このドキュメントでは、IP のルーティング、IP のブリッジング、統合ルーティングとブリッジング(IRB)による IP のブリッジング(順に性能が向上)を行うルータを使用した VLAN の実装について説明します。また、このドキュメントでは、ルータでの IRB 機能の設定例も紹介します。
注:Catalyst 6500シリーズスイッチおよびCisco 7600シリーズルータでは、IRBは意図的に無効にされています。詳細については、『Catalyst 6000 および Cisco 7600 の Supervisor Engine および MSFC の Cisco IOS リリース 12.1 E に関するリリース ノート』の「一般の制約および制限事項」セクションを参照してください。
ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
このドキュメントに関しては個別の前提条件はありません。
このドキュメントの内容は、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。
このマニュアルの情報は、特定のラボ環境に置かれたデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、クリアな(デフォルト)設定で作業を開始しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、使用前にその潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
VLAN でルータを使用するには、ルータが VLAN ヘッダーを維持した状態で、1 つのインターフェイスから別のインターフェイスにフレームを転送できる必要があります。ルータがレイヤ 3(ネットワーク層)プロトコルをルーティングするために設定される場合、フレームを受信するインターフェイスで VLAN と MAC レイヤが終端します。MAC レイヤのヘッダーは、ルータがネットワーク層プロトコルをブリッジングする場合に維持することができます。ただし、通常のブリッジングでは VLAN ヘッダーは終端されます。Cisco IOS® リリース 11.2 以降の IRB 機能を使用すると、同じインターフェイスの同じネットワーク層プロトコルをルーティングし、ブリッジングするようにルータを設定できます。これにより、VLAN ヘッダーは、1 つのインターフェイスから別のインターフェイスにルータを通過する間、フレームで維持されるようになります。IRB は、ブリッジ グループ仮想インターフェイス(BVI)により、ブリッジド ドメインとルーテッド ドメイン間でルーティングする機能を提供します。BVI は、ルータ内の仮想インターフェイスであり、ブリッジングをサポートしないが、ルータ内のルーテッド インターフェイスに相当するブリッジ グループを代表する、正常なルーテッド インターフェイスのように動作します。BVI のインターフェイス番号は、仮想インターフェイスが代表するブリッジ グループの番号です。この番号が BVI とブリッジ グループ間のリンクになります。
BVI のルーティングを設定し有効化すると、ブリッジ グループのセグメント上のホストが宛先の、ルーテッド インターフェイスで受信したパケットは、BVI にルーティングされます。BVI から、パケットはブリッジング エンジンに転送されます。これは、ブリッジド インターフェイスを経由して転送されます。これは MAC アドレスの宛先に基づいて転送されます。同様に、ブリッジド インターフェイスで受信するパケットでルーテッド ネットワークのホスト宛のものは、最初に BVI に向かいます。次に、BVI はルーティング エンジンにパケットを転送してから、ルーテッド インターフェイスからパケットを送信します。単一の物理インターフェイスで、IRBは2つのVLANサブインターフェイス(802.1Qタギング)で作成できます。一方のVLANサブインターフェイスにはルーティングに使用されるIPアドレスがあり、もう一方のVLANサブインターフェイスはルーティングに使用されるサブインターフェイスとルータ上の他の物理インターフェイス間をブリッジします。
BVI はルーテッド インターフェイスとしてブリッジ グループを代表するので、ネットワーク レイヤ アドレスのようなレイヤ3(L3)特性のみにより設定する必要があります。同様に、プロトコルのブリッジング用に設定されたインターフェイスは、どの L3 特性によっても設定されてはなりません。
図 I では、PC A および PC B がルータによって分離された VLAN に接続されています。この図では、単一の VLAN が、中間でルータベースの接続を持てるという、一般的な誤解を示しています。
この図では、PC A から PC B へリンクを移動するフレームの 3 層のヘッダーの流れを示しています。
フレームがスイッチを通る場合、接続がトランク リンクであるため、VLAN ヘッダーが適用されます。トランクを通して通信する VLAN はいくつかある可能性があります。
ルータは VLAN レイヤおよび MAC レイヤを終端します。ルータは、宛先 IP アドレスを検査して、フレームを適切に転送します。この場合、IP のフレームはポートから PC B 宛に転送されます。これもまた VLAN トランクであるため、VLAN ヘッダーが適用されます。
ルータにスイッチ 2 を接続する VLAN は、スイッチ 1 を接続する VLAN と同じ番号でコールできますが、実際には同じ VLAN ではありません。フレームがルータに達すると、オリジナルの VLAN ヘッダーは削除されます。フレームがルータから送出されるときに、新しいヘッダーが適用される場合があります。この新しいヘッダーには、フレームを受信したときに除去された VLAN ヘッダーで使用したのと同じ VLAN 番号が含まれていることがあります。これは、VLAN ヘッダーが添付されていないルータを経由して IP フレームが移動し、VLAN ID フィールドではなく、IP 宛先アドレスのフィールドの内容に基づいて転送されたという事実によって示されます。
2 つの VLAN トランクがそれぞれルータの反対側に位置するため、別の IP サブネットにする必要があります。
2 つの PC が同じサブネットアドレスを持つには、ルータがインターフェイスで IP をブリッジングする必要があります。ただし、サブネットを共有する VLAN にデバイスがあっても、それは同じ VLAN にあるということにはなりません。
図 II に、VLAN トポロジの構成を示します。
VLAN を接続するルータのいくつか、あるいはすべてのインターフェイスで、IP をブリッジングすることによって、移動中に IP 端末の宛先を変更する必要性は回避できます。ただし、ネットワーク レイヤでブロードキャストを制御するためにルータベース ネットワークを構築する利点はすべてなくなります。 図 III は、ルータで IP のブリッジングを設定した場合、どのような変化が生じるかを示しています。図 IV は、ルータで IRB を使用して IP のブリッジングを設定した場合、何が起こるかを示しています。
図 III は、ルータがここで IP をブリッジングしていることを示しています。両方の PC は現在同じサブネットにあります。
注:ルータ(ブリッジ)はMACレイヤヘッダーを外部に向かうインターフェイスに転送します。ルータは、フレームを PC B へ送信する前に、VLAN ヘッダーを取り除いて新しいヘッダーを適用しています。
図 IV は、IRB が設定された場合、何が起こるかを示しています。VLAN はここでルータを使用し、VLAN ヘッダーはフレームがルータを通過するときに、維持されます。
この設定は、IRB の例です。この設定を行うと、2 つのイーサネット インターフェイス間の IP をブリッジングし、Bridged Virtual Interface(BVI)を使用してブリッジされたインターフェイスから IP をルーティングすることができます。次のネットワーク ダイアグラムでは、PC_A が PC_B への接続を試行した場合、ルータ R1 は同じサブネットで宛先(PC_B)の IP アドレスを検出します。したがって、パケットは E0 および E1 のインターフェイス間のルータ R1 によってブリッジされます。PC_A あるいは PC_B が PC_C への接続を試行した場合、ルータ R1 は異なるサブネットで宛先(PC_C)の IP アドレスを検出し、パケットは BVI によりルーティングされます。このように、IP プロトコルは同じルータでルーティングおよびブリッジされます。
サンプル コンフィギュレーション |
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Current configuration: ! version 12.0 service timestamps debug uptime service timestamps log uptime no service password-encryption ! hostname R1 ! ! ip subnet-zero no ip domain-lookup bridge irb !-- This command enables the IRB feature on this router. ! ! ! interface Ethernet0 no ip address no ip directed-broadcast bridge-group 1 !-- The interface E0 is in bridge-group 1. ! Interface Ethernet1 no ip address no ip directed-broadcast bridge-group 1 !-- The interface E1 is in bridge-group 1. ! Interface Serial0 ip address 10.10.20.1 255.255.255.0 no ip directed-broadcast no ip mroute-cache no fair-queue ! interface Serial1 no ip address no ip directed-broadcast shutdown ! interface BVI1 ip address 10.10.10.1 255.255.255.0 !-- An ip address is assigned to the logical BVI for routing !-- IP between bridged interfaces and routed interfaces. no ip directed-broadcast ! ip classless ip route 10.10.30.0 255.255.255.0 10.10.20.2 ! bridge 1 protocol ieee !-- This command enables the bridging on this router. bridge 1 route ip !-- This command enable bridging as well routing for IP protocol. ! line con 0 transport input none line aux 0 line vty 0 4 ! end |
show interfaces [interface] irb
このコマンドは、指定したインターフェイスに対してルーティングまたはブリッジングできるプロトコルを、次のように表示します。
R1#show interface e0 irb Ethernet0 Routed protocols on Ethernet0: ip Bridged protocols on Ethernet0: ip ipx !-- IP protocol is routed as well as bridged. Software MAC address filter on Ethernet0 Hash Len Address Matches Act Type 0x00: 0 ffff.ffff.ffff 0 RCV Physical broadcast 0x2A: 0 0900.2b01.0001 0 RCV DEC spanning tree 0x9E: 0 0000.0c3a.5092 0 RCV Interface MAC address 0x9E: 1 0000.0c3a.5092 0 RCV Bridge-group Virtual Interface 0xC0: 0 0100.0ccc.cccc 157 RCV CDP 0xC2: 0 0180.c200.0000 0 RCV IEEE spanning tree 0xC2: 1 0180.c200.0000 0 RCV IBM spanning tree R1#
改定 | 発行日 | コメント |
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1.0 |
08-Sep-2014 |
初版 |