウンしていると宣言するまでの時間を設定します。デフォルトでは、ホールド タイムは hello タイムの 3 倍以上となります。
以下に、POS インターフェイス 5/0/0 の回路 1 に 2 秒の hello タイムと 6 秒のホールド タイムを指定する例を示します。
router#configure terminal router(config)#interface pos 5/0/0 router(config-if)#aps working 1 router(config-if)#aps timers 2 6 router(config-if)#end
上記に示されているように、aps timers コマンドは保護インターフェイスにのみ設定します。
現用インターフェイスと保護インターフェイスのそれぞれに固有の hello タイムとホールド タイムを設定できます。現用インターフェイスが保護インターフェイスと通信する場合、保護インターフェイスで指定されたタイマー値が使用されます。現用インターフェイスが保護インターフェイスと通信していない場合は、現用インターフェイスで指定された hello タイマーおよびホールド タイマーが使用されます。
POS APS でのみサポートされるコマンドには、authentication コマンドもあります。このコマンドは、現用インターフェイスと保護インターフェイスのそれぞれを制御するプロセス間の認証を有効にします。このコマンドを使用して、保護インターフェイスまたは現用インターフェイスでパケットを受け入れるために提示しなければならない文字列を指定します。最大 8 文字の英数字を使用できます。
APS のトラブルシューティングでサポートが必要な場合は、Cisco Technical Assistance Center(TAC)にお問い合わせください。 保護インターフェイスと現用インターフェイスが設定されたルータに対して以下の show コマンドを実行し、それぞれの出力を収集してください。
show version:システムのハードウェアおよびソフトウェアのバージョン設定を表示します。このコマンドは、設定ファイルとブート イメージの名前とソースも表示します。
show controller pos:POS コントローラに関する情報を表示します。
show aps:現在の自動保護スイッチング(APS)機能に関する情報を表示します。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
15-Dec-2005 |
初版 |