Cisco Executive Forum 2023 /
Partner Executive Club
CXO シンポジウム レポート

お客様、パートナー様と共に 新たな価値体験を共創していくために

ICT のパワーを活用し、新たな価値体験を生み出していく。これからの社会やビジネスにとって、これは最も重要な課題だと言えます。もちろんこのようなことを、シスコのような 1 ベンダーだけで実現することは困難です。お客様やパートナー様と手を取り合い、共に前進していくことで、より大きな価値を生み出すことが可能になるのです。そのビジョンを共有し、具体的な「新たな価値体験」を実感していただくために開催されたのが「CXO シンポジウム」です。「世界がまだ見ぬボールパーク」をコンセプトに生まれた「北海道ボールパーク F ビレッジ」にお客様とパートナー様をご招待し、複数のセッションを実施。その概要をレポートします。

オープニング

信頼される「製品ベンダー」から常に寄り添う「戦略的ビジネスパートナー」へ

シスコシステムズ合同会社
代表執行役員社長
中川 いち朗

イベント冒頭に登壇した中川からは、シスコジャパンの近況と今後の戦略について解説。2023 年版「働きがいのある会社」第 1 位になったこと、サイバーセキュリティ強化のために「Cisco CISO Round Table 2022」を開催したこと、サステナビリティ達成に向けて「循環型経済促進プログラム」に取り組んでいることを紹介。また戦略としては「日本企業のデジタル変革」「日本社会のデジタル変革」「クラウド時代のビジネスモデル変革」「パートナー様との価値共創」を重視していると言及。「お客様の成功に直接貢献できるビジネスパートナーになりたい」とまとめました。

ご挨拶

デジタルリーダーとして高い可能性を持つ日本の変革に 100 %コミット

シスコシステムズ
APJC プレジデント
デイヴ・ウェスト

オープニングに引き続き、このイベントのためにシンガポールから来日したデイヴ・ウェストが登壇。「デジタル変革の加速」と題するセッションを行いました。ここでまず、5 兆ドルを超える GDP、5G の人口カバー率 95 %などの事実を挙げ、日本は世界のデジタルリーダーとしての可能性を秘めていると指摘。日本のデジタル化を加速していくために、シスコ自身も様々な変革に取り組んでいると言及。さらにシスコが採用しているアプローチについても紹介。「私たちは日本のお客様とパートナー様に100 %コミットします」と強調しました。

基調講演

北海道日本ハムファイターズ様の DX 事例
北海道ボールパーク F ビレッジにおけるデジタル技術の活用

株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント
ボールパークマネジメントグループ
ICT シニアアドバイザー
森岡 裕史 様

基調講演では、北海道日本ハムファイターズで ICT 全般のアドバイザーを務めている森岡様が登壇。北海道ボールパークFビレッジにおけるデジタル技術活用について紹介いただきました。このボールパークは 2023 年 3 月 30 日にオープン。野球の試合を観戦するためだけの施設ではなく、ファンやパートナー、地域の皆様と一緒になり、地域社会の活性化や社会の貢献につながる「共同創造空間」の実現が目指されています。講演の冒頭ではその様々な思いを盛り込んだ3分間の動画を披露した上で、あらゆる世代の人々が生きている喜びを実感できる「PLAY HUMAN.」という、エリアビジョンについて説明いただきました。

ビレッジの中核となる「ES CON FIELD HOKKAIDO」は、敷地面積 5 ヘクタール、収容人数 35,000 人の、日本初の開閉式屋根付き天然芝球場。芝の育成を促すため南側は一面のガラス壁になっており、瑞々しい草の香りや色鮮やかなグリーンを感じられる空間になっています。また周辺環境との調和を第一に考え、建物中層部にテラスを複数設けるなど、地域に溶け込むデザインを採用。これまでにない観戦体験が目指されています。

その ICT 活用に関して「大きく 3 つの方針がありました」と森岡様。それは「期待値とのギャップを創り込む」「成長の余白と柔軟性」「裏方をリスペクト」だと説明。そのためにボールパーク全体で、一元化された「ICT プラットフォーム」を構築。来場者の価値体験を上げる仕組みと、設備や環境を統合管理する仕組みを作り、マネタイズの装置をモデル化しています。また建築を先行させるのではなく、ICT 基盤構築を同時に進めていったことも、大きなポイントだと森岡様は指摘。

ES CON FIELD HOKKAIDOならではのICT基盤設備として、86m ✕ 16m という世界最大級の「大型 LED ビジョン」、1,000 台規模でも遅延 0.5 秒以内で表示可能な「デジタルサイネージ」、354 灯を 1 操作で制御できる「スタジアム照明」、音のカブリを最小化し明瞭に聴き取れる「スタジアム音響」、統合&集中管理され、柔軟性や拡張性、効率性、安定性が高い「スタジアムネットワーク」などが紹介されました。これらの他に、お客様にとって快適な空間にするための人流シミュレーションなどについても解説。プロジェクトを進めていくことで、ICT 領域は次第に増えていくと強調されました。

「ES CON FIELD HOKKAIDO はまだ未完成です」と森岡様。ICT ありきではなくスポーツありきの ICT 活用によって、さらなる可能性を追求していきたいと締めくくられました。

お客様向けセッション

いま経営者にご理解いただきたい DX 基盤のあるべき姿

シスコシステムズ合同会社
副社長 カスタマーエクスペリエンス
望月 敬介

シスコシステムズ合同会社
専務執行役員 カスタマーエクスペリエンス
吉田 宏樹

お客様向けセッションの前半は、シスコ 副社長の望月が登壇。「新たな体験価値を提供できるスタジアムの構築は企業ITとの共通点があります」と指摘します。それは新たな体験価値を支えるインフラやセキュリティを、長期的な視点で確立すべきだということ。「しかし日本の企業 IT は、インフラやセキュリティのマインドシェアが低く、人材やスキル、アジリティも足かせとなっています。その結果デジタル競争力も先進国最低レベルに落ちています」と、実際のデータを交えながら述べました。

これに続き「日本はインフラ技術者が極めて少なく、属人性の高さなどの課題も 15 年変わっていません」と指摘するのはシスコ 専務執行役員の吉田。この問題を解決するには、「IT インフラ 1st」で考えることと、「柔らかいインフラ」を志向することが必要だと語ります。「これはソフトウェアで制御できるため、インフラ全体を可視化しやすくなる上、インフラ技術者への依存度も低下します。『柔らかいインフラ度』を計測するアセスメントもご用意していますので、ぜひご活用ください」。

パートナー様向けセッション

パートナー様とシスコのデジタル連携で新たな価値を創造

シスコシステムズ合同会社
専務執行役員 パートナー事業統括
大中 裕士

パートナー様向けセッションでは、シスコ 専務執行役員の大中が登壇。「これからもパートナー様のさらなるご協力が必要です」と訴えた上で、シスコジャパンのパートナー事業戦略についての説明が行われました。その内容としては、ライフサイクル型(CX)ビジネスモデルへの変革、マネージドサービスのビジネス領域拡大、プログラマビリティによる新たな価値創造、ES CON FIELD HOKKAIDO のような「New Buying Center」の獲得が挙げられ、これらによって、ビジネスモデルの変革を推進していると述べた上で、今年に入ってからは、より簡単にわかりやすくするための「Simplify」にも注力していると語ります。

「これはシスコ本社でも推進しているものですが、ポートフォリオのシンプル化だけではなく、ライセンス体系や業務プロセスも簡素化しようとしています」。

そのうち業務プロセスの簡素化に関して「デジタル連携による業務プロセス改革をご提案しています」と大中。これはパートナー様のライフサイクルサービスをシスコの DX で支援するものであり、そのためのツール提供や自動化を行っていると説明します。

これによって情報遅延やミスが解消でき、業務プロセスの正確性や俊敏性、生産性が向上できることや、ライフサイクルビジネスによる収益向上、中期的な課題を共に解決していくことも容易になることなどを、複数の動画で紹介。「シスコとのデジタル連携によって、共に新たな価値を創造していきましょう」。

イベントを振り返って

これらのセッションとあわせて、設計・計画の段階からICTを考慮して建設したスタジアム「ES CON FIELD HOKKAIDO」の視察ツアーを実施。さらに「北海道日本ハムファイターズ vs 千葉ロッテマリーンズ」の試合観戦も行い、北海道ボールパーク F ビレッジが目指す体験価値をお客様やパートナー様の皆様に体感していただきました。シスコは今後もこのようなイベントなどを通じて、新たな価値体験の共創に向けたビジョン共有を推進していきたいと考えています。