インターコム
Cisco CME はインターコム機能をサポートしています。インターコム機能を使用すると、互いに短縮ダイヤルが設定された 2 台の電話機のインターコム ephone-dn の専用ペアを使用して、単方向の音声接続およびボタンを押して応答する音声接続が可能になります。
インターコムの短縮ダイヤル ボタンを押すと、コールは専用ペアの相手側の ephone-dn に短縮ダイヤルでかかります。着信側の ephone-dn は、ミュートが有効になった状態のスピーカフォン モードで自動的にコールに応答し、発信側から着信側への単方向の音声パスが確立します。コールが自動応答になっている場合、受信者に着信コールを知らせるビープ音が鳴ります。インターコムのコールに応答して双方向の音声パスを開くには、受信者が次のいずれかの操作を実行してミュート機能を無効にします。
• マルチボタン電話機では、 ミュート ボタンを押す。
• Cisco IP Phone 7910 では、受話器を取り上げる。
インターコム回線は、共有回線の設定では使用できません。ephone-dn をインターコム用に設定するには、ephone-dn を 1 台の IP Phone だけに関連付ける必要があります。インターコムの特性により、IP 電話回線(ephone-dn)は、発信コールに対しては自動ダイヤル回線として機能し、着信コールに対してはミュートでの自動応答回線として機能します。図 38 に、受付とマネージャ間のインターコムを示します。
権限のない電話機でインターコム回線にダイヤルできないようにする(および電話機でインターコム以外のコールに自動的に応答できるようにする)には、インターコム ephone-dn に英字を含むダイヤル文字列を割り当てます。通常の電話からは英字をダイヤルすることはできませんが、インターコムの相手側の電話機では、Cisco CME ルータを介して英字を含む番号をダイヤルするように設定できます。たとえば、図 38 に示すインターコム ephone-dn には英字を含む番号が割り当てられているので、受付以外の人はインターコム回線でマネージャにコールできません。また、マネージャ以外の人はインターコム回線で受付にコールできません。
(注) 1 つのインターコムには 2 つの ephone-dn を設定し、各電話機に ephone-dn を 1 つずつ割り当てる必要があります。
図 38 インターコム
要約手順
1. ephone-dn dn-tag
2. number number
3. name name
4. intercom directory-number [ barge-in | no-auto-answer ] [ label label ]
5. exit
6. もう一方の ephone-dn に対して手順 1 ~ 5 を繰り返します。
7. ephone phone-tag
8. button button-number : dn-tag [[ button-number : dn-tag ] ...]
9. restart
10. exit
11. もう一方の電話機に対して手順 7 ~ 10 を繰り返します。
詳細手順
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ステップ 1 |
ephone-dn dn-tag
Router(config)# ephone-dn 11 |
ephone-dn 設定モードを開始します。 • dn-tag :このインターコム ephone-dn を設定作業時に識別する固有のシーケンス番号。値の範囲は 1 ~ 288 です。 |
ステップ 2 |
number number
Router(config-ephone-dn)# number A2345 |
有効なインターコム番号を割り当てます。 • number :最大 16 桁の数字列。この ephone-dn がインターコム ephone-dn である場合は、セキュリティのために英字を含めることができます。インターコム番号に 1 文字以上の英字を含めた場合、その番号をダイヤルするようにプログラムされた相手側のインターコム番号以外からはその番号にダイヤルできなくなります。番号に英字が含まれている場合、通常の電話機からはその番号をダイヤルできません。 |
ステップ 3 |
name name
Router(config-ephone-dn)# name intercom |
ephone-dn に関連付ける名前を設定します。この名前は、発信者 ID の表示に使用されます。また、ephone-dn に関連付けられているローカル ディレクトリにも表示されます。 |
ステップ 4 |
intercom directory-number [ barge-in | no-auto-answer ] [ label label ]
Router(config-ephone-dn)# intercom A2346 label Security |
この回線が使用される場合に、インターコム機能に対して短縮ダイヤルされる ephone-dn を定義します。 • directory-number :このインターコム機能に対して短縮ダイヤルする番号。 • barge-in :この ephone-dn でインターコム コールを受信したとき、関連する ephone の既存のコールを保留状態にし、インターコム コールにただちに応答できるようにすることを指定します。 • no-auto-answer :Private Line Automatic Ringdown (PLAR)に類似する IP 電話回線の接続を開きます。 • label label :インターコム ephone-dn に使用する最大 24 文字のテキスト ラベルを定義します。このラベルは、発信者 ID の表示と、ディレクトリのリスト表示で使用されます。 |
ステップ 5 |
exit
Router(config-ephone-dn)# exit |
ephone-dn 設定モードを終了します。 |
ステップ 6 |
もう一方の ephone-dn に対して手順 1 ~ 5 を繰り返します。 |
インターコム機能を使用するには、双方向の音声パスの両端にそれぞれ ephone-dn を設定する必要があります。 |
ステップ 7 |
ephone phone-tag
Router(config)# ephone 24 |
ephone 設定モードを開始します。 • phone-tag :インターコム ephone-dn を受信する ephone を識別する固有のシーケンス番号。 |
ステップ 8 |
button button-number : dn-tag [[ button-number : dn-tag ] ...]
Router(config-ephone)# button 1:1 2:4 3:14 |
定義したインターコム ephone-dn にボタン番号を割り当てます。ボタン番号とインターコム ephone-dn タグの間にセパレータとしてコロン( : )を使用すると、インターコム回線に通常の呼び出し音を指定できます。 このコマンドのその他のキーワードと引数については、 『 Cisco CallManager Express 3.2 Command Reference』を参照してください。 |
ステップ 9 |
restart
Router(config-ephone)# restart |
この ephone の高速リブートを実行します。更新情報を取得するために Dynamic Host Configuration Protocol(DHCP; ダイナミック ホスト コンフィギュレーション プロトコル)サーバまたは TFTP サーバには連携しません。 |
ステップ 10 |
exit
Router(config-ephone)# exit |
ephone 設定モードを終了します。 |
ステップ 11 |
もう一方の電話機に対して手順 7 ~ 10 を繰り返します。 |
インターコム機能を使用するには、双方向の音声パスの両端にそれぞれ ephone-dn を設定する必要があります。 |
例
2 台の Cisco IP Phone 間のインターコムの例を次に示します。この例では、ephone-dn 2 と ephone-dn 4 は通常の内線番号であり、ephone-dn 18 と ephone-dn 19 はインターコム ペアとして設定されています。ephone-dn 18 は Cisco IP Phone 4 のボタン 2 に関連付けられています。ephone-dn 19 は Cisco IP Phone 5 のボタン 2 に関連付けられています。この 2 つの ephone-dn により、2 台の Cisco IP Phone 間の双方向インターコムが可能になります。
ページング
音声ページングにより、ページングを受信するように設計されている電話機への単方向の音声パスが提供されます。音声ページングには、インターコム機能にあるような、ボタンを押して応答するオプションはありません。ページング グループは、任意の数のローカル IP Phone に関連付けることができるダミーの ephone-dn(ページング ephone-dn と呼ばれる)を使用して作成します。ページング ephone-dn には、on-net などの任意の場所からダイヤルできます。図 39 に、2 台の電話機で構成されるページング グループを示します。
発信者がページング番号(ephone-dn)にダイヤルすると、そのページング番号が設定されているアイドル状態の各 IP Phone がスピーカフォン モードで自動的に応答します。ページングに応答する電話機のディスプレイには、ページング ephone-dn で name コマンドを使用して設定された発信者 ID が表示されます。発信者がメッセージを伝えて電話を切ると、応答した電話機はアイドル状態に戻ります。
Cisco CME システムには複数のページング グループを指定できます。また、2 つ以上のページング グループを組み合せて 1 つの複合グループにすることもできます。
ページング メカニズムでは、IP マルチキャスト、複製ユニキャスト、およびこの 2 つの組み合せ(マルチキャストを使用できる電話機と、マルチキャストで通信できないためにユニキャストを使用する特定の電話機との組み合せ)を使用した音声配信がサポートされています。
ページングを設定するには、次に示す作業のいずれか、あるいは両方の作業を実行します。
• 「単一グループ用のページングの設定」
• 「複合グループ用のページングの設定」
図 39 ページング
制約事項
IP Phone は、224.x.x.x アドレスでのマルチキャストをサポートしていません。
単一グループ用のページングの設定
paging 機能は、ページング ephone-dn タグに関連付けられたアイドル状態の Cisco IP Phone で構成された単一グループにユニキャスト音声ページングをブロードキャストする ephone-dn を定義します。
要約手順
1. ephone-dn paging-dn-tag
2. number number
3. name name
4. paging [ip multicast-address port udp-port-number ]
5. exit
6. ephone phone-tag
7. paging-dn paging-dn-tag { multicast | unicast }
8. exit
9. 別の IP Phone をページング グループに追加するには、手順 6 ~ 8 を繰り返します。
詳細手順
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ステップ 1 |
ephone-dn paging-dn-tag
Router(config)# ephone-dn 42 |
ephone-dn 設定モードを開始します。 • paging-dn-tag :このページング ephone-dn をすべての設定作業時に識別する固有のシーケンス番号。これは、ページングを開始するためにダイヤルする ephone-dn です。この ephone-dn は、物理的な電話機に関連付けられていません。値の範囲は 1 ~ 288 です。 |
ステップ 2 |
number number
Router(config-ephone-dn)# number 3556 |
ページング ephone-dn に関連付ける内線番号を定義します。これは、ページングを開始するためにダイヤルする番号です。 |
ステップ 3 |
name name
Router(config-ephone-dn)# name paging4 |
ページング番号に名前を割り当てます。この名前は発信者 ID の表示と、ディレクトリ表示で使用されます。 |
ステップ 4 |
paging [ip multicast-address port udp-port-number ]
Router(config-ephone-dn)# paging ip 239.1.1.10 port 2000 |
この ephone-dn を使用して音声ページング メッセージをページング dn-tag に関連付けられているアイドル状態の IP Phone にブロードキャストすることを指定します。オプションのキーワードも引数も使用されていない場合、各 IP Phone は IP ユニキャスト送信によって個別にページングされます。最大で 10 台の IP Phone への IP ユニキャスト送信が可能です。オプションのキーワードおよび引数は、次のとおりです。 • ip multicast-address port udp-port-number :指定した IP アドレスと UDP ポートを使用してマルチキャスト ブロードキャストを指定します。複数のページング番号が設定されている場合、各ページング番号は固有の IP マルチキャスト アドレスを使用する必要があります。ポート 2000 をお勧めします。このポートは電話機と Cisco CME ルータ間の通常の非マルチキャスト RTP メディア ストリームにすでに使用されているためです。
(注) IP Phone は、224.x.x.x アドレスでのマルチキャストをサポートしていません。
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ステップ 5 |
exit
Router(config-ephone-dn)# exit |
ephone-dn 設定モードを終了します。 |
ステップ 6 |
ephone phone-tag
Router(config)# ephone 2 |
ephone 設定モードを開始して、ページング グループに IP Phone を追加します。 • phone-tag :ページング ephone-dn から音声ページングを受信する電話機の固有のシーケンス番号。 |
ステップ 7 |
paging-dn paging-dn-tag { multicast | unicast }
Router(config-ephone)# paging-dn 42 multicast |
この ephone を、音声ページング ephone-dn に使用される ephone-dn タグに関連付けます。ページング ephone-dn タグは、この ephone の回線ボタンには関連付けられないことに注意してください。 ページング メカニズムでは、IP マルチキャスト、複製ユニキャスト、およびこの 2 つの組み合せ(マルチキャストを使用できる電話機と、マルチキャストで通信できないためにユニキャストを使用する特定の電話機との組み合せ)を使用した音声配信がサポートされています。 • paging-dn-tag :ページング ephone-dn に割り当てられた固有のシーケンス番号。 • multicast :グループに使用されるマルチキャスト ページング。デフォルトでは、マルチキャストを使用して音声ページングが Cisco IP Phone に送信されます。 • unicast :単一の Cisco IP Phone に使用されるユニキャスト ページング。このキーワードは、Cisco IP Phone がマルチキャストで音声ページングを受信できないことを指定するととにも、個々の電話機へのユニキャスト送信で音声ページングを受信することを要求します。
(注) ユニキャストでサポートされる電話機の最大数は 10 台です。
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ステップ 8 |
exit
Router(config-ephone)# exit |
ephone 設定モードを終了します。 |
ステップ 9 |
別の IP Phone をページング グループに追加するには、手順 6 ~ 8 を繰り返します。 |
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例
マルチキャスト ページングの ephone-dn を設定する例を次に示します。この例では、ephone-dn 22 にページング番号 5001 を作成し、ページング セットのメンバーとして ephone 4 を追加します。paging-dn にはマルチキャストを設定します。
paging ip 239.1.1.10 port 2000
mac-address 0030.94c3.8724
次の例では、2000 に対するページング コールは Cisco IP Phone 1 および 2 にマルチキャストされ、2001 に対するページング コールは Cisco IP Phone 3 および 4 に送信されます。ページング ephone-dn(20 および 21)は電話機のボタンに割り当てられていないことに注意してください。
paging ip 239.0.1.20 port 2000
paging ip 239.0.1.21 port 2000
mac-address 3662.024.6ae2
mac-address 9387.678.2873
mac-address 0478.2a78.8640
mac-address 4398.b694.456
複合グループ用のページングの設定
「単一グループ用のページングの設定」の手順で作成した複数のグループを組み合せて 1 つの複合グループにできます。
単一グループのほかに複合グループにページングできるように設定すると、電話機ユーザは、小規模のローカル ページング グループに対するページング(たとえば、企業のテクニカルサポート部門の 4 台の電話機に対するページング)や、複数のページング グループの複合セットに対するページング(たとえば、テクニカルサポート部門と営業部門の電話機で構成されるグループに対するページング)を柔軟に行えるようになります。
要約手順
1. ephone-dn group-paging-dn-tag
2. number number
3. name name
4. paging [ip multicast-address port udp-port-number ]
5. paging group paging-dn-tag , paging-dn-tag [[ , paging-dn-tag ]...]
6. exit
詳細手順
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ステップ 1 |
ephone-dn group-paging-dn-tag
Router(config)# ephone-dn 20 |
ephone-dn 設定モードを開始して、複合グループ用のページング ephone-dn を作成します。 • group-paging-dn-tag :この複合ページング グループを設定作業時に識別する固有のシーケンス番号。 |
ステップ 2 |
number number
Router(config-ephone-dn)# number 2000 |
定義中の複合グループにページングするためにダイヤルする内線番号を割り当てます。 |
ステップ 3 |
name name
Router(config-ephone-dn)# name Paging AllGroups |
複合ページング番号に名前を割り当てます(最大 24 文字)。この名前は発信者 ID の表示と、ディレクトリ表示で使用されます。 |
ステップ 4 |
paging [ip multicast-address port udp-port-number ]
Router(config-ephone-dn)# paging ip 239.1.1.10 port 2000 |
この ephone-dn を使用して音声ページング メッセージをページング dn-tag に関連付けられているアイドル状態の IP Phone にブロードキャストすることを指定します。オプションのキーワードも引数も使用されていない場合、各 IP Phone は IP ユニキャスト送信によって個別にページングされます。最大で 10 台の IP Phone への IP ユニキャスト送信が可能です。オプションのキーワードおよび引数は、次のとおりです。 • ip multicast-address port udp-port-number :指定した IP アドレスと UDP ポートを使用してマルチキャスト ブロードキャストを指定します。このオペレーションをお勧めします。複数のページング番号が設定されている場合、各ページング番号は固有の IP マルチキャスト アドレスを使用する必要があります。 |
ステップ 5 |
paging group paging-dn-tag , paging-dn-tag [[ , paging-dn-tag ]...]
Router(config-ephone-dn)# paging group 20,21 |
複合グループ用の音声ページング ディレクトリを設定します。 paging group コマンドを使用して、個々のページング グループ ephone-dn を組み合せて 1 つの複合グループにすると、一度に複数のページング グループにページングできます。
(注) グループに paging group コマンドを設定する前に、そのグループ内のすべての ephone-dn に paging コマンドを設定する必要があります。
• paging-dn-tag :個々のページング グループのページング番号に関連付ける固有のシーケンス番号(「単一グループ用のページングの設定」を参照)。この複合グループに含める個々のグループすべての paging-dn-tags をコンマで区切って列挙します。このコマンドには、最大 10 個のページング ephone-dn タグを含めることができます。 |
ステップ 6 |
exit
Router(config-ephone-dn)# exit |
ephone-dn 設定モードを終了します。 |
例
この例では、次のページング動作を設定します。
• 内線番号 2000 がダイヤルされたときに、ephone 1 および 2(単一ページング グループ)にページングする。
• 内線番号 2001 がダイヤルされたときに、ephone 3 および 4(単一ページング グループ)にページングする。
• 内線番号 2002 がダイヤルされたときに、ephone 1、2、3、4、および 5(複合ページング グループ)にページングする。
ephone 1 および 2 は、複合ページング グループ内の ephone-dn 20 のメンバーとして、ページング ephone-dn 22 に含まれています。ephone 3 および 4 は、複合グループ内の ephone-dn 21 のメンバーとして、ページング ephone-dn 22 に含まれています。ephone 5 は paging-dn 22 に直接登録されています。
paging ip 239.0.1.20 port 2000
paging ip 239.0.1.21 port 2000
paging ip 239.0.2.22 port 2000
mac-address 1234.8903.2941
mac-address CFBA.321B.96FA
mac-address CFBB.3232.9611
mac-address 3928.3012.EE89
mac-address BB93.9345.0031
Cisco CME とアプリケーションの統合
Cisco CallManager Express(Cisco CME)は、Cisco IP Phone の単純な 1 対 1 のリモート制御を有効にするインターフェイスを提供しています。この制御は、Cisco IOS Telephony Services Provider(TSP)、つまりアプリケーションの電話帳から発信コールを送信できる Telephony Application Programming Interface(TAPI)を実行している関連 PC で行われます。このインターフェイスでは、着信コールがあった場合に発信者 ID ベースの画面ポップアップを有効にしたり、PC アプリケーションからワンクリック アドレス帳形式の短縮ダイヤルを使用して簡単に発信コールを送信したりすることができるように、基本的な TAPI サービスだけがサポートされています。
Cisco IOS TSP は TAPI サービス プロバイダー ソフトウェア パッケージであり、Microsoft Windows で実行されている TAPI と Cisco CME ルータ間のインターフェイスとして機能します。Cisco IOS TSP によって提供される機能は、次のとおりです。
• Telephony Service Provider Interface(TSPI)を使用して TAPI と通信する。
• 必要な API セットを実装して TAPI と連携する。
• Cisco CME ルータに接続している Cisco IP Phone に対するコール制御を TAPI ベースの他のアプリケーションが提供できるようにする。
(注) Cisco CME で実装されるのは、ごく一部の TAPI 機能だけです。この機能のサブセットでは、一度に 1 電話回線で機能する TAPI クライアントだけがサポートされます。Cisco IOS TSP サポートには、複数のユーザや、Automatic Call Distributor(ACD; 自動着信呼分配)や IP Contact Center(IPCC; IP コンタクト センター)などの複雑な機能に対応できる、完全な TAPI サポートはありません。また、この TAPI バージョンには、ダイレクト メディア機能と音声処理機能がありません。メディアや音声は電話機に送信されます。
Cisco IOS TSP ソフトウェアにより、ユーザは電話の受話器を取ったり電話のキーパッドで番号をダイヤルしたりしなくてもコール管理を PC で処理できるので、個人の生産性が向上します。使用可能な機能は次のとおりです。
• 着信コールに応答する。
• 着信コールをボイスメールに自動転送する。
• アドレス帳のエントリをダイヤルする(アドレス帳から発信コールを送信する)。
• 発信者 ID を表示する画面ポップアップを行う。
• コールを保留にする。
この項では、Cisco IOS TSP とアプリケーションの統合に関連する次の作業について説明します。
• 「Cisco IOS TSP のインストール」
• 「TSP 設定の変更」
• 「Cisco IOS TSP の削除」
• 「基本的な TAPI 動作の検証」
• 「Cisco IOS TSP のトラブルシューティング」
Cisco IOS TSP のインストール
この作業は、Cisco IOS TSP を使用するための準備です。
前提条件
• ルータで、Cisco IOS TSP 設定に必要な次の情報を収集します。
–TAPI クライアントによって関連付けて制御する Cisco IP Phone の MAC アドレス。この情報を取得するには、 show ephone コマンドを使用します。
–Cisco IP Phone のユーザ名とパスワード。この情報を取得するには、show ephone コマンドを使用します。
–Cisco CME ルータの IP アドレスまたはホスト名(DNS が有効である場合)およびポート番号。IP アドレスおよびポート番号を取得するには show telephony-service コマンドを使用し、ホスト名を特定するには show running-config コマンドを使用します。
• CiscoIOSTSP1.3.zip ファイルを http://www.cisco.com/cgi-bin/tablebuild.pl/ip-iostsp から PC にダウンロードします。ファイルを圧縮解除し、Cisco IOS TSP のインストール先となる Windows 2000 を実行している PC でインストールを実行します。
(注) ここで説明する手順は、Cisco IOS TSP アプリケーションのバージョン 1.3 に関するものです。別のバージョンをダウンロードする場合は、すべてのファイルでバージョン番号が異なるので注意してください。
要約手順
1. PC と Cisco CME ルータ間のネットワークの接続性を確認します。
2. CiscoIOSTspLite1.3.exe を実行します。
3. Cisco IOS Telephony Service Provider ダイアログボックスで、必要なフィールドに情報を入力します。
4. プロンプトに従って、コンピュータを再起動します。
5. Cisco IOS TSP を初めて使用する場合は、先にコンピュータを再起動するか、Cisco IOS TSP を Phone and Modem Options から選択します。
詳細手順
ステップ 1 PC と Cisco CME ルータ間のネットワークの接続性を確認します。ネットワークの接続性を確認するには、PC で Cisco CME ルータの IP アドレスを指定して ping ip-address コマンドを入力します。
ステップ 2 CiscoIOSTspLite1.3.exe を実行します。次の Cisco IOS TSP Dynamic Linking Library(DLL; ダイナミック リンク ライブラリ)ファイルがインストールされます。
• CiscoIOSTSP.tsp
• CiscoIOSTUISP.dll
• LogTrace.dll
ステップ 3 DLL ファイルのインストール後に表示される Cisco IOS Telephony Service Provider 設定ダイアログボックス(図 40)で、必要なフィールドに情報を入力します。
a. Cisco IPPhone のユーザが使用するユーザ名とパスワードを入力します。
b. CiscoCME ルータの IP アドレスとポート番号を入力します。
c. CiscoCME ルータからの同期タイムアウト応答を秒単位で任意の値に設定します(デフォルトは 3 秒)。
d. ヘッドセットを使用している場合は、 Using HeadSet チェックボックスをオンにします。
e. トラブルシューティング用にトレース機能を有効にするには、Trace チェックボックスをオンにします。ただし、この機能を使用すると、TAPI アプリケーションの動作が非常に遅くなります。詳細については、「Cisco IOS TSP のトラブルシューティング」を参照してください。
図 40 Cisco IOS Telephony Service Provider ダイアログボックス
ステップ 4 プロンプトに従って、コンピュータを再起動します。
TSP 設定の変更
PC で設定した TSP 設定を変更するには、次の手順を実行します。
要約手順
1. Start > Settings > Control Panel > Phone and Modem Options の順に選択します。
2. Advanced タブを選択してテレフォニー プロバイダーを表示します。
3. Cisco IOS Telephony Service Provider を選択し、 Configure をクリックします。
4. Cisco IOS Telephony Service Provider ダイアログボックスで、必要な変更を行います。
5. OK を選択して変更を保存し、PC のリブートを指示するプロンプトが表示されたら PC をリブートします。
詳細手順
ステップ 1 Start > Settings > Control Panel > Phone and Modem Options の順に選択します。このオプションの名前は、ご使用のオペレーティング システムによって異なる場合があります。
ステップ 2 Phone And Modem Options ダイアログボックスの Advanced タブを選択します。Providers リストに Cisco IOS Telephony Service Provider が表示されます(図 41)。
図 41 Cisco IOS Telephony Service Provider を選択するためのウィンドウ
ステップ 3 Cisco IOS Telephony Service Provider を選択し、 Configure をクリックします(図 41 を参照)。
Cisco IOS Telephony Service Provider ダイアログボックスが表示されます(図 40 を参照)。
ステップ 4 Cisco IOS Telephony Service Provider ダイアログボックスで、必要な変更を行います。
ステップ 5 OK を選択して変更を保存し、PC のリブートを指示するプロンプトが表示されたら PC をリブートします。Cisco IOS Telephony Services Provider のユーザ名、パスワード、IP アドレス、またはポートを変更した場合は、変更を有効にするために、実行中のすべての TAPI アプリケーションを再起動します。Remote Access Connection Manager など、テレフォニー サービスに依存するサービスが実行されている場合、変更を有効にするには、システムも再起動する必要があります。システムのリブートを指示するプロンプトが表示される場合もあります。
Cisco IOS TSP の削除
この項では、ご使用のコンピュータから Cisco IOS TSP を削除する方法について説明します。
前提条件
次の条件が満たされていることを確認します。
• ドライバが使用されていない。
• ファイルが読み取り専用モードになっていない。
• C:\winnt\system32 ディレクトリ内のファイルを完全に制御できる。
要約手順
1. Start > Settings > Control Panel > Add/Remove Programs の順に選択します。
2. 表示されるプログラムの一覧で Cisco IOS Telephony Services Provider を選択し、
Change/Remove ボタンをクリックします。
3. プロンプトに従い、すべての TSP ファイルを PC から削除します。
詳細手順
1. Start > Settings > Control Panel > Add/Remove Programs の順に選択します。
2. 表示されるプログラムの一覧で Cisco IOS Telephony Services Provider を選択し、
Change/Remove ボタンをクリックします。
3. プロンプトに従い、すべての TSP ファイルを PC から削除します。
基本的な TAPI 動作の検証
この項では、TAPI の動作を検証する方法について説明します。
要約手順
1. 着信コールを送信します。
2. 発信コールを送信します。
詳細手順
ステップ 1 別の Cisco IP Phone から、検証対象の電話機に着信コールを送信します。
ステップ 2 検証対象の Cisco IP Phone から発信コールを送信します。
Cisco CME ルータに関する Cisco IOS TSP のトラブルシューティング
• Cisco CME ルータの IP アドレスとポート番号を調べ、それらが TSP Settings ダイアログボックスで定義したものと一致することを確認します。
• 電話機と Cisco CME ルータ間の接続性を ping ip-address コマンドを使用して検証します。
• Cisco IOS TSP が Cisco CME ルータへの接続に失敗した場合、「Cisco IOS Telephony Service TSP status」というタイトルのメッセージ ボックスに失敗の原因が表示されます。
• Preferences > Dialer ダイアログボックスに回線またはアドレスがリストされない場合は、次の設定を確認します。
–ユーザ名とパスワードが正しく設定されていること(大文字と小文字は区別されます)、および同期タイムアウトが妥当な値(3 秒)に設定されていること
–ダイアログボックスに表示されている IP アドレスとポート番号が Cisco CME ルータのものと一致すること
–Cisco IP Phone と Cisco CME ルータ間の接続性
• Trace チェックボックスをオンにします(図 40 の下部を参照)。トレース機能により、トレース ユーティリティ ログが実行され、指定したトレース ファイルにファイルが保存されます。
(注) トレース ユーティリティ ログを保存するには、ファイルにわかりやすい名前を付けてトレース ユーティリティ ログを保存します。トレース ログを実行するたびに新しいトレース ファイルが作成されるので、不要な古いトレース ファイルは定期的に削除する必要があります。
PC に関する Cisco IOS TSP のトラブルシューティング
Cisco IOS Telephony Service Provider が Control Panel > Phone and Modem Options > Add ダイアログボックスで使用可能なプロバイダーの 1 つとしてリストされない場合は、DLL ファイルが PC のシステム ディレクトリにインストールされていることを確認します。インストールの操作により、通常は次の DLL ファイルが PC のシステム ディレクトリに追加されます。
• CiscoIOSTSP.tsp
• CiscoIOSTUISP.dll
• LogTrace.dll