Cisco SRE-V の概要
Cisco SRE-V は、コンピューティング、ネットワーキング、ストレージ アクセス、仮想化、および統一管理を 1 つのシステムに統合する、ブランチオフィス向けのインフラストラクチャ プラットフォームです。これにより、VMware vSphere Hypervisor TM は Cisco Services Ready Engine(SRE)サービス モジュールにプロビジョニングされ、Microsoft Windows Server オペレーティング システムを実行する 1 つまたは複数の仮想マシンをホストできるようになります。システム全体が、Generation 2 of the Cisco Integrated Services Router(ISR G2; 第 2 世代のサービス統合型ルータ)に統合されます。
図 1-1 に、Cisco SRE-V システムの配置例を示します。
図 1-1 Cisco SRE-V システムの配置例
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クライアント デバイス |
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Cisco SRE-V でホストされる仮想マシン |
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Cisco SRE-V 管理コンソール |
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エンタープライズ ストレージ デバイス |
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Cisco SRE サービス モジュールと Cisco SRE-V が搭載された Cisco ISR G2 ルータ |
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Cisco SRE-V に関する用語
次に、このガイドで使用する Cisco SRE-V に関する用語を示します。
• Cisco SRE サービス モジュール:Cisco ISR G2 でホストされる Intel x86 アーキテクチャ ブレード サーバ。Cisco SRE サービス モジュールは、VMware vSphere Hypervisor TM を実行するための専用の処理、ネットワーク、ストレージ、およびメモリを提供します。
• VMware vSphere Hypervisor TM :仮想マシンをホストするためのプラットフォームを提供する、VMware のベアメタル ハイパーバイザー。
• コンソール マネージャ:シスコに固有の機能を利用するために VMware vSphere Hypervisor TM へのコンソール アクセスを可能にする、Cisco Linux が稼動する埋め込み型の仮想マシン。
• Microsoft Windows 仮想マシン:Microsoft Windows Server オペレーティング システムを実行する、ユーザが作成した仮想マシン。
Cisco SRE-V に関する用語の詳細については、図 1-2 を参照してください。
図 1-2 Cisco SRE-V に関する用語
Cisco SRE-V と VMware vSphere Hypervisor の相違点
Cisco SRE-V 製品は、VMware vSphere Hypervisor TM と次の点で異なります。
• Cisco SRE-V は、VMware vSphere Hypervisor TM が Cisco SRE サービス モジュールにプロビジョニングされ、Cisco ISR G2 に統合されることを可能にします。
• VMware vSphere Hypervisor TM IP アドレスの設定は、Cisco ISR G2 を通じて行います。
• ユーザ管理作業の設定は、VMware vSphere Client ではなく、Cisco SRE-V CLI を使用して行います。
• Cisco SRE-V のライセンス管理は、Cisco Software Licensing(CSL)を通じて行います。
• Cisco SRE-V のソフトウェア アップグレード パッケージは、Cisco.com から入手します。ソフトウェア アップグレードは、Cisco SRE-V CLI を使用して行います。
• ファームウェアの設定、詳細設定、および PCI PaaThru 設定などのシステム操作はディセーブルになります。
• vCenter サーバ アクセスは、Cisco SRE-V ではサポートされません。
ハードウェア要件
Cisco SRE-V ソフトウェアは、Cisco SRE-V のハードウェア コンポーネントである Cisco SRE サービス モジュールで動作します。Cisco SRE サービス モジュールは、Cisco 2900 シリーズまたは 3900 シリーズ ISR G2 のいずれかに装着できます。
Cisco SRE-V ソフトウェアは、次のサービス モジュールでサポートされます。
• Cisco SRE 700 サービス モジュール
• Cisco SRE 900 サービス モジュール
表 1-1 に、サポートされる各サービス モジュールのハードウェア情報を示します。
表 1-1 Cisco SRE サービス モジュール ハードウェア一覧
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フォーム ファクタ |
SM |
SM |
CPU |
Intel Core 2 Duo(1 コア稼動)、1.86 GHz |
Intel Core 2 Duo(2 コア稼動)、2 × 1.86 GHz |
DRAM |
4 GB |
4 GB または 8 GB |
eUSB フラッシュ メモリ |
2 GB 内部 USB フラッシュメモリ モジュール |
2 GB 内部 USB フラッシュメモリ モジュール |
ハードディスク |
1 × 500 GB |
2 × 500 GB(1 TB) |
内部ネットワーク インターフェイス |
1 レイヤ 2 ギガビット イーサネット インターフェイス 1 レイヤ 3 ギガビット イーサネット インターフェイス |
1 レイヤ 2 ギガビット イーサネット インターフェイス 1 レイヤ 3 ギガビット イーサネット インターフェイス |
外部ネットワーク インターフェイス |
1 USB コネクタ 1 RJ-45 ギガビット イーサネット コネクタ |
1 USB コネクタ 1 RJ-45 ギガビット イーサネット コネクタ |
ルータ プラットフォーム |
2911、2921、2951、3925、3925e、3945、3945e |
2911、2921、2951、3925、3925e、3945、3945e |
表 1-2 に、Cisco ISR G2 でサポートされている Cisco EtherSwitch Enhanced High-Speed WAN Interface Card(EHWIC)および Cisco EtherSwitch サービス モジュールを示します。
表 1-2 サポートされている Cisco EtherSwitch EHWIC および Cisco EtherSwitch サービス モジュール
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Cisco EtherSwitch サービス モジュール
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EHWIC-D-8ESG-P=、EHWIC-D-8ESG-P、EHWIC-D-8ESG=、EHWIC-D-8ESG、EHWIC-4ESG-P=、EHWIC-4ESG-P、EHWIC-4ESG=、EHWIC-4ESG、SM-ES3-16-P、および SM-ES2-16-P |
SM-D-ES3G-48-P、SM-D-ES3-48-P、SM-D-ES2-48、SM-ES3G-24-P、SM-ES3-24-P、SM-ES2-24-P、SM-ES2-24、SM-ES3G-16-P、SM-ES3-16-P、および SM-ES2-16-P |
ソフトウェア要件
ここでは、サードパーティ ソフトウェア、Cisco SRE-V のオプション、および機能ライセンスの情報を示します。
サードパーティ ソフトウェア
Cisco SRE-V では、次のサードパーティ ソフトウェアを使用します。
• VMware vSphere Hypervisor TM :仮想化用。
• Microsoft Windows Server:オペレーティング システム用。
次の Microsoft Windows Server が認定されています。
– Windows Server 2003 SP2 Standard 32 ビットおよび 64 ビット
– Windows Server 2003 SP2 Enterprise 32 ビットおよび 64 ビット
– Windows Server 2008 R2 Standard 64 ビット
– Windows Server 2008 R2 Enterprise 64 ビット
Cisco SRE-V のオプション
Cisco SRE-V は、次の 3 つのオプションで使用できます。
• ハードウェアのみ(SM-SRE-700-K9 または SM-SRE-900-K9):ソフトウェアがインストールされていない Cisco SRE サービス モジュール。図 1-3 のオプション 1 を参照してください。
このオプションを購入した場合は、Cisco SRE-V ソフトウェアのほか、ご自身の Microsoft Windows Server 2003 または Microsoft Windows Server 2008 ソフトウェアをダウンロードする必要があります。
• ハードウェアと仮想化ソフトウェア(SM-SRE-700-K9 または SM-SRE-900-K9 + SW-SM-SRE-V-1.0-K9):Cisco SRE-V ソフトウェアがプリインストールされた Cisco SRE サービス モジュール。図 1-3 のオプション 2 を参照してください。
ご自身の使用する Microsoft Windows Server 2003 または Microsoft Windows Server 2008 ソフトウェアが揃っている場合は、このオプションを購入してください。このオプションを購入すると、Cisco SRE-V のライセンスが事前にアクティブ化されています。
• ハードウェア、仮想化ソフトウェア、および Microsoft Windows ソフトウェア(SM-SRE-700-K9 または SM-SRE-900-K9 + SW-SM-SRE-V-1.0 + MSWS-08R2ST-X86-K9):Cisco SRE-V および Microsoft Windows Server 2008 R2 Standard Edition 64 ビット仮想マシンがプリインストールされた Cisco SRE サービス モジュール。図 1-3 のオプション 3 を参照してください。
このオプションを購入すると、Microsoft Windows Server 2008 R2 ライセンスおよび Cisco SRE-V ライセンスの両方が事前にアクティブ化されています
図 1-3 に、Cisco SRE-V のオプションを示します。
図 1-3 Cisco SRE-V のオプション
機能ライセンス
表 1-3 に、Cisco SRE-V で使用できる機能ライセンスを示します。
表 1-3 ライセンスの SKU
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FL-SRE-V-HOST |
ソフトウェアと一緒に購入する、事前にアクティブ化された VMware vSphere Hypervisor Host の書面ライセンス。 |
FL-SRE-V-HOST= |
ソフトウェアとは別に購入する VMware vSphere Hypervisor Host の書面ライセンス(予備)。このライセンスは、アクティブ化する必要があります。 |
L-FL-SRE-V-HOST= |
ソフトウェアとは別に購入する VMware vSphere Hypervisor Host の電子ライセンス(予備)。このライセンスは、アクティブ化する必要があります。 |
Cisco SRE-V ソフトウェア ライセンスについては、 第 5 章「Cisco SRE-V ソフトウェア ライセンスの管理」 を参照してください。
Cisco SRE-V の管理
Cisco SRE-V では、複数の管理インターフェイスを使用します。
Cisco IOS CLI
Cisco IOS CLI を使用して、ホスト ルータと Cisco SRE サービス モジュール インターフェイスを設定します。Cisco SRE-V は、Cisco IOS ソフトウェアを実行するホスト Cisco ルータに装着された Cisco SRE サービス モジュール 上に存在します。サポートされている Cisco IOS ソフトウェアについては、「ルータ、Cisco SRE サービス モジュール、および Cisco IOS ソフトウェア バージョンの互換性の確認」を参照してください。
Cisco SRE-V CLI
Cisco SRE-V CLI を使用して、ユーザを設定し、それらのユーザに仮想マシンをホストおよび管理するための権限を割り当てます。また、Cisco SRE-V CLI を使用して、ライセンスとソフトウェア アップグレードを管理することもできます。Cisco SRE-V は、ルータ上の Cisco IOS 設定からは独立した独自のスタートアップ設定とランタイム設定、および独自の CLI を持つ仮想マシン管理エンジンを備えています。
(注) Cisco SRE-V CLI の代わりに、Cisco License Manager を使用してライセンス関連のワーク フローを自動化できます。「Cisco License Manager」を参照してください。
Cisco License Manager
Cisco License Manager を使用して、ライセンス関連のすべてのワーク フローを自動化します。Cisco License Manager は、Cisco.com でライセンス バックエンド履行システムと安全に通信し、取得したライセンスをネットワーク全体の管理対象デバイスに展開します。Cisco License Manager は、無料で提供されており、Cisco.com の登録ユーザは http://www.cisco.com/go/clm からダウンロードできます。
VMware vSphere Client
VMware vSphere Client を使用して、仮想マシンを管理します。
基本的なワークフロー
1. Cisco SRE サービス モジュールを ISR G2 に取り付けします。
2. Cisco IOS コマンドを使用して、Cisco SRE サービス モジュール インターフェイスを設定します。
3. ブランク Cisco SRE サービス モジュールを購入した場合は、Cisco SRE-V ソフトウェアをインストールしてから、ソフトウェア ライセンスをアクティブ化します。
4. Cisco SRE-V コマンドを使用してユーザとロールを作成し、それらのユーザに権限を割り当てます。
5. VMware vSphere Hypervisor TM デフォルト ゲートウェイを設定します。
6. vSphere Client をインストールし、vSphere Client GUI を使用して仮想マシンを作成および管理します。
7. vSphere Client を使用して、追加の仮想マシンを作成します。
Cisco SRE-V のオプションと関連作業について
実行する必要がある作業は、購入した Cisco SRE-V ソフトウェア オプションによって異なります。 表 1-4 を参照してください。
表 1-4 Cisco SRE-V のオプションと作業
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購入した SRE サービス モジュール オプション
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1 |
ハードウェアのみ(SM-SRE-700-K9 または SM-SRE-900-K9):Cisco SRE サービス モジュール。図 1-3 を参照してください。 (このオプションには、Cisco SRE-V または Microsoft Windows ソフトウェアのないブランク Cisco SRE サービス モジュールが含まれます。 このオプションを購入した場合は、Cisco SRE-V ソフトウェアのほか、ご自身の Microsoft Windows Server 2003 または Microsoft Windows Server 2008 ソフトウェアをダウンロードする必要があります) |
1. Cisco SRE サービス モジュールをルータ内に取り付けます。 第 2 章「ルータ内への Cisco SRE サービス モジュールの取り付け」 を参照してください。 2. Cisco SRE サービス モジュール インターフェイスを設定します。 第 3 章「Cisco SRE サービス モジュール インターフェイスの設定」 を参照してください。 3. Cisco SRE サービス モジュールに Cisco SRE-V ソフトウェアをダウンロードし、インストールします。 第 4 章「Cisco SRE-V ソフトウェアのインストールと管理」 を参照してください。 4. Cisco SRE-V ソフトウェア ライセンスをアクティブ化します。 第 5 章「Cisco SRE-V ソフトウェア ライセンスの管理」 を参照してください。 5. (任意)Cisco SRE-V コマンドを使用してユーザとロールを作成し、それらのユーザに権限を割り当てます。 第 6 章「ユーザ、ロール、および権限の設定」 を参照してください。 6. VMware vSphere Hypervisor TM デフォルト ゲートウェイを設定します。「VMware vSphere Hypervisor デフォルト ゲートウェイの設定」を参照してください。 7. 仮想マシンを管理するための vSphere Client をインストールします。 第 7 章「仮想マシンの管理」 を参照してください。 8. ご自身の Microsoft Windows Server 2003 または Microsoft Windows Server 2008 ソフトウェアをインストールしてから、ソフトウェア ライセンスをアクティブ化します。 (注) Cisco.com から Microsoft Windows Server をダウンロードすることはできません。このソフトウェアは、モジュールとの同時購入のみになります。 9. VMware ツールをインストールします。「VMware ツールのインストール」を参照してください。 |
2 |
ハードウェアと仮想化ソフトウェア(SM-SRE-700-K9 または SM-SRE-900-K9 + SW-SM-SRE-V-1.0):Cisco SRE-V ソフトウェアがプリインストールされた Cisco SRE サービス モジュール。図 1-3 を参照してください。 (このオプションには、Microsoft Windows Server ソフトウェアは含まれません。 ご自身の使用する Microsoft Windows Server 2003 または Microsoft Windows Server 2008 が揃っている場合は、このオプションを購入してください。 このオプションを購入すると、Cisco SRE-V のライセンスが事前にアクティブ化されます) |
1. Cisco SRE サービス モジュールをルータ内に取り付けます。 第 2 章「ルータ内への Cisco SRE サービス モジュールの取り付け」 を参照してください。 2. Cisco SRE サービス モジュール インターフェイスを設定します。 第 3 章「Cisco SRE サービス モジュール インターフェイスの設定」 を参照してください。 3. (任意)Cisco SRE-V コマンドを使用してユーザとロールを作成し、それらのユーザに権限を割り当てます。 第 6 章「ユーザ、ロール、および権限の設定」 を参照してください。 4. VMware vSphere Hypervisor TM デフォルト ゲートウェイを設定します。「VMware vSphere Hypervisor デフォルト ゲートウェイの設定」を参照してください。 5. 仮想マシンを管理するための vSphere Client をインストールします。 第 7 章「仮想マシンの管理」 を参照してください。 6. ご自身の Microsoft Windows Server 2003 または Microsoft Windows Server 2008 ソフトウェアをインストールしてから、ソフトウェア ライセンスをアクティブ化します。 (注) Cisco.com から Microsoft Windows Server をダウンロードすることはできません。このソフトウェアは、モジュールとの同時購入のみになります。 7. VMware ツールをインストールします。「VMware ツールのインストール」を参照してください。 |
3 |
ハードウェア、仮想化ソフトウェア、および Microsoft Windows ソフトウェア(SM-SRE-700-K9 または SM-SRE-900-K9 + SW-SM-SRE-V-1.0 + MSWS-08-R2ST-X64):Cisco SRE-V および Microsoft Windows Server 2008 R2 Standard Edition 64 ビット仮想マシンがプリインストールされた Cisco SRE サービス モジュール。図 1-3 を参照してください。 (このオプションを購入すると、Microsoft Windows Server 2008 R2 ライセンスおよび Cisco SRE-V ライセンスが事前にアクティブ化されます。 このオプションには、Microsoft Windows Server 2008 R2 リカバリ DVD が付属しています。この DVD は、システムから Microsoft Windows 仮想マシンを失った場合や削除した場合に使用できます) |
1. Cisco SRE サービス モジュールをルータ内に取り付けます。 第 2 章「ルータ内への Cisco SRE サービス モジュールの取り付け」 を参照してください。 2. Cisco IOS コマンドを使用して、Cisco SRE サービス モジュール インターフェイスを設定します。 第 3 章「Cisco SRE サービス モジュール インターフェイスの設定」 を参照してください。 3. (任意)Cisco SRE-V コマンドを使用してユーザとロールを作成し、それらのユーザに権限を割り当てます。 第 6 章「ユーザ、ロール、および権限の設定」 を参照してください。 4. VMware vSphere Hypervisor TM デフォルト ゲートウェイを設定します。「VMware vSphere Hypervisor デフォルト ゲートウェイの設定」を参照してください。 5. 仮想マシンを管理するための vSphere Client をインストールします。 第 7 章「仮想マシンの管理」 を参照してください。 |