L2TP over IPsec/IKEv1 VPN について
Layer 2 Tunneling Protocol(L2TP; レイヤ 2 トンネリング プロトコル)は、リモート クライアントがパブリック IP ネットワークを使用して、企業のプライベート ネットワーク サーバと安全に通信できるようにする VPN トンネリング プロトコルです。L2TP は、データのトンネリングに PPP over UDP(ポート 1701)を使用します。
L2TP プロトコルは、クライアント/サーバ モデルを基本にしています。機能は L2TP ネットワーク サーバ(LNS)と L2TP アクセス コンセントレータ(LAC)に分かれています。LNS は、通常、ルータなどのネットワーク ゲートウェイで実行されます。一方、LAC は、ダイヤルアップの Network Access Server(NAS; ネットワーク アクセス サーバ)や、Microsoft Windows、Apple iPhone、または Android などの L2TP クライアントが搭載されたエンドポイント デバイスで実行されます。
リモート アクセスのシナリオで、IPsec/IKEv1 を使用する L2TP を設定する最大の利点は、リモート ユーザがゲートウェイや専用回線を使わずにパブリック IP ネットワークを介して VPN にアクセスできることです。これにより、実質的にどの場所からでも POTS を使用してリモート アクセスが可能になります。この他に、Cisco VPN Client ソフトウェアなどの追加のクライアント ソフトウェアが必要ないという利点もあります。
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L2TP over IPsec は、IKEv1 だけをサポートしています。IKEv2 はサポートされていません。 |
IPsec/IKEv1 を使用する L2TP の設定では、事前共有キーまたは RSA シグニチャ方式を使用する証明書、および(スタティックではなく)ダイナミック クリプト マップの使用がサポートされます。ただし、ここで説明する概要手順では、IKEv1、および事前共有キーまたは RSA 署名の設定が完了していることを前提にしています。事前共有キー、RSA、およびダイナミック クリプト マップの設定手順については、一般的操作用コンフィギュレーション ガイドの第 41 章「Digital Certificates」を参照してください。
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ASA で IPsec を使用する L2TP を設定すると、Windows、MAC OS X、Android および Cisco IOS などのオペレーティング システムに統合されたネイティブ VPN クライアントと LNS が相互運用できるようになります。サポートされているのは、IPsec を使用する L2TP だけで、ネイティブの L2TP そのものは、ASA ではサポートされていません。 Windows クライアントがサポートしている IPsec セキュリティ アソシエーションの最短ライフタイムは 300 秒です。ASA でライフタイムを 300 秒未満に設定している場合、Windows クライアントはこの設定を無視して、300 秒のライフタイムに置き換えます。 |
IPsec の転送モードとトンネル モード
ASA は、デフォルトで IPsec トンネル モードを使用します。このモードでは、元の IP データグラム全体が暗号化され、新しい IP パケットのペイロードになります。このモードでは、ルータなどのネットワーク デバイスが IPsec のプロキシとして動作できます。つまり、ルータがホストに代わって暗号化を行います。送信元ルータがパケットを暗号化し、IPsec トンネルを使用して転送します。宛先ルータは元の IP データグラムを復号化し、宛先システムに転送します。トンネル モードの大きな利点は、エンド システムを変更しなくても IPsec を利用できるということです。また、トラフィック分析から保護することもできます。トンネル モードを使用すると、攻撃者にはトンネルのエンドポイントしかわからず、トンネリングされたパケットの本来の送信元と宛先はわかりません(これらがトンネルのエンドポイントと同じ場合でも同様)。
ただし、Windows の L2TP/IPsec クライアントは、IPsec 転送モードを使用します。このモードでは IP ペイロードだけが暗号化され、元の IP ヘッダーは暗号化されません。このモードには、各パケットに数バイトしか追加されず、パブリック ネットワーク上のデバイスに、パケットの最終的な送信元と宛先を認識できるという利点があります。次の図に、IPsec のトンネル モードと転送モードの違いを示します。
Windows の L2TP および IPsec クライアントから ASA に接続するには、crypto ipsec transform-set trans_name mode transport コマンドを使用してトランスフォーム セット用に IPsec 転送モードを設定する必要があります。このコマンドは、設定手順で使用されます。.
このような転送が可能になると、中間ネットワークでの特別な処理(たとえば QoS)を、IP ヘッダーの情報に基づいて実行できるようになります。ただし、レイヤ 4 ヘッダーが暗号化されるため、パケットの検査が制限されます。転送モードでは、IP ヘッダーがクリア テキストで送信されると、攻撃者に何らかのトラフィック分析を許すことになります。