IP ソース ガードの設定

この章では、Cisco NX-OS デバイスで IP ソース ガードを設定する手順について説明します。

この章は、次の項で構成されています。

IP ソース ガードについて

IP ソース ガードは、インターフェイス単位のトラフィック フィルタです。各パケットの IP アドレスと MAC アドレスが、IP と MAC のアドレス バインディングのうち、次に示す 2 つの送信元のどちらかと一致する場合だけ、IP トラフィックを許可します。

  • Dynamic Host Configuration Protocol(DHCP)スヌーピング バインディング テーブル内のエントリ

  • 設定したスタティック IP ソース エントリ

信頼できる IP および MAC のアドレス バインディングのフィルタリングは、スプーフィング攻撃(有効なホストの IP アドレスを使用して不正なネットワーク アクセス権を取得する攻撃)の防止に役立ちます。IP ソース ガードを妨ぐためには、攻撃者は有効なホストの IP アドレスと MAC アドレスを両方スプーフィングする必要があります。

DHCP スヌーピングで信頼状態になっていないレイヤ 2 インターフェイスの IP ソース ガードをイネーブルにできます。IP ソース ガードは、アクセス モードとトランク モードで動作するように設定されているインターフェイスをサポートしています。IP ソース ガードを最初にイネーブルにすると、次のトラフィックを除いて、そのインターフェイス上のインバウンド IP トラフィックがすべてブロックされます。

  • DHCP パケット。DHCP パケットは、DHCP スヌーピングによって検査が実行され、その結果に応じて転送またはドロップされます。

  • Cisco NX-OS デバイスに設定したスタティック IP ソース エントリからの IP トラフィック。

デバイスが IP トラフィックを許可するのは、DHCP スヌーピングによって IP パケットの IP アドレスと MAC アドレスのバインディング テーブル エントリが追加された場合、またはユーザがスタティック IP ソース エントリを設定した場合です。

パケットの IP アドレスと MAC アドレスがバインディング テーブル エントリにも、スタティック IP ソース エントリにもない場合、その IP パケットはドロップされます。たとえば、show ip dhcp snooping binding コマンドによって表示されたバインディング テーブル エントリが次のとおりであるとします。


MacAddress         IpAddress    LeaseSec   Type           VLAN    Interface    
-----------------  ----------   ---------  -------------  ----    ---------  
00:02:B3:3F:3B:99  10.5.5.2     6943       dhcp-snooping  10      Ethernet2/3

IP アドレスが 10.5.5.2 の IP パケットをデバイスが受信した場合、IP ソース ガードによってこのパケットが転送されるのは、このパケットの MAC アドレスが 00:02:B3:3F:3B:99 のときだけです。

IP ソース ガードの前提条件

IP ソース ガードの前提条件は次のとおりです。

  • IP ソース ガードを設定するには、その前に DHCP 機能および DHCP スヌーピングをイネーブルにする必要があります。DHCP の設定を参照してください。

  • hardware access-list tcam region ipsg コマンドを使用して、IP ソース ガード用の ACL TCAM のリージョン サイズを設定する必要があります。ACL TCAM リージョン サイズの設定を参照してください。


    Note


    デフォルトでは、ipsg のリージョン サイズはゼロです。SMAC-IP バインディングの保存と適用をするには、このリージョンに十分なエントリを割り当てる必要があります。


IP ソース ガイドの注意事項と制約事項

IP ソース ガードに関する注意事項と制約事項は次のとおりです。

  • IP ソース ガードは、インターフェイス上の IP トラフィックを、IP-MAC アドレス バインディング テーブル エントリまたはスタティック IP ソース エントリに送信元が含まれているトラフィックだけに制限します。インターフェイス上の IP ソース ガードを初めてイネーブルにする際には、そのインターフェイス上のホストが DHCP サーバから新しい IP アドレスを受信するまで、IP トラフィックが中断されることがあります。

  • IP ソース ガードの機能は、DHCP スヌーピング(IP-MAC アドレス バインディング テーブルの構築および維持に関して)、またはスタティック IP ソース エントリの手動での維持に依存しています。

  • IPソースガードは、ファブリックエクステンダ(FEX)ポートまたは汎用拡張モジュール(GEM)ポートではサポートされていません。

  • 次の注意事項と制約事項は Cisco Nexus 9200 シリーズ スイッチに適用されます。

    • 着信インターフェイスでIPSGがイネーブルになっている場合、IPv6隣接関係は形成されません。

    • IPSGはHSRPスタンバイでARPパケットをドロップします。

    • DHCPスヌーピングおよびIPSGをイネーブルにすると、ホストのバインディングエントリが存在する場合、トラフィックはARPがなくてもホストに転送されます。

  • Cisco NX-OS リリース 9.3(5) 以降、IP Source Guard は Cisco Nexus 9364C-GX、Cisco Nexus 9316D-GX、および Cisco Nexus 93600CD-GX スイッチでサポートされています。

  • IP ソース ガードは、Cisco Nexus 9300-X クラウド スケール スイッチで TCAM カービングを必要としません。

IP ソース ガードのデフォルト設定

次の表に、IP ソース ガードのパラメータのデフォルト設定を示します。

Table 1. IP ソース ガードのパラメータのデフォルト値

パラメータ

デフォルト

IP ソース ガード

各インターフェイスでディセーブル

IP ソース エントリ

なし。デフォルトではスタティック IP ソース エントリはありません。デフォルトの IP ソース エントリもありません。

IP ソース ガードの設定

レイヤ 2 インターフェイスに対する IP ソース ガードの有効化または無効化

レイヤ 2 インターフェイスに対して IP ソース ガードをイネーブルまたは無効に設定できます。デフォルトでは、すべてのインターフェイスに対して IP ソース ガードは無効です。

Before you begin

DHCP 機能と DHCP スヌーピングが有効になっていることを確認します。

IPSG(ipsg)のACL TCAMリージョンサイズが設定されていることを確認します。

Procedure

  Command or Action Purpose

Step 1

configure terminal

Example:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル設定モードを開始します。

Step 2

interface ethernet slot/port

Example:

switch(config)# interface ethernet 2/3
switch(config-if)#

指定したインターフェイスに対してインターフェイス コンフィギュレーション モードを開始します。

Step 3

[no] ip verify source dhcp-snooping-vlan

Example:

switch(config-if)# ip verify source dhcp-snooping vlan

インターフェイスの IP ソース ガードを有効にします。このコマンドの no 形式を使用すると、そのインターフェイスの IP ソース ガードが無効になります。

Step 4

(Optional) show running-config dhcp

Example:

switch(config-if)# show running-config dhcp
(Optional)

IP ソース ガードの設定も含めて、DHCP スヌーピングの実行コンフィギュレーションを表示します。

Step 5

(Optional) copy running-config startup-config

Example:

switch(config-if)# copy running-config startup-config
(Optional)

実行コンフィギュレーションを、スタートアップ コンフィギュレーションにコピーします。

スタティック IP ソース エントリの追加または削除

デバイス上のスタティック IP ソース エントリの追加または削除を実行できます。デフォルトでは、固定 IP ソース エントリは作成されません。

Procedure

  Command or Action Purpose

Step 1

configure terminal

Example:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します

Step 2

[no] ip source binding ip-address mac-address vlan vlan-id interface interface-type slot/port

Example:

switch(config)# ip source binding 10.5.22.17 001f.28bd.0013 vlan 100 interface ethernet 2/3

現在のインターフェイスのスタティック IP ソース エントリを作成します。スタティック IP ソース エントリを削除するには、このコマンドの no 形式を使用します。

Step 3

(Optional) show ip dhcp snooping binding [interface interface-type slot/port]

Example:

switch(config)# show ip dhcp snooping binding interface ethernet 2/3
(Optional)

スタティック IP ソース エントリを含めて、指定したインターフェイスの IP-MAC アドレス バインディングを表示します。スタティック エントリは、Type カラムの表示で示されます。

Step 4

(Optional) copy running-config startup-config

Example:

switch(config)# copy running-config startup-config
(Optional)

実行コンフィギュレーションを、スタートアップ コンフィギュレーションにコピーします。

トランク ポート用 IP ソース ガードの設定

IPソースガードがポートに設定されている場合、そのポートに着信するトラフィックは、TCAMで許可するDHCPスヌーピングエントリがない限りドロップされます。ただし、トランクポートでIPソースガードが設定されており、特定のVLANで着信するトラフィックにこのチェックを行わせない場合(DHCPスヌーピングが有効になっていない場合でも)、除外するVLANのリストを指定できます。

始める前に

DHCP 機能と DHCP スヌーピングが有効になっていることを確認します。

手順

  コマンドまたはアクション 目的

ステップ 1

configure terminal

例:

switch# configure terminal
switch(config)#

グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。

ステップ 2

[no] ip dhcp snooping ipsg-excluded vlan vlan-list

例:

switch(config)# ip dhcp snooping ipsg-excluded vlan 1001-1256,3097

トランクポート上のIPソースガードのDHCPスヌーピングチェックから除外するVLANのリストを指定します。

ステップ 3

(任意) show ip ver source [ethernet slot/port | port-channel channel-number]

例:

switch(config)# show ip ver source
(任意)

除外されるVLANを表示します。

ステップ 4

(任意) copy running-config startup-config

例:

switch(config)# copy running-config startup-config
(任意)

実行コンフィギュレーションを、スタートアップ コンフィギュレーションにコピーします。

IP ソース ガード バインディングの表示

show ip ver source [ethernet slot/port | port-channel channel-number] を使用します コマンドを使用して、IP-MAC アドレスのバインディングを表示します。

IP ソース ガードの統計情報のクリア

IP ソース ガード統計情報をクリアするには、次の表に示すコマンドを使用します。

コマンド

目的

clear access-list ipsg stats [instance number | module number]

IPソースガード統計情報をクリアします。

IP ソース ガードの設定例

スタティック IP ソース エントリを作成し、インターフェイスの IP ソース ガードをイネーブルにする例を示します。

ip source binding 10.5.22.17 001f.28bd.0013 vlan 100 interface ethernet 2/3 
interface ethernet 2/3
  no shutdown
  ip verify source dhcp-snooping-vlan
  show ip ver source

  IP source guard excluded vlans:
  ------------------------------------------------------ 
  None

  -----------------------------------
  IP source guard is enabled on the following interfaces:
  ------------------------------------------------------ 
        ethernet2/3