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この章では、IPv4 ネットワークの Cisco NX-OS スイッチに対するインターネット グループ管理プロトコル(IGMP)の設定方法を説明します。
• 「次の作業」
IGMP は、ホストが特定のグループにマルチキャスト データを要求するために使用する IPv4 プロトコルです。ソフトウェアは、IGMP を介して取得した情報を使用し、マルチキャスト グループまたはチャネル メンバーシップのリストをインターフェイス単位で保持します。これらの IGMP パケットを受信したシステムは、既知の受信者が含まれるネットワーク セグメントに、要求されたグループまたはチャネルに関する受信データをマルチキャスト送信します。
IGMP プロセスはデフォルトで実行されています。インターフェイスでは IGMP を手動でイネーブルにできません。IGMP は、インターフェイスで次のいずれかの設定作業を行うと、自動的にイネーブルになります。
• Protocol-Independent Multicast(PIM)のイネーブル化
• ローカル マルチキャスト グループの静的なバインディング
スイッチでは、IGMPv1 の他に、IGMPv2 と IGMPv3 のレポート受信もサポートされています。
デフォルトでは、ソフトウェアが IGMP プロセスを起動する際に、IGMPv2 がイネーブルになります。必要に応じて、各インターフェイスでは IGMPv3 をイネーブルにできます。
IGMPv3 には、次に示す IGMPv2 からの重要な変更点があります。
• 次の機能を提供し、各受信者から送信元までの最短パス ツリーを構築可能な Source-Specific Multicast(SSM)をサポートします。
– IGMPv2 ではグループについてのみ保持できたマルチキャスト ステートを、グループおよび送信元について保持可能
• ホストによるレポート抑制が行われなくなり、IGMP クエリー メッセージを受信するたびに IGMP メンバーシップ レポートが送信されるようになりました。
IGMPv2 の詳細については、 RFC 2236 を参照してください。
IGMPv3 の詳細については、 RFC 3376 を参照してください。
図 2-1 に、ルータが IGMP を使用し、マルチキャスト ホストを検出する基本的なプロセスを示します。ホスト 1、2、および 3 は要求外の IGMP メンバーシップ レポート メッセージを送信して、グループまたはチャネルに関するマルチキャスト データの受信を開始します。
図 2-1 IGMPv1 および IGMPv2 クエリー応答プロセス
図 2-1 のルータ A(サブネットの代表 IGMP クエリア)は、すべてのホストが含まれる 224.0.0.1 ホスト マルチキャスト グループに定期的にクエリー メッセージを送信して、マルチキャスト データを要求しているホストを検出します。グループ メンバーシップ タイムアウト値を設定し、指定したタイムアウト値が経過すると、ルータはサブネット上にグループのメンバーまたは送信元が存在しないと見なします。IGMP パラメータの設定方法については、「IGMP インターフェイス パラメータの設定」を参照してください。
IP アドレスが最下位のルータが、サブネットの IGMP クエリアとして選出されます。ルータは、自身よりも下位の IP アドレスを持つルータからクエリー メッセージを継続的に受信している間、クエリア タイムアウト値をカウントするタイマーをリセットします。ルータのクエリア タイマーが期限切れになると、そのルータは代表クエリアになります。そのあとで、このルータが、自身よりも下位の IP アドレスを持つルータからのホスト クエリー メッセージを受信すると、ルータは代表クエリアとしての役割をドロップしてクエリア タイマーを再度設定します。
図 2-1 では、ホスト 1 からのメンバーシップ レポートの送出が止められており、最初にホスト 2 からグループ 224.1.1.1 に関するメンバーシップ レポートが送信されます。ホスト 1 はホスト 2 からレポートを受信します。ルータに送信する必要があるメンバーシップ レポートは、グループにつき 1 つだけであるため、その他のホストではレポートの送出が止められ、ネットワーク トラフィックが軽減されます。レポートの同時送信を防ぐため、各ホストではランダムな時間だけレポート送信が保留されます。クエリーの最大応答時間パラメータを設定すると、ホストのランダムな応答間隔を制御できます。
(注) IGMPv1 および IGMPv2 メンバーシップ レポートが抑制されるのは、同じポートに複数のホストが接続されている場合だけです。
図 2-2 のルータ A は、IGMPv3 グループ/ソース固有のクエリーを LAN に送信します。ホスト 2 および 3 は、アドバタイズされたグループおよび送信元からデータを受信することを示すメンバーシップ レポートを送信して、そのクエリーに応答します。この IGMPv3 機能では、SSM がサポートされます。IGMPv1 ホストおよび IGMPv2 ホストが SSM をサポートするよう、SSM を変換する方法については、「IGMP SSM 変換の設定」を参照してください。
(注) IGMPv3 ホストでは、IGMP メンバーシップ レポートの抑制が行われません。
代表クエリアから送信されるメッセージの存続可能時間(TTL)値は 1 です。つまり、サブネット上の直接接続されたルータからは、メッセージは転送されません。IGMP の起動時に送信されるクエリー メッセージの頻度および回数を個別に設定したり、スタートアップ クエリー インターバルを短く設定したりすることで、グループ ステートの確立時間を最小限に抑えることができます。通常は不要ですが、起動後のクエリー インターバルをチューニングすることで、ホスト グループ メンバーシップ メッセージへの応答性と、ネットワーク上のトラフィック量のバランスを調整できます。
マルチキャスト ホストがグループを脱退する場合、IGMPv2 以上を実行するホストでは、IGMP Leave メッセージを送信します。このホストがグループを脱退する最後のホストであるかどうかを確認するために、IGMP クエリー メッセージが送信されます。これにより、最終メンバーのクエリー応答インターバルと呼ばれる、ユーザが設定可能なタイマーが起動されます。タイマーが切れる前にレポートが受信されない場合は、ソフトウェアによってグループ ステートが解除されます。ルータはグループ ステートが解除されないかぎり、このグループにマルチキャスト トラフィックを送信し続けます。
輻輳ネットワークでのパケット損失を緩和するには、ロバストネス値を設定します。ロバストネス値は、IGMP ソフトウェアがメッセージ送信回数を確認するために使用されます。
224.0.0.0/24 内に含まれるリンク ローカル アドレスは、Internet Assigned Numbers Authority(IANA; インターネット割り当て番号局)によって予約されています。ローカル ネットワーク セグメント上のネットワーク プロトコルでは、これらのアドレスが使用されます。これらのアドレスは TTL が 1 であるため、ルータからは転送されません。IGMP プロセスを実行すると、デフォルトでは、非リンク ローカル アドレスにだけメンバーシップ レポートが送信されます。ただし、リンク ローカル アドレスにレポートが送信されるよう、ソフトウェアの設定を変更できます。
IGMP パラメータの設定方法については、「IGMP インターフェイス パラメータの設定」を参照してください。
Cisco NX-OS は、Virtual Routing and Forwarding(VRF; 仮想ルーティングおよびフォワーディング)をサポートします。また、複数の VRF インスタンスを定義できます。IGMP を使用して設定された VRF は、次の IGMP 機能をサポートします。
• IGMP の、インターフェイスごとのイネーブル化またはディセーブル化
• IGMPv1、IGMPv2、および IGMPv3 によりルータ側のサポートを提供
• IGMPv2 および IGMPv3 によりホスト側のサポートを提供
• リンク ローカル マルチキャスト グループに対する IGMP レポートのサポート
• IGMP SSM 変換により IGMPv2 グループをソースのセットにマッピング
• Multicast Trace-route(Mtrace)リクエストを処理する Mtrace サーバ機能のサポート
VRF の設定の詳細については、『 Cisco Nexus 5500 Series NX-OS Unicast Routing Configuration Guide, Release 6.0 』を参照してください。
表 2-1 に、IGMP パラメータのデフォルト設定を示します。
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IGMP グローバル パラメータおよびインターフェイス パラメータを設定すると、IGMP プロセスの動作を変更できます。
(注) Cisco IOS の CLI に慣れている場合、この機能の Cisco NX-OS コマンドは従来の Cisco IOS コマンドと異なる点があるため注意が必要です。
表 2-2 に、設定可能なオプションの IGMP インターフェイス パラメータを示します。
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インターフェイスでイネーブルにする IGMP のバージョン。有効な IGMP バージョンは 2 または 3 です。デフォルトは 2 です。 |
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インターフェイスに静的にバインドされるマルチキャスト グループ。(*, G) というステートでインターフェイスの加入先グループを設定するか、グループに加入する送信元 IP を、(S, G) というステートで指定します。 match ip multicast コマンドで、使用するグループ プレフィックス、グループ範囲、および送信元プレフィックスを示すルートマップ ポリシー名を指定できます。 (注) (S, G) ステートで設定しても、送信元ツリーが構築されるのは IGMPv3 がイネーブルな場合だけです。SSM 変換の詳細については、「IGMP SSM 変換の設定」を参照してください。ネットワーク上の全マルチキャスト対応ルータを含むマルチキャスト グループを設定すると、このグループに ping 要求を送信することで、すべてのルータから応答を受け取ることができます。 |
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発信インターフェイスに静的にバインドされるマルチキャスト グループ。(*, G) というステートで発信インターフェイスの加入先グループを設定するか、グループに加入する送信元 IP を、(S, G) というステートで指定します。 match ip multicast コマンドで、使用するグループ プレフィックス、グループ範囲、および送信元プレフィックスを示すルートマップ ポリシー名を指定できます。 (注) (S, G) ステートで設定しても、送信元ツリーが構築されるのは IGMPv3 がイネーブルな場合だけです。SSM 変換の詳細については、「IGMP SSM 変換の設定」を参照してください。 |
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スタートアップ クエリー インターバル。デフォルトでは、ソフトウェアができるだけ迅速にグループ ステートを確立できるように、このインターバルはクエリー インターバルより短く設定されています。有効範囲は 1 ~ 18,000 秒です。デフォルト値は 31 秒です。 |
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スタートアップ クエリー インターバル中に送信される起動時のクエリー数。有効範囲は 1 ~ 10 です。デフォルトは 2 です。 |
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輻輳ネットワークでのパケット損失を許容範囲内に抑えるために使用される、調整可能なロバストネス変数。ロバストネス変数を大きくすることで、パケットの再送信回数を増やすことができます。有効範囲は 1 ~ 7 です。デフォルトは 2 です。 |
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前クエリアがクエリーを停止してから、自身がクエリアとして処理を引き継ぐまで、ソフトウェアが待機する秒数。有効範囲は 1 ~ 65,535 秒です。デフォルト値は 255 秒です。 |
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IGMP クエリーでアドバタイズされる最大応答時間。大きな値を設定すると、ホストの応答時間が延長されるため、ネットワークの IGMP メッセージのバースト性を調整できます。この値は、クエリー インターバルよりも短く設定する必要があります。有効範囲は 1 ~ 25 秒です。デフォルトは 10 秒です。 |
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IGMP ホスト クエリー メッセージの送信頻度。大きな値を設定すると、ソフトウェアによる IGMP クエリーの送信頻度が低くなるため、ネットワーク上の IGMP メッセージ数を調整できます。有効範囲は 1 ~ 18,000 秒です。デフォルト値は 125 秒です。 |
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サブネット上の既知のアクティブ ホストから最後にホスト Leave メッセージを受信したあと、ソフトウェアが IGMP クエリーへの応答を送信するインターバル。このインターバル中に応答が受信されない場合、グループ ステートは解除されます。この値を使用すると、サブネット上でソフトウェアがトラフィックの送信を停止するタイミングを調整できます。この値を小さく設定すると、グループの最終メンバーまたは送信元が脱退したことを、より短時間で検出できます。有効範囲は 1 ~ 25 秒です。デフォルトは 1 秒です。 |
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サブネット上の既知のアクティブ ホストから最後にホスト Leave メッセージを受信したあと、最終メンバーのクエリー応答インターバル中に、ソフトウェアが IGMP クエリーを送信する回数。有効範囲は 1 ~ 5 です。デフォルトは 2 です。 |
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ルータによって、ネットワーク上にグループのメンバーまたは送信元が存在しないと見なされるまでのグループ メンバーシップ インターバル。有効範囲は 3 ~ 65,535 秒です。デフォルト値は 260 秒です。 |
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224.0.0.0/24 内のグループにレポートを送信できるようにするためのオプション。リンク ローカル アドレスは、ローカル ネットワーク プロトコルだけで使用されます。非リンク ローカル グループには、常にレポートが送信されます。デフォルトはディセーブルです。 |
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ルートマップ ポリシーに基づく、IGMP レポートのアクセス ポリシー1。 |
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インターフェイスが接続されたサブネット上のホストについて、加入可能なマルチキャスト グループを制御するためのルートマップ ポリシー 1 を設定するオプション。 |
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スイッチからグループ固有のクエリーが送信されないため、所定の IGMP インターフェイスで IGMPv2 グループ メンバーシップの脱退のための待ち時間を最小限にできるオプション。即時脱退をイネーブルにすると、スイッチではグループに関する Leave メッセージの受信後、ただちにマルチキャスト ルーティング テーブルからグループ エントリが削除されます。デフォルトはディセーブルです。 (注) このコマンドは、所定のグループに対するインターフェイスの背後に 1 つの受信者しか存在しない場合に使用します。 |
1.ルートマップ ポリシーの設定方法については、『Cisco Nexus 5500 Series NX-OS Unicast Routing Configuration Guide, Release 6.0』を参照してください。 |
マルチキャスト ルート マップの設定方法については、「RP 情報配信を制御するルート マップの設定」を参照してください。
4. ip igmp version value
ip igmp join-group { group [ source source ] | route-map policy-name }
ip igmp static-oif { group [ source source ] | route-map policy-name }
ip igmp startup-query-interval seconds
ip igmp startup-query-count count
ip igmp robustness-variable value
ip igmp querier-timeout seconds
ip igmp query-timeout seconds
ip igmp query-max-response-time seconds
ip igmp query-interval interval
ip igmp last-member-query-response-time seconds
ip igmp last-member-query-count count
ip igmp group-timeout seconds
ip igmp report-link-local-groups
ip igmp report-policy policy
ip igmp access-group policy
ip igmp immediate-leave
5. (任意) show ip igmp interface [ interface ] [ vrf vrf-name | all ] [ brief ]
SSM 変換を設定すると、IGMPv1 または IGMPv2 によるメンバーシップ レポートを受信したルータで、SSM がサポートされるようになります。メンバーシップ レポートでグループおよび送信元アドレスを指定する機能を備えているのは、IGMPv3 だけです。グループ プレフィックスのデフォルト範囲は、232.0.0.0/8 です。PIM SSM 範囲の変更方法については、「SSM の設定」を参照してください。
表 2-3 に、SSM 変換の例を示します。
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表 2-4 に、IGMP メンバーシップ レポートに SSM 変換を適用した場合に、IGMP プロセスによって作成される MRIB ルートを示します。複数の変換を行う場合は、各変換内容に対して (S, G) ステートが作成されます。
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(注) これは、一部の Cisco IOS ソフトウェアに組み込まれている SSM マッピングと類似した機能です。
2. ip igmp ssm-translate group-prefix source-addr
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ルータが IGMPv3 メンバーシップ レポートを受信したときと同様に、(S,G) ステートが作成されるよう、IGMP プロセスによる IGMPv1 または IGMPv2 メンバーシップ レポートの変換を設定します。 |
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2. ip igmp enforce-router-alert
no ip igmp enforce-router-alert
IGMP の設定情報を表示するには、次の作業のいずれかを行います。
これらのコマンド出力のフィールドの詳細については、『 Cisco Nexus 5500 Series Command Reference 』を参照してください。
次に、すべてのマルチキャスト レポート(加入)を受け付けるルート マップを設定する例を示します。
次に、すべてのマルチキャスト レポート(加入)を拒否するルート マップを設定する例を示します。
表 2-5 は、この機能のリリースの履歴です。
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