IGMP スヌーピングについて
ここでは、次の内容について説明します。
• 「はじめに」
• 「IGMPv1 および IGMPv2」
• 「IGMPv3」
• 「IGMP スヌーピングの前提条件」
はじめに
インターネット グループ管理プロトコル(IGMP)スヌーピング ソフトウェアは、VLAN 内のレイヤ 2 IP マルチキャスト トラフィックを検査して、対象の受信者が接続されているポートを検出します。IGMP スヌーピングではポート情報を利用することにより、マルチアクセス LAN 環境における帯域幅消費量を削減し、VLAN 全体へのフラッディングを回避します。IGMP スヌーピング機能は、マルチキャスト対応ルータに接続されたポートを追跡して、ルータによる IGMP メンバーシップ レポートの転送機能を強化します。トポロジの変更通知には、IGMP スヌーピング ソフトウェアが応答します。デバイスでは、IGMP スヌーピングがデフォルトでイネーブルになっています。
図 5-1 は、ホストと IGMP ルータの間にある IGMP スヌーピング スイッチを示しています。IGMP スヌーピング スイッチは、IGMP メンバーシップ レポートおよび Leave メッセージをスヌーピングして、必要な場合にだけ接続された IGMP ルータに転送します。
図 5-1 IGMP スヌーピング スイッチ
IGMP スヌーピング ソフトウェアは、IGMPv1、IGMPv2、および IGMPv3 コントロール プレーン パケットの処理に関与し、レイヤ 3 コントロール プレーン パケットを代行受信して、レイヤ 2 の転送処理を操作します。
Cisco Nexus 1000V IGMP スヌーピングの実装には、次の独自機能があります。
• MAC アドレスでなく、IP アドレスに基づいてマルチキャスト転送を実行します。
• Optimized Multicast Flooding(OMF)により、未知のトラフィックをルータだけに転送して、データに基づくステート作成を行いません。
IGMP スヌーピングの詳細については、 RFC 4541 を参照してください。
IGMPv1 および IGMPv2
各 VLAN スイッチ ポートに接続されているホストが 1 つしかない場合は、IGMPv2 の高速脱退機能を設定できます。高速脱退機能を使用すると、最終メンバーのクエリー メッセージがホストに送信されません。ソフトウェアは IGMP Leave メッセージを受信すると、ただちに該当するポートへのマルチキャスト データ転送を停止します。
IGMPv1 には、明示的な IGMP Leave メッセージは用意されていません。したがって、ソフトウェアは特定のグループに対するマルチキャスト データの受信を希望するホストが残っていないことを示すために、メンバーシップ メッセージのタイムアウトに依存しなければなりません。
レポートの抑制はサポートされていません。この機能はデフォルトでディセーブルになっています。
(注) 高速脱退機能がイネーブルになっている場合、他のホストの存在は確認されないため、最終メンバーのクエリー インターバル設定が無視されます。
IGMPv3
IGMPv3 スヌーピングは、IGMPv3 レポートのグループ IP 情報に基づいて、フラッディングを制約します。
ソフトウェアのデフォルト設定では、各 VLAN ポートに接続されたホストが追跡されます。この明示的な追跡機能は、高速脱退メカニズムをサポートしています。すべての IGMPv3 ホストがメンバーシップ レポートを送信するため、レポート抑制は、スイッチにより他のマルチキャスト対応ルータに送信されるトラフィックの量を制限します。
IGMPv3 メンバーシップ レポートには LAN セグメント上のグループ メンバーの一覧が含まれていますが、最終ホストが脱退すると、クエリアによりメンバーシップ クエリーが送信されます。最終メンバーのクエリー インターバルについてパラメータを設定すると、 タイムアウトまでにホストが 1 つも応答しなかった場合、グループ ステートが削除されます。クエリアがクエリーで平均応答時間(MRT)値を指定すると、これにより最終メンバーのクエリー インターバルの設定が上書きされます。
IGMP スヌーピングの前提条件
IGMP スヌーピングの前提条件は、次のとおりです。
• スイッチにログインしています。
• マルチキャスト ソースおよび受信機を含む VLAN のアップリンク スイッチでクエリアが実行されていなければなりません。
マルチキャスト トラフィックをルーティングする必要がない場合、メンバーシップをクエリーするように外部スイッチを設定する必要があります。外部スイッチで、マルチキャスト ソースおよび受信機を含む VLAN でクエリー機能を定義します。その他のアクティブなクエリー機能を定義する必要はありません。Cisco Nexus 1000V ではレポートの抑制はサポートされていません。この機能はデフォルトでディセーブルになっています。
IGMP スヌーピング クエリー機能がイネーブルにされている場合、IP マルチキャスト トラフィックの受信を希望するホストから IGMP レポート メッセージを開始する IGMP クエリーが定期的に送信されます。IGMP スヌーピングはこのような IGMP レポートを監視し、正確なフォワーディングを識別します。
デフォルト設定
表 5-1 に、IGMP スヌーピング パラメータのデフォルト設定を示します。
表 5-1 デフォルト IGMP スヌーピング パラメータ
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IGMP スヌーピング |
イネーブル |
IGMPv3 Explicit tracking |
イネーブル |
IGMPv2 Fast leave |
ディセーブル |
最終メンバーのクエリー インターバル |
1 秒 |
リンクローカル グループ抑制 |
イネーブル |
スヌーピング クエリア |
ディセーブル |
IGMPv1/v2 Report suppression |
ディセーブル |
IGMPv3 Report suppression |
ディセーブル |
VSM の IGMP スヌーピングのグローバル イネーブル化またはディセーブル化
VSM の IGMP スヌーピングをグローバルにイネーブルまたはディセーブルにするには、次の手順に従います。
はじめる前に
この手順を開始する前に、次のことを確認または実行する必要があります。
• EXEC モードで CLI にログインしていること。
• IGMP スヌーピングが VSM でグローバルにイネーブルであること(デフォルト)。グローバルにイネーブルにされている場合は、VLAN 単位でオンまたはオフにできます。
手順の概要
1. config t
2. [no] ip igmp snooping
3. show ip igmp snooping [ vlan vlan-id ]
4. copy running-config startup-config
手順の詳細
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ステップ 1 |
config t Example: n1000v# config t n1000v(config)# |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
[no] ip igmp snooping Example: n1000v(config)# no ip igmp snooping n1000v(config)# |
すべての VLAN の実行コンフィギュレーションで IGMP スヌーピングをイネーブルまたはディセーブルにします。デフォルトはイネーブルです。以前にこの機能をディセーブルにした場合は、このコマンドでイネーブルにできます。 (注) ディセーブルの場合、すべての VLAN の IGMP スヌーピングがディセーブルです。 |
ステップ 3 |
show ip igmp snooping [vlan vlan-id] Example: n1000v(config)# show ip igmp snooping n1000v(config-vlan)# show ip igmp snooping Global IGMP Snooping Information: IGMP Snooping enabled IGMPv1/v2 Report Suppression disabled IGMPv3 Report Suppression disabled Link Local Groups Suppression enabled IGMP Snooping information for vlan 1 IGMP snooping enabled IGMP querier none Switch-querier disabled IGMPv3 Explicit tracking enabled IGMPv2 Fast leave disabled IGMPv1/v2 Report suppression disabled IGMPv3 Report suppression disabled Link Local Groups suppression enabled Router port detection using PIM Hellos, IGMP Queries Number of router-ports: 0 Number of groups: 0 Active ports: --More-- n1000v(config)# |
(任意)確認のためにコンフィギュレーションを表示します |
ステップ 4 |
copy running-config startup-config Example: n1000v# copy running-config startup-config |
(任意)リブート後に永続的な実行コンフィギュレーションを保存し、スタートアップ コンフィギュレーションにコピーして再起動します。 |
VLAN での IGMP スヌーピングの設定
VLAN の IGMP スヌーピングを設定するには、この手順に従います。
はじめる前に
この手順を開始する前に、次のことを確認または実行する必要があります。
• EXEC モードで CLI にログインしていること。
• デフォルトでは、IGMP スヌーピングは、VSM のすべての VLAN でイネーブルになっています。
(注) IGMP スヌーピングがグローバルにディセーブルである場合、VLAN の状態よりも優先されます。
• 表 5-2 に、VLAN の IGMP スヌーピングの設定に使用可能なパラメータのリストと説明を示します。
表 5-2 IGMP スヌーピング パラメータ
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IGMP スヌーピング |
VLAN 単位で IGMP スヌーピングをイネーブルにします。 (注) IGMP スヌーピングを VLAN 単位でオン/オフの切り替えをするには、IGMP スヌーピングをグローバルにイネーブルにしておく必要があります(デフォルト)。IGMP スヌーピングがグローバルにディセーブルの場合、VLAN 単位でイネーブルにはできません。 |
明示的な追跡 |
各ポートに接続されたそれぞれのホストから送信される IGMPv3 メンバーシップ レポートを、VLAN 別に追跡します。デフォルトはイネーブルです。 |
高速脱退 |
ソフトウェアが IGMP Leave レポートを受信した場合に、IGMP クエリー メッセージを送信することなく、グループ ステートを解除できるようにします。このパラメータは、IGMPv2 ホストに関して、各 VLAN ポート上のホストが 1 つしか存在しない場合に使用されます。デフォルトはディセーブルです。 |
最終メンバーのクエリー インターバル |
特定のマルチキャスト グループの受信を必要とするホストがネットワーク セグメントに残っていないことを確認するために、IGMP クエリーの送信後にソフトウェアが待機する間隔を設定します。いずれのホストからも応答がないまま、最終メンバーのクエリー インターバルの期限が切れると、対応する VLAN ポートからグループが削除されます。有効範囲は 1 ~ 25 秒です。デフォルトは 1 秒です。 |
リンクローカル グループ抑制 |
リンクローカル グループ抑制を設定します。 デフォルトはイネーブルです。 を入力して、リンクローカル抑制を VSM のすべてのインターフェイスでグローバルにイネーブルにすることもできます。 |
マルチキャスト ルータ |
マルチキャスト ルータへのスタティックな接続を設定します。ルータと接続するインターフェイスが、選択した VLAN に含まれている必要があります。 |
スタティック グループ |
VLAN のレイヤ 2 ポートをマルチキャスト グループのスタティック メンバーとして設定します。 |
手順の概要
1. config t
2. vlan vlan-id
3. ip igmp snooping
4. (任意)ip igmp snooping explicit-tracking
5. (任意)ip igmp snooping fast-leave
6. (任意)ip igmp snooping last-member-query-interval seconds
7. (任意)ip igmp snooping mrouter interface type if_id
8. (任意) ip igmp snooping static-group group-ip-addr interface type if_id
9. (任意) ip igmp snooping link-local-groups-suppression
10. show ip igmp snooping [ vlan vlan-id ]
11. copy running-config startup-config
手順の詳細
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ステップ 1 |
config t Example: n1000v# config t n1000v(config)# |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 2 |
vlan vlan-id Example: n1000v(config)# vlan 2 n1000v(config-vlan)# |
特定の VLAN のコンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
[no] ip igmp snooping Example: n1000v(config-vlan)# ip igmp snooping |
(任意)特定の VLAN の実行コンフィギュレーションで IGMP スヌーピングをイネーブルまたはディセーブルにします。 IGMP スヌーピングが VSM で有効になっている場合、IGMP スヌーピングは、VLAN でデフォルトでイネーブルです。 |
ステップ 4 |
[no] ip igmp snooping explicit-tracking Example: n1000v(config-vlan)# ip igmp snooping explicit-tracking n1000v(config-vlan)# |
(任意)実行コンフィギュレーションの VLAN 単位で、各ポートについて個々のホストから IGMPv3 メンバーシップ レポートを追跡します。 デフォルトはイネーブルです。 |
ステップ 5 |
[no] ip igmp snooping fast-leave Example: n1000v(config-vlan)# ip igmp snooping fast-leave n1000v(config-vlan)# |
(任意)実行コンフィギュレーションで、指定された VLAN の Fast-leave をイネーブルにします。 Fast-leave は、IGMPv2 プロトコルのホスト レポート抑制メカニズムのために明示的に追跡できない IGMPv2 ホストをサポートします。 高速脱退がイネーブルの場合、IGMP ソフトウェアは、各 VLAN ポートに接続されたホストが 1 つだけであると見なします。 デフォルトはディセーブルです。 |
ステップ 6 |
[no] ip igmp snooping last-member-query-interval seconds Example: n1000v(config-vlan)# ip igmp snooping last-member-query-interval 3 n1000v(config-vlan)# |
(任意)時間間隔を秒単位で設定します。この時間が経過しても、IGMP クエリー メッセージにホストが 1 つも応答しない場合は、関連する VLAN ポートからこのグループが削除されます。この間隔は、実行コンフィギュレーションに保存されます。 指定できる間隔は 1(デフォルト)~ 25 秒間です。 |
ステップ 7 |
[no] ip igmp snooping mrouter interface interface Example: n1000v(config-vlan)# ip igmp snooping mrouter interface ethernet 2/1 n1000v(config-vlan)# |
(任意)実行コンフィギュレーションのマルチキャスト ルータへの VLAN のスタティック接続を設定します。 ルータへのインターフェイスは、指定された VLAN 内になければなりません。 ethernet slot/port のように、インターフェイスをタイプおよび番号で指定できます。 vEth はルータ ポートとしてはサポートされていません。 |
ステップ 8 |
[no] ip igmp snooping static-group group-ip-addr interface type if_id Example: n1000v(config-vlan)# ip igmp snooping static-group 230.0.0.1 interface ethernet 2/1 n1000v(config-vlan)# |
(任意)実行コンフィギュレーションの VLAN レイヤ 2 ポートを、マルチキャスト グループのスタティック メンバとして設定します。 ethernet slot/port のように、インターフェイスをタイプおよび番号で指定できます。 |
ステップ 9 |
[no] ip igmp snooping link-local-groups-suppression Example: n1000v(config-vlan)# ip igmp snooping link-local-groups-suppression n1000v(config-vlan)# |
(任意) リンクローカル グループ抑制を設定します。デフォルトはイネーブルです。 (注) グローバル コンフィギュレーション モードでこのコマンドを入力することで、VSM 上のすべてのインターフェイスに、リンクローカル グループ抑制を適用できます。 |
ステップ 10 |
show ip igmp snooping [vlan vlan-id] Example: n1000v(config-vlan)# show ip igmp snooping vlan 2 IGMP Snooping information for vlan 5 IGMP snooping enabled IGMP querier none Switch-querier disabled IGMPv3 Explicit tracking enabled IGMPv2 Fast leave enabled IGMPv1/v2 Report suppression disabled IGMPv3 Report suppression disabled Link Local Groups suppression enabled Router port detection using PIM Hellos, IGMP Queries Number of router-ports: 0 Number of groups: 0 Active ports: n1000v(config)# |
(任意)確認のためにコンフィギュレーションを表示します |
ステップ 11 |
copy running-config startup-config Example: n1000v# copy running-config startup-config |
(任意)リブート後に永続的な実行コンフィギュレーションを保存し、スタートアップ コンフィギュレーションにコピーして再起動します。 |
IGMP スヌーピング設定の検証
IGMP スヌーピング コンフィギュレーション情報を表示するには、次のコマンドを使用します。
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show ip igmp snooping [ vlan vlan-id ] |
IGMP スヌーピング設定を VLAN 別に表示します。 |
show ip igmp snooping groups [ vlan vlan-id ] [ detail ] |
グループに関する IGMP スヌーピング情報を VLAN 別に表示します。 |
show ip igmp snooping querier [ vlan vlan-id ] |
IGMP スヌーピング クエリアを VLAN 別に表示します。 |
show ip igmp snooping mroute [ vlan vlan-id ] |
マルチキャスト ルータ ポートを VLAN 別に表示します。 |
show ip igmp snooping explicit-tracking [ vlan vlan-id ] |
IGMP スヌーピングの明示的な追跡情報を VLAN 別に表示します。 |
コマンドとその出力の詳細については、『 Cisco Nexus 1000V Command Reference, Release 4.2(1)SV1(5.1) 』を参照してください。
IGMP スヌーピングの設定の例
次に、VSM の IP IGMP スヌーピングをイネーブルにして、VLAN 2 に次のオプションの設定を加える例を示します。
• 各ポートの個々のホストからの IGMPv3 メンバーシップ レポートのトラッキング。
• イーサネット 2/1 を使用したマルチキャスト ルータへのスタティック接続。
• マルチキャスト グループ 230.0.0.1 のスタティック メンバーシップ。
vlan 2
ip igmp snooping explicit-tracking
ip igmp snooping mrouter interface ethernet 2/1
ip igmp snooping static-group 230.0.0.1 interface ethernet 2/1
show ip igmp snooping vlan 2
copy run start
その他の関連資料
IGMP スヌーピングの実装に関する詳細情報については、次の項目を参照してください。
• 「関連資料」
• 「標準」
関連資料
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ポート プロファイル |
『Cisco Nexus 1000V Port Profile Configuration Guide, Release 4.2(1)SV1(5.1) 』 |
インターフェイス |
『Cisco Nexus 1000V Interface Configuration Guide, Release 4.2(1)SV1(5.1) 』 |
すべてのコマンド構文、コマンド モード、コマンド履歴、デフォルト、使用上のガイドライン、例 |
『 Cisco Nexus 1000V Command Reference, Release 4.2(1)SV1(5.1) 』 |
標準
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この機能でサポートされる新規または改訂された標準規格はありません。また、この機能による既存の標準規格サポートの変更はありません。 |
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IGMP スヌーピングの機能履歴
ここでは、IGMP スヌーピング機能のリリース履歴を示します。
表 5-3
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リンクローカルの抑制 |
4.2(1)SV1(4) |
リンクローカル グループ抑制をイネーブルまたはディセーブルにする機能のサポートが追加されました。 |
レポート抑制 |
4.0(4)SV1(3) |
レポートの抑制機能がサポートされなくなりました。 |
IGMP スヌーピング |
4.0(4)SV1(1) |
この機能が導入されました。 |