ポリシーベース ルーティングについて
従来のルーティングは宛先ベースであり、パケットは宛先 IP アドレスに基づいてルーティングされます。ただし、宛先ベースのルーティング システムでは特定トラフィックのルーティングを変更することが困難です。ポリシーベース ルーティング(PBR)では、宛先ネットワークではなく条件に基づいてルーティングを定義できます。PBR では、送信元アドレス、送信元ポート、宛先アドレス、宛先ポート、プロトコル、またはこれらの組み合わせに基づいてトラフィックをルーティングできます。
ポリシーベース ルーティング:
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区別したトラフィックに Quality of Service(QoS)を提供できます。
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低帯域幅、低コストの永続パスと、高帯域幅、高コストのスイッチドパスに、インタラクティブ トラフィックとバッチ トラフィックを分散できます。
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インターネット サービス プロバイダやその他の組織が、さまざまなユーザー セットから発信されるトラフィックを、適切に定義されたインターネット接続を経由してルーティングできます。
ポリシーベース ルーティングには、ネットワーク エッジでトラフィックを分類およびマークし、ネットワーク全体で PBR を使用してマークしたトラフィックを特定のパスに沿ってルーティングすることで、QoS を実装する機能があります。これにより、宛先が同じ場合でも、異なる送信元から送信されるパケットを別のネットワークにルーティングすることができます。これは、複数のプライベート ネットワークを相互接続する場合に役立ちます。
ポリシーベース ルーティングを使用する理由
ロケーション間に 2 つのリンクが導入されている企業を例に説明します。1 つのリンクは高帯域幅、低遅延、高コストのリンクであり、もう 1 つのリンクは低帯域幅、高遅延、低コストのリンクです。従来のルーティング プロトコルを使用する場合、高帯域幅リンクで、リンクの(EIGRP または OSPF を使用した)帯域幅/遅延の特性により実現するメトリックの節約に基づいて、ほぼすべてのトラフィックが送信されます。PBR では、優先度の高いトラフィックを高帯域幅/低遅延リンク経由でルーティングし、その他のすべてのトラフィックを低帯域幅/高遅延リンクで送信します。
ポリシーベース ルーティングの用途のいくつかを以下に示します。
同等アクセスおよび送信元依存ルーティング
このトポロジでは、HR ネットワークと管理ネットワークからのトラフィックは ISP1 を経由するように設定し、エンジニアリング ネットワークからのトラフィックは ISP2 を経由するように設定できます。したがって、ここに示すように、ネットワーク管理者は、ポリシーベース ルーティングを使用して同等アクセスおよび送信元依存ルーティングを実現できます。
QoS
ネットワーク管理者は、ポリシーベース ルーティングでパケットにタグを付けることにより、ネットワーク トラフィックをネットワーク境界でさまざまなサービス クラスのために分類し、プライオリティ、カスタム、または重み付け均等化のキューイングを使用してそれらのサービス クラスをネットワークのコアに実装できます(下の図を参照)。この設定では、バックボーン ネットワークのコアの各 WAN インターフェイスでトラフィックを明示的に分類する必要がなくなるため、ネットワーク パフォーマンスが向上します。
コスト節約
組織は、特定のアクティビティに関連付けられている一括トラフィックを転送して、帯域幅が高い高コスト リンクの使用を短時間にし、さらにここに示すようにトポロジを定義することで帯域幅が低い低コスト リンク上の基本的な接続を継続できます。
ロード シェアリング
ECMP ロード バランシングによって提供されるダイナミックなロード シェアリング機能に加え、ネットワーク管理者は、トラフィックの特性に基づいて複数のパス間にトラフィックを分散するためのポリシーを実装できます。
たとえば、同等アクセスおよび送信元依存ルーティングのシナリオに示すトポロジでは、管理者は、ISP1 を経由する HR netto からのトラフィックと ISP2 を経由するエンジニアリング ネットワークからのトラフィックをロード シェアするようにポリシーベース ルーティングを設定できます。
PBR の実装
ASA は、ACL を使用してトラフィックを照合してから、トラフィックのルーティングアクションを実行します。具体的には、照合のために ACL を指定するルート マップを設定し、次にそのトラフィックに対して 1 つ以上のアクションを指定します。最後に、すべての着信トラフィックに PBR を適用するインターフェイスにルートマップを関連付けます。