このドキュメントでは、RJ-45 コンソール ポートを搭載した Cisco 適応型セキュリティ アプライアンス(ASA)のコンソール ポートに US Robotics モデムを取り付ける方法について説明します。この手順は、他のブランドのモデムにも使用できますが、同等の初期化ストリングについてはモデムのドキュメンテーションを参照する必要があります。
注:ルータまたはスイッチの場合と同様に、ASAのAUXポートにモデムを接続することはできません。AUX ポートは、ターミナル サーバなどのデバイスを対象としています。
注:保護されていないモデムはコンソールポートに接続しないでください。コンソール ポートでは、キャリア検知が失われてもユーザをログ オフしないため、セキュリティ ホールが発生します。これを回避するには、セキュア モデムを使用するか、もしくは timeout コマンドで指定された時間が経過するとユーザをログオフするコンソール タイムアウトの設定を ASA で使用します。コンソール ポートにモデムを接続する場合の長所と短所の詳細については、このドキュメントの「コンソール ポートに関する問題」の項を参照してください。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの情報は、ソフトウェア バージョン 7.0 以降が稼働する Cisco 5500 シリーズ ASA に基づくものです。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
モデムをコンソール接続用に設定します。コンソール ポートにはリバース Telnet 機能がないため、ASA のコンソール ポートにモデムを接続する前に、モデムの初期化文字列(init string)を設定する必要があります。
ASA のコンソール ポートにモデムを接続します。
着信コールを受け入れるように ASA を設定します。
これらのタスクは、このドキュメントの「手順」の項で説明しています。
シスコ ASA のコンソール ポートに US Robotics モデムを接続するには、次の手順を実行します。
モデムを PC に接続します。この手順は、モデムにアクセスして初期化文字列を設定するために必要です。
「Terminal」というマークがある RJ-45-to-DB-9 アダプタを PC の COM ポートに接続します。アダプタの RJ-45 側の端を、フラットサテン型のロール型 RJ-45--RJ-45 ケーブル(部品番号 CAB-500RJ=)に接続します。このケーブルは、コンソール接続用にすべてのシスコ ASA に付属しています。また、このロール型ケーブルをモデムの DB-25 ポートに接続するには、「MODEM」と記されている RJ-45 to DB-25 アダプタ(部品番号 CAB-25AS-MMOD)も必要です。
モデムの電源を切り、DIP スイッチの 7 番を下側に設定し、再び電源を入れます。これによって工場出荷時のデフォルトに戻ります。この後、モデムの電源を再び切ります。DIP スイッチの設定については、この文書の「その他」の項を参照してください。
PC からモデムへのリバース Telnet
HyperTerminalなどのPCでターミナルエミュレーションプログラムを使用し、手順1で接続したCOMポートからPCモデムにアクセスします。COMポートからPCモデムに接続したら、初期化文字列を適用する必要があります(手順4を参照)。 例については、『シスコの Access サーバと組み合わせて動作させるためのクライアント モデムの設定方法』の「HyperTerminal でのセッション例」を参照してください。
必要な初期化文字列の設定を NVRAM に書き込むために、次の初期化文字列を入力します。
AT&FS0=1&C1&D2&H0&R1&B1&M4&K0&N6&W
注:この文字列の0はゼロです。初期化文字列の詳細については、この文書の「その他」の項を参照してください。
注:モデムからOK応答が返されます。モデムから応答がない場合は、モデムのハードウェアやケーブルが正しく動作しているかどうかを確認してください。
エコーと結果コードを無効にするために、次の初期化文字列を入力します。
ATE0Q1&W
DIP スイッチの 4 番と 8 番を下側に変更し、ほかは上側のままにします。モデムの電源を入れ直します。
ロール型 RJ-45 ケーブルを PC の RJ-45-to-DB-9 のアダプタからはずし、ASA のコンソール ポートに接続します。
注:両端にRJ-45-to-DB-25アダプタ(部品番号CAB-25AS-MMOD)が付いたロール型RJ-45-to-RJ-45フラットサテンケーブルは、信号ペアが正しくないため使用できません。
モデムの電源を投入します。
セキュリティを確保するため、ASA の console timeout と enable password を設定する必要があります。
!--- Configure console idle timeout for 10 minutes. ASA5510(config)#console timeout 10
ASA に enable password がないと、着信接続はイネーブル モードに入れません。
!--- In order to allow incoming calls to enter enable mode: ASA5510(config)#enable password asa123
電話回線がアクティブであり、機能していることを確認するには、アナログの電話を使用します。その後、そのアナログ電話回線にモデムを接続します。
ASA への EXEC モデム コールを他のデバイス(PC など)から発呼して、モデムの接続性をテストします。
PC 上で HyperTerminal などのターミナル エミュレーション ソフトウェアを使用し、COM ポートのいずれかを経由して PC のモデムにアクセスします。COM ポートを経由して PC のモデムに接続したら、ASA に対してダイヤルを開始します。例については、『シスコの Access サーバと組み合わせて動作させるためのクライアント モデムの設定方法』の「HyperTerminal でのセッション例」を参照してください。
注:コンソールポート行はポイントツーポイントプロトコル(PPP)を実行しません。 したがって、この接続のために Microsoft Windows のダイヤルアップ ネットワーク(DUN)を使用してダイヤルすることはできません。
接続が確立されたら、ASA でプロンプトを表示するために Return を押します。
ASA のコンソール ポートにモデムを接続する場合の長所は複数あります。しかし、短所もかなりあります。
パスワードをリモートから回復できる。引き続き第三者が ASA の近くにいて電源をオフ/オンする必要がある場合もありますが、その点を除けば、ASA の設置場所にいるのとまったく同じです。
モデムを非同期ポートのない ASA に接続する場合に便利な方法である。設定や管理のために ASA にアクセスする必要がある場合に役立ちます。
コンソール ポートは RS232 のモデム制御(Data Set Ready/Data Carrier Detect(DSR/DCD; データ セット レディ/データ キャリア検出)、Data Terminal Ready(DTR; データ端末レディ))をサポートしていない。 このため、exec セッションが終了(ログアウト)した際に、モデム接続は自動的には終了しません。ユーザは、セッションを手動で切断する必要があります。
さらに深刻な問題で、モデム接続を解除しても EXEC セッションが自動的にはリセットされない。これにより、以降のモデムへのコールで、パスワードを入力しなくてもコンソールにアクセスできてしまうというセキュリティ ホールが生じる可能性があります。ASA 上で厳しい exec-timeout を設定すると、このセキュリティ ホールを小さくできます。しかし、セキュリティが重要な場合は、パスワード プロンプト機能のあるモデムを使用してください。
他の非同期回線とは異なり、コンソール ポートはハードウェア(Clear To Send/Ready To Send(CTS/RTS))フロー制御をサポートしていない。フロー制御は使用しないことをお勧めします。ただし、データ オーバーランが発生した場合は、ソフトウェア(XON/XOFF)フロー制御を有効にしても構いません。
コンソール ポートにはリバース Telnet 機能がない。モデムに格納されている初期化文字列が失われた場合、修復のためにはモデムを ASA から物理的に取りはずし、別のデバイス(PC など)を接続して再初期化するしかありません。
コンソール ポートには対応する非同期インターフェイスがないため、コンソール ポートをダイヤルオンデマンド ルーティング用には使用できない。
次の表では、US Robotics モデムの DIP スイッチの機能を一覧しています。
ON = 下、OFF = 上になります。
DIP スイッチ | 説明 |
---|---|
1 | DTR を無効化 |
0 | 音声/数値による結果コード |
3 | 結果コードの表示 |
4 | コマンド モードでのローカル エコーの抑制 |
5 | 自動応答の抑制 |
6 | CD 無効化 |
7 | 電源投入時および ATZ によりソフトウェアをデフォルトにリセット |
8 | AT コマンドの設定認識 |
ここでの設定で入力した初期化文字列には次の特性があります。
AT&FS0=1&C1&D2&H0&R1&B1&M4&K0&N6&W
AT コマンド | 説明 |
---|---|
&F0 | 工場出荷時のデフォルトに設定(フロー制御なし) |
S0=1 | 最初のリングに対して自動応答 |
&C1 | Data Carrier Detect にリモート モデムからのキャリアの実際の状態を使用(推奨) |
&D2 | DTRがオフになると、モデムの接続解除がトリガーされ、OK結果コードが送信され、DTRがオフの間は自動応答が無効になります(デフォルト)。 |
&R1 | 同期モードでは、CTS が常にオンになり、RTS は無視される |
&M4 | ARQ/ノーマル モード |
&K0 | データ圧縮を行わない |
&N6 | 最高リンク速度(DCE レート)は 9600 bps |
&W | 設定を NVRAM に保存 |
&Q1 | 同期接続モードと非同期のオフライン コマンド モードを選択 |
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
04-Dec-2006 |
初版 |