Point-to-Point Protocol(PPP)認証の問題は、ダイヤルアップ リンク障害の最も一般的な原因の 1 つです。このドキュメントでは、PPP 認証に関する問題のトラブルシューティング手順を紹介しています。
debug ppp negotiation および debug ppp authentication をイネーブルにします。
PPP 認証フェーズは、Link Control Protocol(LCP; リンク制御プロトコル)フェーズが完了してオープン状態になるまで開始されません。debug ppp negotiation が LCP がオープンであることを示さない場合、先に進む前にこの問題を解決する必要があります。
PPP 認証は、両側で設定されている必要があります。必要に応じて、次のコマンドを発行します。
ローカル マシン(またはローカル ルータ):これは、現在デバッグ セッションが実行されているシステムです。あるルータから他のルータにデバッグ セッションを移動した場合、「ローカル マシン」という用語は、新たに対象となったルータに対して適用されます。
ピア:ポイント ツー ポイント リンクの他方の端を意味します。したがって、このデバイスはローカル マシンではありません。
たとえば、RouterA で debug ppp negotiation コマンドを発行する場合、これがローカル マシンとなり、RouterB がピアになります。ただし、デバッグの対象を RouterB に変更した場合は、RouterB がローカル マシンになり、RouterA がピアになります。
注:ローカルマシンとピアという用語は、クライアントとサーバの関係を意味するものではありません。デバッグ セッションがどこで実行されているかによって、ダイヤルイン クライアントはローカル マシンまたはピアになります。
次の項目に関する専門知識があることが推奨されます。
debug ppp negotiation の出力を読み取って理解できる必要があります。詳細は、『debug ppp negotiation 出力について』を参照してください。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
この文書には、トラブルシューティングに役立つように、いくつかのフローチャートを掲載しています。次のフローチャートに進むには、丸印の中の番号をクリックしてください。
ルータで CHAP 認証または PAP 認証が実行されているかどうかを判別するには、debug ppp negotiation および debug ppp authentication の出力の次の行を調べます。
AUTHENTICATING フェーズで CHAP を探します。
*Mar 7 21:16:29.468: BR0:1 PPP: Phase is AUTHENTICATING, by this end *Mar 7 21:16:29.468: BR0:1 CHAP: O CHALLENGE id 5 len 33 from "maui-soho-03"
AUTHENTICATING フェーズで PAP を探します。
*Mar 7 21:24:11.980: BR0:1 PPP: Phase is AUTHENTICATING, by both *Mar 7 21:24:12.084: BR0:1 PAP: I AUTH-REQ id 1 len 23 from "maui-soho-01"
debug ppp negotiation の出力で次のメッセージのいずれかを探します。
BR0:1 PPP: Phase is AUTHENTICATING, by both
上記のメッセージは、ルータが双方向の認証を実行していることを示しています。
次のメッセージは、いずれもルータが単方向の認証を実行していることを示しています。
BR0:1 PPP: Phase is AUTHENTICATING, by the peer
または
BR0:1 PPP: Phase is AUTHENTICATING, by this end
着信メッセージ termreq または failure が受信されていないかどうかを調べます。「I」はこのメッセージが着信(incoming)メッセージであることを示しています。
BR0:1 LCP: I TERMREQ
または
BR0:1 CHAP: I FAILURE
着信に関する障害は、ピア側でローカル ルータのユーザ名とパスワードの認証ができなかったことを意味しています。これには、ローカル ルータまたはリモート ルータ側での設定ミス(ピア側が期待していたユーザ名とパスワードが指定されなかった)が考えられます。
debug ppp negotiation の出力で次のメッセージのいずれかを探します。
BR0:1 CHAP: O CHALLENGE id 9 len 33 from "maui-soho-03"
または
BR0:1 CHAP: O RESPONSE id 16 len 33 from "maui-soho-03"
発信チャレンジまたは応答の中のユーザ名に注意してください。この例では、これはmaui-soho-03です。認証に使用するユーザ名とパスワードが、リモート側で想定されるユーザ名とパスワードと一致していることを確認するには、これを行う必要があります。たとえば、ローカル ルータが自身をピアに対して A であると示しているものの、ピア側では B を期待していた場合、認証は正しく行われません。
発信チャレンジのユーザ名がホストネームと同じでない場合は、ppp chap hostname <username> コマンドを調べます。ここで使用するユーザ名は発信チャレンジのユーザ名です。このユーザ名とパスワード(ppp chap password コマンドで指定されているもの)をメモしてください。 この情報は、リモート ルータのトラブルシューティングの際に使用します。
ローカル ルータで着信障害が受信されていると判断できたことから、障害はピア側で起きていることが分かります。リモートの Cisco ルータにアクセスできる場合は、そのデバイスでトラブルシューティングを行います。
リモート ルータにアクセスできない場合は、そのルータの管理者に連絡して、ルータが期待しているユーザ名とパスワードを確認してください。
次の質問に答えてください。
リモート ルータが期待しているユーザ名は何か。
物理インターフェイスまたはダイヤラ インターフェイスで ppp chap hostname <username> コマンドを実行します。ここでは、リモート ルータの管理者から指定されたユーザ名を設定します。
注:大文字と小文字は区別されます。
リモート ルータが期待しているパスワードは何か。
物理インターフェイスまたはダイヤラ インターフェイスで ppp chap password <password> コマンドを実行します。
注:大文字と小文字は区別されます。
詳細は、ドキュメント『ppp chap hostname および ppp authentication chap callin コマンドを使用した PPP 認証』を参照してください。
ピア側で着信障害のメッセージが検出された場合は、ローカル ルータがピアの認証に失敗し、このメッセージを送信したことを意味しています。したがって、発信障害を起こしているルータをトラブルシューティングする必要があります。
ローカル ルータ上の次のメッセージは、発信障害を示しています。
BR0:1 CHAP: O FAILURE id 10 len 26 msg is "Authentication failure"
または
BR0:1 LCP: O TERMREQ [Open] id 22 len 4
ルータ側でサーバベースの認証、許可、およびアカウンティング(AAA)システム(Radius または Tacacs+)が使用されていない場合には、ルータで AAA がまったく使用されていない場合と、ローカル AAA が使用されている場合とがあります。デバッグ出力に次のメッセージのいずれかが表示されているかどうか、確認してください。
Unable to Validate Response
Username <username> Not Found
BR0:1 CHAP: I RESPONSE id 18 len 33 from "maui-soho-03" ! -- Incoming CHAP response to our challenge. ! -- The username used in the response is maui-soho-03. BR0:1 CHAP: Unable to validate Response. Username maui-soho-03 not found ! -- The username supplied by the peer is not configured on the router. ! -- We assume the peer does not have permission to connect. BR0:1 CHAP: O FAILURE id 18 len 26 msg is "Authentication failure" ! -- Outgoing CHAP failure message. ! -- The peer will see this as an incoming failure. BR0:1 PPP: Phase is TERMINATING [0 sess, 0 load]
ユーザ名の不一致は、次の 2 つの理由で発生します。
ローカル ルータ側で期待しているユーザ名がピア側から渡されない。たとえば、RouterA というユーザ名を期待(および設定)しているのに、ピア側では RouterB をいう名前を使用している場合です。ピア側から送られるユーザ名とパスワードを設定するか、ピア側の名前を正しいものに訂正します。
ローカル ルータにユーザ名が設定されていない。ピアから渡されるユーザ名がローカル ルータ側で期待していたものと一致する場合は、そのユーザ名とパスワードを設定します。
この問題は、ピア側で ppp chap hostname コマンドを使用して、ルータのホスト名以外のユーザ名を設定しているときに最も頻繁に発生します。
コマンド username <username> password <password> を使用します。<username> は、上記のエラー メッセージ内にあるユーザ名で置き換えます。
Username <username> Not Found
Unable to Authenticate for Peer
BR0:1 CHAP: I CHALLENGE id 17 len 33 from "maui-soho-01" ! -- Incoming challenge from maui-soho-01. ! -- This router must look up the username specified ! -- in order to create the CHAP response. BR0:1 CHAP: Username maui-soho-01 not found ! -- The username (maui-soho-01) supplied by the peer is not configured locally. BR0:1 CHAP: Unable to authenticate for peer ! -- Since this router does not recognize the username ! -- it cannot create the outgoing CHAP RESPONSE. BR0:1 PPP: Phase is TERMINATING ! -- Authentication fails.
ユーザ名の不一致は、次の 2 つの理由で発生します。
ローカル ルータ側で期待しているユーザ名がピア側から渡されない。たとえば、RouterA(および設定)という名前を使用している場合です。ただし、ピア側では RouterB という名前を使用します。ピア側から送られるユーザ名とパスワードを設定するか、ピア側のユーザ名を正しいものにアップデートします。
ローカル ルータにユーザ名が設定されていない。ピアから渡されるユーザ名がローカル ルータ側で期待していたものと一致する場合は、そのユーザ名とパスワードを設定します。
この問題は、ピア側で ppp chap hostname コマンドを使用して、ルータのホスト名以外のユーザ名を設定しているときに最も頻繁に発生します。
コマンド username <username> password <password> を使用します。<username> は、上記のエラー メッセージ内にあるユーザ名で置き換えます。
BR0:1 CHAP: I RESPONSE id 16 len 33 from "maui-soho-03" BR0:1 CHAP: O FAILURE id 16 len 25 msg is "MD/DES compare failed"
このエラーは、パスワードの不一致によって発生します。これには、次の 2 つの理由が考えられます。
ローカル ルータ側で期待しているパスワードがピア側から渡されていない。たとえば、LetmeIn というパスワードを期待(および設定)しているのに、ピア側では letmein をいうパスワードを使用している場合です。ピア側から送られるユーザ名とパスワードで再設定するか、ピア側のユーザ名を正しいものに訂正します。
ローカル ルータにパスワードが正しく設定されていない。ピア側から送られるパスワードの方が正しいと確認できた場合は、ローカル ルータ側を再設定します。
ソリューション:
次のコマンドを使用して、既存のユーザ名とパスワードのエントリを削除します。
no username <username>
ここで、<username> をエラー メッセージで示されているユーザ名に置き換えます。この例では、maui-soho-03 になります。
次のコマンドを使用して、ユーザ名とパスワードを設定します。
usernamepassword
このユーザ名は、上記の CHAP メッセージの中にあるものと同じである必要があります。また、パスワードはリモート ルータ側のパスワードと同じものである必要があります。
注:このドキュメントは、AAAのトラブルシューティングリソースとして使用するものではありません。AAA のトラブルシューティングに関する詳細は、次のドキュメントを参照してください。
ACS サーバが認証要求を受信しなかったため、セッションが失敗して ACS サーバを認証できない場合があります。この動作は、Cisco Bug ID CSCee04466(登録ユーザのみ)に記述されています。 回避策として、PPP セッション用に RADIUS サーバを使用します。ただし、ルータの TACACS+ サーバを管理上の目的でのみ使用してください。
改定 | 発行日 | コメント |
---|---|---|
1.0 |
18-Dec-2007 |
初版 |