発信者 ID は、電話 Central Office(CO)のスイッチが着信コールに関するデジタル情報を送信するアナログ サービスです。Foreign Exchange Station(FXS)のアナログ ポートの発信者番号配信機能は、Cisco IOS® ソフトウェア リリース 12.1(2)XH で最初に導入され、以降のすべての Cisco IOS ソフトウェア リリースで使用できます。この機能は、アナログ FXS 音声ポートに接続されている電話機でポート ベースで使用および設定可能です。この機能は、アナログの Foreign Exchange Office(FXO)でも使用できます。
注:FXSポートは発信者IDを送信し、FXOポートは発信者IDを受信します。発信者 ID は、アナログ電話、公衆電話交換網(PSTN)、構内交換機(PBX)、H.323 端末(Microsoft NetMeeting など)、Cisco CallManager、および IP フォンと相互運用されます。このため、例外はありますが、これらのデバイスの一部で構成されたテレフォニー ネットワーク上で発信者 ID を配信することができます。
また、Cisco IOS ソフトウェアには、ネットワーク設計者が必要に応じて FXS ポートから送信される発信者 ID をブロックできるようにするための機能もあります。デフォルトでは、すべてのコールで発信者 ID がブロックされません。発信者 ID はポートごとにブロックできます。任意のポートでこの機能をオンにすると、そのポートから発信されるすべてのコールの発信者 ID はブロックされます。
この設定を試す前に、次に示すこの機能に関するコマンド リファレンスを¥について理解しておく必要があります。
[no] caller-id enable:発信者 ID を有効/無効にします。デフォルトで無効に設定されます。このコマンドは、FXS ポートでの発信者 ID の送信を有効/無効にし、FXO ポートでの発信者 ID の受信を有効/無効にします。
[no] station-id numberstring:音声ポートに関連付けられた発信者番号として使用するステーション番号を提供します。string パラメータはオプションです。指定した場合は、音声ポートからコールが発信されると、発信者番号としてこのパラメータが渡されます。このパラメータを指定しない場合は、逆ダイヤルピア検索で取得した発信者番号が使用されます。FXO 音声ポートで受信された発信者 ID がない場合は、このパラメータが発信者番号として使用されます。string で使用できる最大文字数は、15 文字です。
[no] station-id namestring:音声ポートに関連付けられたステーション名を提供します。音声ポートからコールが発信されると、string パラメータが発信者名としてリモート エンドに渡されます。FXO 音声ポートで受信された発信者 ID がない場合は、このパラメータが発信者名として使用されます。string で使用できる最大文字数は、15 文字です。
[no] caller-id block:発信者 ID をブロック/ブロック解除します。デフォルトで、発信者 ID はブロック解除されます。このコマンドは、ポートから発信されるすべてのコールの発信者 ID をブロック/ブロック解除します。FXS 音声ポートでのみ利用可能です。
[no] ring number string :このコマンドは、FXO 音声ポートでコールが応答されるまでの最大呼び出し回数を設定します。たとえば、2 回呼び出してから発信者 ID 情報を受信するように、ring number コマンドで設定します。詳細については、『Cisco IOS 音声コマンド リファレンス』の「ring number」セクションを参照してください。
この設定は、次のバージョンのソフトウェアとハードウェアを使用して作成およびテストされています。
イーサネット カード、アナログ FXS カード、NM-2V モジュール、および NM-HDV モジュールを備えた VWIC-MFT 音声カードを搭載する Cisco 2600 IOS® ルータ
1 台の Cisco 2600 に RJ-11 で接続されたシンプルなアナログ電話
その他の Cisco 2600 向けに T1 インターフェイスを実装したサードパーティ ベンダーの PBX
Cisco 2600 で使用されるメインラインの Cisco IOS バージョンは Cisco IOS® ソフトウェア リリース 12.2(10)
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
このセクションでは、このドキュメントで説明する機能を設定するために必要な情報を提供しています。
注:このドキュメントで使用されているコマンドの詳細を調べるには、Command Lookup Tool(登録ユーザ専用)を使用してください。
この図は、LAN を経由して Cisco 2600 の FXS ポートから電話 B へと発信者 ID が配信される、簡単なテレフォニー ネットワークを示した例です。発信者 ID は、シグナリング(CAS)回線に関連付けられた E&M チャネルではサポートされません。この例では、FXS ポートへ送信するために、発信者 ID は CAS 回線から送信されてきたかのようにスプーフィングされています。発信者 ID をデフォルトでサポートするデジタル回線は ISDN 回線のみ、発信者 ID の配信をサポートする CAS タイプは fgd のみです。
Cisco AS5300およびAS5800プラットフォームでは、CASシグナリング機能グループB(FGB)の機能により、T1の設定時に自動番号識別(ANI)を受信できます。このシグナリングを使用すると、発信者IDがCisco 533300または5800。この機能については、T1音声チャネルのCASで詳しく説明します。
この設定では、Voice over IP(VoIP)および発信者 ID コマンドに関係する要素のみを示します。
コール フローは PBX から電話 B です。このシナリオでは、2600 A にコールが着信して 2600 B へ配信された場合、電話 B に表示される発信者 ID は次のようになります。
Name = Outside CallingNumber = 5553030 Time = 2600 B’s local clock setting
このドキュメントでは、次の構成を使用します。
Cisco 2600 A |
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! Controller T1 1/0 framing esf linecode b8zs ds0-group 1 timeslots 1-4 type e&m-wink-start ! interface ethernet 0/0 ip address 10.10.1.2 255.255.255.0 ! voice-port 1/0:1 station-id name Outside !--- Command line interface (CLI) to spoof !--- Name Display on phone for all calls !--- from CAS line. station-id number 5553030 !--- CLI to spoof Number Display on phone !--- for all calls from CAS line. ! dial-peer voice 9913050 voip destination-pattern 9913050 session target ipv4:10.10.1.1 ! |
Cisco 2600 B |
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! interface ethernet 0/1 ip address 10.10.1.1 255.255.255.0 ! voice-port 1/1/0 caller-id enable !--- Enables Caller ID feature. ! dial-peer voice 100 pots destination-pattern 9913050 port 1/1/0 ! |
SIP ヘッダーの Remote-Party-ID の変換を有効にするには、SIP UA 設定モードで remote-party-id コマンドを使用します。
Router(config)#sip-ua
Router(config-sip-ua)#remote-party-id
remote-party-id コマンドが有効になっていて、着信した INVITE メッセージに Remote-Party-ID ヘッダーがある場合、Remote-Party-ID ヘッダーから抽出された発信者名と発信者番号は、発信される setup メッセージの発信者名と発信者番号に変換されます。発信者アイデンティティの SIP 拡張の詳細については、『発信者アイデンティティの SIP 拡張とプライバシー』を参照してください。
発信者IDの確認と基本設定については、『T1音声チャネルのCAS』を参照してください。
ここでは、設定のトラブルシューティングに使用できる情報を示します。
ルータ上の発信者 ID 機能のトラブルシューティングには、いくつかのデバッグを利用できます。音声ポート モジュール(VPM)シグナリングのデバッグ(debug vpm signal)は、発信者 ID 機能が有効になっている標準の fxs-loopstart デバッグを追跡します。これらデバッグは、終端側ルータと、そのルータの FXS ポートの観点で分析されます。発信者 ID は終端側で受信されます。
終端側ゲートウェイ 2600 B の FXS ポートにおけるデバッグ |
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2600B# show debug Voice Port Module signaling debugging is on Nov 17 17:05:27.144 EST: [1/1/0, FXSLS_ONHOOK, E_HTSP_SETUP_REQ] fxsls_onhook_setup Nov 17 17:05:27.144 EST: [1/1/0] set signal state = 0x0 timestamp= 0 htsp_progress Nov 17 17:05:27.144 EST: [1/1/0] set signal state = 0x0 timestamp= 0 !--- Here is what is delivered to the phone. Nov 17 17:05:27.144 EST: [1/1/0] htsp_set_caller_id_tx calling num=5553030 display_info=Outside called num=9913050 !--- Here is the Hex that is sent out to the phone. Nov 17 17:05:27.144 EST: [1/1/0] Caller ID String 80 1C 01 08 31 31 31 37 32 32 30 35 07 35 35 35 33 30 33 30 07 07 4F 75 74 73 69 64 65 6F Nov 17 17:05:27.148 EST: [1/1/0] htsp_set_caller_id_tx Caller ID: FSK_DURING_RING Nov 17 17:05:27.148 EST: [1/1/0] htsp_start_caller_id_tx string length=31 Nov 17 17:05:27.160 EST: [1/1/0, FXSLS_WAIT_OFFHOOK, E_HTSP_VOICE_CUT_THROUGH] fxsls_waitoff_voice Nov 17 17:05:34.836 EST: [1/1/0, FXSLS_WAIT_OFFHOOK, E_HTSP_RELEASE_REQ] fxsls_waitoff_release Nov 17 17:05:34.836 EST: [1/1/0] set signal state = 0x4 timestamp = 0 |
注:複数の行にあるこの出力の行は、実際にはデバッグ出力の1行として表示されます。
電話 B の結果は次のとおりです。
CallerID = 5553030 Name = Outside Time = 10:05P Nov17 !--- Time is received from the Local Router Clock.
例にある 16 進数にデコードされた発信者 ID 文字列は、次のような結果になります。
Nov 17 17:05:27.144 EST: [1/1/0] Caller ID String 80 1C 01 08 31 31 31 37 32 32 30 35 02 07 35 35 35 33 30 33 30 07 07 4F 75 74 73 69 64 65 6F !--- Decode from Bellcore. 80 1C: Header (80 = Call Setup, Length) 01 : Parameter Value (Date and Time) 08 : Length of Information 31 31: Month (11 = November) 31 37: Day (17th) 32 32: Hour( 22) 30 35: Minute(05) 02 : Parameter Value (Calling Line DN) 07 : Length of Parameter 35 35 35 33 30 33 30 : Phone number (5553030) 07 : Parameter Value (Display) !--- "P" (0x50) is sent if "Anonymous" indication !--- is to be sent to phone. !--- "O" (0x4F) is sent if "Out of Area/Unavailable" indication !--- is to be sent to the phone. 07 : Parameter Length 4F 75 74 73 69 64 65 : Display in ASCII Hex.
注:複数の行にあるこの出力の行は、実際にはデバッグ出力の1行として表示されます。
以上は、発信者名と発信者番号が正常に電話へ送信され、問題なく表示された場合の例です。次の 2 つのシナリオのうち、1 つは発信者番号が表示されない場合、もう 1 つは発信者名が表示されない場合を示しています。
Nov 17 17:39:34.164 EST: [1/1/0] htsp_set_caller_id_tx calling num= display_info=Outside called num=9913050 Nov 17 17:39:34.164 EST: [1/1/0] Caller ID String 80 16 01 08 31 31 31 37 32 32 33 39 04 01 4F 07 07 4F 75 74 73 69 64 65 88
注:複数の行にあるこの出力の行は、実際にはデバッグ出力の1行として表示されます。
例に示された 16 進数の発信者 ID 文字列がデコードされると、サブストリング 04 01 4F は次のように変換されます。
04 : Reason for Absence of DN 01 : Length of message 4F : "Out of Area"
Nov 17 17:53:24.034 EST: [1/1/0] htsp_set_caller_id_tx calling num=5551212 display_info= called num=9913050 Nov 17 17:53:24.034 EST: [1/1/0] Caller ID String 80 16 01 08 31 31 31 37 32 32 35 33 02 07 35 35 35 31 32 31 32 08 01 4F 05
注:複数の行にあるこの出力の行は、実際にはデバッグ出力の1行として表示されます。
例に示された 16 進数の発信者 ID 文字列がデコードされると、サブストリング 08 01 4F は次のように変換されます。
08 : Reason for Absence of Display 01 : Length 4F : "Out of Area"
いずれも、発信者 ID を受信する FXO ポートで同じ VPM デバッグを実行した結果です。以上の例では、FXS ポートから電話に発信者 ID が送信されています。これが FXO ポートになるとプロセスは逆になりますが、デバッグの結果は(次に示すとおり)非常に似ています。
発信者 ID を FXO ポートで正しく受信した場合のデバッグ結果 |
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Nov 20 10:40:15.861 EST: [1/0/0] htsp_start_caller_id_rx Nov 20 10:40:15.861 EST: [1/0/0] htsp_set_caller_id_rx:BELLCORE Nov 20 10:40:15.861 EST: htsp_timer - 10000 msec Nov 20 10:40:17.757 EST: [1/0/0, FXOLS_RINGING, E_DSP_SIG_0100] Nov 20 10:40:17.757 EST: fxols_ringing_not Nov 20 10:40:17.761 EST: htsp_timer_stop Nov 20 10:40:17.761 EST: htsp_timer - 10000 msec Nov 20 10:40:18.925 EST: [1/0/0] htsp_stop_caller_id_rx Nov 20 10:40:21.857 EST: [1/0/0, FXOLS_RINGING, E_DSP_SIG_0000] Nov 20 10:40:23.857 EST: [1/0/0, FXOLS_RINGING, E_DSP_SIG_0100] Nov 20 10:40:23.857 EST: fxols_ringing_not Nov 20 10:40:23.861 EST: htsp_timer_stop htsp_setup_ind Nov 20 10:40:23.861 EST: [1/0/0] get_fxo_caller_id:Caller ID received. Message type=128 length=31 checksum=74 Nov 20 10:40:23.861 EST: [1/0/0] Caller ID String 80 1C 01 08 31 31 32 30 31 35 34 30 02 07 35 35 35 31 32 31 32 07 07 4F 7574 73 69 64 65 74 Nov 20 10:40:23.865 EST: [1/0/0] get_fxo_caller_id calling num=5551212 calling name=Outside calling time=11/20 15:40 Nov 20 10:40:23.869 EST: [1/0/0, FXOLS_WAIT_SETUP_ACK, E_HTSP_SETUP_ACK] Nov 20 10:40:23.873 EST: fxols_wait_setup_ack: Nov 20 10:40:23.873 EST: [1/0/0] set signal state = 0xC timestamp = 0 Nov 20 10:40:23.985 EST: [1/0/0, FXOLS_PROCEEDING, E_DSP_SIG_0100] fxols_proceed_clear Nov 20 10:40:23.985 EST: htsp_timer_stop2 Nov 20 10:40:24.097 EST: [1/0/0, FXOLS_PROCEEDING,E_DSP_SIG_0110] fxols_rvs_battery Nov 20 10:40:24.097 EST: htsp_timer_stop2 Nov 20 10:40:24.733 EST: [1/0/0, FXOLS_PROCEED_RVS_BT,E_HTSP_PROCEEDING] fxols_offhook_proc Nov 20 10:40:24.733 EST: htsp_timer - 120000 msec Nov 20 10:40:24.745 EST: [1/0/0, FXOLS_PROCEED_RVS_BT,E_HTSP_VOICE_CUT_THROUGH] fxols_proc_voice |
注:複数の行にあるこの出力の行は、実際にはデバッグ出力の1行として表示されます。