このドキュメントでは、次のトポロジの 2 台のルータが T1 経由の VoIP と個別線信号方式(CAS)で通信するために必要な設定について説明します。
このドキュメントの設定では、IP セグメントを経由して 2 台のルータをバックツーバックで接続していることに注意してください。しかし、ほとんどのトポロジでは、音声対応ルータを任意の場所に配置しています。通常、音声ルータは LAN 接続を経由して、WAN に接続されている他のルータに接続します。音声ルータを専用回線経由で接続しない場合、ここでの設定に示すように、WAN 接続に関わるすべての設定コマンドは、音声ルータに接続されているルータではなく、WAN に接続されているルータに設定することに注意してください。
この設定例では、Cisco 3640 および Cisco AS5300 シリーズのルータを使用しています。これらの設定は、Cisco 2600 シリーズのルータでも使用できます。
VoIPを使用するようにシスコルータを設定する前に、Cisco IOS®ソフトウェアのQuality of Service(QoS)機能の概念を理解しておくことをお勧めします。QoS 機能についての詳細は、Cisco.com の『Cisco IOS Quality of Service』ページにある「キューイング、トラフィック シェーピング、およびフィルタリング」および「QoS シグナリング」を参照してください。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
Cisco 2600 および 3640 シリーズ ルータ
Cisco AS5300
ルータで実行される Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2(19)
このマニュアルの情報は、特定のラボ環境に置かれたデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。実稼動中のネットワークで作業をしている場合、実際にコマンドを使用する前に、その潜在的な影響について理解しておく必要があります。
この設定は、NM-HDV、VWIC-xMFT-T1 を装備した Cisco 3600 シリーズ ルータで使用できます。また、PBX スイッチと連動させることができます。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
テレフォニー環境のシグナリングは、回線状態を監視およびアドバタイズする機能や、コールが接続を試行したときにデバイスに通知する機能、およびルーティング情報とアドレッシング情報を提供します。
T1 環境のシグナリング情報には、次に示す 2 種類の方式があります。
共通線信号(CCS)
CAS
CCS は、情報用の帯域外でシグナリング情報を伝送します。このシグナリング タイプの中で、特に広く使用されているものは ISDN です。ISDN の一次群速度インターフェイス(PRI)を使用するときの欠点として、1 つの DS0(音声チャネル)がシグナリングのために占有されることがあげられます。したがって、1 つの T1 には、ユーザのデータ用に 23 の DS0(B チャネル)と、シグナリング用に 1 つの DS0(D チャネル)があります。Non-Facility Associated Signaling(NFAS)を使用すると、1つのDチャネルで複数のPRIを制御できます。したがって、NFASグループの他のPRIでは、24のDS0をすべてBチャネルとして使用するように設定できます。PRI シグナリングを使用すると、特に 56K モデムの出現により、非常に高速な接続を実現できます。これは、ISDN のクリア チャネル機能を示しています。
上記のトポロジで CCS を使用する際の、その他の欠点として、構内交換機(PBX)にデジタル T1 PRI カードが必要なことがあります。これは recEive and transMit(E&M)のシグナリング カードより高額です。AS5300 と PBX で CAS を使用している場合は、上記と同じトポロジで E&M シグナリング カードを使用できます。
CAS は情報用の帯域内でシグナリング情報を伝送します(インバンド シグナリング)。これは音声信号が、回線ステータス、アドレス、呼び出し信号と同じ回線で伝送されることを意味します。フル T1 回線には 24 のチャネルがあり、CAS は音声パケットの間にシグナリング パケットを割り込ませます。そのため、音声用に 24 チャネルをフルで使用できます。
T1 環境では、さまざまな種類の CAS シグナリングを使用できます。最も一般的な形式の CAS シグナリングは、ループスタート、グラウンド スタート、および E&M シグナリングです。CAS シグナリングの最大の欠点は、ネットワークが音声パケットなどの情報 IP パケットからビットを使用して、シグナリング機能を実行することです。CAS シグナリングは、robbed ビット シグナリングとも呼ばれます。
モデムで可能な最高の接続速度が必要な場合、CAS は正しい選択にはなりません。ほとんどのモデムは信号品質に適合し、高速度でも信頼性の高い接続を行うことができます。ただし、CAS 回線で 56K モデムを使用すると、CAS シグナリングを使用するトランクにより、通信のダウンストリームで接続速度が約 2K 低下します。
このセクションでは、このドキュメントで説明する機能を設定するために必要な情報を提供しています。
注:この文書で使用されているコマンドの詳細を調べるには、「Command Lookup ツール」を使用してください(登録ユーザのみ)。
このドキュメントでは、次の図に示すネットワーク設定を使用します。
注:この設定にはQoSは実装されていません。これらの設定は説明用のものです。使用するネットワーク環境では、必要に応じた QoS 機能を実装する必要があります。
このドキュメントで使用する設定を次に示します。
Cisco 3640 San Jose
Cisco AS5300 Raleigh
Cisco 3640 San Jose |
---|
sanjose3640A#show run Building configuration... Current configuration: ! ! version 12.2 service timestamps debug datetime msec service timestamps log datetime msec ! hostname sanjose3640 ! ! no ip subnet-zero ! ! ! ! voice-port 1/0/0 ! voice-port 1/0/1 ! dial-peer voice 1 pots !--- This POTS dail-peer configures the dial plan for Phone A. destination-pattern 4552468 port 1/0/1 ! dial-peer voice 2 voip !--- This VoIP dial-peer configures the dial plan for the !--- outbound calls to the PSTN. destination-pattern 3006 session target ipv4:10.2.1.2 ! dial-peer voice 3 pots destination-pattern 5551234 port 1/0/0 ! dial-peer voice 4 voip destination-pattern 4005 session target ipv4:10.2.1.2 ! ! interface Ethernet0/0 ip address 10.2.1.1 255.255.255.0 no ip directed-broadcast ! ! ip classless no ip http server ! ! end |
Cisco AS5300 Raleigh | |
---|---|
AS5300#show run Building configuration... Current configuration: ! version 12.2 service timestamps debug datetime msec service timestamps log datetime msec ! hostname AS5300 ! ! ! ! controller T1 0 framing esf clock source line primary linecode b8zs ds0-group 0 timeslots 1-24 type e&m-fgb dtmf dnis !--- From Cisco IOS Software Release 12.0(5)T and later, !--- the command cas-group is renamed ds0-group !--- on the Cisco AS5300 and Cisco 2600 series and Cisco 3600 series !--- routers. Some keyword modifications are implemented. ! ! ! dial-peer voice 1 voip destination-pattern 4552468 session target ipv4:10.2.1.1 ! dial-peer voice 2 pots destination-pattern 3... direct-inward-dial !--- If this dial-peer is matched, the inbound router is put in DID mode. port 0:0 prefix 3 ! dial-peer voice 3 voip destination-pattern 5551234 session target ipv4:10.2.1.1 ! dial-peer voice 4 pots destination-pattern 4... direct-inward-dial port 0:0 prefix 4 ! ! voice-port 0:0 !--- Syntax of "voice-port" command when you configure ds0-group is !--- voice-port controller-number:ds0-group number. interface Ethernet0 ip address 10.2.1.2 255.255.255.0 ! ! ! end |
現在、この設定に使用できる確認手順はありません。
このセクションでは、設定のトラブルシューティングを行うための情報について説明します。
一部の show コマンドが、アウトプット インタープリタ ツール(登録ユーザ専用)でサポートされています。 これを使用して、show コマンドの出力の解析を表示できます。
注:debugコマンドを発行する前に、『debugコマンドの重要な情報』を参照してください。
debug voip ccapi inout:コール制御アプリケーション プログラム インタフェース(API)を使用して実行パスをトレースするために使用されます。 API は、コール セッションのアプリケーションと、基盤となるネットワーク固有のソフトウェアとの間のインターフェイスとして機能します。このコマンドの出力結果を使用すると、ルータによるコールの処理方法がわかります。
debug vpm all:すべての debug vpm コマンド(debug vpm spi、debug vpm signal、および debug vpm dsp)をイネーブルにするために使用します。
注:このデバッグでは、大量の出力が生成されます。
show call active voice:アクティブなコール テーブルのコンテンツを表示するために使用します。これは、現在ルータを使用して接続されているコールをすべて表示します。
show call history voice:通話履歴テーブルを表示するために使用します。コール履歴テーブルには、このルータを使用して接続されたすべてのコールのリストが含まれます。リストの順序は VoIP がイネーブルにされた時点からの時間(降順)になります。コール履歴テーブルのサブセットは、特定のキーワードを使用して表示できます。
show voice port:特定の音声ポートの設定情報を表示するために使用します。
debug vtsp all:debug vtsp コマンド(debug vtsp session、debug vtsp error、および debug vtsp dsp)をイネーブルにするために使用します。
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
13-Nov-2006 |
初版 |