ルート パーティションとコーリング サーチ スペース
ルート パーティションでは、Cisco Unified Communications Manager ソフトウェアのエラー処理機能を継承します。つまり、情報とエラー メッセージをログに記録するためにコンソールおよび SDI ファイル トレースが提供されます。これらのメッセージは、トレースの番号分析コンポーネントの一部となります。問題の原因を特定するには、パーティションおよびコーリング サーチ スペースの設定方法、各パーティションとそれに関連付けられたコーリング サーチ スペースにあるどのデバイスがあるかを把握しておく必要があります。コールの発信に使用できる番号はコーリング サーチ スペースによって決定されます。デバイスまたはルート リストに許可されるコールはパーティションによって決定されます。
詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager Administration Guide 』および『 Cisco Unified Communications Manager System Guide 』のルート プランの章を参照してください。
次のトレースは、デバイスのコーリング サーチ スペースにあるダイヤル番号の例を示しています。SDI トレースの詳細な説明については、このマニュアルに記載されているケース スタディを参照してください。
08:38:54.968 CCM Communications Manager|StationInit - InboundStim - OffHookMessageID tcpHandle=0x6b88028
08:38:54.968 CCM CallManager|StationD - stationOutputDisplayText tcpHandle=0x6b88028, Display= 5000
08:38:54.968 CCM CallManager|StationD - stationOutputSetLamp stim: 9=Line instance=1 lampMode=LampOn tcpHandle=0x6b88028
08:38:54.968 CCM CallManager|StationD - stationOutputCallState tcpHandle=0x6b88028
08:38:54.968 CCM CallManager|StationD - stationOutputDisplayPromptStatus tcpHandle=0x6b88028
08:38:54.968 CCM CallManager|StationD - stationOutputSelectSoftKeys tcpHandle=0x6b88028
08:38:54.968 CCM CallManager|StationD - stationOutputActivateCallPlane tcpHandle=0x6b88028
08:38:54.968 CCM CallManager|Digit analysis: match(fqcn="5000", cn="5000", pss="RTP_NC_Hardwood:RTP_NC_Woodland:Local RTP", dd="")
上記のトレースの番号分析コンポーネントでは、コールを発信しているデバイスが Partition Search Space(PSS; パーティション サーチ スペース。コーリング サーチ スペースとも呼ばれる)によってリストされています。
次のトレースでは、このデバイスがコールを許可されているパーティションが RTP_NC_Hardwood;RTP_NC_Woodland;Local_RTP で示されています。
08:38:54.968 CCM CallManager|Digit analysis: potentialMatches=PotentialMatchesExist
08:38:54.968 CCM CallManager|StationD - stationOutputStartTone: 33=InsideDialTone tcpHandle=0x6b88028
08:38:55.671 CCM CallManager|StationInit - InboundStim - KeypadButtonMessageID kpButton: 5 tcpHandle=0x6b88028
08:38:55.671 CCM CallManager|StationD - stationOutputStopTone tcpHandle=0x6b88028
08:38:55.671 CCM CallManager|StationD - stationOutputSelectSoftKeys tcpHandle=0x6b88028
08:38:55.671 CCM CallManager|Digit analysis: match(fqcn="5000", cn="5000", pss="RTP_NC_Hardwood:RTP_NC_Woodland:Local RTP", dd="5")
08:38:55.671 CCM CallManager|Digit analysis: potentialMatches=PotentialMatchesExist
08:38:56.015 CCM CallManager|StationInit - InboundStim - KeypadButtonMessageID kpButton: 0 tcpHandle=0x6b88028
08:38:56.015 CCM CallManager|Digit analysis: match(fqcn="5000", cn="5000", pss="RTP_NC_Hardwood:RTP_NC_Woodland:Local RTP", dd="50")
08:38:56.015 CCM CallManager|Digit analysis: potentialMatches=PotentialMatchesExist
08:38:56.187 CCM CallManager|StationInit - InboundStim - KeypadButtonMessageID kpButton: 0 tcpHandle=0x6b88028
08:38:56.187 CCM CallManager|Digit analysis: match(fqcn="5000", cn="5000", pss="RTP_NC_Hardwood:RTP_NC_Woodland:Local RTP", dd="500")
08:38:56.187 CCM CallManager|Digit analysis: potentialMatches=PotentialMatchesExist
08:38:56.515 CCM CallManager|StationInit - InboundStim - KeypadButtonMessageID kpButton: 3 tcpHandle=0x6b88028
08:38:56.515 CCM CallManager|Digit analysis: match(fqcn="5000", cn="5000", pss="RTP_NC_Hardwood:RTP_NC_Woodland:Local RTP", dd="5003")
08:38:56.515 CCM CallManager|Digit analysis: analysis results
08:38:56.515 CCM CallManager||PretransformCallingPartyNumber=5000
PotentialMatchesExist は、完全一致が見つかり、それに従ってコールがルーティングされるまでにダイヤルされた番号の番号分析結果になることに注意してください。
次のトレースは、Cisco Unified Communications Manager で電話番号 1001 をダイヤルしようとしたときに、該当するデバイスのコーリング サーチ スペースにその番号がなかった場合に発生する状態を示しています。ここでも、番号分析ルーチンが、最初の番号がダイヤルされるまで可能性のある一致を保持していることに注意してください。番号 1 に関連付けられているルート パターンは、デバイスのコーリング サーチ スペースである RTP_NC_Hardwood;RTP_NC_Woodland;Local_RTP にないパーティションに存在します。このため、電話機ではリオーダー トーン(ビジー信号)を受信しました。
08:38:58.734 CCM CallManager|StationInit - InboundStim - OffHookMessageID tcpHandle=0x6b88028
08:38:58.734 CCM CallManager|StationD - stationOutputDisplayText tcpHandle=0x6b88028, Display= 5000
08:38:58.734 CCM CallManager|StationD - stationOutputSetLamp stim: 9=Line instance=1 lampMode=LampOn tcpHandle=0x6b88028
08:38:58.734 CCM CallManager|StationD - stationOutputCallState tcpHandle=0x6b88028
08:38:58.734 CCM CallManager|StationD - stationOutputDisplayPromptStatus tcpHandle=0x6b88028
08:38:58.734 CCM CallManager|StationD - stationOutputSelectSoftKeys tcpHandle=0x6b88028
08:38:58.734 CCM CallManager|StationD - stationOutputActivateCallPlane tcpHandle=0x6b88028
08:38:58.734 CCM CallManager|Digit analysis: match(fqcn="5000", cn="5000", pss="RTP_NC_Hardwood:RTP_NC_Woodland:Local RTP", dd="")
08:38:58.734 CCM CallManager|Digit analysis: potentialMatches=PotentialMatchesExist
08:38:58.734 CCM CallManager|StationD - stationOutputStartTone: 33=InsideDialTone tcpHandle=0x6b88028
08:38:59.703 CCM CallManager|StationInit - InboundStim - KeypadButtonMessageID kpButton: 1 tcpHandle=0x6b88028
08:38:59.703 CCM CallManager|StationD - stationOutputStopTone tcpHandle=0x6b88028
08:38:59.703 CCM CallManager|StationD - stationOutputSelectSoftKeys tcpHandle=0x6b88028
08:38:59.703 CCM CallManager|Digit analysis: match(fqcn="5000", cn="5000", pss="RTP_NC_Hardwood:RTP_NC_Woodland:Local RTP", dd="1")
08:38:59.703 CCM CallManager|Digit analysis: potentialMatches=NoPotentialMatchesExist
08:38:59.703 CCM CallManager|StationD - stationOutputStartTone: 37=ReorderTone tcpHandle=0x6b88028
ルート パーティションは、パーティション名をシステム内のすべての電話番号に関連付けることによって機能します。電話番号に発信できるのは、発信側デバイスに含まれているパーティションが、コールの発信先として発信側デバイスに許可されているパーティションのリスト(パーティション サーチ スペース)にある場合だけです。これにより、ルーティングを強力に制御することが可能です。
コールの発信中に、番号分析では、ダイヤルされたアドレスをパーティション サーチ スペースで指定されているパーティション内でだけ解決しようとします。各パーティション名は、グローバルなダイヤル可能アドレスの個別のサブセットで構成されています。番号分析では、ダイヤルされた一連の番号に最もよく一致するパターンを、リストされた各パーティションから抽出します。次に、一致したパターンの中からベストマッチを選択します。ダイヤルされた一連の番号に一致するパターンが 2 つある場合は、パーティション サーチ スペースの最初にリストされているパーティションに関連付けられているパターンを選択します。
グループ ピックアップの設定
症状
パーティションが設定されているグループで、グループ ピックアップ機能が機能しません。
考えられる原因
Calling Search Space(CSS; コーリング サーチ スペース)が、グループ内の各 Directory Number(DN; 電話番号)に対して適切に設定されていない可能性があります。
例
次の手順では、パーティションを使用した正しいグループ ピックアップ設定の例を示します。
1. Marketing/5656 という名前のピックアップ グループを設定します。Marketing はパーティション、5656 はピックアップ番号です。
2. DN 6000 と DN 7000 それぞれの設定で、これらの DN を Marketing/5656 という名前のピックアップ グループに追加します。
推奨処置
グループ ピックアップに失敗する場合は、各ドメイン名(この例では DN 6000 と DN 7000)の CSS を確認します。この例で、Marketing という名前のパーティションが各 CSS に含まれていない場合は、設定が間違っており、ピックアップに失敗した可能性があります。
ダイヤル プランの問題
ここでは、ダイヤル プランの次の問題について説明します。
• 「番号のダイヤル時の問題」
• 「安全なダイヤル プラン」
番号のダイヤル時の問題
症状
番号のダイヤル時に問題が発生します。
考えられる原因
ダイヤル プランは、特定の一連の番号の収集時に、どのデバイス(電話機やゲートウェイなど)にコールを送信するかを Cisco Unified Communications Manager に通知する、番号および番号グループのリストで構成されています。このセットアップはルータの静的ルーティング テーブルに相当すると考えてください。
ダイヤル プランの潜在的な問題をトラブルシューティングする前に、ダイヤル プランの概念、基本的なコール ルーティング、およびプランニングが慎重に考慮され、適切に設定されていることを確認してください。多くの場合、プランニングと設定に問題があります。詳細については、『 Cisco Unified Communications Manager Administration Guide 』のルート プラン設定の章を参照してください。
推奨処置
1. コールを発信している Directory Number(DN; 電話番号)を特定します。
2. この DN のコーリング サーチ スペースを特定します。
ヒント コールの発信に使用できる番号はコーリング サーチ スペースによって決定されます。
3. 必要に応じて、コーリング サーチ スペースによってこの DN に関連付けられているデバイスを特定します。正しいデバイスを特定していることを確認してください。複数のライン アピアランスがサポートされているため、複数のデバイスに同じ DN が設定されている可能性があります。デバイス コーリング サーチ スペースを追跡します。
コールの発信元が Cisco Unified IP Phone の場合は、特定の回線(DN)と回線が関連付けられているデバイスにコーリング サーチ スペースがあることに注意してください。コーリング サーチ スペースはコール発信時に結合されます。たとえば、回線インスタンス 1000 にコーリング サーチ スペース AccessLevelX があり、内線 1000 が設定されている Cisco Unified IP Phone にコーリング サーチ スペース AccessLevelY がある場合、ライン アピアランスからコールを発信すると、Cisco Unified Communications Manager では、コーリング サーチ スペース AccessLevelX と AccessLevelY に含まれるパーティション内で検索が行われます。
4. コーリング サーチ スペースに関連付けられているパーティションを特定します。
ヒント デバイスまたはルート リストに許可されるコールはパーティションによって決定されます。
5. デバイスのどのパーティションにコールが発信されるか、または送信されないかを特定します。
6. ダイヤルされている番号を特定します。ユーザが 2 次ダイヤル トーンを受信しているかどうか、およびいつ受信したかを追跡します。また、すべての番号が入力されたあとで受信している信号(リオーダー、ファースト ビジー)についても追跡します。受信する前にユーザがプログレス トーンを受信しているかどうかを確認します。発信者が番号間タイマーの時間が経過するまで待機する場合があるため、発信者が最後の番号を入力したあと少なくとも 10 秒間待機してください。
7. Cisco Unified Communications Manager でルート プラン レポートを生成し、そのレポートを使用して問題のコールのコーリング サーチ スペースに含まれるパーティションのすべてのルート パターンを検査します。
8. 必要に応じて、ルート パターンまたはルート フィルタを追加または変更します。
9. コールの送信先ルート パターンを検出できる場合は、パターンが指すルート リストまたはゲートウェイを追跡します。
10. ルート リストの場合は、リストに含まれているルート グループとルート グループに含まれているゲートウェイを確認します。
11. 該当するデバイスが Cisco Unified Communications Manager に登録されていることを確認します。
12. ゲートウェイに Cisco Unified Communications Manager へのアクセス権限がない場合は、show tech コマンドを使用してこの情報を取得し、確認します。
13. @ 記号に注意します。このマクロは、多数の異なる機能を含めるように拡張できます。これは、多くの場合、フィルタリング オプションと組み合せて使用されます。
14. デバイスがパーティションに含まれていない場合は、Null パーティションまたはデフォルト パーティションに含まれていると見なします。この場合、すべてのユーザがそのデバイスにコールできます。通常、Null パーティションは最後に検索されます。
15. 9.@ パターンに一致する外線番号をダイヤルし、コールが成功するまで 10 秒かかる場合は、フィルタリング オプションを確認します。デフォルトでは、9.@ パターンの場合、7 桁の番号がダイヤルされると Cisco Unified IP Phone はコールを発信するまで 10 秒間待機します。LOCAL-AREA-CODE DOES-NOT- EXIST と END-OF-DIALING DOES-NOT-EXIST を表示するルート フィルタをパターンに適用する必要があります。
安全なダイヤル プラン
ユーザ向けに安全なダイヤル プランを作成するように Cisco Unified Communications Manager を設定するには、ルート パターンの @ マクロのセクションに基づくより一般的なフィルタリング(北米番号計画など)に加えて、パーティションとコーリング サーチ スペースを使用します。パーティションとコーリング サーチ スペースはセキュリティに不可欠であり、特にマルチテナント環境や個々のユーザ レベルの作成に役立ちます。コーリング サーチ スペースまたはパーティション概念のサブセットであるフィルタリングによって、セキュリティ プランをさらに詳細に設定できます。
通常は、フィルタリングの問題を解決する手段として SDI トレースを実行することは推奨できません。十分な情報を取得できず、問題を悪化させる可能性が高くなります。
リモート ゲートウェイを使用した自動代替ルーティング(AAR)の制限
症状
AAR には、AAR の使用時に広帯域の状況でリモート ゲートウェイを介してルーティングされたコールが失敗し、それらのコールをローカル ゲートウェイを介してルーティングできないという制限があります。この機能は、トール バイパスに Tail-End Hop Off(TEHO; テールエンド ホップオフ)を使用するユーザにとって重要です。
推奨処置
次の例は、AAR 使用時に広帯域の状況でリモート ゲートウェイを介してルーティングする必要があるコールの回避策を示しています。
回避策の例
対象の TEHO に特定のパーティションを使用します。
次の例では、本社(HQ)のエリア コードは 408、支社(BR1)のエリア コードは 919 です。
次のように設定します。
1. TehoBr1forHQPt パーティションを作成し、通常の PSTN アクセスで使用するより高い優先順位で HQ デバイスの Calling Search Space(CSS; コーリング サーチ スペース)に割り当てます。
2. TehoBr1forHQRL ルート リストを作成し、このルート リストに BR1 ゲートウェイを 1 番めのオプション、HQ ゲートウェイを 2 番めのオプションとして追加します。
3. 着信側の変更をルート リスト内で適用します。この場合、ドットの前の着信側の変更を BR1 ルート グループに適用し、ドットの前およびプレフィックス 1919 の着信側の変更を HQ ルート グループに適用します。
4. ゲートウェイでは着信側の変更を実行しないことを確認します。
5. TehoBr1forHQPt パーティションにルート パターンを作成します。
6. 着信側の変更がルート パターンに適用されないことを確認します。
結果
アウトオブバンドの状況では、Cisco Unified Communications Manager が TEHO の 1 番めのルート グループ(BR1 ルート グループ)を割り当てようとしたあと、システムが 91919 ストリングを削除して、長距離ダイヤルに最適な 1919 ストリングと置き換える時点で、Cisco Unified CM が 2 番めのルート グループを再試行します。ストリングはローカル ゲートウェイで使用するように設定されているため、再ルーティングの回数は少なくなります。
PSTN 番号の電話番号マスクがシステムでは不明なため、AAR は外部電話番号マスク ベースで動作しますが、外部 PSTN 番号用に処理できません。この回避策により AAR 機能が提供し、ネットワークの復元性が向上します。