このドキュメントでは、アナログの Foreign Exchange Office(FXO)、Foreign Exchange Station(FXS)、またはダイヤルイン方式(DID)の音声ポートの、最適な整合インピーダンス設定を決定するためのテストの実施方法について説明します。音声ポートは、構内交換機(PBX)、電話会社(通信事業者)、セントラル オフィス(CO)などの音声スイッチに接続しています。 音声ポートのインピーダンス設定を適切に設定することにより、エコー キャンセレーション(ECAN)のパフォーマンスを向上できます。また、トランクにおける聞き取れるレベルの音声品質の問題も緩和できます。
このドキュメントの読者は音声シグナリングについての基本的な知識を有している必要があります。音声シグナリング技術に関する詳細については、音声ネットワークのシグナリングと制御を参照してください。
以下のドキュメントを参照して、音声インターフェイス カード(VIC)について理解しておいてください。
FXO VIC:Foreign Exchange Office(FXO)音声インターフェイス カードについて
FXS VIC:Foreign Exchange Station(FXS)音声インターフェイス カードについて
DID VIC:ダイヤルイン方式(DID)音声インターフェイス カードについて
このドキュメントは、読者がすでに操作可能な音声ルータ設定を有し、着信と発信の両方のコールに関するシナリオが期待どおりに機能していることを想定しています。 このドキュメントは、すでに稼働しているアナログ音声ルータへの設定を説明します。ここで説明される手順では、アナログ音声ポートを調整して、通信事業者の回線に最適なインピーダンス整合を行います。
このドキュメントで説明するテスト機能は、Cisco IOS® ソフトウェア リリース 12.3(11)T 以降でサポートされます。ここでは、関連する 2 種類の異なるテスト機能について説明します。したがって、必要な場合には、特定の Cisco IOS ソフトウェア リリースに限定して説明します。
サポートされる音声ルータ ハードウェアは以下のとおりです。
Cisco 1751、1760、2600XM、2691、2800、3640、3660、3700、3800、IAD2430、VG224 プラットフォーム ファミリ
上記のプラットフォームでサポートされるアナログ FXO、FXS、DID カード
特定のハードウェア部品が指定されている場合には、そのハードウェアをサポートするソフトウェアのバージョンが該当します。アナログ FXO、FXS、DID の各音声製品のハードウェアとソフトウェアの互換性の表については、次のドキュメントを参照してください。
このドキュメントの情報は、次の FXO、FXS、DID ハードウェア バージョンに基づいています。
VIC-2FXO、VIC-2FXS:Cisco 2600/3600/3700ルータの音声/ファックスネットワークモジュールのデータシートを参照してください。
VIC-2DID:VIC-2DID Documentation Roadmapのデータシート、技術文書、ハードウェアインストールガイド、およびトラブルシューティングガイドを参照してください。
VIC-4FXS/DID:Cisco 4ポート高密度FXS/DIDアナログ音声インターフェイスのデータシートを参照してください。
VIC2-2FXO、VIC2-4FXO、およびVIC2-2FXS:Cisco 2600XMシリーズ、2691、3600シリーズ、および370用Cisco IPコミュニケーション音声/ファックスネットワークモジュールを参照してください0シリーズ音声ゲートウェイルータデータシート
NM-HDA FXOおよびFXS:NM-HDA-4FXS、EM-HDA-8FXS、およびEM-HDA-4FXOドキュメントロードマップのデータシートを参照してください。
EVM-HD FXO、FXS、および DID:Cisco 高密度アナログおよびデジタル拡張モジュール(音声およびファックス用)のデータ シートを参照してください。
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
ドキュメント表記の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。
技術的な説明のために、このセクションでは VoIP ネットワーク トポロジを想定します。図は、公衆電話交換網(PSTN)への FXO インターフェイスを示しています。 音声品質の問題は一般に、アナログ FXO インターフェイスを備えたゲートウェイで発生します。また多くの場合、ハイブリッドと組み合わされたケーブル設備のさまざまな構成により起こります。ハイブリッドでは 2 線式から 4 線式への変換が行われます。音声ポートは、長距離トランク インターフェイスでもあるため、PSTN への DID インターフェイスである場合もあります。ただし、長距離アナログ音声では FXO インターフェイスが多く使用されます。一方、FXS インターフェイスは一般に、許容可能な QoS が示されます。FXS インターフェイスは通常、一般的な FXO インターフェイスのような通信事業者の数マイルにおよぶケーブルではなく、短距離の宅内配線に接続します。
音声ルータの設置および設定後、ユーザは、従来の時分割多重(TDM)音声ネットワークとの音声品質の違いに気づくことがあります。 音声の問題レポートには、クリック ノイズ、ヒス、音量レベルの問題、チョップ、一方向音声または音声不通、エコーなどがあります。 このような問題は、音声スイッチへのデジタル音声ポートの接続またはアナログ音声ポートの接続のいずれかを使用する音声ルータで発生することがあります。ただし、実際には、アナログ音声ポートの接続による苦情がユーザから多く寄せられます。 多くの場合、問題の原因を適切に理解してパケット音声ネットワークを調整すれば、音声品質の問題は排除できます。 データ トラフィック上の音声パケットを優先順位付けできます。クロッキングの不整合は排除または緩和できます。信号レベルを調整できます。また、アナログ音声ポートを使用している場合は、通信事業者の回線条件にインピーダンスを適切に整合させれば、エコーを著しく減少させ、他の問題を緩和することができます。
次の図は、ユーザが認識する全体的な音声品質に影響する、Cisco FXO 音声ポートのいくつかの動作要素を示しています。このシナリオでは、コールは Cisco 音声ルータと PSTN パーティ間の VoIP コールです。 以下の要素は音声品質に影響します。
VIC のアナログ フロントエンドのパフォーマンス
ハイブリッド変換損失(THL)および受信側パス損失は重要なパラメータです。パフォーマンスは、VIC 技術、ポートのインピーダンス設定、ケーブル設備、および場合により CO 回線回路によって変わります。
エコー キャンセラ。これには、キャンセル パフォーマンス、ダブルトーク検出のパフォーマンス、非線形プロセッサ(NLP)アルゴリズムが含まれます。
CO が提供する送信レベル
上記の事項の詳細については、このドキュメントでは説明しません。ただし、Cisco FXO 音声ポートと PSTN 間のインターフェイスでは、ケーブル設備のインピーダンスが、PSTN のインピーダンスとしてチャネルとの整合が試みられます。
Cisco FXO インターフェイスに接続されているケーブル設備には、主にケーブル長およびケーブル規格の関数により表されるインピーダンスが存在します。インピーダンスに影響するケーブル設備の要素は他にもありますが、このドキュメントでは説明しません。これらの要素には、配線の誘電材料、温度、ツイスト間隔、規格が混在した配線、ブリッジ タップ、CO の終端インピーダンス、音声周波数中継器、および負荷コイルがあります。
RJ-11 チップ アンド リング導体対は、CO と Cisco 音声ルータの音声ポート間にある非常に単純な伝送ラインです。伝送ラインの全体で、分布抵抗、分布容量、分布インダクタンスのモデルが適用されます。最終的には、Cisco 音声ルータの音声ポートから見て、実抵抗 R と周波数依存の複素数リアクタンス X の加算より成るインピーダンス Z としてモデル化できる、次の式のようなインターフェイスと接続することになります。
Z(f) = R+j X(f) = √( R 2+X 2(f) ) e j arctan( X ( f ) / R )
注: f は周波数(ヘルツ)です。
X(f)は、回線の容量とインダクタンスに依存し、周波数fの関数です。他の周波数は、音声バンドコールの各スペクトル成分に異なる影響を与えます。Z(f) のさまざまな性質により、信号の大きさおよび位相の両方の変化でこの違いが生じます。
音声ポートのインピーダンス設定 Z' をこの総伝送ライン インピーダンス Z と整合させる場合は、反射パラメータ Rf を計算します。このパラメータは整合の一致度合いを示し、次で表されます。
Rf = ( Z - Z' ) / (Z + Z )
整合性が高いほど、値は小さくなります。 |Rf|はゼロに近い。また、整合性が高ければ、いずれかの信号方向への信号反射も小さくなります。完全に一致している場合は、反射された信号は何も持っていません。これは、すべての周波数fで達成することはほとんど不可能です。そのため、常にミスマッチがあります。したがって、音声エネルギーの反射は常に存在するため、一部のエコーを引き起こす可能性があります。CiscoアナログFXOの実装では、インピーダンス設定の選択に限界があります。通信事業者の回線インピーダンスに正確に整合するような設定は期待できません。ただし、最適なインピーダンス整合は設定できます。この設定は、最適なハイブリッドのパフォーマンスを提供します。最適なマッチングは、次の両方のパラメータを提供する設定です。
最大の THL。これによりハイブリッド エコーが最小になります。
最小の受信損失。これにより受信レベルが最大になります。
また、ハイブリッド パフォーマンス結果にさまざまな値が混在しているか、またはほぼ同じである場合に、整合が最適ではないと判断できます。このような場合には、リスニング テストを使用して音声品質を比較することで、Cisco FXO インターフェイスのインピーダンス設定を選択できます。
伝送路理論の詳細は 、『伝送路理論について』を参照してください。
多くの場合、経験的なテストからシスコの音声ポートの最適な整合インピーダンス設定を決定することはできません。 Cisco アナログ FXO、FXS、および DID の音声ポートでは、次のような多くのインピーダンス設定が使用できます。
FXO/DID アナログ音声ポートのインピーダンス オプション(Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.4(1)) | FXS アナログ音声ポートのインピーダンス オプション(Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.4(1)) |
---|---|
Router(config)# voice-port 0/1/0 Router(config-voiceport)# impedance ? 600c 600 Ohms complex 600r 600 Ohms real 900c 900 Ohms complex 900r 900 ohms real complex1 220 ohms + (820 ohms || 115nF) complex2 270 ohms + (750 ohms || 150nF) complex3 370 ohms + (620 ohms || 310nF) complex4 600r, line = 270 ohms + (750 ohms || 150nF) complex5 320 + (1050 || 230 nF), line = 12Kft complex6 600r, line = 350 + (1000 || 210nF) Router(config-voiceport)# impedance |
Router(config)# voice-port 1/0/0 Router(config-voiceport)# impedance ? 600c 600 Ohms complex 600r 600 Ohms real 900c 900 Ohms complex 900r 900 ohms real complex1 220 ohms + (820 ohms || 115nF) complex2 270 ohms + (750 ohms || 150nF) complex3 370 ohms + (620 ohms || 310nF) complex4 600r, line = 270 ohms + (750 ohms || 150nF)) complex5 320 + (1050 || 230 nF), line = 12Kft complex6 600r, line = 350 + (1000 || 210nF) Router(config-voiceport)# impedance |
CiscoアナログFXO、FXS、およびDID音声ポートで使用可能なインピーダンス値は、600r、600c、900c、complex1、complex2、complex3、complex4、complex5、およびcomplex6ですできるだけ近くに並んでください。次のいずれかを選択します。
純抵抗の設定
ほぼ純抵抗に近いインピーダンス
ほぼリアクタンスに近いインピーダンス
最適な設定を選択して、回線上の反射を削減します。
インピーダンスオプションcomplex4とcomplex6は、EIA RS-464標準が提案する侵害ネットワークです。 これらのネットワークには、600 オームの出力インピーダンスを持つ通信事業者のループ長を広範囲にカバーする、一定の適切なパフォーマンス特性が付与されています。 インピーダンスオプションcomplex5は、26アメリカンワイヤゲージ(AWG)ケーブルの12,000フィートに最適化された構成です。complex5 オプションでは、出力インピーダンスがより回線に近くなるように変更されます。
以下の一般的なガイドラインに従って、推奨値を使用します。
0 ~ 5,000フィート:600rを使用するか、音声ポートのインピーダンス設定をピア機器のインピーダンス仕様と一致させてください。
たとえば北米では、CO または PBX アナログ トランク ポートの通常のインピーダンス値は 600r です。ただし、その他の場所ではインピーダンス値は 900c の場合もあります。
5,000 ~ 10,000フィート:complex4を使用します。
「10,000 ~ 15,000フィート」 - complex5またはcomplex6を使用します。
complex4とcomplex6の設定は、complex5よりも少し電力転送損失が少なくなります。信号レベルの問題がある場合は、complex5よりもcomplex6の設定を選択します。
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(11)T では、アナログ音声ポートの最適な整合インピーダンス設定を確認するために、順序立てて使用できるツールが導入されました。 Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(11)T より前のリリースでは通常、経験的なテストによりインピーダンス設定の選択が決定されていました。このような経験的なテストは試行錯誤を含み、煩雑で一貫性に欠けるものでした。 シスコ テクニカル サポートのエンド ユーザとエンジニアは通常、会議ブリッジでテストを実行していました。この作業は、メンテナンス ウィンドウを使用して数時間かけて行われていました。 Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(11)T 以降の新しいテスト ツールを使用すれば、エンド ユーザは音声ポートのインピーダンス調整を短期間に独力で完了できます。エンド ユーザは、問題が解決しない場合のみ、シスコ テクニカル サポートに相談すれば済みます。 このドキュメントでは次の 2 種類のテスト ツールについて説明します。
テスト機能 | プラットフォーム | 使用できる Cisco IOS ソフトウェア |
---|---|---|
オリジナル トーン スイープ:手動によるインピーダンスの変更 test voice port X/Y/Z inject-tone local sweep 200 0 0 注:このコマンドは1行で記述する必要があります。 |
1751、1760、2600XM、2691、2800、3640、3660、3700、3800、IAD2430、VG224 | Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(11)T、12.3(14)T、12.4(1) |
THL トーン スイープ:自動によるインピーダンスの変更 test voice port X/Y/Z thl-sweep verbose |
1751、1760(*) | Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(14)T6、12.4(3b)、12.4(5a)、12.4(7)、12.4(2)T3、12.4(4)T1、12.4(6)T |
2600XM、2691、2800、3640、3660、3700、3800 | Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(11)T6、12.3(14)T3、12.4(1) | |
IAD2430、VG224 | Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.4(7)、12.4(6)T |
(*)Cisco 1751 および 1760 音声プラットフォームでの THL トーン スイープ機能のサポートに関する重要な注意については、このドキュメントの補足事項のセクションを参照してください。
これらのテスト方式ではどちらも、アナログ FXO、FXS、または DID 音声ポートを介した、IP ネットワーク上のパーティと他のパーティ間でのテスト コールの発信を行います。テストにより、アナログ ポートから外部に、既知の信号強度と周波数のテスト トーンが挿入されます。 次に、応答信号が検査され、エコー リターン ロス(ERL)が集計されて、ERL と周波数の関係を示すチャネル プロファイルが表示されます。 すべての周波数で ERL が高ければ高いほど最適です。 チャネル プロファイルで、低い周波数および音声バンド全体で良い ERL レベルが示されることを期待します。その後、ERL レベルはより高い周波数で減衰を始めます。 このテストを使用可能な各インピーダンス設定で実行します。現在の音声ポートと通信事業者回線で最適な整合インピーダンスを実現する、最適なチャネル プロファイルの設定が選択されます。 これらのテスト機能では、チャネル プロファイルの適切さを示す値は、信号インピーダンス設定に対してテストされたすべての周波数での ERL の算術平均です。 この式は次で表されます。
ERLavg = (ERL1 + ERL2 + … + ERLN ) / N
注: ERLi = ERLはi番目の周波数で測定されます。N は、テストされた周波数の総数です。
音声ポートの最適な整合インピーダンス設定は、ERLavg が最大値となるインピーダンス設定です。
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(11)T では、最適な整合インピーダンスを決定するために、オリジナル トーン スイープ方式が導入されました。この方式は、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(14)T、12.4(1)、およびそれ以降でも使用できます。 この方式では、一連のトーン テストを完了するために、テスト作業者による手動の作業が必要です。 具体的には、一群のトーン テストを新規に行うごとに、音声ポートのインピーダンス設定を手動で変更する必要があります。管理者として、shutdown コマンドと no shutdown コマンドを音声ポートで発行し、変更が適用されるようにします。次に、FXO/FXS/DID の音声ポートから新しいテスト コールを発信して、一群のトーン テストを再度実行します。 音声ポートで使用できる各インピーダンス設定に対してこのプロセスを繰り返します。
以下に手順を示します。
重要: テスト対象の音声ポートの ECAN は無効にします。
no echo-cancel enable コマンドを発行します。
注:変更が有効になるように、必ずshutdownコマンドとno shutdownコマンドを音声ポートで管理上発行してください。
対象の FXS/FXO 音声ポートにコールを発信します。
show voice call summary コマンドを発行して、コールの接続を確認します。
注:PSTNまたは音声ポートのPBX側の発信側は、「サイレント終端」である必要があります。必要に応じて、音声を発信しないようにこの電話をミュートにします。
音声ポートでトーン スイープ テストを実行します。
指定したインピーダンス設定での ERLavg の値を計算します。
対象の音声ポートのインピーダンス設定を変更します。
注:変更が有効になるように、必ずshutdownコマンドとno shutdownコマンドを音声ポートで管理上発行してください。
対象の音声ポートで可能なすべてのインピーダンス設定について、ステップ 2 から 5 を繰り返します。
ERLavg のすべての結果を確認し、最大値を見つけます。
この値に対応するインピーダンス設定が、その音声ポートの最適な整合インピーダンスです。
以下は、2 種類のインピーダンス設定 complex1 と complex2 で実施されたスイープの例です。
CME1#configure terminal Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z. CME1(config)#voice-port 1/0/3 CME1(config-voiceport)#no echo-cancel enable CME1(config-voiceport)#impedance complex1 CME1(config-voiceport)#shutdown CME1(config-voiceport)#no shutdown CME1(config-voiceport)#end <PLACE LIVE CALL OUT PORT 1/0/3> CME1#test voice port 1/0/3 inject-tone local sweep 200 0 0 Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 104 26 -7 -33 304 19 -7 -26 504 17 -8 -25 704 19 -8 -27 904 19 -8 -27 1104 20 -8 -28 1304 21 -8 -29 1504 21 -8 -29 1704 22 -8 -30 1904 21 -8 -29 2104 22 -8 -30 2304 22 -8 -30 2504 22 -8 -30 2704 22 -8 -30 2904 22 -8 -30 3104 22 -8 -30 3304 22 -8 -30 3404 22 -8 -30 CME1#configure terminal Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z. CME1(config)#voice-port 1/0/3 CME1(config-voiceport)#impedance complex2 CME1(config-voiceport)#shutdown CME1(config-voiceport)#no shutdown CME1(config-voiceport)#end <PLACE LIVE CALL OUT PORT 1/0/3> CME1#test voice port 1/0/3 inject-tone local sweep 200 0 0 Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 104 26 -7 -33 304 19 -7 -26 504 17 -8 -25 704 19 -8 -27 904 19 -8 -27 1104 19 -8 -27 1304 20 -8 -28 1504 20 -8 -28 1704 20 -8 -28 1904 20 -8 -28 2104 20 -8 -28 2304 20 -8 -28 2504 20 -8 -28 2704 20 -8 -28 2904 20 -8 -28 3104 19 -8 -27 3304 19 -8 -27 3404 19 -8 -27
この例では、ERL の平均は次のようになります。
complex1:(26 + 19 + 17 + ...+ 22) / 18 = 21.16
complex2:(26 + 19 + 17 + ...+ 19) / 18 = 19.77
complex1 の平均 ERL の 21.16 の方がより大きいので、最適な整合インピーダンスとして complex1 を選択します。
このオリジナル トーン スイープ方式を使用して最適な整合インピーダンス設定を決定する場合、作業が煩雑になることがあります。特に、テストの参照ポートとして使用する音声ポートと同じポートを他のパーティが使用しているような実稼働環境では、煩雑となります。この方式では、PSTN 外の「静かな終端」点への音声ポートと同じポートに、複数のコールを発信する必要があります。テストの設定ごとにインピーダンス設定を手動で変更する必要があります。次のテスト スイープを開始する前に、実稼働のコールが発生して対象の音声ポートが使用された場合、ユーザに高い確率でエコーが発生します。このエコーは、音声ポートで ECAN が無効であるために発生します。 このような欠点はありますが、このテスト方式は、これ以前の試行錯誤の方式よりも優れています。
オリジナル トーン スイープ テスト方式での管理者の負担を軽減するために、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(11)T6、12.3(14)T3、および 12.4(1) では、Cisco 2600XM、2691、2800、3640、3660、3700、および 3800 の各音声ルータ プラットフォーム向けに、THL トーン スイープ テスト方式が導入されました。この機能は後に、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.3(14)T6、12.4(3b)、12.4(5a)、12.4(7)、12.4(2)T3、12.4(4)T1、および 12.4(6)T の Cisco 1751 と 1760 プラットフォームや、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.4(7) および 12.4(6)T の Cisco IAD2430 と VG224 プラットフォームへと適用が拡大されました。このテスト機能により、PSTN 外の静かな終端点への信号テスト コールに対して、使用可能なすべてのインピーダンスの評価が可能になります。テスト中に手動で音声ポートの ECAN を無効にする必要はありません。このテスト機能では、テスト作業者に代わってインピーダンスを自動的に切り替えます。このテスト機能により ERL の算術平均が計算され、各インピーダンス設定での各チャネル プロファイルの平均がレポートされます。その後、テストの最後で、最適な整合インピーダンス設定が指定されます。このテスト機能は簡単に使用でき、操作の負担は最小になります。
以下に手順を示します。
対象の FXS/FXO/DID 音声ポートにコールを発信します。
show voice call summary を発行して、コールの接続を確認します。
注:PSTNまたは音声ポートのPBX側の発信側は、「サイレント終端」である必要があります。必要に応じて、音声を発信しないようにこの電話をミュートにします。
音声ポートでトーン スイープ テストを実行します。
THL スイープ テスト機能が、自動的に各インピーダンス設定の ERLavg の値を計算します。テストの最後に、ERLavg が最大値を示す設定がレポートされます。 この設定が、対象の音声ポートで使用するための最適な整合インピーダンスになります。
実際の THL スイープの例を以下に示します。
SL-C2851-MA#< NOW RUNNING THL-SWEEP > ^ % Invalid input detected at '^' marker. SL-C2851-MA# SL-C2851-MA#test voice port 2/0/13 thl-sweep verbose Original impedance complex5. Input signal level=-48dBm testing 600r...... Input Signal level=-50dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 354 9 -3 -12 554 10 -3 -13 754 11 -3 -14 954 11 -3 -14 1154 11 -3 -14 1354 11 -3 -14 1554 11 -3 -14 1754 11 -3 -14 1954 10 -3 -13 2154 9 -3 -12 2354 8 -3 -11 2554 8 -3 -11 2754 8 -3 -11 2954 9 -3 -12 3154 8 -3 -11 3354 6 -3 -9 testing complete for 600r. ERL=9 testing 900r...... Input Signal level=-50dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 354 11 -3 -14 554 12 -3 -15 754 12 -3 -15 954 12 -3 -15 1154 12 -3 -15 1354 12 -3 -15 1554 12 -3 -15 1754 11 -3 -14 1954 11 -3 -14 2154 9 -3 -12 2354 8 -3 -11 2554 7 -3 -10 2754 7 -3 -10 2954 8 -3 -11 3154 7 -3 -10 3354 5 -3 -8 testing complete for 900r. ERL=10 testing 900c...... Input Signal level=-50dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 354 13 -3 -16 554 14 -3 -17 754 14 -3 -17 954 14 -3 -17 1154 14 -3 -17 1354 13 -3 -16 1554 13 -3 -16 1754 12 -3 -15 1954 11 -3 -14 2154 10 -3 -13 2354 9 -3 -12 2554 8 -3 -11 2754 8 -3 -11 2954 8 -3 -11 3154 8 -3 -11 3354 6 -3 -9 testing complete for 900c. ERL=11 testing complex1...... Input Signal level=-49dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 354 14 -3 -17 554 17 -3 -20 754 19 -3 -22 954 21 -3 -24 1154 22 -3 -25 1354 22 -3 -25 1554 22 -3 -25 1754 20 -3 -23 1954 19 -3 -22 2154 17 -3 -20 2354 16 -3 -19 2554 16 -3 -19 2754 17 -3 -20 2954 18 -3 -21 3154 15 -3 -18 3354 13 -3 -16 testing complete for complex1. ERL=18 testing complex2...... Input Signal level=-51dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 354 14 -3 -17 554 17 -3 -20 754 19 -3 -22 954 20 -3 -23 1154 21 -3 -24 1354 20 -3 -23 1554 20 -3 -23 1754 18 -3 -21 1954 17 -3 -20 2154 15 -3 -18 2354 14 -3 -17 2554 14 -3 -17 2754 15 -3 -18 2954 16 -3 -19 3154 13 -3 -16 3354 11 -3 -14 testing complete for complex2. ERL=17 testing 600c...... Input Signal level=-50dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 354 10 -3 -13 554 10 -3 -13 754 11 -3 -14 954 11 -3 -14 1154 11 -3 -14 1354 11 -3 -14 1554 11 -3 -14 1754 11 -3 -14 1954 10 -3 -13 2154 9 -3 -12 2354 8 -3 -11 2554 8 -3 -11 2754 8 -3 -11 2954 9 -3 -12 3154 8 -3 -11 3354 6 -3 -9 testing complete for 600c. ERL=10 testing complex4...... Input Signal level=-52dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 354 15 -3 -18 554 17 -3 -20 754 18 -3 -21 954 19 -3 -22 1154 19 -3 -22 1354 19 -3 -22 1554 18 -3 -21 1754 17 -3 -20 1954 15 -3 -18 2154 14 -3 -17 2354 12 -3 -15 2554 12 -3 -15 2754 12 -3 -15 2954 12 -3 -15 3154 10 -3 -13 3354 8 -3 -11 testing complete for complex4. ERL=15 testing complex5...... Input Signal level=-51dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 354 32 -3 -35 554 31 -3 -34 754 28 -3 -31 954 26 -3 -29 1154 24 -3 -27 1354 23 -3 -26 1554 21 -3 -24 1754 19 -3 -22 1954 18 -3 -21 2154 16 -3 -19 2354 16 -3 -19 2554 15 -3 -18 2754 16 -3 -19 2954 16 -3 -19 3154 14 -3 -17 3354 11 -3 -14 testing complete for complex5. ERL=20 testing complex3...... Input Signal level=-50dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 354 14 -3 -17 554 15 -3 -18 754 16 -3 -19 954 16 -3 -19 1154 16 -3 -19 1354 15 -3 -18 1554 14 -3 -17 1754 14 -3 -17 1954 13 -3 -16 2154 12 -3 -15 2354 11 -3 -14 2554 11 -3 -14 2754 11 -3 -14 2954 11 -3 -14 3154 10 -3 -13 3354 8 -3 -11 testing complete for complex3. ERL=13 testing complex6...... Input Signal level=-52dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) 354 19 -3 -22 554 22 -3 -25 754 24 -3 -27 954 24 -3 -27 1154 21 -3 -24 1354 20 -3 -23 1554 18 -3 -21 1754 16 -3 -19 1954 14 -3 -17 2154 12 -3 -15 2354 11 -3 -14 2554 11 -3 -14 2754 11 -3 -14 2954 11 -3 -14 3154 10 -3 -13 3354 7 -3 -10 testing complete for complex6. ERL=16 Recommended impedance(s) complex5 SL-C2851-MA#
THL トーン スイープ機能は、実際の適用が非常に簡単に行えるテスト メカニズムです。
試行錯誤による方式に対して、オリジナル トーン スイープ テスト方式や THL トーン スイープ テスト方式は、通信事業者のチャネルと共に使用する場合の特定のインピーダンス設定を評価するための、一貫した手段を提供します。 テストの実行に際しては、次の点に注意してください。
テスト方式はできるだけ統一してください。
オリジナル トーン スイープ方式を使用する場合には、各インピーダンス設定での一群のトーン スイープに対して、PSTN 内の「静かな終端」と同じパーティを使用します。 この選択により、音声ポートと終端点間のパスを同じにします。
多くのアナログ FXO/FXS 音声ポートを備えた音声ルータでは、必ずしもすべての音声ポートにトーン スイープ テストを適用する必要はありません。
短時間で行う場合は、単一の音声ポートをテストし、同じ通信事業者プロバイダーからのすべての音声ポートの代表的な動作としてその結果を使用します。 多くの場合、配線パスはすべてのポートでほぼ同じであるため、この想定は適切です。ただし、最善の結果を得るには、各音声ポートをテストして個別に調整する必要があります。
最適な整合インピーダンス設定を選択した後に、未対応の音声の問題を排除するために、必要に応じて音声ポートの調整をさらに行います。
この調整では多くの場合、入力ゲインと出力減衰の設定が必要になります。
音声ポートの最適な整合インピーダンス設定を、シスコ音声ルータから PSTN の方向に適用します。
音声ポートのこの最適な整合インピーダンスが設定された後でも、PSTN 側からシスコ音声ルータへのチャネルの ERL パフォーマンスが対称的であるとは限らず、可能な最高の ERL プロファイルがこの方向でも提供されるかどうかは保証されません。 両方向の全体的な音声品質を正確に測り、さらに音声ポートのパラメータを調整するかどうかを決定します。必要に応じて、シスコ テクニカル サポートに相談してください。多くの場合、感覚的な音声品質は、音声ポートのインピーダンスを最適な整合値に設定した後に著しく向上します。この改善はフィールドのユーザにより報告されています。
Cisco 1751 と 1760 の音声ルータ プラットフォームは音声のシグナリングとメディアに、PVDM-256K-4、PVDM-256K-8、PVDM-256K-12、PVDM-256K-16、PVDM-256K-20 の各 DSP カード製品を使用します。これらのPVDM-256K-*カードはTexas Instruments C549 DSPを使用します。Medium-Complexity(MC)コーデック モードで使用する場合には、DSP のファームウェアと処理力に制限があるため、1751/1760 音声ルータ プラットフォームでは、High-Complexity(HC)モードに DSP が設定された場合のみ、THL スイープ機能が確実に動作します。デフォルトでは、シグナリングとメディアのリソースとして、VIC-2FXS、VIC2-2FXS、VIC-2FXO、VIC2-2FXO、VIC-2E/M、VIC2-2E/M、VIC-2DID などの 2 ポート音声インターフェイス カード(VIC)が、HC モードの単一の C549 DSP に割り当てられます。他方、使用可能な DSP リソースを最大限に利用するために、VIC2-4FXO や VIC-4FXS/DID などの 4 ポート VIC が、MC モードの単一 C549 DSP に割り当てられます。その結果、1751/1760 の THL スイープ機能は多くの場合、4 ポート VIC への適用時にエラーが発生し、以下が表示される可能性があります。
1751GW#test voice port 2/0 thl-sweep verbose Original impedance 600r. Input signal level=-44dBm Please Note: Impedance for voice port 2/0 changed to 600Real. testing 600r...... Input Signal level=-44dBm Freq (hz), ERL (dB), TX Power (dBm), RX Power (dBm) ERL very low. set_impedance to 600r failed !!!. Please Note: Impedance for voice port 2/0 changed to 600Real.
1751/1760 の DSP リソースが十分な場合、THL スイープ機能を確実に動作させて必要な結果を生成させるには、4 ポート VIC を設定して HC モードで使用する必要があります。Cisco 1700 シリーズ音声プラットフォームでの DSP コーデックの複雑な設定に関する詳細については、Cisco 1750、1751、および 1760 ルータでの認識されない音声インターフェイス カードのトラブルシューティングを参照してください。
このドキュメントのすべてのトラブルシューティングの手順を実行し、さらに支援が必要な場合、またはご質問がある場合は、シスコ テクニカル サポートにお問い合わせください。次の方法のいずれかを使用します。