Cisco Mobile Wireless Home Agent の運用と管理
ここでは、Home Agent がサポートしている設定機能、統計情報、Management Information Base(MIB; 管理情報ベース)について説明します。各モバイル IP コマンドの詳細については、http://www.cisco.com/univercd/cc/td/doc/product/software/ios122/122cgcr/fipras_r/1rfmobip.htm を参照してください。
Home Agent は Cisco IOS Command-Line Interface(CLI; コマンドライン インターフェイス)または Cisco Works for Mobile Wireless を使用して管理できます。
Cisco Mobile Wireless Home Agent には、次の設定パラメータがあります。
• ユーザ プロファイル(ローカル ユーザ)の管理
• IP プールのローカル設定
• 通信ノードとのセキュリティ アソシエーションの設定
• 入力/出力フィルタリングの設定
• モバイル バインディングのアップデートの設定
• ルーティング情報の設定
統計情報
Mobile Wireless Home Agent は次のパラメータに関してグローバルベースの統計情報を維持します。
• アドバタイズメント(受信および送信)
• 登録(要求および応答)
• 登録(受諾および拒否)
• バインディング
• バインディングのアップデート
• Gratuitous Address Resolution Protocol(ARP; アドレス解決プロトコル)およびプロキシ ARP
• ルート最適化バインディングのアップデート
Mobile Wireless Home Agent は次のパラメータに関して Foreign Agent(FA)-Home Agent(HA)トンネル単位の統計情報を維持します。
• トンネルの発信元および宛先 IP アドレス
• トンネル タイプ(IpinIP または Generic Routing Encapsulation(GRE; 総称ルーティング カプセル化))
• 許可されたリバース トンネリング
• そのトンネルを使用しているユーザの数
• そのトンネル上の送信トラフィック(パケット数およびバイト数)
• そのトンネル上の受信トラフィック(パケット数およびバイト数)
Mobile Wireless Home Agent は次のパラメータに関して、ホスト単位のほか、Network Access Identifier(NAI; ネットワーク アクセス識別子)またはホーム IP アドレス別の統計情報を維持します。
• ライフタイム
• セッション時間
• そのホストへの送信トラフィック(パケット数およびバイト数)
• そのホストからリバース トンネルを通じて受信されたトラフィック(パケット数およびバイト数)
(注) 統計情報は、CLI を使用してクリアできます。MIB カウンタはクリアできません。
SNMP によるトンネル統計情報
HA Release 5.1 では、show ip mobile tunnel コマンドに、セッション ユーザの数およびパケット/バイト統計情報のほかに、IP アドレスのペア(HA-FA)形式でエントリを表示するための新しいコマンド オプションが導入されました。
たとえば、show ip mobile tunnel brief のようにコマンドを指定します。
また、CISCO-MOBILE-IP-MIB に新しい MIB テーブル "cmiHaRegTunnelStatsTable" が追加され、この新しく導入されたコマンド オプションで表示される情報が Stats テーブルの各エントリに含められます。
この機能は、IP/IP トンネルおよび GRE/IP トンネルに対してのみ適用できます。
次に、参照用の出力例を示します。
show ip mobile tunnel brief
Total mobile ip tunnels 6
SrcAddr DestAddr Encap Users Data Interval PktRt In/Out BitRt In/Out Pkts In/Out Bytes In/Out
86.6.6.30 10.109.1.82 IP/IP 2 5 minute 0/0 0/0 0/0 0/0
86.6.6.30 10.109.1.83 IP/IP 1 5 minute 0/0 0/0 0/0 0/0
86.6.6.30 10.109.1.81 IP/IP 2 5 minute 0/0 0/0 0/0 0/0
86.6.6.6 10.109.1.62 IP/IP 2 5 minute 0/0 0/0 0/0 0/0
86.6.6.6 10.109.1.63 IP/IP 1 5 minute 0/0 0/0 0/0 0/0
86.6.6.6 10.109.1.61 IP/IP 2 5 minute 0/0 0/0 0/0 0/0
SNMP、MIB、およびネットワーク管理
HA はプロトコル スイート RFC 1901 ~ RFC 1908 で規定された SNMPv2 を実装します。Home Agent は、『The Definitions of Managed Objects for IP Mobility Support UsingSMIv2, RFC 2006, October 1995』に定義されている MIB をサポートしています。Cisco MIBである CISCO- MOBILE-IP-MIB の追加により、管理機能が強化されています。そのほかに、『RADIUS Authentication Client MIB, RFC 2618, June 1999』に定義されている Remote Authentication Dial-In User Service(RADIUS)MIB もサポートしています。Cisco 7600 シリーズ プラットフォームでサポートされているすべての MIB のリストについては、http://www.cisco.com/public/sw-center/netmgmt/cmtk/mibs.shtml を参照してください。
MIB で維持されるセッション カウンタは、SNMP と Cisco IOS CLI のいずれを使用してもリセットできません。Home Agent CPU カウンタおよびメモリ使用率カウンタには、CISCO-PROCESS-MIB を使用してアクセスできます。
Release 3.0 には、Home Agent バージョンの MIB オブジェクトが追加されています。
SNMPv3 がサポートされています。
HA Release 5.0 における MIB の拡張
HA Release 5.0 では、CISCO-MOBILE-IP-MIB は、バインディング単位の変数として追加された Medium Access Control(MAC; メディア アクセス制御)アドレスを持ちます。RADIUS-CLIENT-AUTHENTICATION-MIB には、AAA アクセスのタイムアウトに関するエントリが含まれます。CISCO-RADIUS-MIB には、トラップが追加されています。新しい CISCO-SLB-DFP-MIB も追加されています。
MIB の詳細については、次の URL を参照してください。
http://www.cisco.com/public/sw-center/netmgmt/cmtk/mibs.shtml
IP-LOCAL-POOL-MIB 用のCLI
Cisco Mobile Wireless Home Agent Release 3.0 では CISCO-IP-LOCAL-POOL-MIB が強化され、プールの利用率が上限または下限のしきい値に達すると、トラップが生成されます。下限および上限のしきい値を定義するのは、オブジェクト "cIpLocalPoolPercentAddrThldLo" と "cIpLocalPoolPercentAddrThldHi" です。
IP ローカル プール内の使用アドレスのパーセンテージが上限しきい値以上になると、"cilpPercentAddrUsedHiNotif" 通知が生成されます。いったん通知が生成されると、その通知は解除され、使用アドレスの数が "cIpLocalPoolPercentAddrThldLo " に指定された値を下回るまで生成されません。
IP ローカル プール内の使用アドレスのパーセンテージが下限しきい値未満になると、"cilpPercentAddrUsedLoNotif" 通知が生成されます。いったん通知が生成されると、その通知は解除され、使用アドレスの数が "cIpLocalPoolPercentAddrThldHi " に指定された値以上になるまで生成されません。
Cisco IOS 12.3(11)YX5 リリースでは、ip local pool コマンドに、上限および下限のしきい値を設定する新しい変数が実装されています。
このコマンドの構文は次のとおりです。
ip local pool {default | poolname} [low-ip-address [high-ip-address]] [group group-name] [cache-size size] [threshold low-threshold high-threshold]
low-threshold 引数は、プール利用率トラップを生成する下限のしきい値です。high threshold 引数はプール利用率トラップを生成する上限のしきい値です。
さらに、cilpPercentAddrUsedHiNotif 通知に次の 2 つの変数バインドが追加されています。
– cIpLocalPoolChildIndex:IP プールの名前
– cIpLocalPoolPercentAddrThldHi:IP ローカル プールの上限しきい値のパーセンテージ値
cilpPercentAddrUsedLoNotif 通知にも次の 2 つの変数バインドが追加されています。
– cIpLocalPoolChildIndex:IP プールの名前
– cIpLocalPoolPercentAddrThldLo:IP ローカル プールの下限しきい値のパーセンテージ値
(注) CISCO-IP-LOCAL-MIB ファイルは、SNMP SMIv2 標準に従って変更されていません。
制約事項
IP ローカル プールしきい値トラップに次の制限が適用されます。
• IP ローカル プール名の長さは、ASCII 文字で最大 240 文字です(使用するパラメータによって異なります)。
• SNMP トラップ名の長さは最大 48 文字に制限されます。SNMP MIB がサポートする最大文字数が 48 文字であるためです。
• プール名が 48 文字を超えていると、トラップは生成されません。
ローカル プール グループの設定および確認
ここでは、ローカル プール グループの設定およびその確認に必要な手順を説明します。
手順の概要
1. enable
2. configure terminal
3. ip local pool {default | poolname} [low-ip-address [high-ip-address]] [group group-name] [cache-size size] [threshold low-threshold high-threshold]
4. show ip local pool [poolname | [group group-name]]
手順の詳細
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ステップ 1 |
enable
例: Router> enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 • プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
configure terminal 例:
Router# configure terminal
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グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
ip local pool {default | poolname} [low-ip-address [high-ip-address]] [group group-name] [cache-size size] [threshold low-threshold high-threshold] 例: Router(config)# ip local pool XYZPool 100.1.1.1 100.1.1.10 group MWG cache-size 50 threshold 50 90 |
ローカル IP アドレス プールのグループを設定し、このグループに名前とキャッシュ サイズを指定します。 low-threshold は、プール利用率トラップ生成用の下限しきい値です。この値は、high threshold の値以下にする必要があります。 high threshold は、プール利用率トラップ生成用の上限しきい値です。この値は、lowthreshold よりも大きい値にする必要があります。 |
ステップ 4 |
show ip local pool [poolname | [group group-name]] 例: Router(config)# show ip local pool group testgroup testpool |
定義済みの IP アドレス プールすべての統計情報を表示します。 |
条件付きデバッグ
HA は、NAI に基づく条件付きデバッグと Mobile Node(MN; モバイル ノード)のホーム アドレスに基づく条件付きデバッグをサポートしています。条件付きデバッグをサポートしているのは、Authentication, Authorization and Accounting(AAA; 認証、認可、アカウンティング)とモバイル IP のコンポーネントだけです。
CLI を使用して、すべてのユーザまたは NAI で識別される特定ユーザのアクティビティをトレースできます。特定ユーザのアクティビティのモニタリング(条件付きデバッグ)では、モバイル IP メッセージおよび RADIUS メッセージに関連したユーザ アクティビティが表示されます。
Release 3.0 から、各デバッグ ステートメントとともに、条件(username/IMSI)も表示されるようになりました。これは、デバッグ ステートメントをその条件と照合するのに役立ちます。この機能をイネーブルにするには、次のコマンドを使用します。
ip mobile home-agent debug include username
条件付きデバッグでサポートされているモバイル IP デバッグは次のとおりです。
• debug ip mobile
• debug ip mobile host
条件付きデバッグでサポートされている AAA は、次のとおりです。
• debug aaa authentication
• debug aaa authorization
• debug aaa accounting
• debug aaa ipc
• debug aaa attr
• debug aaa id
• debug aaa subsys
条件付きデバッグでサポートされている RADIUS デバッグは次のとおりです。
• debug radius
• debug radius accounting
• debug radius authentication
• debug radius retransmit
• debug radius failover
• debug radius brief