FWSM からの Cisco ASA サービス モジュールへの移行
• 「関連資料」
このガイドでは、Cisco FWSM の構成を Cisco ASA SM 8.5 の構成に変換する方法について説明します。
また、Cisco FWSM と Cisco ASA SM の動作の違いについても詳しく説明します。
ASA SM は FWSM と共通のソフトウェア基盤を共有しますが、FWSMの構成は ASA SM では直接使用できません。
特定のコマンドの使用法などプラットフォーム間の違いによって、FWSM の構成を変更せずに ASA SM で使用することはできません。
警告 移行ツールの実行後、移行した構成を ASA SM の CLI プロンプトで貼り付けることはできません。ネットワークを介して構成をスタートアップ構成にコピーしてから ASA SM にリロードし、スタートアップ時に追加の移行を実行できるようにする必要があります。
特に、ASA SM の NAT 機能が見直され、FWSM よりも柔軟性および機能性が向上しています。ASA SM では、自動 NAT を使用して NAT を構成すると、ネットワーク オブジェクトの属性の一部として NAT を構成でき、手動 NAT を使用すると、より高度な NAT オプションを構成できます。
ASA SMでは、すべての NAT および NAT 関連コマンドが再設計されます。 nat (グローバルおよびオブジェクト ネットワーク コンフィギュレーション モード)、 show nat 、 show nat pool 、 show xlate 、 show running-config nat の各コマンドが導入または変更されました。 global 、 static 、 nat-control 、 alias の各コマンドは削除されました。
FWSM と ASA SM 間のスタティックの NAT の一致における違いについては、「デフォルトの動作の違いによる移行」を参照してください。
ASA SM での NAT の機能変更に関する詳細については、『 Cisco ASA 5500 Migration Guide for Version 8.3 』の「NAT の移行」を参照してください。
FWSM の構成を ASA SM へ移行するには、次の 2 つのステップを実行します。
ステップ 1: 移行ツールの実行
ステップ 2: 移行した構成の ASA SM への適用
移行ツールを実行したときに、移行ツールは必要なすべてのコマンド構文を変更するわけではないため、これらの 2 つのステップを使用して FWSM から ASA SM へ移行する必要があります。このため、移行した構成ファイルを開くことができず、 select all コマンドを入力して、その構成をコピーして、ASA SM のコマンド ラインに構成を貼り付けることができません。
移行した構成ファイルは、ASA SM のスタートアップ構成にコピーする必要があります。後でASA SM を再起動すると、スタートアップ 構成が起動時に解析されます。ASA SM イメージは FWSM から非推奨となっている、または変更されている NAT、ACL、およびその他のコマンドを使用して、それらのコマンドを ASA SM が許可するコマンドに変換します。
移行ツールには、FWSM の移行を実行する Windows と Macintosh のアプリケーションが含まれます。
ASA SM は既知の状態にする必要があります。ブレード上で実行する構成はできません。また、構成後、サービス モジュールの構成をクリアする場合は、 write erase コマンドを実行します。
FWSM の構成を ASA SM の構成に変換するには、次のステップを実行します。
ステップ 1 シスコのソフトウェア ダウンロード サイトから、ファイル fwsm_migration_mac.zip または fwsm_migration_win.zip を見つけ、Windows クライアントまたは Macintosh クライアントに保存します。ZIP ファイルを解凍し、そこから変換アプリケーションを実行するシステムに対応するファイル、fwsm_migration.exe または fwsm_migration.app を取得します。
ステップ 2 ASA SM に移行する FWSM から、すべてのコンテキストの各構成ファイルとシステム コンテキスト ファイルを含むすべての構成ファイルを、移行ツール アプリケーションを抽出したディレクトリにコピーします。
シングル モードの場合は、実行中の構成ファイルをコピーします。マルチモードの場合は、次の構成ファイルをコピーします。
ステップ 3 wsm_migration.exe または fwsm_migration.app ファイルをダブルクリックして移行ツールを起動します。
[FWSM Configuration Migration] ダイアログボックスとコマンドウィンドウが表示されます。このウィンドウに変換の進捗とステータスが表示されます。
• [Single File] - シングル コンテキスト モードで実行する FWSM 用の構成ファイルを変換する場合は、このオプションを選択します。
• [Directory] - マルチ コンテキスト モードで実行するFWSM 用の複数のファイルを変換する場合は、このオプションを選択します。各コンテキストに対応する構成ファイルがあり、FWSM にはシステム コンテキスト ファイルがあります。
ステップ 5 選択したオプション([Single File] または [Directory])の下に、変換するファイルの情報を入力します。
• [Input File] フィールド - シングル コンテキスト FWSM の構成ファイルのパスおよびファイル名を入力するか、ローカル システム上のファイルを検索するには [ Browse ] をクリックします。
• [Input Directory] - すべてのマルチ コンテキスト構成ファイルとシステム コンテキスト ファイルを含むディレクトリへのパスを入力するか、ローカル システムのディレクトリを検索するには、[ Browse ] をクリックします。
ステップ 6 選択したオプション([Single File] または [Directory])の下に変換の出力情報を入力します。
• [Output File] フィールド - シングル コンテキストの FWSM 用に移行ツールが変換後の構成ファイルの作成に使用するパスとファイル名を入力します。
• [Output Directory] - 移行ツールが変換されたマルチ コンテキスト構成ファイルおよびシステム コンテキスト ファイルを配置するディレクトリへのパスを入力するか、ローカル システムのディレクトリを検索するには、[ Browse ] をクリックします。
ステップ 7 [ASA SM Boot Image] フィールドに、次の形式で ASA SM のブート イメージの場所を入力します。
ブート イメージ値は次のオプションの 1 つが含まれる必要があります。
• disk0:/ のパスおよび disk0 上のファイル名
• disk1:/ のパスおよび disk1 上のファイル名
• flash:/ のパスおよび flash 上のファイル名
このフィールドに入力した値によって、最終的な移行を完了するときにブートする ASA SM イメージが定義されます。
(注) write memory コマンドを ASA SM で発行し、ブート イメージ値をメモリに書き込む必要があります。write memory コマンドを発行すると、ブート イメージに指定したブート イメージ値が構成ファイルの BOOT 変数に保存されます。値をメモリに書き込んだ後、show bootvar コマンドを入力して、ブート変数がメモリに書き込まれたことを確認します。ASA SM については、『Cisco ASA 5500 Series Command Reference, 8.5』を参照してください。
ステップ 8 [Log Location] フィールドに、変換からのステータス情報を記録するために移行ツールが使用するログ ファイルのパスおよび名前を入力するか、[ Browse ] をクリックしてローカル システムのファイルの場所を見つけます。
ステップ 9 [ Convert ] をクリックし、変換を開始します。
コマンド ウィンドウにステータス情報が表示されます。変換が正常に完了すると、[Success] ダイアログボックスが表示されます。
ステップ 10 変換を終了するには、[ OK ] をクリックします。
• 移行ツールを使用して FWSM の構成を移行しておく必要があります。「移行ツールの実行」を参照してください。
• TFTP、SSH、または HTTP を使用してファイルを転送できるように ASA SM でインターフェイスを構成します。
ステップ 1 TFTP、SSH、または HTTP を経由して ASA SM に移行したファイルをコピーします。
(注) 必要に応じて、TFTP、SSH、または HTTP を使用してファイルを転送できるようにインターフェイス構成を追加します。
a. シングル モードで動作している場合は、startup-config ファイルに移行した構成をコピーします。
b. マルチ モードで動作している場合は、startup-config にシステム構成を、disk0 にすべてのコンテキスト構成ファイル(Admin コンテキストなど)をコピーします。
(注) コンテキスト ファイルは、各コンテキストのシステム構成が示すパス内の disk0: に配置する必要があります。システム構成に「config-url disk0:/context/ctx1.cfg」としてコンテキストの構成 URL がある場合は、そのコンテキストのファイルはコンテキスト ディレクトリ パスに配置する必要があります。
(注) 移行した構成を ASA SM の CLI プロンプトで貼り付けることはできません。ネットワークを介して構成をスタートアップ構成にコピーしてから ASA SM にリロードし、スタートアップ時に追加の移行を実行できるようにする必要があります。FWSM 機能を Object NAT や Twice NAT を使用する ASA SM 上の NAT 機能に変換するなど、特定の機能の変換が複雑なため、構成をコピーし、貼り付けることはできません。
ステップ 2 シングル モードの ASA SM イメージを移動しているときに FWSM をリロードします。
起動時に、最終的な構成変更が ASA SM イメージで実行されます。
(注) マルチモード FWSM コンテキストをアップロードする場合、各マルチモード コンテキストを適用した後に ASA SM をリロードする必要はありません。
次の debug コマンドは、FWSM ではサポートされていますが、ASA SM ではサポートされていません。
• [show | no] debug resource partition
• [show | no] debug RM-NP-counter
• [show | no] debug control-plane
• [show | no] debug route-monitor
次の clear コマンドは、FWSM ではサポートされていますが、ASA SM ではサポートされていません。
• clear route-monitor statistics
• clear np number_item keyword
• clear configure resource rule
• clear configure resource partition
• clear configure xlate-bypass
• clear configure route-monitor
次の show コマンドは、FWSM ではサポートされていますが、ASA SM ではサポートされていません。
• show running-config all ftp-map
• show running-config all gtp-map
• show running-config all mgcp-map
• show running-config all h225-map
• show running-config all xlate-bypass
• show running-config all route-monitor
• show running-config all control-point tcp-normalizer
• show running-config all route-inject
• show np number_item keywords
• 「ASA SM でのサポートされていない機能による移行」
FWSM と ASA SM の主なデフォルト動作の違いは次のとおりです。
デフォルトでは、FWSM のインターフェイスをアクセス リストまたはアクセス グループ コマンドを割り当てないで構成すると、FWSM はそれらのインターフェイスに入ってくるすべてのトラフィックをドロップします。FWSM に入るトラフィックを許可するには、インバウンド アクセス リストをインターフェイスに追加する必要があります。
デフォルトでは、アクセス リストやアクセス グループ コマンドを割り当てずに ASA SM でインターフェイスを構成すると、ASA SM は高セキュリティ インターフェイス(内部セキュリティ レベルは 100 を想定)から低セキュリティ インターフェイス(外部セキュリティ レベルは 0 を想定)へのトラフィックの通過を許可します。逆は当てはまりません。ASA SM は外部から内部インターフェイスへのトラフィックの通過を許可しません。
したがって、このタイプの FWSM 構成では方向に関係なくトラフィックをブロックする必要があると想定して移行ツールが作成されました。パリティを保持するには、移行ツールはすべてのインターフェイス上に明示的な ACL(deny ip any any)を追加してトラフィックを拒否します。さらに、ASA SM では、アクセス リストの最後のステートメントは暗黙の deny ip any です。IOS デバイスはこれと同じ動作を使用します。
内部から外部、ソース IP 192.168.1.10 のトラフィックは許可されます。
内部から外部、ソース IP 192.168.2.1 へのトラフィックは拒否されます(hits implicit)。
デフォルトでは、FWSM は暗黙的な ICMP の拒否をインターフェイスに設定するように構成されます。ASA SM は暗黙的な許可を設定するように構成されます。
移行ツールを実行すると、すべてのインターフェイスに icmp deny 分が追加されます。
デフォルトでは、FWSM はスタティック NAT およびスタティック PAT に最適な一致を使用するように構成されます(標準およびポリシー)。重複する IP アドレスがスタティック文で発生した場合、警告が表示されますが、重複する IP アドレスはサポートされます。static コマンドの順番は重要ではありません。実アドレスと最も一致した static ステートメントが使用されます。
ASA SM では、IP アドレスは、構成に現れるルールの順番に基づいて、スタティック NAT ルールとスタティック PAT ルールと照合されます。
移行ツールは FWSM の動作を保持できません。したがって、重複する NAT ルールがある場合は、移行した構成を見て、アドレス変換の要件に一致していることを確認してください。
次の FWSM 機能は ASA SM ではサポートされていません。
FWSM では、IPsec は、マルチモードで管理用にサポートされています。
ASA SM はマルチモードの IPSec をサポートしません。IPSec(シングルおよびマルチ モードの両方)はサポートされていません。移行ツールを実行すると、VPN 関連のコマンドが削除され、IPSec がサポートされていないことを通知します。
非対称ルーティングを ASA SM に導入していた場合、アクティブ/アクティブの制約によって影響されませんでした。
ASA SM では、アクティブ/アクティブ モードでサポートされているのは非対称ルーティングのみです。
移行ツールは、アクティブ/アクティブ モードでない場合はコマンドを削除し、ユーザに通知します。
これは、BGP スタブ ルーティングをサポートする FWSM の機能です。
移行ツールは BGP 関連のコマンドを削除し、ユーザに通知します。
アクティブ/スタンバイ フェールオーバーのフェールオーバー プリエンプション
これは、アクティブ/スタンバイ フェールオーバーのシナリオで構成可能な FWSM 機能です。この機能が構成されている場合、プライマリ ユニットは特定の時間が経過した後、次の場合に常にアクティブになります。
• プライマリ ユニットに障害が発生して、セカンダリがアクティブになった場合
• プライマリ ユニットとセカンダリ ユニットがアクティブになる前にセカンダリ ユニットがブートした場合
これは、FWSM の機能で、FWSM で構成されている、接続済みの静的 NAT プール ルートをコンテキストごとに MSFC にインストールします。MSFC はその後に、そのルートを再配布します。
FWSM では 3.2(1) でこの機能が追加されました。この機能を使用すると、インターフェイス固有の DHCP サーバを構成できます。「dhcprelay server」CLI はグローバル モードで構成でき、インターフェイス固有のモードで追加することもできました。
移行ツールはインターフェイス固有のコマンドからグローバルに変換し、ユーザに通知します。
ステートフル フェールオーバーの Uauth テーブルの複製
FWSM は、ステートフル フェールオーバーが構成されている場合のフェールオーバー ピアへの Uauth テーブルの複製をサポートします。
次の表に、FWSM と ASA SM の CLI コマンドの違いを示します。
次の表に、FWSM と ASA SM 間のデフォルト値と値の範囲の違いを示します。デフォルト値および値の範囲の違いは FWSM から ASA SM への移行に影響しません。
次の FWSM MIB は、ASA SM でサポートされていません。
CISCO-ENTITY-REDUNDANCY-MIB.my
CISCO-ENTITY-REDUNDANCY-TC-MIB.my
次の FWSM SNMP トラップは ASA SM でサポートされていません。
ceAlarmAsserted: CISCO-ENTITY-ALARM-MIB.my
ceRedunEventSwitchover: CISCO-ENTITY-REDUNDANCY-MIB.my
clrResourceRateLimitReached: CISCO-L4L7MODULE-RESOURCE-LIMIT-MIB.my
FWSM に関する追加情報については、次の URL を参照してください。
http://www.cisco.com/en/US/products/hw/modules/ps2706/ps4452/tsd_products_support_model_home.html
マニュアルの入手方法、テクニカル サポート、その他の有用な情報について、次の URL で、毎月更新される 『What's New in Cisco Product Documentation』 を参照してください。シスコの新規および改訂版の技術マニュアルの一覧も示されています。
http://www.cisco.com/en/US/docs/general/whatsnew/whatsnew.html