このドキュメントでは、Cisco アクセス ポイント(AP)3500 と AP 3600 の RF 電力の違いについて説明します。
このドキュメントでは、FCC の規則の詳細について、および新製品の AP 3600 が新しい FCC の規則に準拠するために RF 電力を少し下げる原因となるパワー スペクトル密度(PSD)要件の適用について説明します。
表記法の詳細については、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
A. 従来から、UNII-1帯域にはRF電力の制限が常に低く設定されてきました。これは、これらの周波数が米国の屋内使用専用に確保されているためです。AP 3600 の開発中に RF 出力に関する FCC の新しいガイドラインが施行され、これにより RF 電力要件が変更されました。
注:AP 3600は、これらの新しいガイドラインに基づいて認定された最初の商用アクセスポイントです。より深く理解するために、次の Wi-Fi スペクトルをご覧ください。
図 1:この図は Wi-Fi スペクトルと一次サービス(ラインセンス先ユーザ)を示します。出典:http://www.ntia.doc.gov/osmhome/allochrt.PDF
UNII-1 帯域の 5150 ~ 5240 MHz(チャネル 36 ~ 48)を見ると、このスペクトルの一次または専用サービス(ライセンス使用)は、航空無線航行業務および静止衛星向けで、マイクロ波着陸システムや屋外通信などの用途であることがわかります。
UNII-1 周波数が限られた RF 電力で屋内使用される場合、FCC はこれらの周波数をラインセンスが不要な Wi-Fi で使用することを許可しています。これは、ピーク RF 電力とパワースペクトル密度(PSD)が許容レベル内を維持する限り、このようなデバイスは多少の干渉を許容するためです。
2011 年 10 月 25 日に FCC Office of Engineering and Technology Laboratory Division は、同じ帯域で複数出力を行うトランスミッタのテストに関する報告書を公開しました。これらの新しいガイドラインは、干渉の可能性を減らすために役立ち、ベンダーにかかわらず Smart Antenna システム、および Multiple Input Multiple Output(MIMO)テクノロジーを使用するすべての無線 LAN 製品に適用されます。
この FCC の報告は、シスコなどのメーカーが新しいガイドラインに準拠する方法を説明するために公開されました。これらのガイドラインは次の FCC の URL で提供されています。
「注目」すべきは、メーカーが PSD 制限に準拠するための方法に関して FCC がさらなる明確化を行っている点です。
FCC の報告書によると、指向性利得の計算は次の方法で行うことができます。
指向性利得の計算:N 本の同じ送信アンテナがあり、それぞれが同じ電力の N 個のトランスミッタ出力によって生じる同じ指向性利得 GANT dBi を持つ場合、指向性利得は次のように計算されます。
いずれかの送信信号が相関関係にある場合、指向性利得 = GANT + 10 log(N) dBi
すべての送信信号が完全に無相関の場合、指向性利得 = GANT
FCC の報告書より:異なるアンテナから送信される信号間の相関はアレイ利得を導く場合があり、これによってデバイスの指向性利得が増加し、いくつかの方向では放出レベルが高くなります。トランスミッタの指向性利得へのアレイ利得の寄与は、規則部分への反映が必要になります。ここでは導かれる帯域内の放出制限が指向性利得によって変化します。つまりこの場合、帯域内の放出制限への準拠を決定するために、導かれた測定結果が指向性アンテナ利得と組み合わされます。
Cisco AP 3600 は、新しい FCC ガイドラインに準拠する市場で初めてのアクセス ポイントです。シスコ(および他のメーカー)は、MIMO または Smart Antenna テクノロジーを利用する新しい製品をリリースする際に、UNII-1 帯域の RF 電力を下げ、UNII-2 および UNII-2 拡張帯域の RF 電力を少し下げる必要があります。あるいは、製品ごとに許可されたアンテナ全体の利得を下げるなどの他の方法が必要です。
繰り返しますが、これは航空無線航行業務、レーダー、および静止衛星の通信サービスとの干渉の可能性を減らすために行われます。
これによる主な影響は、新しい規則の下で帯域内 PSD 要件に準拠するためには、送信パスの数を考慮し、それが全体の RF 電力や PSD 放射にどう影響するかを検討する必要があることです。
これにはビーム フォーミングが含まれます。ビーム フォーミングが意図したものかどうか、特定状況下で生じるものかどうかにかかわらず、RF 電力が合算されて全体の PSD 値を増やす可能性があります。FCC の制限値以下に保つためには、いくつかの状況では MCS レートと準拠する周波数に基づいて RF 電力を下げる必要があります。
下げる電力は PSD 制限値が低い UNII-1 帯域でより大きく、特に複数の送信パスが存在する場合に顕著です。たとえば次のスクリーンショットでは、新しい FCC の規則の下で送信パス(物理的なトランスミッタ)が多いほど PSD が上昇することがわかります。場合によって、4 つのトランスミッタが存在するときの RF 電力は 6 dB 低下するケースもあります。
図 2:多くのトランスミッタを有効にするほど PSD が減少します。これにより RF 電力の低下が必要になります。図 3:多くのトランスミッタを有効にするほど PSD が減少します。これにより RF 電力の低下が必要になります。幸い、この電力の低下は UNII-2 および UNII-2 拡張帯域ではかなり小さくなります。
新しい FCC の規則を考慮すると、4 つすべてのトランスミッタを同時に使用する場合は、引き下げられた PSD 制限に準拠するために RF 出力電力を少し引き下げる必要があります。一番大きな電力低下は、たとえば 6 Mbps パケットの場合で、AP 3600 では AP 3500 よりも最大 6 dB 電力が低くなります(8 dB 対 14 dB)。これは AP 3600 が、PSD 放出と 2 つの追加トランスミッタについて新しい FCC の規則に準拠したためです。
多くの場合(特に高いデータ レートを使用するクライアントの場合)、減少した TX 電力はより優れたダウンリンク性能で補われます。複数トランスミッタと Cisco Client Link 2.0 の使用により可能になったビーム フォーミングの利得があるためです。
注:Client Link 2.0はAP 3600でのみ使用できます。したがって、802.11n と 802.11ac クライアントは優れたダウンストリーム リンクを維持でき、AP 3500 よりも利点があります。
また、主に UNII-1 帯域で RF 電力の顕著な低下があり、UNII-1 帯域で最大の RF 電力で実行される AP 3500 の方により高い性能を特徴付けることも可能に思えますが、UNII-1、2、および 3 帯域のチャネル全体で複数 AP を採用し、ネットワーク全体に設置された AP 3600 の性能は、AP 3500 の性能をはるかに超えることがテストによって示されています。
繰り返しますが、AP 3500 はレガシーの 802.11a/g クライアントのビーム形成の機能しか持たないのに対し、Client Link 2.0 を使用する新しい AP 3600 は 802.11a、g、n クライアントに加えて互換モードで 802.11ac クライアントのビーム形成ができます。
まとめると、AP 3600 は、FCC のすべての新しい規則と規制に完全に準拠した業界初のアクセス ポイントです。また、AP 3600 は AP 3500 の機能を超える多くの機能を提供します。
そして、他のベンダーのデバイスも含めて、新しい複数トランスミッタの MIMO デバイスはすべてこれらの新しい FCC の規則への準拠が必要です。
機能には、次のものがあります。
最大 450 Mbps の 3-ss クライアント サポートが可能な 4 トランスミッタ チェーンのサポート。
Client Link 2.0(ビーム フォーミング)によりすべての 802.11n クライアントに対して、全体的により優れた個人所有デバイス持ち込み(BYOD)体験を提供。
注:4番目のトランスミッタにより、クライアントリンクは3-ssクライアントで動作できます。
拡張性と投資保護のためのモジュール サポート。
シスコの AP は新しいクライアントの主要な機能である UNII-2 拡張チャネルを完全サポートしています。現在多くのクライアントがエンタープライズ(802.11n)互換モードで .11ac クライアントを含む UNII-2 拡張をサポートしつつありあます。
AP 3600の詳細については、『Cisco Aironet 3600シリーズ』を参照してください。
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
06-May-2012 |
初版 |