このドキュメントでは、アクセス ポイント(AP)のロード バランシングおよび AP フォールバックが Cisco Unified Wireless ソリューションでどのように動作するかについて説明します。このドキュメントでは、フェールオーバー条件について複数のワイヤレス LAN(WLAN)コントローラ(WLC)を設定する方法について説明します。フェールオーバー状態は、プライマリ コントローラが何らかの理由でダウンするか故障したときに発生します。そのとき、別のコントローラが動作を引き継ぎます。フェールオーバーは、コントローラ冗長性とも呼ばれます。
注:このドキュメントで説明されているAPフォールバックは、3.2.171.5より前のバージョンのコントローラのファームウェアにのみ関連しています。それ以降のバージョンのコントローラのファームウェアは、このように動作しません。最新バージョンのファームウェアでは、AP はオンラインになると常にプライマリ コントローラにフォールバックします。AP フォールバックに問題がある場合、このドキュメントをお読みになるか、コントローラ ファームウェアを最新のコードにアップグレードしてください。
次の項目に関する知識があることが推奨されます。
Lightweight AP および Cisco WLC の設定
Lightweight AP Protocol(LWAPP)
外部 DHCP サーバの設定
DNS サーバ
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
Cisco Aironet 1000 シリーズ Lightweight AP
ファームウェア 3.2.78.0 が稼働する Cisco 2000 シリーズ WLC 2 台
Microsoft Windows Server 2003 Enterprise DHCP サーバ
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
この設定は、他の任意の Cisco WLC および任意の Lightweight AP でも使用できます。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
WLC および Lightweight AP のフェールオーバー向けの設定方法についての詳細は、『Lightweight アクセス ポイントのための WLAN コントローラのフェールオーバー設定例』を参照してください。
モビリティ グループを適切に設定していれば、AP ロード バランシングを 2 つ(またはそれ以上)の WLC について実行できます。LWAPP では、動的な冗長性とロード バランシングが可能です。たとえば、オプション 43 に複数の IP アドレスを指定すると、AP が受信する各 IP アドレスに対して、AP から LWAPP ディスカバリ要求が送信されます。WLC の LWAPP ディスカバリ応答には、WLC によって次の情報が組み込まれます。
現在の AP の負荷に関する情報(その時点で WLC に加入している AP の数)
AP の容量
WLC に接続されているワイヤレス クライアントの数
その後、AP は負荷が最小の WLC(つまり、使用可能な AP 容量が最大の WLC)への加入を試みます。AP は WLC に加入すると、モビリティ グループ内の他の WLC の IP アドレスを加入した WLC から取得します。
続いて、AP は、モビリティ グループ内の各 WLC に対して LWAPP プライマリ ディスカバリ要求を送信します。WLC は、プライマリ ディスカバリ応答を AP に返します。プライマリ ディスカバリ応答には、WLC のタイプ、合計容量、現在の AP の負荷に関する情報が含まれます。WLC で AP Fallback パラメータが有効になっている場合は、AP は負荷の少ない WLC に移動できます。
AP がブートまたはリセットするとき、AP が認識するコントローラ管理 IP アドレスは、DNS(Cisco-lwapp-controller@local_domain.com)(最大 20)、DHCP オプション 43(最大 20)、OTAP、255.255.255.255、および以前加入していたコントローラから得られる情報に限られます。以前加入していたコントローラのモビリティ グループ内のコントローラ情報は、リブート前後で保持されません。
ただし、AP とコントローラの接続が失われると、AP はリブートしません。AP はすぐにディスカバリ モードを開始し、モビリティ グループ メンバー情報を保持します。そしてモビリティ グループのすべてのメンバーに対してディスカバリ要求を送信できます。
注:APがコントローラに加入すると、現在加入しているコントローラを残すだけで、いくつかの理由があります。AP が現在加入しているコントローラを離れることにはならない理由の 1 つとして、AP がすべてのコントローラの間で正確にロード バランスされていないという状況があります。この理由について言えば、このロード バランシング アルゴリズムはおおよそのロード バランシング アルゴリズムに過ぎません。ただし、ユーザが各 AP のプライマリ コントローラを手動で定義する場合はこの限りではありません。
これらの規則は、次に示すいくつかの例を使用することによってうまく説明できます。
AP は出荷直後の新しい状態で、コントローラに接続したことがありません。この AP は、モビリティ グループ内の 3 つのコントローラ間でロード バランスされますか。
いいえ。APはOTAP経由のブート時に3つのコントローラ管理IPアドレスをすべて検出し、DNS(3つの管理IPアドレスをすべて定義)、255.255.255.255、およびDHCPオプション43(3つの管理IPアドレスすべてを含む)を検出する必要があります。AP は既知のコントローラすべてにディスカバリ要求を送信し、AP の容量に最も余裕があるコントローラに加入します。DHCP オプション 43/DNS に定義されているコントローラが 1 つだけの場合、新しい AP は常にそのコントローラに加入します。
DHCP オプション 43/DNS で 1 つのコントローラが定義されており、モビリティ グループ内に 3 つのコントローラがあるとき、AP が DHCP オプション 43 でコントローラに加入した後でその AP をリブートした場合にモビリティ グループ内の 3 つのコントローラ間でロード バランスされますか。
いいえ。APがリブートまたはリセットされると、APは常にDHCPオプション43/DNSまたは最後に加入したコントローラに加入します。ただし、現在のコントローラに対するハートビートが失われると、AP はリブートしません。そうする代わりに、AP はすぐにディスカバリ モードを開始します。AP はリブートしないことでモビリティ メンバー情報を保持し、モビリティ グループ内の各コントローラに対してディスカバリ要求を送信します。
AP はモビリティ メンバーを何のために使用しますか。
未設定コントローラから設定済みコントローラ(プライマリ、セカンダリ、ターシャリ)への AP フォールバックと、AP が現在のコントローラとの接続を失った場合に他のコントローラ IP アドレスを学習することです。AP はリブートによってモビリティ メンバー情報を失うことに注意してください。
注意:このアルゴリズムには競合状態が存在する可能性があります。コントローラに同時加入する AP が多い場合、コントローラが AP のディスカバリ要求に応答する時点から、AP が AP マネージャに加入要求を送信するまでの間に、AP マネージャに加入する AP の数が変化することがあります。たとえば、停電後に複数の AP の電源が同時に復旧した場合、これらの AP はコントローラの間で均等にロード バランスされないことがあります。
ホットスタンバイ ルータ プロトコル(HSRP)のスタンバイとは異なり、AP フォールバックでは、AP がフェールオーバーしてから設定済みコントローラにフォールバックするまでの間にワイヤレス サービスが停止します。AP がいったんコントローラに加入すると、AP は次の場合に限り、コントローラを離れるようにプログラミングされています。
コントローラに対するキープアライブからの応答を AP が受け取らなくなる。
お客様がコントローラを使用して AP をリセットする。
設定済みコントローラ(プライマリ、セカンダリ、ターシャリ)が動作中であるという通知を、現在のコントローラからのモビリティ グループ メンバー更新情報を通じて AP が受け取った場合(AP は現在、AP フォールバックがイネーブルの未設定コントローラに加入している)。
AP は未設定コントローラから設定済みコントローラ(プライマリ、セカンダリ、ターシャリ)へのみ AP フォールバックを実行するということに注意してください。 AP が現在セカンダリ コントローラに加入している場合、セカンダリ コントローラからプライマリ コントローラにフォールバックしません。これは、セカンダリ コントローラが設定済みコントローラであるためです。
AP が未設定コントローラに加入しているとき、設定済みコントローラが稼働中で利用できるという通知をモビリティ グループ メンバー経由で受け取ったら、AP はすぐに現在のコントローラを離れて設定済みコントローラに加入します。
注:この項で説明するAPフォールバックの動作は、バージョン3.2.171.5以前を実行するコントローラに適用されます。それ以降のバージョンのコントローラ ファームウェアではこれらの問題が生じません。最新バージョンのファームウェアでは、AP はオンラインになると常にプライマリ コントローラにフォールバックします。AP フォールバックに問題がある場合、コントローラ ファームウェアを最新のコードにアップグレードしてください。
注: 新しいLWAPP AP1242が、ファームウェア2.3.116.21が稼働するWLC2006またはWLC4400に最初に接続すると、セカンダリコントローラ名(つまり、"WIRELESS"->"Detail")が空白ではありません。show AP config general コマンドの表示でも、セカンダリ コントローラ名は空白ではありません。これは、Cisco Bug ID CSCse30514で報告されています。回避策はありませんが、4.0ソフトウェアリリースにはこの動作はありません。
注:WLCで5.2コード以降を実行してAPハイアベイラビリティを設定する場合、コントローラ間のグローバル802.11g設定が一致しない(有効と無効)と、フェールオーバーイベントが発生するとAP加入の問題が発生するすることがあります。プライマリ、セカンダリ、ターシャリ WLC ですべての WLC 設定が同じであることを確認します。
ランダムなロード バランスでは、プライマリ、セカンダリ、ターシャリ コントローラはどれも設定不要です。ただし、AP をロード バランスさせるすべてのコントローラは、DHCP オプション 43 または DNS で定義する必要があります。
完全なロード バランスを常に行う場合、AP のプライマリ コントローラを手動で設定し、他の 2 つのコントローラを空白にしておくことを推奨します。プライマリ コントローラが稼働中で機能しており、AP が加入できるコントローラすべてにわたってモビリティ グループが定義されている限り、AP は稼働中で機能しているプライマリ コントローラに加入しようとします。
WAN 内の別のコントローラを試すよりも前に、リモート サイトにあるセカンダリ コントローラに AP がフォールバックする場合、3 つのコントローラすべてを DHCP オプション 43 または DNS で定義しておく必要があります。ただし、リモート サイト側の AP ではプライマリおよびセカンダリ コントローラのみ定義します。
DHCP オプション 43 または DNS で WAN コントローラが定義されていない場合、AP は、現在加入中のコントローラのモビリティ グループに WAN コントローラが入っており、ローカル コントローラがダウンした場合にのみ WAN コントローラにフェールオーバーします。AP がリブートした場合、その AP が最後に加入していたコントローラが WAN コントローラである場合を除き、DHCP オプション 43 または DNS コントローラのいずれかがモビリティ グループ メンバー情報を AP に通知できるようになるまでは、AP は WAN コントローラに加入しません。
注:AP設定のコントローラ名では、大文字と小文字が区別されます。したがって、AP 設定には必ず正確なシステム名を設定してください。正確に設定しないと、AP フォールバックが機能しません。
次の設定パラメータが正しく設定されていることを確認してください。
すべての WLC で AP フォールバックが [Enabled] になっている必要があります。これはコントローラの GUI ページで確認できます。
WLC バージョン 5.0.148.0 以前では、AP プライマリ、セカンダリ、およびターシャリ コントローラ名フィールドに入力できるのは、コントローラ システム名だけでした。現在は、コントローラ管理インターフェイスの IP アドレスも使用できます。
AP のフェールオーバーおよびフォールバックを実行するには、コントローラが同じモビリティ グループ内に設定されている必要があります。
モビリティ グループ メンバーシップの通信を確認するには、CLI mping コマンドを使用します。コントローラのモビリティ グループ設定情報を表示するには、show mobility summary コマンドを使用します。
Controllers configured in the Mobility Group MAC Address IP Address Group Name Status 00:0b:85:44:36:e0 192.168.240.10 Wireless Up 00:1f:9e:9b:08:20 192.168.251.250 Wireless Control Path Down
ステータスが Control Path Down の場合、WLC 間にファイアウォールがないこと、あるいはこれらのプロトコルおよびポートが許可されていることを確認してください。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
01-Aug-2008 |
初版 |