クロッキングとタイミングの設定

IR8340 およびルータの用語は、このドキュメント全体のテキストおよび CLI の例に使用され、特に断りのない限り、Cisco Catalyst IR8340 高耐久性シリーズ ルータを指します。

クロッキングおよびタイミングの概要

Cisco IR8340 ルータには、周波数と時刻の同期機能があります。ルータの WAN ポート(GigabitEthernet 0/0/0 および GigabitEthernet 0/0/1)は、周波数と位相の情報を配信できます。LAN ポート(GigabitEthernet 0/1/0 ~ GigabitEthernet 0/1/11)は、位相情報のみを配信できます。IR8340 は GPS ソースに同期できます。IR8340 ルータは、外部 IRIG-B インターフェイスおよび外部 ToD RS-485 インターフェイスを介して位相を配信することもできます。

IR8340 ルータは、Cisco IOS-XE リリース 17.9.1 以降、次のタイミングポートを備えたプラガブル タイミング モジュール(Cisco PID:IRM-TIMING-MOD)をサポートしています。

  • ToD + 1 PPS 出力:時刻(ToD)メッセージまたは 1 Pulse-Per-Second(1 PPS)メッセージを提供または受信します。

  • IRIG-B(アナログおよびデジタル入出力)インターフェイス

  • GNSS 受信機


(注)  


すべてのタイミング機能(GNSS、IRIG-B、および G.8265.1、G.8275.1、1558v2、Power および Dot1as プロファイルなどの PTP プロファイル)をサポートするには、IR8340 で Network-Advantage のライセンスが必要です。license boot level network-advantage コマンドは、Network-Advantage ライセンスを有効にします。


タイミングモジュールのステータスを表示するには、show inventory コマンドを使用します。

IR8340#show inventory
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
INFO: Please use "show license UDI" to get serial number for licensing.
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NAME: "Chassis", DESCR: "Cisco IR8340-K9 Chassis Type"
PID: IR8340-K9         , VID: V00  , SN: FDO2523J1BL
NAME: "Power Supply Module 0", DESCR: "150W AC Power Supply Module for Cisco IR8340-K9"
PID: PWR-RGD-AC-DC-H   , VID: V01  , SN: DTH251705BY
NAME: "module 0", DESCR: "Cisco IR8340 Built-In NIM controller"
PID: IR8340-K9         , VID: V00  , SN: FDO252207UG
NAME: "Timing", DESCR: "Timing Module"
PID: IRM-TIMING-MOD    , VID: V00  , SN: FDO253409KG 
NAME: "NIM subslot 0/0", DESCR: "Front Panel 2 ports Gigabitethernet Module"
PID: IR8340K9-2x1GC    , VID: V01  , SN:            

周波数同期

IR8340 は、次の入力ソースのいずれかから基準クロック周波数を復元できます。

  • GNSS

  • SyncE

  • PTP Telecom プロファイル(G.8265.1/G.8275.1)

  • 局部発振器

基準クロックが選択されると、SyncE または PTP Telecom プロファイル(G.8265.1/G.8275.1)を介して下流のネットワーク要素に伝搬されます。

時刻または位相の同期

異なるネットワークデバイス間で時刻を正確に同期することは重要です。これは、ネットワーク遅延の計算に不可欠です。

IR8340 の時間/位相同期は、次の入力ソースのいずれかによって行われます。

  • GNSS

  • PTP

  • IRIG-B

時刻(ToD)と 1PPS

IR8340 ルータで時刻(ToD)と 1PPS ポートを使用すると、ToD クロッキングを交換できます。デフォルトでは、GNSS がソースでロック状態の場合、TOD は UBX フォーマットです。

ToD 情報を表示するには、show ptp wan tod コマンドを使用します。

IR8340#show ptp wan tod
PTPd ToD information:

Time: 01/05/22 11:35:21

IRIG-B に関する情報

Inter-Range Instrumentation Group(IRIG)タイムコードは、1950 年代の終わり頃、米軍が試験場のタイミングコードを標準化する必要があったことの結果としてできたものです。この標準化により、非互換性の問題を排除し、試験場間で同期されたテストデータを交換できるようにする共通のタイムコードセットが得られました。IRIG コードの 6 つのバリエーション(A、B、D、E、G、H)が開発され、そのうちの IRIG タイムコード B(IRIG-B)は、電力、産業用オートメーション、および制御業界での時刻配信に広く受け入れられるようになりました。

IRIG 標準は 1960 年に最初に公開され、最新バージョンの IRIG 標準 200-04『IRIG Serial Time Code Formats』は 2004 年 9 月に更新されました。IRIG-B タイムプロトコルは、システムデバイス(電源ブレーカー、リレー、メーターなど)間で時刻の同期を確立および維持するために、電力会社やその他の業界で広く使用されています。IRIG は 1 秒ごとに完全なタイムフレームを送信し、各フレームは 100 ビットで構成されています。これには、BCD 形式の時間(time-of-year)と年の情報、および(オプションで)SBS 形式の秒(seconds-of-day)が含まれています。信頼性が高く予測可能なタイミングソース配信フレームワーク(専用タイミング信号)であると考えられていますが、伝統的に GPS などの正確なタイミングソースに依存しています。

IR8340 の IRIG プロトコルは、IRIG 標準 200-04 に準拠したフォーマット B(IRIG-B)用に実装されており、4X アナログ(AM)および 4X デジタル(TTL)タイムコードフォーマット(以下の表を参照)を受信(入力)または送信(出力)する機能を備えています。

IR8340 IRIG-B モード フォーマット ID IRIG 信号
アナログ(AM) AM02 AM-B122 振幅変調、1 kHz / 1 ms 分解能、BCDTOY
AM03 AM-B123 振幅変調、1 kHz / 1 ms 分解能、BCDTOY、SBS
AM06 AM-B126 振幅変調、1 kHz / 1 ms 分解能、BCDTOY、BCDYEAR
AM07 AM-B127 振幅変調、1 kHz / 1 ms 分解能、BCDTOY、BCDYEAR、SBS
デジタル(TTL) TTL02 TTL-B002 無変調、DCLS、パルス幅符号化、BCDTOY
TTL03 TTL-B003 無変調、DCLS、パルス幅符号化、BCDTOY、SBS
TTL06 TTL-B006 無変調、DCLS、パルス幅符号化、BCDTOY、BCDYEAR
TTL07 TTL-B007 無変調、DCLS、パルス幅符号化、BCDTOY、BCDYEAR、SBS

(注)  


  • BCD:通日、時、分、秒。

  • BCD_Year:BCD に 00 ~ 99 の年を加えた形式で、世紀は符号化されません。

  • SBS:Straight Binary Seconds、0 ~ 86339。


IR8340 ハードウェアには、アナログ(AM)用に 1 つとデジタル(TTL)用に 1 つの 2 つの物理インターフェイスがあり、インターフェイスごとに入力または出力の信号機能を備えています。

この IRIG-B 入力/出力シグナリングのサポートにより、IR8340 は複数のユースケースで中央タイミングデバイスになることができます。

  • 入力:IR8340 は、IRIG-B 時刻源から IRIG-B タイミングシグナリング(AM または TTL)を受信します(利用可能な場合、または必要な場合のみ)。この場合、IRIG-B を PTP(のみ)の IR8340 のクロックソースとして使用できます。IR8340 は、時刻配信用のグランドマスタークロック(GMC)として設定されます。

  • 出力:IR8340 は、他の正確なタイミングソース(GNSS/GPS、PTP、NTP など)をクロックソースとして利用します。IRIG-B インターフェイスは、その場所にある IRIG-B 依存デバイスにタイミング信号を送信するために使用できます。

IR8340 は、GNSS インターフェイスに加えて、IRIG-B 入力および IRIG-B 出力をサポートします。次の表は、時刻源と時刻配信プロトコル配置のマッピングを示しています(つまり、一方が他方に対する時刻源として機能します)。

時刻源

時刻配信

IRIG-B 入力

PTP

GNSS、PTP、NTP

IRIG-B 出力

IRIG-B の設定

インターフェイスの IRIG モード(AM または TTL)と方向(IN または OUT)を設定するには、次のコマンドを使用します。

[no ] irig mode {TTL2|TTL3|TTL6|TTL7|AM2|AM3|AM6|AM7 } dir {in | out }

  • TTL2 = IRIG-B002、TTL3 = IRIG-B003、TTL6 = IRIG-B006、TTL7 = IRIG-B007

  • AM2 = IRIG-B122、AM3 = IRIG-B123、AM6 = IRIG-B126、AM7 = IRIG-B127

IRIG 機能をインターフェイス上で無効にするには、このコマンドの no 形式を使用します。


(注)  


入力をデジタルからアナログに、またはその逆に切り替えるには、1 つのポートで入力設定を削除してから、別のポートで入力を再設定する必要があります。


show irig コマンドを使用すると、IR8340 の IRIG-B モードと方向の設定を表示できます。

次に、出力時の IR8340 の表示例を示します。

IR8340#show irig
IRIG-B Digital mode disabled
IRIG-B Analog mode AM02 dir OUT 
IRIG-B Clk Id 1 Source PTP  time: Year: 2021 Day: 343 Hour 8 Min 33 Sec 35.    //Source can be different based on what it’s getting (can be GNSS/NTP/PTP/HANDSET/NONE).
                            ns 1639038815645806587 [0x16BF091E6BA52FFB]
IRIG-B Virtual Clock State: INACTIVE
*** IRIG-B input is disabled ***

次に、入力時の IR8340 の表示例を示します。

IRIG-B Digital mode disabled
IRIG-B Analog mode AM02 dir IN 
IRIG-B Clk Id 5 Source IRIG-B  time: Year: 2021 Day: 343 Hour 8 Min 36 Sec 25.  //Because it's IN direction, the source is IRIG-B.
                            ns 1639038985184125000 [0x16BF0945E4EAA048]
IRIG-B Virtual Clock State: ACTIVE
*** IRIG-B AM input mode ***
B122 : Day 343 Hour 8 Min 36 Sec 24
NOTE: Input time shown is the last received frame time

PRTC モードと GNSS

IR8340 は、GNSS がロックされ、Telecom プロファイルが設定されていない場合、プライマリ リファレンス タイミング クロック(PRTC)モードで動作できます。PRTC モードでは、IR8340 は UBX フォーマットの TOD で TOD + 1pps 出力を提供します。

IR8340 が PRTC モードになると、通常クロックと透過クロックは LAN プロファイルではサポートされません。LAN プロファイルのすべての境界クロックは GMC-BC モードになり、GNSS 入力に従ってタイムスタンプとグランドマスタークロックの詳細を取得します。

次のクロック品質値が、GMC-BC マスタークロックによって提供されます。

Clock Quality:
    Class: 6                        //----GNSS CLASS
    Accuracy: Within 250ns          //----GNSS Accuracy
    Offset (log variance): 20061    //----GNSS Variance

PRTC モードは、PTP Default プロファイルおよび Power プロファイルでサポートされます。この変換は、GNSS がロック状態に移行すると自動的に行われます。


(注)  


次のいずれかが設定されている場合、GNSS は設定できません。

  • 802.1AS

  • PTP TC モード

  • GMC-BC オプション