前処理および侵入インスペクションは密接に関連しているため、単一パケットを処理して検査するネットワーク分析ポリシーと侵入ポリシーが互いに補完することを許可する設定を行う場合は慎重になる必要があります。
デフォルトでは、システムは、管理対象デバイスでアクセス コントロール ポリシーにより処理されるすべてのトラフィックを、1 つのネットワーク分析ポリシーを使用して前処理します。次の図は、インラインの侵入防御展開で、新たに作成されたアクセス コントロール
ポリシーが最初にトラフィックを処理するしくみを示しています。前処理および侵入防御のフェーズが強調表示されています。
アクセス コントロール ポリシーで処理されるすべてのトラフィックの前処理が、デフォルトのネットワーク分析ポリシーによってどのように制御されるのか注意してください。初期段階では、システムによって提供される Balanced Security and
Connectivity ネットワーク分析ポリシーがデフォルトです。
前処理を調整する簡単な方法は、デフォルトとしてカスタム ネットワーク分析ポリシーを作成して使用することです。ただし、カスタム ネットワーク分析ポリシーでプリプロセッサが無効化されているときに、前処理されたパケットを有効な侵入ルールまたはプリプロセッサ
ルールと照合して評価する必要がある場合、システムはプリプロセッサを有効化して使用します。ただし、ネットワーク分析ポリシーの Web ユーザ インターフェイスではプリプロセッサは無効なままになります。
(注) |
プリプロセッサを無効にするパフォーマンス上の利点を得るには、侵入ポリシーでそのプリプロセッサを必要とするルールが有効になっていないことを確認する必要があります。
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複数のカスタム ネットワーク分析ポリシーを使用する場合は、さらに課題があります。複雑な展開内の上級ユーザの場合は、一致したトラフィックの前処理にカスタム ネットワーク分析ポリシーを割り当てることによって、特定のセキュリティ ゾーン、ネットワーク、VLAN
に合わせて前処理を調整できます。(ただし、ASA FirePOWER VLAN による前処理を制限できません)。これを実現するには、アクセス コントロール ポリシーにカスタム ネットワーク分析ルールを追加します。各ルールにはネットワーク分析ポリシーが関連付けられており、ルールに一致するトラフィックの前処理を制御します。
ヒント |
アクセス コントロール ポリシーの詳細設定としてネットワーク分析ルールを設定します。Firepower システムの他のタイプのルールとは異なり、ネットワーク分析ルールは、ネットワーク分析ポリシーに含まれるのではなく、ネットワーク分析ポリシーを呼び出します。
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システムは、ルール番号の昇順で、設定済みネットワーク分析ルールとパケットを照合します。いずれのネットワーク分析ルールにも一致しないトラフィックは、デフォルトのネットワーク分析ポリシーによって前処理されます。これにより非常に柔軟にトラフィックを前処理できます。ただし、留意すべき点として、パケットがどのネットワーク分析ポリシーによって前処理されるかに関係なく、すべてのパケットは、それら独自のプロセスにおいて引き続きアクセス コントロール ルールと照合されます(つまり、侵入ポリシーにより検査される可能性があります)。つまり、特定のネットワーク分析ポリシーでパケットを前処理しても、そのパケットが確実に特定の侵入ポリシーで検査されるわけではありません。アクセス コントロール ポリシーを設定するときは、そのポリシーが正しいネットワーク分析ポリシーおよび侵入ポリシーを呼び出して特定のパケットを評価するように、慎重に行う必要があります。
次の図は、侵入防御(ルール)フェーズよりも前に、別にネットワーク分析ポリシー(前処理)の選択フェーズが発生するしくみを詳細に示しています。簡略化するために、図では検出フェーズとファイル/マルウェア インスペクション フェーズが省かれています。また、デフォルトのネットワーク分析ポリシーおよびデフォルト
アクションの侵入ポリシーを強調表示しています。
このシナリオでは、アクセス コントロール ポリシーは、2 つのネットワーク分析ルールとデフォルトのネットワーク分析ポリシーで設定されています。
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Network Analysis Rule A は、一致するトラフィックを Network Analysis Policy A で前処理します。その後、このトラフィックを Intrusion Policy A で検査されるようにすることができます。
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Network Analysis Rule B は、一致するトラフィックを Network Analysis Policy B で前処理します。その後、このトラフィックを Intrusion Policy B で検査されるようにすることができます。
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残りのトラフィックはすべて、デフォルトのネットワーク分析ポリシーにより前処理されます。その後、このトラフィックをアクセス コントロール ポリシーのデフォルト アクションに関連付けられた侵入ポリシーによって検査されるようにすることができます。
システムはトラフィックを前処理した後、侵入についてトラフィックを検査できます。図では、2 つのアクセス コントロール ルールとデフォルト アクションが含まれるアクセス コントロール ポリシーを示しています。
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アクセス コントロール ルール A は、一致したトラフィックを許可します。トラフィックはその後、Intrusion Policy A によって検査されます。
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アクセス コントロール ルール B は、一致したトラフィックを許可します。トラフィックはその後、Intrusion Policy B によって検査されます。
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アクセス コントロール ポリシーのデフォルト アクションは一致したトラフィックを許可します。トラフィックはその後、デフォルト アクションの侵入ポリシーによって検査されます。
各パケットの処理は、ネットワーク分析ポリシーと侵入ポリシーのペアにより制御されますが、このペアはユーザに合わせて調整されません。アクセス コントロール ポリシーが誤って設定されているため、ネットワーク分析ルール A とアクセス コントロール ルール A が同じトラフィックを処理しない場合を想定してください。たとえば、特定のセキュリティ ゾーンのトラフィックの処理をポリシー
ペアによって制御することを意図している場合に、誤まって、異なるゾーンを使用するように 2 つのルールの条件を設定したとします。この誤設定により、トラフィックが誤って前処理される可能性があります。したがって、ネットワーク分析ルールおよびカスタム
ポリシーを使用した前処理の調整は、高度なタスクです。
単一の接続の場合は、アクセス コントロール ルールよりも前にネットワーク分析ポリシーが選択されますが、一部の前処理(特にアプリケーション層の前処理)はアクセス コントロール ルールの選択後に実行されます。これは、カスタム ネットワーク分析ポリシーでの前処理の設定には影響しません。