このドキュメントでは、Foreign Exchange Station(FXS)- 2DID カードの基本設定の実装方法と、シグナリングの使用方法を説明します。ハードウェアおよび Cisco IOS® ソフトウェア サポートの詳細については、『Understanding 2 Port Direct Inward Dial (2 DID) Voice Interface Cards』を参照してください。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
Cisco VG200 ゲートウェイ
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2(8)T
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
ダイヤル イン方式(DID)は、発信者が、オペレータや自動化されたコール アテンダントの支援を得ることなく、構内交換機(PBX)またはパケット音声システム(たとえば Cisco CallManager および IOS ルータ/ゲートウェイなど)の内線に直接ダイヤルできる、電話会社から提供されるサービスです。このサービスは、電話番号の末尾 3 ~ 5 桁のみを PBX またはルータ/ゲートウェイに転送する DID トランクを使用します。たとえば、ある企業が電話の内線番号 555-1000 から 555-1999 までを所有しており、発信者が 555-1234 をダイヤルした場合、ローカルの Central Office(CO)は 234 を PBX またはパケット音声システムに転送します。PBXまたはパケット音声システムは内線番号234を鳴らします。また、DIDトランクは最大50の内線番号を処理できるため、比較的少ないトランクで多数の内線番号を処理できます。
DID はディジットを送信する前に、DID トランクと PBX 間のハンドシェイク プロトコルを要求します。シグナリングは、ウィンク スタート、ディレイ ダイヤル、またはイミディエート スタートです。これらのシグナリング タイプは Ear and Mouth(E&M)シグナリングで使用されるものと同様です。
イミディエート スタートは最もシンプルなプロトコルです。発信側はオフフックにし、応答を待つことなくディジットの点滅を開始することで、回線を捕捉します。標準に従えば、イミディエート スタートで使用されるアドレス シグナリングはダイヤル点滅です。
ウィンク スタートでは、発信側はオフフックにし、パルス送信を開始する前に、他方からの確認応答を待つことで、回線を捕捉します。確認応答は 140 ~ 290 ミリ秒間の極性反転(オフフック)で、これもウィンクと呼ばれます。ウィンクは、着信捕捉シグナルの受信後 100 ミリ秒以内は発生しません。シグナリング機能に加えて、ウィンク スタートは故障トランクを識別する整合性チェックの役割も果たし、ネットワークが発信者にリオーダー音を送信できるようにします。
ディレイ ダイヤル モードでは、発信側が回線を捕捉し(オフフックになり)、約 200 ミリ秒間待機し、相手側がオンフック(バッテリ通常)であるかどうかを確認します。 その場合、ダイヤル ディジットを出力します。相手がオフフック(バッテリ反転)である場合には、オンフック(バッテリ通常)になるまで待機し、それからダイヤル ディジットを出力します。
応答監視は極性反転シグナルです。応答監視は、コールがステーションによって応答された場合、あるいは録音メッセージまたは自動音声応答装置(IVR)にルーティングされた場合に、返されます。 応答監視を返さない条件は、内線がビジーのとき、または番号が使用できないときです。
注:応答監視が電話会社の機器で正しく設定されていない場合は、単方向音声が発生する可能性があります。
発信側が終了する前に呼び出されたステーションが切断した場合、バッテリが通常に戻り、着信側でオンフックを待機します。トランクが切断した後に呼び出されたステーションが切断しなかった場合、通常のバッテリ電圧は DID ポートで復元され、トランクとステーション間の接続をドロップします。
コールが未割り当て番号または永続的に制限されたステーションに着信すると、発信者はリオーダー音を受け取ります。呼び出されたユーザがオフフックの場合、発信者はビジー トーンを受け取ります。
これらの DID に関連付けられたコマンドライン インターフェイス(CLI)コマンドは、音声ポートのハードウェアが DID 機能をサポートしている場合のみ有効です。また、DID と E&M ポートは同様の機能を備えているため、E&M の音声ポートで使用されるすべての CLI コマンドは DID ポートでも使用できます。デフォルトの動作モードは DID です。
FXS-DID 音声ポートを設定する:
voice-port x/y signal did wink-start delay-start immediate-start did-digit-length <Digit length>
通常の FXS にするために FXS-DID を無効にする:
voice-port x/y no signal did
注:発信コールは、DID(設定済み)音声ポートでは行えません。ハードウェアがこれらのポートでの呼び出し音配置と発信をサポートできても、このソフトウェアを使用して無効化されます。
DID ラインの特性を通信事業者が確認することは重要であり、DID カードの設定はこの確認された情報に基づきます。最も一般的な問題は、ダイヤル プランの誤設定(何桁が CO から提供されたか)、誤ったコール シグナリングや回線極性です(通信機器は極性に敏感なため、チップ アンド リング接続を逆にしなければならない場合があります)。
これは、番号 4609 をコールするウィンク DID トランクからの debug vpm all コマンドの出力です。
*Mar 5 00:54:22.783: htsp_dsp_message: SEND/RESP_SIG_STATUS: state=0xC timestamp=13671 systime=34886280 *Mar 5 00:54:22.783: htsp_process_event: [1/0/0, DID_ONHOOK, E_DSP_SIG_1100] did_onhook_offhook htsp_setup_ind *Mar 5 00:54:22.787: [1/0/0] get_local_station_id calling num= calling name= calling time=00/00 00:00 *Mar 5 00:54:22.791: dsp_digit_collect_on: [1/0/0] packet_len=20 channel_id=128 packet_id=35 min_inter_delay=240 max_inter_delay=9760 mim_make_time=10 max_make_time=100 min_brake_time=10 max_brake_time=100 *Mar 5 00:54:22.791: dsp_soutput: [1/0/0] *Mar 5 00:54:22.795: dsp_digit_collect_on: [1/0/0] packet_len=20 channel_id=128 packet_id=35 min_inter_delay=240 max_inter_delay=9760 mim_make_time=10 max_make_time=100 min_brake_time=10 max_brake_time=100 *Mar 5 00:54:22.795: dsp_soutput: [1/0/0] *Mar 5 00:54:22.795: dsp_digit_collect_on: [1/0/0] packet_len=20 channel_id=128 packet_id=35 min_inter_delay=240 max_inter_delay=9760 mim_make_time=10 max_make_time=100 min_brake_time=10 max_brake_time=100 *Mar 5 00:54:22.795: dsp_soutput: [1/0/0] *Mar 5 00:54:22.795: htsp_process_event: [1/0/0, DID_WAIT_SETUP_ACK, E_HTSP_SETUP_ACK]did_wait_setup_ack_get_ack *Mar 5 00:54:22.795: dsp_digit_collect_off: [1/0/0] packet_len=8 channel_id=128 packet_id=36 *Mar 5 00:54:22.795: dsp_soutput: [1/0/0] *Mar 5 00:54:22.799: htsp_timer2 - 88 msec *Mar 5 00:54:22.799: htsp_dsp_message: SEND/RESP_SIG_STATUS: state=0xC timestamp=13685 systime=34886282 *Mar 5 00:54:22.799: htsp_process_event: [1/0/0, DID_WAIT_SETUP_ACK, E_DSP_SIG_1100]did_wait_setup_ack_offhook *Mar 5 00:54:22.799: did_stop_timer *Mar 5 00:54:22.799: htsp_timer_stop *Mar 5 00:54:22.887: htsp_process_event: [1/0/0, DID_WAIT_SETUP_ACK, E_HTSP_EVENT_TIMER2] did_wait_prewink_timer *Mar 5 00:54:22.887: dsp_digit_collect_off: [1/0/0] packet_len=8 channel_id=128 packet_id=36 *Mar 5 00:54:22.887: dsp_soutput: [1/0/0] did_offhook *Mar 5 00:54:22.887: [1/0/0] set signal state = 0x6 timestamp = 0 *Mar 5 00:54:22.887: dsp_set_sig_state: [1/0/0] packet_len=12 channel_id=128 packet_id=39 state=0x6 timestamp=0x0 *Mar 5 00:54:22.887: dsp_soutput: [1/0/0] did_onhook *Mar 5 00:54:22.887: [1/0/0] set signal state = 0x4 timestamp = 200 *Mar 5 00:54:22.887: dsp_set_sig_state: [1/0/0] packet_len=12 channel_id=128 packet_id=39 state=0x4 timestamp=0xC8 *Mar 5 00:54:22.887: dsp_soutput: [1/0/0] *Mar 5 00:54:22.891: dsp_digit_collect_on: [1/0/0] packet_len=20 channel_id=128 packet_id=35 min_inter_delay=240 max_inter_delay=9760 mim_make_time=10 max_make_time=100 min_brake_time=10 max_brake_time=100 *Mar 5 00:54:22.891: dsp_soutput: [1/0/0] *Mar 5 00:54:23.879: htsp_digit_ready(1/0/0): digit = 4 *Mar 5 00:54:24.983: htsp_digit_ready(1/0/0): digit = 6 *Mar 5 00:54:26.483: htsp_digit_ready(1/0/0): digit = 0 *Mar 5 00:54:27.891: htsp_digit_ready(1/0/0): digit = 9 *Mar 5 00:54:27.891: dsp_digit_collect_off: [1/0/0] packet_len=8 channel_id=128 packet_id=36 *Mar 5 00:54:27.891: dsp_soutput: [1/0/0] *Mar 5 00:54:27.895: htsp_dsp_message: SEND/RESP_SIG_STATUS: state=0xC timestamp=18781 systime=34886792 *Mar 5 00:54:27.895: htsp_process_event: [1/0/0, DID_OFFHOOK, E_HTSP_PROCEEDING] *Mar 5 00:54:27.895: htsp_process_event: [1/0/0, DID_OFFHOOK, E_DSP_SIG_1100] did_offhook_offhook *Mar 5 00:54:27.895: did_stop_timer *Mar 5 00:54:27.895: htsp_timer_stop wrong offhook eventhtsp_alert_notify *Mar 5 00:54:32.415: htsp_process_event: [1/0/0, DID_OFFHOOK, E_HTSP_VOICE_CUT_THROUGH] htsp_connect: no_offhook 0 *Mar 5 00:54:32.419: htsp_process_event: [1/0/0, DID_OFFHOOK, E_HTSP_CONNECT] did_offhook_connect *Mar 5 00:54:32.419: htsp_timer2 - 40 msec did_offhook *Mar 5 00:54:32.419: [1/0/0] set signal state = 0x6 timestamp = 250 *Mar 5 00:54:32.419: dsp_set_sig_state: [1/0/0] packet_len=12 channel_id=128 packet_id=39 state=0x6 timestamp=0xFA *Mar 5 00:54:32.419: dsp_soutput: [1/0/0] *Mar 5 00:54:32.459: htsp_process_event: [1/0/0, DID_CONNECT_MIN, E_HTSP_EVENT_TIMER2] *Mar 5 00:55:01.659: htsp_dsp_message: SEND/RESP_SIG_STATUS: state=0x4 timestamp=52547 systime=34890168 *Mar 5 00:55:01.659: htsp_process_event: [1/0/0, DID_CONNECT, E_DSP_SIG_0100]did_offhook_onhook