このドキュメントでは、簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP)を使用して ATM インターフェイスのネットワーク管理データを収集する方法について説明します。 このドキュメントは、特に Cisco ルータ ATM インターフェイスに重点を置いています。
このドキュメントに特有の要件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
ATM は、3 層のスタックで構成されています。ATMアダプテーション層(AAL)、ATM層、およびSonetやT1などの物理層。各層はパケットとオクテットを若干異なる方法でカウントします。これに応じて、ATM インターフェイスは次のエントリで ifTable に複数回登場します。
物理層(Sonet など)
ATM セル層
AAL5 層
サブインターフェイス(Cisco IOS ソフトウェア レベルによって異なる)
次の ifTable データの例でこれらの複数の層を示します。
# snmpwalk -c public 192.168.1.1 ifDescr IF-MIB::ifDescr.1 = STRING: ATM0 IF-MIB::ifDescr.2 = STRING: Ethernet0 IF-MIB::ifDescr.3 = STRING: ATM0-atm layer IF-MIB::ifDescr.4 = STRING: ATM0.0-atm subif IF-MIB::ifDescr.5 = STRING: ATM0-aal5 layer IF-MIB::ifDescr.6 = STRING: ATM0.0-aal5 layer IF-MIB::ifDescr.7 = STRING: Null0 IF-MIB::ifDescr.8 = STRING: ATM0.1-atm subif IF-MIB::ifDescr.9 = STRING: ATM0.1-aal5 layer IF-MIB::ifDescr.10 = STRING: ATM0.11-atm subif IF-MIB::ifDescr.11 = STRING: ATM0.11-aal5 layer # snmpwalk -c public 192.168.1.1 ifType IF-MIB::ifType.1 = INTEGER: sonet(39) IF-MIB::ifType.2 = INTEGER: ethernetCsmacd(6) IF-MIB::ifType.3 = INTEGER: atm(37) IF-MIB::ifType.4 = INTEGER: atmSubInterface(134) IF-MIB::ifType.5 = INTEGER: aal5(49) IF-MIB::ifType.6 = INTEGER: aal5(49) IF-MIB::ifType.7 = INTEGER: other(1) IF-MIB::ifType.8 = INTEGER: atmSubInterface(134) IF-MIB::ifType.9 = INTEGER: aal5(49) IF-MIB::ifType.10 = INTEGER: atmSubInterface(134) IF-MIB::ifType.11 = INTEGER: aal5(49)
SNMP カウンタの詳細については、『SNMP カウンタ:よく寄せられる質問(FAQ)』を参照してください。
AAL5 プロトコル データ ユニット(PDU)には以下が含まれます。
8 バイトの RFC 1483 カプセル化ヘッダー
オリジナル レイヤ 3 パケット
可変長パディング
8 バイトの AAL5 トレーラ
可変長パディングは AAL5 PDU の合計サイズを 48 バイトの倍数にするために使用されます。AAL5 層のオクテットでは、オリジナル レイヤ 3 パケットのバイトと 8 バイトの RFC1483 ヘッダーのみカウントされます。このレベルのパケットは AAL5 PDU の数をカウントします。show ATM vc および show interface ATM コマンドライン インターフェイス(CLI)のカウンタを使用するか、AAL5 層の情報を監視する SNMP を使用して、次の出力を確認します。
# snmpwalk -c public 192.168.1.1 ifDescr | grep aal5 IF-MIB::ifDescr.5 = STRING: ATM0-aal5 layer IF-MIB::ifDescr.6 = STRING: ATM0.0-aal5 layer IF-MIB::ifDescr.9 = STRING: ATM0.1-aal5 layer IF-MIB::ifDescr.11 = STRING: ATM0.11-aal5 layer
AAL5 PDU は複数の 48 バイトのブロックにさらにセグメント化され、ATM 層で 53 バイトの ATM セルを形成する 5 バイトのセル ヘッダーが各ブロックに提供されます。
Cisco キャンパス ATM スイッチでは、ATM 層のオクテットで ATM セルの合計バイト数がカウントされ、パケットでセルの数がカウントされます。
シスコ ルータでは、ほとんどの ATM インターフェイスのドライバの制限により、ATM セル層の SNMP カウンタは用意されていません。ルータの ATM サブインターフェイスの ATM セル層はこの制限を継承しています。セル カウンタの詳細については、『ATM PVC の使用率の測定』を参照してください。
物理層(SONET や T1 など)でも、主インターフェイスの SNMP カウンタは、show interface ATM コマンドの出力と同様に AAL5 PDU を表します。この場合のカウンタは、以下に対する ifTable/ifXTable カウンタです。
#snmpwalk -c public 192.168.1.1 ifDescr.1 IF-MIB::ifDescr.1 = STRING: ATM0 #snmpwalk -c public 192.168.1.1 ifType.1 IF-MIB::ifType.1 = INTEGER: sonet(39)
ユニキャスト以外のブロードキャストおよびマルチキャスト パケットのカウンタは、Sonet および AAL5 層では意味がありません。これらは表示されないか、0 に設定されています。
物理層(SONET や T1 など)では、ifTable や ifXTable を使用してオクテットやパケットの数を得ることができます。
ATM、フレーム リレー、および仮想 LAN(VLAN)などのテクノロジーによって、さまざまなタイプのインターフェイスが導入されました(仮想インターフェイスやサブインターフェイスなど)。たとえば ATM インターフェイスの場合、複数の permanent virtual circuit(PVC; 相手先固定回線)を持つことができます。 主インターフェイス全体の使用率は重要ですが、個々のサブインターフェイスでのトラフィックの量にも注目する必要があります。RFC 1573 (後にRFC 2233に置き換え )では、サブインターフェイスのスパーステーブルの概念が導入されました。スパース テーブルとは、サブインターフェイス用の ifTable の行で、オブジェクトがそのサブインターフェイスに割り当てられていない列には値がない場合があることを意味しています。
Cisco IOSソフトウェアは、リリース11.1のifTableでのサブインターフェイスのサポートを実装しました。Cisco IOSソフトウェアリリース11.1では、フレームリレーとATM LANエミュレーション(LANE)サブインターフェイスのサポートが追加されました。Cisco 12000、4x 00/M、72xx、および75xxプラットフォーム。各サブインターフェイスは、2 つの ifTable エントリで表されます。1 つは atmSubInterface 層(ATM 層)で、もう 1 つは AAL5 層です。主インターフェイスに関しては、ほとんどの ATM ルータ インターフェイスがセル層カウントをサポートしていないため、パケットおよびオクテット カウンタは AAL5 層のエンティティに対してのみ有効です。
ifType atmSubInterface(Internet Assigned Numbers Authority(IANA)ifType 番号:134)は、ATM サブインターフェイス用に定義されています。atmSubinterface 層は仮想 ATM 層です。atmSubInterface 層に対応するインターフェイス MIB 変数は、主(物理)インターフェイスの ATM 層の変数と同じセマンティックスを持ちます。
次の適合グループが atmSubInterface 層に適用されます。
ifGeneralInformationGroup
ifFixedLengthGroup
ifHCFixedLengthGroup
ATM サブインターフェイスの作成時に、次の変数の値が atmSubInterface および AAL5 層の両方に設定されます。
ifIndex
ifDescr
ifName
ifType
次の変数の値は atmSubInterface および AAL5 層に対して同一に更新されます。
ifSpeed、ifHighSpeed:これらの変数は、ATM サブインターフェイスに設定された帯域幅を使用して SNMP GET 要求時に更新されます。サブインターフェイスに別の帯域幅が設定されていない場合、主インターフェイスの帯域幅が使用されます。
ifPhysAddress:この変数は、ネットワーク サービス アクセス ポイント(NSAP)アドレスの削除の可能性に関する SNMP GET 要求が実行されるたびに、サブインターフェイスの NSAP アドレスで更新されます。
ifAdminStatus、ifOperStatus:これらの変数は、サブインターフェイスの管理および動作ステータスを反映し、値は Cisco IOS ソフトウェアとハードウェアの Interface Descriptor Block(IDB; インターフェイス記述ブロック)で使用できる状態によって決まります。
ifLastChange:この変数は、サブインターフェイスの現在の動作状態が入力されたときに sysUpTime で更新されます。
現在のインターフェイスのドライバにはセル層カウンタがないため、次の変数は atmSubInterface 層用には用意されていません。
ifInOctets、ifOutOctets
ifHCInOctets、ifHCOutOctets
新しい ATM ポート アダプタ(PA)のドライバにセル層カウンタがある場合は、カウンタが実装されることもあります。
次の変数は、ATM 層にはないため、atmSubInterface 層用には用意されていません。
ifInUcastPkts、ifInNUcastPkts
ifOutUcastPkts、ifOutNUcastPkts
ifInBroadcastPkts、ifOutBroadcastPkts
ifInMulticastPkts、ifOutMulticastPkts
ifInDiscards
ifHCInUcastPkts、ifHCInMulticastPkts、ifHCInBroadcastPkts、
ifHCOutUcastPkts、ifHCOutMulticastPkts、ifHCOutBroadcastPkts
VC 単位で統計情報を収集できないため、次の変数は atmSubInterface 層では更新されません。
ifInErrors
ifOutErrors
ifInUnknownProtos
ifOutDiscards
ifOutQLen
次の変数は、ATM サブインターフェイスに対し、FALSE としてハードウェアに組み込まれています。
ifPromiscuousMode
ifConnectorPresent
各 AAL5 VC のカウンタには CISCO-AAL5-MIB を使用します。詳細は『ATM PVC の使用率の測定』を参照してください。AAL5 VC が ATM サブインターフェイスで設定されている VC のみの場合は、これに対応する AAL5 カウンタを SNMP で取得できます。このとき、ifTable/ifXTable にある、そのサブインターフェイス用の AAL5-layer エントリを使用します。AAL5-layer サブインターフェイス カウンタの絶対値は、以前にこのサブインターフェイスに設定され、後に削除または交換された VC の過去の状態を反映することがあります。通常は計算で差分(2 つのカウンタの差)を使用するため、ほとんどの場合これは問題ありません。
ATM インターフェイスでは、MIB II で定義されているジェネリックの link up と down トラップをサポートしています。次の出力例は、ATM inverse multiplexing over ATM(IMA; 逆多重化 ATM)ネットワーク モジュールで得られたものです。トラップの内容を表示するために、debug snmp packet コマンドを使用しています。
3640-1.1(config)# interface ATM 2/0 3640-1.1(config-if)# no shutdown 3640-1.1(config-if)# *Mar 1 20:17:24.222: SNMP: Queuing packet to 171.69.102.73 *Mar 1 20:17:24.222: SNMP: V1 Trap, ent products.110, addr 10.10.10.1, gentrap 3, spectrap 0 !--- The gentrap value "3" identifies the LinkUp generic trap. ifEntry.1.1 = 1 ifEntry.2.1 = ATM2/0 ifEntry.3.1 = 18 lifEntry.20.1 = up *Mar 1 20:17:24.290: SNMP: Queuing packet to 171.69.102.73 *Mar 1 20:17:24.290: SNMP: V1 Trap, ent ciscoSyslogMIB.2, addr 10.10.10.1, gentrap 6, spectrap 1 clogHistoryEntry.2.49 = LINK clogHistoryEntry.3.49 = 4 clogHistoryEntry.4.49 = UPDOWN clogHistoryEntry.5.49 = Interface ATM2/0, changed state to up clogHistoryEntry.6.49 = 7304420
show snmp コマンドを発行して、ルータがトラップ PDU を送信したことを確認します。
3640-1.1# show snmp Chassis: 10526647 55 SNMP packets input 0 Bad SNMP version errors 16 Unknown community name 0 Illegal operation for community name supplied 0 Encoding errors 37 Number of requested variables 0 Number of altered variables 2 Get-request PDUs 37 Get-next PDUs 0 Set-request PDUs 55 SNMP packets output 0 Too big errors (Maximum packet size 1500) 2 No such name errors 0 Bad values errors 0 General errors 39 Response PDUs 16 Trap PDUs
Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.2 より前では、debug snmp packet コマンドの出力に、ATM サブインターフェイスの locIfReason オブジェクトに関する NO_SUCH_INSTANCE_EXCEPTION の値が表示されます。つまり ATM サブインターフェイスの場合、ルータはデフォルトで次の情報を含むトラップを生成します。
sysUpTime.0 = 53181 snmpTrapOID.0 = snmpTraps.3 ifEntry.1.64 = 64 ifEntry.2.64 = ATM1/0.1-aal5 layer ifEntry.3.64 = 49 ifEntry.20.64 = NO_SUCH_INSTANCE_EXCEPTION
この例外は、OLD-CISCO-INTERFACES-MIB がサブインターフェイスをサポートしていないために発生します。Cisco Bug ID CSCdp41317(登録ユーザ専用)では、snmp-server trap link ietf コマンドによってこの問題が解決されています。現在は次の出力が表示され、RFC2233 にも適合しています。
sysUpTime.0 = 46573 snmpTrapOID.0 = snmpTraps.4 ifEntry.1.64 = 64 ifEntry.7.64 = 1 ifEntry.8.64 = 1 ifEntry.2.64 = ATM1/0.1-aal5 layer ifEntry.3.64 = 49
RFC 1695では 、ATMインターフェイス、ATM仮想リンク、ATMクロスコネクト、AAL5エンティティ、およびAAL5接続を管理するためのATMおよびAAL5関連オブジェクトを提供するATM-MIBを定義しています。MIB では、管理対象オブジェクトを次の 8 つのグループに体系化しています。
ATM インターフェイス設定
ATM インターフェイス DS3 PLCP
ATM インターフェイス TC サブレイヤ
ATM インターフェイス VPL 設定
ATM インターフェイス VCL 設定
ATM VP 相互接続
ATM VC 相互接続
ATM インターフェイス AAL5 VCC パフォーマンス統計情報
Cisco IOS ソフトウェア リリース 11.2 以降では、ルータの ATM インターフェイスですでに提供されている多くのカウンタ用に ATM-MIB が標準で実装されています。ATM-MIBは、多数のSNMP SET操作をサポートすることで、デバイスのATM設定を変更する機能を提供します(詳細は、『SNMPによるATM仮想接続の設定 』を参照してください)。 この ATM-MIB SNMP SET機能は、ATM インターフェイスを備えたシスコ ルータではサポートされていませんが、Cisco ATM スイッチで使用できます。ただし、いくつかの制限があります。たとえば ATM-MIB は、回線エミュレーション サービス(CES)ポート アダプタに対する VC/VP と疑似 ATM インターフェイス(ATM-P)との相互接続ではサポートされません。
各製品でサポートされている他の ATM 関連 MIB を探すには、該当する ATM ポート アダプタまたはモジュールのデータ シートと設定ガイドに加えて、Cisco IOS MIB ツールをご利用ください。
以下は、ルータで通常サポートされている ATM 関連 MIB のリストです。
以下は、Cisco キャンパス ATM スイッチで通常サポートされている ATM 関連 MIB のリストです。
また、DS1-MIB、DS3-MIB、SONET-MIB など、物理メディアに関連する MIB も考慮してください。