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この章では、設計上の重要な考慮事項について説明し、ワイヤレス メッシュの設計例を示します。
屋外のワイヤレス メッシュの導入はそれぞれが独自のため、利用できる場所や障害物、利用可能なネットワーク インフラストラクチャに伴い、環境ごとに課題が異なります。主要な設計要件には、想定されるユーザ、トラフィック、および可用性のニーズによって決まる設計基準もあります。この章の内容は、次のとおりです。
ワイヤレス メッシュ ネットワークを設計および構築する場合に考慮すべきシステムの特徴は次のとおりです。これらの一部の特徴はバックホール ネットワークの設計に適用され、残りの特徴は CAPWAP コントローラの設計に適用されます。
バックホールは、アクセス ポイント間でワイヤレス接続のみを作成するために使用されます。バックホール インターフェイスはアクセス ポイントによって、802.11a/n/ac になります。利用可能な RF スペクトラムを効果的に使用するにはレート選択が重要です。また、レートはクライアント デバイスのスループットにも影響を与えることがあり、スループットはベンダー デバイスを評価するために業界出版物で使用される重要なメトリックです。
Dynamic Rate Adaptation(DRA)には、パケット伝送のために最適な伝送レートを推測するプロセスが含まれます。レートを正しく選択することが重要です。レートが高すぎると、パケット伝送が失敗し、通信障害が発生します。レートが低すぎると、利用可能なチャネル帯域幅が使用されず、品質が低下し、深刻なネットワーク輻輳および障害が発生する可能性があります。
データ レートは、RF カバレッジとネットワーク パフォーマンスにも影響を与えます。低データ レート(6 Mbps など)が、高データ レート(1300 Mbps など)よりもアクセス ポイントからの距離を延長できます。結果として、データ レートはセル カバレッジと必要なアクセス ポイントの数に影響を与えます。異なるデータ レートは、ワイヤレス リンクで冗長度の高い信号を送信することにより(これにより、データをノイズから簡単に復元できます)、実現されます。1 Mbps のデータ レートでパケットに対して送信されるシンボル数は、11 Mbps で同じパケットに使用されたシンボル数より多くなります。したがって、低ビット レートでのデータの送信には、高ビット レートでの同じデータの送信よりも時間がかり、スループットが低下します。
低ビット レートでは、MAP 間の距離を長くすることが可能になりますが、WLAN クライアント カバレッジにギャップが生じる可能性が高く、バックホール ネットワークのキャパシティが低下します。バックホール ネットワークのビット レートを増加させる場合は、より多くの MAP が必要となるか、MAP 間の SNR が低下し、メッシュの信頼性と相互接続性が制限されます。
(注) |
データ レートは、AP ごとにバックホールで設定できます。これはグローバル コマンドではありません。 |
各データ レートのバックホール リンクに必要な最小 LinkSNR を 表 1 に示します。
54 |
31 |
48 |
29 |
36 |
26 |
24 |
22 |
18 |
18 |
12 |
16 |
9 |
15 |
6 |
14 |
LinkSNR の必要最小値は、データ レートと次の公式で決まります: 最小 SNR + フェードマージン。
表 2 に、データ レート別の計算をまとめています。
135 |
1 |
26.3 |
157.5 |
1 |
27.3 |
30 |
2 |
12.3 |
60 |
2 |
14.3 |
90 |
2 |
16.3 |
120 |
2 |
20.3 |
180 |
2 |
24.3 |
240 |
2 |
27.3 |
270 |
2 |
29.3 |
300 |
2 |
30.3 |
必要最小 LinkSNR を計算するために MRC の影響を考慮した場合。表 3 は、3 本の Rx アンテナ(MRC ゲイン)を使用した AP1552 および 1522 の 802.11a/g(2.4 GHz および 5 GHz)に必要な LinkSNR を示します。
表 4 に、802.11n のレートだけを考慮する場合の 2.4 および 5 GHz の AP1552 の LinkSNR 要件を示します。
多くのネットワークは、依然として 802.11n クライアントと 802.11ac クライアントの混在をサポートします。802.11a/g クライアント(レガシー クライアント)は低データ レートで動作するため、古いクライアントにより、ネットワーク全体のキャパシティが減少することがあります。シスコのClientLink テクノロジーは、802.11a/g クライアントが、特にセル境界に近い場合に、最適なレートで動作できるようにすることで、クライアントが混在するネットワークにおける 802.11n の採用に関連する問題を解決します。
高度な信号処理が Wi-Fi チップセットに追加されました。複数の送信アンテナが 802.11a/g クライアントの方向に伝送を収束するために使用され、ダウンリンクの信号対ノイズ比と一定のレンジにおけるデータ レートが増加するため、カバレッジ ホールが減少し、システム全体のパフォーマンスが向上します。このテクノロジーは、クライアントから受信された信号を合成する最適な方法を学習し、この情報を使用してパケットを最適な方法でクライアントに送り返します。このテクニックは、MIMO(複数入力複数出力)ビームフォーミング、送信ビームフォーミング、またはコフェージングとも呼ばれ、高価なアンテナ アレイを必要としない、市場で唯一のエンタープライズクラスかつサービス プロバイダークラスのソリューションです。
802.11n システムは、複数の無線信号を同時に送信することによりマルチパスを利用します。空間ストリームと呼ばれるこれらの各信号は、独自のトランスミッタを使用して独自のアンテナから送信されます。これらのアンテナ間には空間があるため、各信号は受信装置への若干異なるパスに従います(空間ダイバーシティと呼ばれる状況)。レシーバにも、独自の無線を使用する複数のアンテナがあります。各アンテナは受信した信号を独自にデコードし、各信号は他のレシーバの無線からの信号と結合されます。その結果、複数のデータ ストリームが同時に受信されます。これにより、以前の 802.11a/g システムよりも高いスループットが実現されますが、信号を解読する 802.11n 対応クライアントが必要になります。したがって、AP とクライアントの両方がこの機能をサポートする必要があります。問題が複雑であるため、第 1 世代のメインストリーム 802.11n チップセットでは、AP およびクライアント チップセットで 802.11n 送信ビームフォーミングが実装されていません。したがって、802.11n 標準伝送ビームフォーミングは将来利用可能になりますが、次世代のチップセットが市場に出るまで待つ必要があります。シスコは、この分野の発展をリードしていく所存です。
現行世代の 802.11n AP について、2 つ目の送信パスが 802.11n クライアントでは(空間ダイバーシティを実装するために)よく使用されていましたが、802.11a/g クライアントでは十分に使用されていなかったことを、シスコは認識していました。つまり、802.11 a/g クライアントに対しては、余分な送信パスの機能の一部がアイドル状態のままでした。また、多くのネットワークでは、設置されている 802.11 a/g クライアント ベースのパフォーマンスがネットワークの制限要素になることも認識していました。
802.11 a/g クライアントのパフォーマンス レベルを高めることで、このアイドル状態の機能を利用して全体的なネットワーク キャパシティを大幅に向上させるために、シスコは ClientLink という伝送ビーム形成テクノロジーにおける技術革新をもたらしました。
ClientLink は高度な信号処理手法と複数の送信パスを使用して、ダウンリンク方向で 802.11a/g クライアントが受信した信号を、フィードバックを必要とせずに、最適化します。特別なフィードバックが必要ないため、Cisco ClientLink は、既存のすべての 802.11a/g クライアントで動作します。
Cisco ClientLink テクノロジーにより、クライアントが配置された場所でアクセス ポイントが SNR を効果的に最適化できるようになります。ClientLink は、ダウンリンク方向にほぼ 4 dB のゲインを提供します。SNR が改善され、再試行回数の減少やデータ レートの向上などの多くの利点が提供されます。たとえば、以前に 12 Mbps でパケットを受信できたセルの端にあるクライアントが 36 Mbps でパケットを受信できるようになります。ClientLink を使用した場合のダウンリンク パフォーマンスの一般的な測定値は、802.11a/g クライアントではスループットが 65 % 向上します。Wi-Fi システムがより高いデータ レート、少ない再試行回数で動作できるようにすることで、ClientLink はシステムのキャパシティ全体を拡張します。つまり、スペクトル リソースを効率的に利用できます。
1552 アクセス ポイントの ClientLink は、AP3500 で使用可能な ClientLink 機能をベースにしています。したがって、アクセス ポイントは近接するクライアントに対してビームフォーミングを行い、802.11ACK でビームフォーミング情報を更新できます。したがって、専用アップリンク トラフィックがない場合でも、ClientLink は適切に動作します。これは、TCP および UDP 両方のトラフィック ストリームに有用です。Cisco 802.11n アクセス ポイントでこのビーム形成を使用するためにクライアントが通過する必要がある RSSI ウォーターマークはありません。
ClientLink は、同時に 15 のクライアントにビーム形成を行うことができます。したがって、レガシー クライアントの数が無線ごとに 15 を超える場合に、ホストは最良の 15 クライアントを選択する必要があります。AP1552 には 2 つの無線があるため、タイム ドメインで最大 30 個のクライアントに対してビームフォーミングを行えます。
(注) |
ClientLink はデフォルトで有効になっています。 |
7.2 リリース以降から、コントローラ GUI を使用して ClientLink(ビーム形成)を設定することはできません。
トラブルシューティングを行うには、AP コンソールで次のコマンドを使用します。
無線で ClientLink が有効であることを示すには、 show controllers | inc Beam コマンドを入力します。
Legacy Beamforming: Configured Yes, Active Yes, RSSI Threshold -50 dBm Legacy Beamforming: Configured Yes, Active Yes, RSSI Threshold -60 dBm
ClientLink が特定のクライアントにビーム形成を行っていることを表示するには、 show interface dot11radio 1 lbf rbf コマンドを入力します。
RBF Table: Index Client MAC Reserved Valid Tx BF Aging 1 0040.96BA.45A0 Yes Yes Yes No
次の項目は、メッシュ ネットワークに必要なコントローラの数に影響します。
ネットワーク内のメッシュ アクセス ポイント(RAP および MAP)。
RAP とコントローラを接続する有線ネットワークは、そのネットワーク内でサポートされるアクセス ポイントの総数に影響を与えることがあります。このネットワークによって、コントローラが、WLAN のパフォーマンスに影響なく、すべてのアクセス ポイントから利用できるようになっている場合、アクセス ポイントはすべてのコントローラにわたって最大の効率で等しく分散できます。これに当てはまらない場合で、コントローラがさまざまなクラスタまたは PoP にグループ化されるとき、アクセス ポイントの総数とカバレッジは減少します。
コントローラごとにサポートされるメッシュ アクセス ポイント(RAP および MAP)の数。表 1を参照してください。
ローカル AP サポート(非メッシュ)1 |
||
---|---|---|
55082 |
||
25043 |
||
(注) |
メッシュは、Cisco 5508 コントローラで完全にサポートされています。屋内および屋外 AP(AP152X)には基本ライセンス(LIC-CT508-Base)で十分です。WPlus ライセンス(LIC-WPLUS-SW)は、基本ライセンスに含まれます。屋内メッシュ AP には WPlus ライセンスは必要ありません。 |