PRP を介した PTP
高精度時間プロトコル(PTP)は、並列冗長プロトコル(PRP)を介して Cisco Catalyst IE9300 高耐久性シリーズ スイッチ で動作できます。この機能は、Cisco IOS XE Cupertino 17.9.1 以降の IE-9320-26S2C-A および IE-9320-26S2C-E スイッチでサポートされています。これは、Cisco IOS XE Dublin 17.12.1 以降の IE-9320-22S2C4X-A および IE-9320-22S2C4X-E スイッチでサポートされています。
PRP は、冗長性により高可用性を PTP に提供します。PTP の説明については、Cisco.com の『Precision Time Protocol Configuration Guide, Cisco Catalyst IE9300 Rugged Series Switches』を参照してください。
2 つの独立した経路を介した並列伝送による冗長性を実現する PRP 方式は、他の通信とは異なり、PTP では機能しません。ひとつのフレームに生じる遅延は 2 つの LAN で同じではなく、一部のフレームは LAN を通過する際にトランスペアレントクロック(TC)で変更されます。デュアル接続ノード(DAN)は、送信元が同じであっても、両方のポートから同じ PTP メッセージを受信しません。具体的には次のとおりです。
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Sync/Follow_Up メッセージは、補正フィールドを調整するために TC によって変更されます。
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LAN に存在する境界クロック(BC)は PRP に対応しておらず、冗長制御トレーラ(RCT)が付加されていない独自のアナウンスおよび同期フレームを生成します。
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2 ステップのクロックごとに Follow_Up フレームが生成され、RCT は伝送されません。
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TC は PRP に対応しておらず、ペイロードの後に続くメッセージ部分である RCT を転送する義務を負いません。
LAN-A および LAN-B を介した PTP をサポートする前は、PTP トラフィックは上記の PTP および並列伝送の問題を回避するために、LAN-A でのみ許可されていました。ただし、LAN-A が停止すると、PTP 同期は失われていました。基礎となる PRP インフラストラクチャによって提供される冗長性の利点を PTP で活用できるようにするため、PRP ネットワーク上の PTP パケットは他のタイプのトラフィックとは異なる方法で処理されます。
PRP を介した PTP 機能の実装は、IEC 62439-3:2016『Industrial communication networks - High availability automation networks - Part 3: Parallel Redundancy Protocol (PRP) and High-availability Seamless Redundancy (HSR)』に詳細が示されている PRP を介した PTP の動作に基づきます。このアプローチでは、PTP パケットに RCT を付加せず、PTP パケットの PRP 重複/廃棄ロジックをバイパスすることで、上記の問題を解決します。
PRP を介した PTP のパケットフロー
次の図は、PRP を介した PTP の動作を示しています。
この図では、VDAN 1 がグランドマスタークロック(GMC)です。デュアル接続デバイスは、両方の PRP ポートを介して PTP 同期情報を受信します。LAN-A ポートと LAN-B ポートは、GMC と同期された異なる仮想クロックを使用します。ただし、ローカルクロック(図では VDAN 2)を同期するために使用されるポート(図では時刻受信者)は 1 つだけです。LAN-A ポートが時刻受信者の場合、LAN-A ポートの仮想クロックが VDAN-2 の同期に使用されます。もう一方の PRP ポートである LAN-B は、PASSIVE と呼ばれます。LAN-B ポートの仮想クロックは引き続き同じ GMC に同期されますが、VDAN 2 の同期には使用されません。
LAN-A がダウンすると、LAN-B が時刻受信者の役割を引き継ぎ、RedBox 2 のローカルクロック同期を継続するために使用されます。RedBox 2 に接続された VDAN 2 は、以前と同様に RedBox 2 から PTP 同期の受信を継続します。同様に、図に示されているすべての DAN、VDAN、および RedBox も引き続き同期されます。SAN は冗長性を備えていません。この例では、LAN-A がダウンすると、SAN 1 は同期を失います。
この変更により、VDAN 2 は、LAN-A ポートの仮想クロックと LAN-B ポートの仮想クロックの間のオフセットが原因で、そのクロックに瞬間的な同期のずれが発生する場合があります。両方のクロックが同じ GMC に同期されているため、同期のずれはせいぜい数マイクロ秒です。このずれは、LAN-A ポートが時刻受信者に戻り、LAN-B ポートが PASSIVE になるときにも発生します。
(注) |
シスコは、従来のマスター/スレーブの命名法から移行しています。このドキュメントでは、代わりにグランドマスタークロック(GMC)または時刻源と時刻受信者という用語が使用されます。製品ソフトウェアのユーザーインターフェイスにハードコードされている言語、RFP のドキュメントに基づいて使用されている言語、または参照されているサードパーティ製品で使用されている言語によりドキュメントに例外が存在する場合があります。 |
サポートされる GMC の場所
GMC は、PRP を介した PTP のトポロジに次のいずれかのように配置できます。
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LAN A と LAN B の両方に接続されている RedBox(たとえば、前の図の RedBox 1)。
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VDAN(たとえば、前の図の VDAN 1)。
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DAN(たとえば、前の図の DAN)。
LAN-A または LAN-B 内のデバイスだけしか GMC と同期されないため、GMC は SAN として LAN-A または LAN-B に接続することはできません。
設定
PRP を介した PTP では、通常 PTP と PRP を個別に設定する方法以上の設定は必要ありません。また、この機能用に追加されたユーザーインターフェイスはありません。違いは、PRP を介した PTP 機能が登場する以前は、PTP が LAN-A 上でのみ機能していたことです。これが現在は両方の LAN で機能するようになりました。PRP を介した PTP を実装する前に、「注意事項と制約事項」を参照してください。
ネットワークに PRP を介した PTP を実装するためのワークフローの概要は次のとおりです。
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PRP RedBox の場所を確認するには、このガイドの「RedBox のタイプ」セクションを参照してください。PTP のモードとプロファイルに関する説明については、Cisco.com の『Precision Time Protocol Configuration Guide, Cisco Catalyst IE9300 Rugged Series Switches』を参照してください。
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ステップ 1 で決定した PTP プロファイルを基に、Cisco.com の『Precision Time Protocol Configuration Guide, Cisco Catalyst IE9300 Rugged Series Switches』の説明に従って PTP を設定します。
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「PRP チャネルとグループの作成」の説明に従って、PRP を設定します。
(注) |
IE-9320-26S2C-A、IE-9320-26S2C-E、IE-9320-22S2C4X-A、および IE-9320-22S2C4X-E の各スイッチには、次の 4 つの PRP 対応ポートがあります。
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