このドキュメントでは、Cisco IOS® のバーチャル アクセス PPP アプリケーション全体のアーキテクチャについて説明します。特定の機能の詳細については、「用語集」の終わりの一覧にあるドキュメントを参照してください。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
このドキュメントに関しては個別の前提条件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このマニュアルの情報は、特定のラボ環境に置かれたデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。実稼動中のネットワークで作業をしている場合、実際にコマンドを使用する前に、その潜在的な影響について理解しておく必要があります。
このドキュメント内で使用されている用語は次のとおりです。
アクセス サーバ:リモート アクセスのための Cisco アクセス サーバのプラットフォーム(ISDN および非同期インターフェイスなど)。
L2F:L2F プロトコル(RFC の Experimental Draft)。 マルチシャーシ MP(MMP)、およびバーチャル プライベート ネットワーク(VPN)双方の基礎となるリンクレベル テクノロジーです。
リンク:システムの接続ポイント。専用のハードウェア インターフェイス(非同期インターフェイスなど)、あるいは、マルチチャンネル ハードウェア インターフェイスのチャンネル(PRI や BRI など)です。
MP:マルチリンク PPP プロトコル。RFC 1717 を参照してください。
マルチシャーシ MP:MP + SGBP + L2F + Vtemplate。
PPP:Point-to-Point Protocol(PPP; ポイントツーポイント プロトコル)。RFC 1331 を参照してください。
ロータリー グループ:外部へのダイヤルやコールの受信に割り当てられた物理インターフェイスのグループ。このグループは、外部にダイヤルしたりコールを受信したりするためのリンクのプールのような役割を果たします。
SGBP:Stack Group Bidding プロトコル。
スタック グループ:2 つ以上のシステムの集まり。グループとして動作するように設定され、他のシステムからのリンクの MP バンドルをサポートします。
VPDN:バーチャル プライベート ダイヤルアップ ネットワーク。Internet Service Provider(ISP; インターネット サービス プロバイダー)からホーム ゲートウェイへの PPP リンクを転送します。
Vtemplate:バーチャル テンプレート インターフェイス。
注:このドキュメントで参照されるRFCの詳細については、製品速報の「Cisco IOSリリース11.2でサポートされるRFC」を参照してください。またはInterNICへのリンクに関するRFCおよびその他の標準文書の取得
Cisco IOS リリース 11.2F でサポートされるダイヤル アップ アクセス機能は、VPDN、マルチシャーシ マルチリンク、VP、バーチャル アクセスによるプロトコル変換、および PPP/ATM です。これらの機能では、バーチャル インターフェイスを使用して、目的のマシンへ PPP を伝送します。
バーチャル アクセス インターフェイスは Cisco IOS のインターフェイスで、シリアル インターフェイスのような物理インターフェイスです。シリアル インターフェイスの設定は、シリアル インターフェイス コンフィギュレーションにあります。
#config int s0 ip unnumbered e0 encap ppp :
物理インターフェイスには、スタティックな固定設定があります。それに対して、バーチャル アクセス インターフェイスは、必要に応じて動的に作成されます(この文書の次のセクションでさまざまな使用法について説明します)。 また、必要がなくなると解放されます。したがって、バーチャル アクセス インターフェイスのコンフィギュレーション ソースは、他の方法で繋ぎとめておく必要があります。
バーチャル アクセスでは、その構成が、バーチャル テンプレート インターフェイス、RADIUS、および認証サーバの TACAC+ レコードなどを介したさまざまな方法で取得されます。後者の方法は、ユーザごとのバーチャル プロファイルと呼ばれるものです。バーチャル アクセス インターフェイスは、グローバルなバーチャル テンプレートを使用して構成できるため、1 つのバーチャル テンプレート インターフェイスから同一の設定を、さまざまなユーザのバーチャル アクセス インターフェイスに継承できます。たとえば、ネットワーク管理者は、システム上のバーチャル アクセスの全ユーザに共通の PPP 認証方法(CHAP)を定義できます。特定のユーザーごとの設定には、ネットワーク管理者が仮想プロファイル内のユーザーに固有のインターフェイス設定(PAP認証など)を定義できます。バーチャル アクセス インターフェイスでは、一般的なコンフィギュレーション スキームも特定のコンフィギュレーション スキームも利用できるので、ネットワーク管理者は、インターフェイス コンフィギュレーションをすべてのユーザ共通に設定することも、個別のユーザごとに設定することも可能です。
図 1 に、userA と userB が使用する 2 種類のバーチャル アクセス インターフェイスについて説明しています。Operation 1 は、グローバルなバーチャル テンプレート インターフェイスから 2 つのバーチャル アクセス インターフェイスへのインターフェイス コンフィギュレーションの適用を示しています。Operation 2 は、個別のバーチャル プロファイルから 2 つのバーチャル アクセス インターフェイスへの、ユーザごとのインターフェイス コンフィギュレーションの適用を示しています。
このセクションでは、Cisco IOS でバーチャル アクセス インターフェイスを使用するさまざまな方法を説明します。
各アプリケーションのテーマが繰り返し表示されます。アプリケーションに固有の一般的な仮想テンプレート(操作1)を使用できます。 Operation 2 は、ユーザごとのバーチャル プロファイルが各ユーザに適用されています)。
マルチリンク PPP では、各リンクで受信したパケットを再構成したり、各リンクから送信するパケットを断片化するためのバンドル インターフェイスとして、バーチャル アクセス インターフェイスを使用します。バンドル インターフェイスは、そのコンフィギュレーションをマルチリンク PPP 用のバーチャル テンプレートから入手します。ネットワーク管理者がバーチャル プロファイルをイネーブルにすると、ユーザ名ごとのバーチャル プロファイルのインターフェイス コンフィギュレーションがユーザのバンドル インターフェイスに適用されます。
図 2 は、シリアル インターフェイスでマルチリンク PPP を使用した場合を示しています。ダイヤラ インターフェイスがないので、次のようにバーチャル テンプレート インターフェイスを定義します。
multilink virtual-template 1 int virtual-template 1 ip unnum e0 encap ppp ppp chap authen
任意で設定されたユーザ名ごとのバーチャル プロファイルのコンフィギュレーションが、バンドル インターフェイスに適用されます。ダイヤラインターフェイスが関係している場合、バンドルインターフェイスはパッシブインターフェイスです。仮想テンプレートインターフェイスは必要ありません。
たとえば、図 3 では、マルチリンク PPP をサポートするように PRI se0:23 が構成されています。
バーチャル プロファイルがイネーブルな場合は、スキームが図 2 に戻ることに注意してください。つまり、着信コールがダイヤラ インターフェイスで受信され、バーチャル プロファイルがイネーブルになっている場合、ダイヤラからのコンフィギュレーション ソースは使用されません。代わりにバンドル インターフェイスがアクティブ インターフェイスになり(図 2 を参照してください)、ここですべてのプロトコルが読み書きされます。まずバーチャル テンプレート インターフェイスが、次に特定ユーザのバーチャル プロファイルがコンフィギュレーション ソースとなります。
リンクレベルのレイヤ 2 送信(L2F)では、PPP をリモートの宛先で終端させることができます。通常、L2F を使用しない場合、ダイヤルしたクライアントと着信コールに応答した NAS 間では PPP が使用されます。L2F を使用すると、宛先ノードに PPP が投影されます。クライアントでは、PPP を介して宛先ノードに接続していると認識されています。実際には、NAS が PPP フレームを転送しています。L2F の用語では、宛先ノードはホームゲートウェイと呼ばれます。
ホームゲートウェイでは、バーチャル アクセス インターフェイスを使用して PPP リンクを終端させます。コンフィギュレーション ソースとしてバーチャル テンプレートが使用されます。バーチャル プロファイルが定義されている場合は、バーチャル アクセス インターフェイスにユーザごとのインターフェイス コンフィギュレーションが適用されます。
一般的に、L2F トンネルは UDP/IP で伝搬されます。
L2F トンネリング テクノロジーは、現在 Cisco IOS 11.2 の次の 2 つの機能に使用されています。これらの機能は VPDN(バーチャル プライベート ダイヤルアップ ネットワーク)とマルチシャーシ マルチリンク PPP(MMP)です。
VPDN では、クライアントから、直接、選択したホーム ゲートウェイにまで、プライベート ネットワークを広げることができます。たとえば、HP のモバイル ユーザ(営業担当者など)は、常にどこでも、選択した HP のホームゲートウェイに接続できる状態である必要があります。HP は、ISP に PDN をサポートしてもらう契約をします。ISP では、jsmith@hp.com が ISP が提供した番号にダイヤルすると、自動的に NAS が HP のホームゲートウェイに転送するように設定します。これによって、ISP は、HP ユーザの IP アドレス、ルーティング、その他 HP ユーザに密接した機能を管理する必要がなくなります。そして、ISP の HP 管理者では、HP ホームゲートウェイへの IP 接続の問題が軽減されます。
NAS:isp
vpdn outgoing hp.com isp ip 1.1.1.2
ホームゲートウェイ:hp-gateway
int virtual-template 1 ip unnum e0 encap ppp ppp chap authen vpdn incoming isp hp-gateway virtual-template 1
PPP マルチリンクでは、複数のリンクから形成されている論理パイプ(バンドル)でパケットを分割したり再構成することによって、必要な帯域幅を増やすことができます。これによって、低速の WAN リンクでの転送遅延が軽減され、最大受信ユニットを増やすことができます。マルチリンクは、アクセス サーバが 1 つの環境でサポートされます。
たとえば、ISP では、効率良く 1 つのロータリー番号を複数のアクセス サーバ上の複数の PRI に割り当てるため、柔軟性と拡張性が求められます。
マルチシャーシ マルチリンクでは、同一クライアントからの複数のマルチリンクを異なるアクセス サーバで終端させることができます。同一バンドルの各 MP リンクを異なるアクセス サーバで終端できるますが、MP クライアントから見ると、1 つのアクセス サーバで終端しているかのようになります。マルチシャーシと VPDN のコンポーネントの違いは、マルチリンク バンドルをビッディングおよび調停するために追加する StackGroup Bidding プロトコル(SGBP)だけです。SGBP でスタック グループの宛先 IP アドレスが決定すると、マルチシャーシでは、L2F を使用して、その NAS からスタック グループの宛先になった他方の NAS へ投影します。
たとえば、スタック グループでは次の 2 つの NAS の stackq を呼び出します。nasa と nasb です。
nasa:
username stackq password hello multilink virtual-template 1 int virtual-template 1 ip unnum e0 encap ppp ppp authen chap sgbp stack stackq sgbp member nasb 1.1.1.2
nasb:
username stackq password hello multilink virtual-template 1 int virtual-template 1 ip unnum e0 encap ppp ppp authen chap sgbp stack stackq sgbp member nasb 1.1.1.2
プロトコル変換により、X.25/TCPなどのゲートウェイを経由するPPPカプセル化トラフィックを仮想アクセスインターフェイス(2ステップ変換)として終端させることができます。 バーチャル アクセス インターフェイスは、ワンステップ変換でもサポートされます。
ツーステップのプロトコル変換例:
int virtual-template 1 ip unnum e0 encap ppp ppp authen chap vty-async virtual-template 1
ワンステップのプロトコル変換例:
int virtual-template 1 ip unnum e0 encap ppp ppp authen chap translate tcp 1.1.1.1 virtual-template 1
この機能により、データがシスコの(StrataCom)フレーム転送カプセル化の形式になっている場合、ルータ ATM インターフェイスで複数の PPP 接続を終端させることができます。PPP プロトコルは、一般的な PPP シリアル インターフェイスから受信した場合と同様に、ルータで終端します。各 PPP 接続は、個別の ATM VC でカプセル化されます。別のタイプのカプセル化を使用する VC も同じインターフェイスに設定できます。
interface Virtual-Template1 ip unnumbered e0/0 ppp authentication chap interface ATM2/0.2 point-to-point atm pvc 34 34 34 aal5ppp virtual-template 1
バーチャル プロファイルは、独特の PPP アプリケーションで、ルータにダイヤルするユーザごとにコンフィギュレーション情報を定義して適用します。バーチャル プロファイルでは、コールのダイヤルに使用されたメディアの種類に関係なく、ユーザ特定のコンフィギュレーション情報が適用されます。バーチャル プロファイルのコンフィギュレーション情報は、バーチャル インターフェイス テンプレートか AAA サーバに格納されたユーザごとのコンフィギュレーション情報、またはその両方から取得されます。これは、ルータと AAA サーバの設定方法によって異なります。バーチャル プロファイルのアプリケーションは、VPDN ホームゲートウェイ、またはマルチシャーシ環境内のシングルボックス環境にあります。
バーチャル プロファイルのコンフィギュレーション ソースとしてバーチャル テンプレートを定義する手順は次のとおりです。
virtual-profile virtual-template 1 int virtual-template 1 ip unnum e0 encap ppp ppp authen chap :
バーチャル プロファイルのコンフィギュレーション ソースとして AAA を定義する手順は次のとおりです。
virtual-profile aaa
この例では、システム管理者が John にアドバタイズされるルートをフィルタリングすることと、Rick のダイヤルイン接続にアクセス リストを適用することを決定しています。John または Rick がインターフェイス S1 または BRI 0 でダイヤルして認証すると、バーチャル プロファイルが作成されます。ルート フィルタが John に適用され、アクセス リストが Rick に適用されます。
John と Rick の AAA 構成:
john Password = ``welcome'' User-Service-Type = Framed-User, Framed-Protocol = PPP, cisco-avpair = ``ip:rte-fltr-out#0=router igrp 60'', cisco-avpair = ``ip:rte-fltr-out#3=deny 171.0.0.0 0.255.255.255'', cisco-avpair = ``ip:rte-fltr-out#4=deny 172.0.0.0 0.255.255.255'', cisco-avpair = ``ip:rte-fltr-out#5=permit any'' rick Password = ``emoclew'' User-Service-Type = Framed-User, Framed-Protocol = PPP, cisco-avpair = ``ip:inacl#3=permit ip any any precedence immediate'', cisco-avpair = ``ip:inacl#4=deny igrp 0.0.1.2 255.255.0.0 any'', cisco-avpair = ``ip:outacl#2=permit ip any any precedence immediate'', cisco-avpair = ``ip:outacl#3=deny igrp 0.0.9.10 255.255.0.0 any''
AAA cisco-avpairs に、特定のユーザに適用される Cisco IOS のインターフェイスごとのコマンドが含まれています。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
22-Oct-2018 |
初版 |