RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性機能を使用すれば、RADIUS パケットの IP ヘッダー内の発信元 IP アドレスを変更せずに、任意の IP アドレスを設定して RADIUS アトリビュート 4(NAS-IP-Address)として使用できます。この機能は、サービス プロバイダーが、スケーラビリティを向上させるために、小規模な Network Access Server(NAS; ネットワーク アクセス サーバ)のクラスタを使用して大規模な NAS をシミュレートしている場合にも使用できます。この機能を使用すれば、NAS を RADIUS サーバから見て、単一の RADIUS クライアントとして機能させることができます。
機能情報の確認
ご使用のソフトウェア リリースでは、このモジュールで説明されるすべての機能がサポートされているとは限りません。最新の機能情報と注意事項については、ご使用のプラットフォームとソフトウェア リリースに対応したリリース ノートを参照してください。この章に記載されている機能の詳細、および各機能がサポートされているリリースのリストについては、「RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の機能情報」 を参照してください。
プラットフォーム サポートと Cisco IOS および Catalyst OS ソフトウェア イメージ サポートに関する情報を入手するには、Cisco Feature Navigator を使用します。Cisco Feature Navigator には、 http://tools.cisco.com/ITDIT/CFN/jsp/index.jsp からアクセスできます。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の前提条件
この機能を設定する前に、次の要件を満たす必要があります。
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IP セキュリティ(IPSec)の使用経験と、RADIUS サーバと Authentication, Authorization, and Accounting(AAA; 認証、認可、およびアカウンティング)の両方の設定経験が必要です。
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RADIUS サーバと AAA リストを設定する必要があります。
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の制約事項
スケーラビリティを向上させるために、RADIUS クライアントのクラスタを単一の RADIUS クライアントのシミュレーションに使用している場合に、次の制約事項が適用されます。制約事項に対する解決策または次善策についても説明します。
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RADIUS アトリビュート 44(Acct-Session-Id)は、複数の NAS からのセッション間で重複する可能性があります。
2 つの解決策があります。NAS ルータ上で radius-server attribute 44 extend-with-addr コマンドと radius-server unique-ident コマンドのどちらかを使用して、NAS ルータごとに異なる先頭の番号を指定できます。
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RADIUS サーバベースの IP アドレス プールを NAS ごとに管理する必要があります。
この解決策は、RADIUS サーバ上で NAS ごとに異なる IP アドレス プール プロファイルを設定することです。NAS ごとに異なるプール ユーザ名を使用してそれらを取得します。
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セッション内の RADIUS 要求メッセージは NAS ごとに識別される必要があります。
この解決策の 1 つは、NAS 上で radius-server attribute 32 include-in-access-req コマンドを使用して、NAS ごとに異なる RADIUS アトリビュート 32(NAS-Identifier)用の形式文字列を設定することです。
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性に関する情報
図 1 に示すように、小規模な NAS RADIUS クライアントを使用して大規模な NAS RADIUS クライアントをシミュレートする場合は、Network Address Translation(NAT; ネットワーク アドレス変換)デバイスまたは Port Address Translation(PAT; ポート アドレス変換)デバイスがネットワークに挿入されます。このデバイスは、NAS のクライアントと、RADIUS サーバに接続された IP クラウドの間に配置されます。複数の NAS からの RADIUS トラフィックが NAT または PAT デバイスを通過するときに、RADIUS パケットの発信元 IP アドレスが単一の IP アドレスに変換されます。ほとんどの場合、この IP アドレスは、NAT または PAT デバイスのループバック インターフェイス上の IP アドレスです。NAS ごとに異なる User Datagram Protocol(UDP; ユーザ データグラム プロトコル)発信元プールが RADIUS パケットに割り当てられます。サーバから RADIUS 応答が返されると、NAT または PAT デバイスがそれを受信して、宛先 UDP ポートを使用して宛先 IP アドレスを NAS の IP アドレスに変換し、対応する NAS に転送します。
図 1 は、複数の NAS の発信元 IP アドレスが、IP クラウドへの途中で NAT または PAT デバイスを通過するときに、どのように単一の IP アドレスに変換されるかを示しています。
図 1 単一の IP アドレスに変換される NAS アドレス
通常は、RADIUS サーバが RADIUS パケットの IP ヘッダー内の発信元 IP アドレスをチェックして、RADIUS 要求の発信元を追跡し、セキュリティを確保します。NAT または PAT による解決策は、RADIUS パケットが複数の NAS ルータから送られてきても単一の発信元 IP アドレスが使用されるため、これらの要件を満たします。
ただし、RADIUS データベースからアカウンティング レコードを取得するときに、課金システムによっては、アカウンティング レコード内で RADIUS アトリビュート 4(NAS-IP-Address)が使用される場合があります。このアトリビュートの値は、独自の IP アドレスとして NAS ルータ上に記録されます。NAS ルータは、RADIUS サーバとの間で動作している NAT または PAT を認識しません。そのため、NAS ルータごとに異なる RADIUS アトリビュート 4 アドレスがユーザのアカウンティング レコードに記録されます。最終的に、これらのアドレスは、複数の NAS ルータを RADIUS サーバと対応する課金システムに公開することになります。
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性機能の使用方法
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性機能を使用すれば、任意の IP アドレスを RADIUS NAS-IP-Address(RADIUS アトリビュート 4)として設定できます。すべてのルータに対して同じ IP アドレス(ほとんどの場合、NAT または PAT デバイスのループバック インターフェイス上の IP アドレス)を手動で設定することによって、NAS ルータのクラスタを NAT または PAT デバイスの後ろに隠して、RADIUS から見えないようにすることができます。
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の設定方法
ここでは、次の各手順について説明します。
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「RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の設定」
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「RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性のモニタリングとメンテナンス」
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の設定
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性機能を設定する前に、RADIUS サーバまたはサーバ グループと AAA 方式リストを設定しておく必要があります。
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性機能を設定するには、次の手順を実行します。
手順の概要
1.
enable
2.
configure terminal
3.
radius-server attribute 4 ip-address
手順の詳細
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ステップ 1 |
enable
Router> enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 • プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
configure terminal
Router# configure terminal |
グローバル コンフィギュレーション モードを開始します。 |
ステップ 3 |
radius-server attribute 4 ip-address
Router (config)# radius-server attribute 4 10.2.1.1 |
RADIUS NAS-IP-Address(アトリビュート 4)として使用する IP アドレスを設定します。 |
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性のモニタリングとメンテナンス
RADIUS パケット内で使用されている RADIUS アトリビュート 4 アドレスをモニタするには、 debug radius コマンドを使用します。
手順の概要
1.
enable
2.
debug radius
手順の詳細
|
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|
ステップ 1 |
enable
Router> enable |
特権 EXEC モードをイネーブルにします。 • プロンプトが表示されたら、パスワードを入力します。 |
ステップ 2 |
debug radius
Router# debug radius |
RADIUS 関連の情報を表示します。 |
例
次のサンプル出力は、 debug radius コマンドの出力です。
RADIUS/ENCODE(0000001C): acct_session_id: 29
RADIUS(0000001C): sending
RADIUS(0000001C): Send Access-Request to 10.0.0.10:1645 id 21645/17, len 81
RADIUS: authenticator D0 27 34 C0 F0 C4 1C 1B - 3C 47 08 A2 7E E1 63 2F
RADIUS: Framed-Protocol [7] 6 PPP [1]
RADIUS: User-Name [1] 18 "shashi@pepsi.com"
RADIUS: CHAP-Password [3] 19 *
RADIUS: NAS-Port-Type [61] 6 Virtual [5]
RADIUS: Service-Type [6] 6 Framed [2]
RADIUS: NAS-IP-Address [4] 6 10.0.0.21
UDP: sent src=10.1.1.1(21645), dst=10.0.0.10(1645), length=109
UDP: rcvd src=10.0.0.10(1645), dst=10.1.1.1(21645), length=40
RADIUS: Received from id 21645/17 10.0.0.10:1645, Access-Accept, len 32
RADIUS: authenticator C6 99 EC 1A 47 0A 5F F2 - B8 30 4A 4C FF 4B 1D F0
RADIUS: Service-Type [6] 6 Framed [2]
RADIUS: Framed-Protocol [7] 6 PPP [1]
RADIUS(0000001C): Received from id 21645/17
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の設定例
ここでは、次の設定例について説明します。
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「RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の設定:例」
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の設定:例
次の例は、IP アドレス 10.0.0.21 が RADIUS NAS-IP-Address アトリビュートとして設定されていることを示しています。
radius-server attribute 4 10.0.0.21
radius-server host 10.0.0.10 auth-port 1645 acct-port 1646 key cisco
その他の参考資料
次の項で、RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性に関する参考資料を紹介します。
規格
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この機能によってサポートされる新しい規格や変更された規格はありません。 |
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MIB
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この機能によってサポートされる新しい MIB または変更された MIB はありません。 |
選択したプラットフォーム、Cisco IOS リリース、および機能セットの MIB を検索してダウンロードする場合は、次の URL にある Cisco MIB Locator を使用します。 http://www.cisco.com/go/mibs |
RFC
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この機能によってサポートされる新しい RFC や変更された RFC はありません。 |
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シスコのテクニカル サポート
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右の URL にアクセスして、シスコのテクニカル サポートを最大限に活用してください。 以下を含むさまざまな作業にこの Web サイトが役立ちます。 ・テクニカル サポートを受ける ・ソフトウェアをダウンロードする ・セキュリティの脆弱性を報告する、またはシスコ製品のセキュリティ問題に対する支援を受ける ・ツールおよびリソースへアクセスする - Product Alert の受信登録 - Field Notice の受信登録 - Bug Toolkit を使用した既知の問題の検索 ・Networking Professionals(NetPro)コミュニティで、技術関連のディスカッションに参加する ・トレーニング リソースへアクセスする ・TAC Case Collection ツールを使用して、ハードウェアや設定、パフォーマンスに関する一般的な問題をインタラクティブに特定および解決する この Web サイト上のツールにアクセスする際は、Cisco.com のログイン ID およびパスワードが必要です。 |
http://www.cisco.com/techsupport |
RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の機能情報
表 1 に、この機能のリリース履歴を示します。
ご使用の Cisco IOS ソフトウェア リリースによっては、コマンドの中に一部使用できないものがあります。特定のコマンドに関するリリース情報については、コマンド リファレンス マニュアルを参照してください。
Cisco Feature Navigator を使用すると、プラットフォームおよびソフトウェア イメージのサポート情報を検索できます。Cisco Feature Navigator を使用すると、特定のソフトウェア リリース、機能セット、またはプラットフォームをサポートする Cisco IOS ソフトウェア イメージおよび Catalyst OS ソフトウェア イメージを確認できます。Cisco Feature Navigator には、 http://tools.cisco.com/ITDIT/CFN/jsp/index.jsp からアクセスできます。Cisco.com のアカウントは必要ありません。
(注) 表 1 には、一連の Cisco IOS ソフトウェア リリースのうち、特定の機能が初めて導入された Cisco IOS ソフトウェア リリースだけが記載されています。特に明記していないかぎり、その機能は、一連の Cisco IOS ソフトウェア リリースの以降のリリースでもサポートされます。
表 1 RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性の機能情報
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RADIUS NAS-IP-Address アトリビュート設定可能性 |
12.3(3)B 12.3(7)T 12.2(28)SB 12.2(33)SRC |
この機能を使用すれば、RADIUS パケットの IP ヘッダー内の発信元 IP アドレスを変更せずに、任意の IP アドレスを設定して RADIUS アトリビュート 4(NAS-IP-Address)として使用できます。 この機能は、Cisco IOS Release 12.3(3)B で導入されました。 この機能は、Cisco IOS Release 12.3(7)T に統合されました。 この機能は、Cisco IOS Release 12.2(28)SB に統合されました。 この機能は、Cisco IOS Release 12.2(33)SRC に統合されました。 radius-server attribute 4 コマンドがこの機能で導入されました。 |
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このマニュアルで使用している IP アドレスおよび電話番号は、実際のアドレスおよび電話番号を示すものではありません。マニュアル内の例、コマンド出力、ネットワーク トポロジ図、およびその他の図は、説明のみを目的として使用されています。説明の中に実際のアドレスおよび電話番号が使用されていたとしても、それは意図的なものではなく、偶然の一致によるものです。
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