この文書は、光テクノロジーに関するいくつかの公式や重要な情報を簡潔にまとめたものです。このドキュメントでは、デシベル(dB)、デシベル/ミリワット(dBm)、減衰、および測定に焦点を合わせ、光ファイバの概要について説明します。
このドキュメントに関する固有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、クリアな(デフォルト)設定で作業を開始しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
表記法の詳細については、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
デシベル(dB)は信号強度の相対的な差異を表すための単位です。デシベルは、次に示すように、2 つの信号のパワー比の対数(底 = 10)として表されます。
dB = 10 x Log10(P1/P2)
ここで、Log10 は 10 を底とする対数です。P1 および P2 は比較するパワーです。
注:Log10は、Neparian Logarithm(LnまたはLN)base e logarithmとは異なります。
信号の振幅も dB で表すことができます。パワーは、信号振幅の 2 乗に比例します。したがって、dB は次のように表すことができます。
dB = 20 x Log10(V1/V2)
ここで、V1 および V2 は比較する振幅です。
1 ベル(現在は使用されない単位)= Log10(P1/P2)
1 デシベル(dB)= 1 ベル / 10 = 10 * Log10(P1/P2)
dBr = dB(relative)= dB = 10 * Log10(P1/P2)
Log10 (AxB) = Log10 (A) + Log10 (B)
Log10 (A/B) = Log10 (A) - Log10 (B)
Log10 (1/A) = - Log10 (A)
Log10 (0,01) = - Log10 (100) = -2
Log10 (0,1) = - Log10(10) = - 1
Log10 (1) = 0
Log10 (2) = 0,3
Log10 (4) = 0,6
Log10 (10) = 1
Log10 (20) = 1,3
Log10 (2 x 10) = Log10 (2) + Log10 (10) = 1 + 0,3
Log10 (100) = 2
Log10 (1000) = 3
Log10 (10000) = 4
次の表に、パワー比と、その対数から計算される dB(デシベル)との関係を示します。
電力比 | dB = 10 x Log10 (パワー比) |
---|---|
AxB | x dB = 10 x Log10(A) + 10 x Log10(B) |
A/B | x dB = 10 x Log10(A) - 10 x Log10(B) |
1/A | x dB = + 10 x Log10 (1/A) = - 10 x Log10 (A) |
0,01 | - 20 dB = - 10 x Log10(100) |
0、1 | - 10 dB = 10 x Log10 (1) |
1 | 0 dB = 10 x Log10 (1) |
2 | 3 dB = 10 x Log10 (2) |
4 | 6 dB = 10 x Log10 (4) |
10 | 10 dB = 10 x Log10 (10) |
20 | 13 dB = 10 x (Log10 (10) + Log10 (2)) |
100 | 20 dB = 10 x Log10 (100) |
1,000 | 30 dB = 10 x Log10 (1000) |
10,000 | 40 dB = 10 x Log10 (10000) |
dBm = dB milliwatt = 10 X Log10(mW 単位で表した電力/1 mW)
電源 | 比 | dBm = 10 X Log10(mW 単位で表した電力/1 mW) |
---|---|---|
1 mW | 1 mW/1 mW=1 | 0 dBm = 10 x Log10 (1) |
2 mW | 2 mW/1 mW=2 | 3 dBm = 10 x Log10 (2) |
4 mW | 4 mW/1 mW=4 | 6 dBm = 10 x Log10 (4) |
10 mW | 10 mW/1 mW=10 | 10 dBm = 10 x Log10 (10) |
0,1 W | 100 mW/1 mW=100 | 20 dBm = 10 x Log10 (100) |
1 W | 1000 mW/1 mW=1000 | 30 dBm = 10 x Log10 (1000) |
10 W | 10000 mW/1 mW=10000 | 40 dBm = 10 x Log10 (10000) |
dBW = dB W = 10 X Log10(W 単位で表した電力/1 W)
電源 | 比 | dBm = 10 X Log10(mW 単位で表した電力/1 mW) |
---|---|---|
1 W | 1 W / 1 W = 1 | 0 dBW = 10 x Log10 (1) |
2 W | 2 W / 1 W = 2 | 3 dBW = 10 x Log10 (2) |
4 W | 4 W / 1 W = 4 | 6 dBW = 10 x Log10 (4) |
10 W | 10 W / 1 W = 10 | 10 dBW = 10 x Log10 (10) |
100 mW | 0,1 W / 1 W = 0,1 | -10 dBW = -10 x Log10 (10) |
10 mW | 0.01 W / 1 W = 1/100 | -20 dBW = -10 x Log10 (100) |
1 mW | 0.001 W / 1 W = 1/1000 | -30 dBW = -10 x Log10 (1000) |
パワーの利得と電圧の利得の比較表を次に示します。
dB | 電力比 | 電圧比 | dB | 電力比 | 電圧比 |
---|---|---|---|---|---|
0 | 1,00 | 1,00 | 10 | 10,00 | 3,16 |
1 | 1,26 | 1,12 | 11 | 12,59 | 3,55 |
2 | 1,58 | 1,26 | 12 | 15,85 | 3,98 |
3 | 2,00 | 1,41 | 13 | 19,95 | 4,47 |
4 | 2,51 | 1,58 | 14 | 25,12 | 5,01 |
5 | 3,16 | 1,78 | 15 | 31,62 | 5,62 |
6 | 3,98 | 2,00 | 16 | 39,81 | 6,31 |
7 | 5,01 | 2,24 | 17 | 50,12 | 7,08 |
8 | 6,31 | 2,51 | 18 | 63,10 | 7,94 |
9 | 7,94 | 2,82 | 19 | 79,43 | 8,91 |
10 | 10,00 | 3,16 | 20 | 100,00 | 10,00 |
この情報から、減衰および利得を求める公式が定義できます。
減衰(dB)= 10 x Log10(P in/P out) = 20xLog10(V in/V out)
利得(dB)= 10 x Log10(P out/P in) = 20 x Log10(V out/V in)
光ファイバは、情報を伝達する媒体の一種です。光ファイバはシリカ系ガラス製で、中心部(コア)はクラッドにより覆われています。ファイバの中心部分(コア)の屈折率は、N1 で表します。コアのまわりを覆っているクラッドの屈折率はそれよりも低く、N2 で表します。ファイバに光が入ると、クラッドは光をファイバ コアに閉じ込め、光がコアとクラッドの境界面で反射を繰り返しながら、ファイバの中を進んでいきます。
図 1 – 光ファイバの構造
現在、最も広く製造販売されているのは、シングルモード(SM)ファイバとマルチモード(MM)ファイバです。図 2 に、これら両方のファイバ タイプを示します。
図 2 - SM ファイバと MM ファイバ
少量の光をファイバに入射します。電磁スペクトル(図 3 を参照)が可視波長(400 nm 〜 700 nm)のものと、近赤外波長(700 nm 〜 1700 nm)のものとに分かれます。
図 3 - 電磁スペクトル
光ファイバによる通信では、伝送損失が少なくなる特別な 4 種類の波長が使用されます。次の表に、それらの波長を示します。
Windows | 波長 | 損失 |
---|---|---|
第 1 波長 | 850 nm | 3 dB/km |
第 2 波長 | 1310 nm | 0.4 dB/km |
第 3 波長 | 1550 nm(C バンド) | 0.2 dB/km |
第 4 波長 | 1625 nm(L バンド) | 0.2 dB/km |
光の損失を測定するには、dBm と dB の 2 つの単位を使用します。dBm は、mW を基準とした実際のパワー レベルを表します。dB(デシベル)は、パワー間の差異を表します。
図 4 - 光パワーの測定方法
光入力パワーが P1(dBm)、光出力パワーが P2(dBm)、パワー損失は P1 - P2 dB です。入力と出力の間でどれくらいの電力が損失したかを確認するには、次のパワー換算表の dB 値を参照してください。
dB | 入力パワーに対する出力パワーのパーセンテージ | 失われたパワーのパーセンテージ | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 79 % | 21 % | - |
2 | 63 % | 37 % | - |
3 | 50 % | 50 % | 入力パワーの 1/2 |
4 | 40% | 60% | - |
5 | 32 % | 68 % | - |
6 | 25 % | 75% | 入力パワーの 1/4 |
7 | 20 % | 80% | 入力パワーの 1/5 |
8 | 16 % | 84 % | 入力パワーの 1/6 |
9 | 12 % | 88 % | 入力パワーの 1/8 |
10 | 10 % | 90 % | 入力パワーの 1/10 |
11 | 8 % | 92% | 入力パワーの 1/12 |
12 | 6.3 % | 93.7 % | 入力パワーの 1/16 |
13 | 5% | 95 % | 入力パワーの 1/20 |
14 | 4% | 96% | 入力パワーの 1/25 |
15 | 3.2 % | 96.8 % | 入力パワーの 1/30 |
たとえば、ファイバへの直接入射光(LD)の光入力が 0 dBm で、出力パワーが -15 dBm であった場合、ファイバの光損失は次のように計算されます。
Input Output Optical Loss 0dBm - (-15dBm) =15dB
パワー変換の表では、光損失の 15 dB は損失した光パワーの 96.8 % に相当します。つまり、ファイバを伝送される光は、入力光パワーの 3.2 % に過ぎないことがわかります。
光ファイバを相互接続すると、必ず損失が発生します。コネクタやスプライスによる挿入損失とは、そのデバイスをシステムに挿入したときのパワーの差です。たとえば、ある長さのファイバを用意して光を入射し、そこを通った光パワーを測定します。読み取り値(P1)を書き留めます。ここで、ファイバを半分に切断して終端し、再度、パワーを測定します。読み取り値(P2)を書き留めます。最初の測定値(P1)と 2 番目の測定値(P2)との差異が、挿入損失になります。つまり、ラインにコネクタを挿入したときの光パワーの損失が、挿入損失です。これは、次のように求めます。
IL(dB) = 10 Log10(P2 / P1)
挿入損失についは、次の重要な 2 点について理解しておく必要があります。
挿入損失とは、同一のファイバで測定した値です。
データ送信側のコアの直径(または NA)がデータを受信するファイバの NA よりも大きい場合は、損失が大きくなります。
Ldia = 10 Log10(diar/diat)2
LNA = 10 Log10(NAr/NAt)2
定義:
Ldia = 損失直径
diar = 受信側の直径
diat = 送信側の直径
LNA = 光ファイバの損失
フレネル反射により、さらに損失が発生する可能性があります。フレネル反射は、2 つのファイバが離れていて、屈折率の不連続な部分が存在しているときに発生します。2 つのガラスファイバの間に空気のギャップがある場合、フレネル反射は 0.32 dB です。
損失はラウンチによって左右されます。
挿入損失はラウンチに左右され、結合されている 2 つのファイバの状態によって影響されます。ラウンチが短い場合は、クラッドとコアの両方で伝送される光エネルギーによって、光ファイバがオーバーフィルド状態になります。距離が長くなるにつれて余分なエネルギーが失われていき、最後には equilibrium mode distribution(EMD; 平衡モード分散)という状態になります。ラウンチが長い場合、ファイバは EMD に到達しています。余分なエネルギーはすでに失われており、コネクタの地点までは伝達されません。
ファイバの相互接続部を光が通過すると、余分なクラッド モードによってファイバが再びオーバーフィルド状態になります。このモードの光はすぐに減衰します。受信側が短い場合はこの状態になります。短い受信側ファイバの出力パワーを測定すると、余分なエネルギーが測定されます。ただし、余分なエネルギーは、遠くまでは伝達されません。この測定値は正しい値とはいえません。逆に、受信側ファイバが EMD に到達するほど長い場合は、挿入損失の測定値は高くなりますが、実際の状態を反映した値になります。
EMD(ラウンチと受信側がともに長い状態)は、簡単にシミュレートできます。それには、マンドレルにファイバを 5 回巻きつけます。これによって、クラッドモードが取り除かれます。
リンクのパワー バジェットを大まかに計算できます。これには、ファイバ間の接続損失を 0.75 dB とし、ファイバの長さに比例してファイバ損失が発生するものとします。
100 m の間にパッチ パネルが 3 つあり、3.5 dB/km の損失特性を持つ 62.5/125 ファイバの場合の総損失は、次に示すように 2.6 dB になります。
ファイバ:3.5 dB/km = 100 mの場合0.35 dB
パッチパネル 1 = 0.75 dB
パッチパネル 2 = 0.75 dB
パッチパネル 3 = 0.75 dB
合計 = 2.6 dB
実際の測定値は、これより低くなるのが普通です。たとえば、AMP の SC コネクタの平均挿入損失は 0.3 dB です。この場合のリンク損失は 1.4 dB だけです。10 Mbps のイーサネットであっても、155Mbps の ATM であっても、損失は同じです。
ファイバ システムの認証では、Optical time-domain reflectometry(OTDR; 光時間領域反射測定)計測器がよく使われます。OTDR 計測器は、ファイバに光を入射し、戻ってきた光を検出して、結果をグラフィックに表示します。OTDR 計測器は、光の戻ってくる時間を測定して、事象への隔たりを割り出します。表示されたグラフを確認することで、単位長さ当たりの損失を調べたり、スプライスやコネクタの接続状態を評価したり、不具合が起きている地点を特定したりできます。OTDR 計測器は特定の地点にズームインして、リンクの一部をクローズアップできます。
リンクの認証や評価は、パワーメータと信号光源があれば実施できる場合が多いものですが、OTDR 計測器を使用すれば、リンク全体の状態の的確な把握と診断が可能になります。ただし、OTDR 計測器での表示を理解するには、多くのトレーニングとある程度のスキルが必要です。
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
20-Apr-2005 |
初版 |