Cisco Catalyst SD-WAN 向け AppNav-XE

簡素化と一貫性を実現するために、Cisco SD-WAN ソリューションは Cisco Catalyst SD-WAN としてブランド名が変更されました。さらに、Cisco IOS XE SD-WAN リリース 17.12.1a および Cisco Catalyst SD-WAN リリース 20.12.1 以降、次のコンポーネントの変更が適用されます。Cisco vManage から Cisco Catalyst SD-WAN Manager への変更、Cisco vAnalytics から Cisco Catalyst SD-WAN Analytics への変更、Cisco vBond から Cisco Catalyst SD-WAN Validator への変更、Cisco vSmart から Cisco Catalyst SD-WAN コントローラへの変更、および Cisco コントローラから Cisco Catalyst SD-WAN 制御コンポーネントへの変更。すべてのコンポーネントブランド名変更の包括的なリストについては、最新のリリースノートを参照してください。新しい名前への移行時は、ソフトウェア製品のユーザーインターフェイス更新への段階的なアプローチにより、一連のドキュメントにある程度の不一致が含まれる可能性があります。

表 1. 機能の履歴
機能名

リリース情報

説明

AppNav-XE

Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN リリース 17.2.1r

この機能を使用すると、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス での WAN 最適化のために、WAAS ノードへの LAN から WAN 方向および WAN からLAN 方向のトラフィックフローのポリシーベース リダイレクションを設定できます。

この機能は、Cisco IOS XE プラットフォームですでに使用可能でしたが、このリリースでは Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN プラットフォームまで拡張されています。

AppNav-XE の概要

AppNav-XE 機能は、WAAS デバイスへのトラフィックフローのインテリジェントな分散を促進します。WAAS デバイスは、WAN 最適化に使用されます。

AppNav-XE は、クラスおよびポリシーメカニズムを使用し、WAAS デバイス間でトラフィックを分散して最適化することで、代行受信スイッチやルータへの依存を低減します。WAAS ノード(WN)を使用して、サイトやアプリケーションに基づいてトラフィックを最適化できます。AppNav-XE ソリューションは、ノード間でトラフィックを分散させる際に WAAS デバイスの使用率を考慮することで、使用可能なキャパシティまで拡張することができます。このソリューションは、ノードの過負荷状態を監視し、設定可能なエラーや過負荷のポリシーを提供することで、最適化キャパシティの高可用性を実現します。

トポロジの例

図 1. トポロジの例

*SN:サービスノードまたは WAAS ノード(最大 64)

*SC:サービスコントローラとして機能する Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス(最大 4)

上の図は、AppNav-XE を使用した Cisco Catalyst SD-WAN 展開の例を示しています。データセンターとブランチの Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス は、AppNav-XE 機能を使用して有効化され、WAAS ノードを使用した AppNav クラスタを形成します。

AppNav-XE の利点

  • 企業がサービスを効率的に費用対効果の高い仕方で拡張することを可能にします。

  • 柔軟なポリシー定義の使用をサポートします。

  • Cisco Catalyst SD-WAN ネットワークサービスと統合されているため、ハードウェアを追加する必要がありません。

  • 各サービスノードの負荷に基づいて、インテリジェントに新しいフローをリダイレクトします。これには、個々の L7 アプリケーション アクセラレータの負荷が含まれます。

  • 最適化を必要としないフローの場合、サービスノードは、AppNav コントローラに対してパケットを直接パススルーするよう通知することにより、遅延やリソース使用量を最小化します。

  • サービスノードを追加または除去する際のトラフィックへの影響が最小限になります。

  • VRF をサポートすることで、トラフィックがサービスノードから戻るときに VRF 情報が維持されるようにします。

  • AppNav コントローラグループを介した非対称フローの最適化をサポートします。


    (注)  


    非対称フローとは、単方向のトラフィックが AppNav コントローラを通過するときに、戻るトラフィックが別の AppNav コントローラを通過することです。ただし、両方の AppNav コントローラはトラフィックを同じサービスノードにリダイレクトします。


  • 1 台のルータがダウンした場合に、トラフィックが AppNav コントローラグループ内の異なるルータに再ルーティングされるため、トラフィックフローの中断が発生しないルータ間高可用性を実現します。

AppNav-XE のコンポーネント

  • AppNav クラスタ:サイトのすべての AppNav コントローラと WAAS ノードのグループ。通常、ブランチやデータセンターなどの各企業サイトには、AppNav クラスタがあります。

  • AppNav コントローラ:ネットワークトラフィックを代行受信し、AppNav ポリシーに基づき、そのトラフィックを 1 つまたは複数の WAAS ノード(WN)に配信するデバイス。このコンテキストのデバイスは、AppNav-XE を実行している Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス です。

  • WAAS ノード:Wide Area Application Services(WAAS)ノードまたはサービスノードは、デバイスで設定された最適化ポリシーに基づいてトラフィックを最適化および高速化する WAAS 最適化エンジンまたは vWAAS インスタンスです。


    (注)  


    WAAS サービスノードは、このドキュメントの範囲外です。


  • WAAS Central Manager(WCM):WCM デバイスは、ネットワーク内の AppNav コントローラと WAAS ノードを設定、管理、モニターするための Web ベースのインターフェイスである WAAS Central Manager GUI を搭載しています。Cisco Catalyst SD-WAN 向け AppNav-XE では、WCM は、Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス の設定に使用されるネットワーク管理システムである Cisco SD-WAN Manager と通信します。次に、Cisco SD-WAN Manager は AppNav-XE 設定を Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス にプッシュします。ただし、AppNav クラスタ内の WAAS ノードは、引き続き WCM 経由で設定を受信します。Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス の WAAS ノードと AppNav-XE のモニタリングは、WCM を介して直接実行されます。

  • Cisco SD-WAN Manager:これは Cisco Catalyst SD-WAN でのプライマリ管理システムです。したがって、WCM は AppNav-XE 設定を Cisco SD-WAN Manager に送信し、次にその設定を AppNav-XE コントローラにプッシュします。

サポートされるプラットフォーム

次のプラットフォームは、Cisco Catalyst SD-WAN 向け AppNav-XE をサポートします。

  • Cisco 1000 シリーズ アグリゲーション サービス ルータ

  • Cisco 4000 シリーズ サービス統合型ルータ

  • Cisco Cloud Services Router 1000V シリーズ

  • C8500-12X4QC および C8500-12X シリーズ アグリゲーション サービス ルータ

  • C8300 シリーズ サービス統合型ルータ

Cisco Catalyst SD-WAN での AppNav-XE の管理

AppNav-XE 機能は、すでに IOS XE プラットフォームでサポートされていました。とはいえ、Cisco IOS XE SD-WAN リリース 17.2 以降、この機能は Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN プラットフォームまで拡張されています。この機能を動作させるには、Cisco SD-WAN Manager がリリース 20.1.1 以降を実行している必要があることに注意してください。

SD-WAN 環境と非 SD-WAN 環境における AppNav-XE

SD-WAN での AppNav-XE の設定方法は、非 SD-WAN 環境での設定方法とは異なります。主な違いは、WCM と AppNav-XE コントローラ間の仲介デバイスとして機能する Cisco SD-WAN Manager が AppNav ポリシー設定を Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス にプッシュすることです。Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス は AppNav-XE コントローラとして機能します。

次の図は、SD-WAN 環境と非 SD-WAN 環境での AppNav-XE 展開の違いを示しています。
図 2. 比較:SD-WAN 環境と非 Catalyst SD-WAN 環境における AppNav-XE

IOS XE での AppNav-XE:WCM GUI は、AppNav クラスタ内の AppNav コントローラ(ANC)および WAAS ノード(WN)と直接通信して、設定をプッシュします。

IOS XE SD-WAN での AppNav-XE:主な違いは、AppNav ポリシー設定を AppNav コントローラ(ANC)にプッシュする方法です。こちらでは、該当する機能が WCM GUI と Cisco SD-WAN Manager の両方を使用して設定されます。引き続き WCM で AppNav-XE 機能を設定します。その後、WCM は Cisco SD-WAN Manager に設定を送信します。次に、設定が AppNav コントローラにプッシュされます。WCM と Cisco SD-WAN Manager の間の通信は、Cisco SD-WAN Manager でサードパーティ製コントローラとして WCM を登録することによって達成されます。WCM は、引き続き設定を WAAS ノードに直接送信します。

Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス での AppNax-XE の設定

Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス で AppNav-XE を設定するには、次の手順を実行します。

  1. Cisco SD-WAN Manager に WCM をサードパーティ製コントローラとして登録します。

  2. Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス を WCM パートナーに接続します。

  3. Cisco SD-WAN Manager に接続されている WCM パートナーに Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス を登録します。

  4. SD-WAN 向け AppNav-XE クラスタの構成

Cisco SD-WAN Manager での WCM の登録

このトピックでは、Cisco WAAS Central Manager(WCM)にアクセスし、Cisco SD-WAN Manager のサードパーティ製コントローラとして WCM を登録する方法について説明します。また、Cisco SD-WAN Manager を介して WCM パートナーに Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス を接続する方法についても説明します。

WCM GUI へのアクセス

WAAS Central Manager GUI にアクセスするには、ブラウザで次の URL を入力します。

https:// WAE_Address :8443/

WAE_Address の値は、WAAS Central Manager デバイスの IP アドレスまたはホスト名です。

管理者のデフォルトのユーザ名は admin、パスワードは default です。

WCM と Cisco SD-WAN Manager の統合

  1. WCM GUI ホームページから、[管理(Admin)] を選択します。

  2. 次に、[セキュリティ(Security)] > [Cisco vManageログイン情報(Cisco vManage Credentials)] を選択します。

  3. 必要な情報を入力します。

    図 3. WCM GUI

    完全修飾ドメイン名(FQDN)を使用して登録するには、[ホスト名(Host Name)] フィールドに FQDN を入力します。[IPアドレス(IP Address)] フィールドは空のままにする必要があります。

  4. Cisco SD-WAN Manager Web サーバー証明書の信頼できる発行元証明書バンドルを PEM 形式でアップロードします。


    (注)  


    [再インポート(re-import)] ボタンを使用して、信頼できる発行元証明書バンドルを再アップロードします。この操作により、既存の証明書バンドルが置き換えられます。


  5. Cisco SD-WAN Manager Web サーバー証明書の失効チェックを有効にするには、[失効チェック(Revocation Check)] オプションを選択します。

    OSCP ベースの失効チェックのみがサポートされていることに注意してください。

  6. [Submit] をクリックします。

統合した後、[管理(Administration)] > [統合管理(Integration Management)] を選択することにより、WCM パートナーを Cisco SD-WAN Manager メニューから表示できます。

WCM パートナーへの Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス のアタッチ

  1. Cisco SD-WAN Manager メニューで、[管理(Administration)] > [統合管理(Integration Management)] を選択します。

    Cisco SD-WAN Manager に登録されているサードパーティ製コントローラのリストが表示されます。

  2. 目的のWCMパートナーについて、[...] をクリックし、[デバイスのアタッチ(Attach Devices)] を選択します。

  3. 左側の [使用可能なデバイス(Available Devices)] 列で、リストからデバイスを選択します。

  4. [Attach] をクリックします。

  5. デバイスで AppNav-XE を設定するには、次にデバイスを WCM に登録します

Cisco XE SD-WAN デバイスの WCM への登録

前提条件

  • 登録するデバイスは、Cisco SD-WAN Manager GUI でマネージャモードになっている必要があります。詳細については、「Change Configuration Modes in Cisco SD-WAN Manager」[英語] を参照してください。

  • 登録するデバイスには、HTTPS 設定がアタッチされている必要があります。HTTPS 設定は、Cisco SD-WAN Manager のグローバル設定テンプレートを使用してデバイスにアタッチできます。

    1. Cisco SD-WAN Manager のメニューから、[Configuration] > [Templates] を選択します。

    2. [機能テンプレート(Feature Templates)] をクリックしてから、[テンプレートの追加(Add Template)] をクリックします。


      (注)  


      Cisco vManage リリース 20.7.x 以前のリリースでは、[機能テンプレート(Feature Templates)] は [機能(Feature)] と呼ばれます。


    3. 右側ペインの [基本情報(Basic Information)] エリアで、[グローバル設定(Global Settings)] テンプレートを選択します。

    4. [Services] をクリックします。

    5. [HTTPサーバー(HTTP Server)] フィールドと [HTTPSサーバー(HTTPS Server)] フィールドの両方で、ドロップダウンリストから [グローバル(Global)] を選択し、[オン(On)] を選択します。

WCM でのデバイスの登録

  1. WCM で、[管理(Admin)] セクションに移動します。

  2. [登録(Registration)] > [Cisco IOSルータ(Cisco IOS Routers)] の順に選択します。

  3. 必要な詳細情報を入力して、[登録(Register)] をクリックします。

    デバイスの登録ステータスが画面下部に表示されます。

  4. [Submit] をクリックします。

SD-WAN 向け AppNav-XE クラスタの構成

WCM を介した Cisco Catalyst SD-WAN 環境向けの AppNav-XE クラスタの構成は、いくつかの異なる手順を除き、非 Cisco Catalyst SD-WAN 環境の構成と同じです。AppNav-XE コンフィギュレーション ガイドの次のリンクを参照してください。Cisco Catalyst SD-WAN の設定に違いがある場合は、注記で示されています。

AppNav-XE のモニターとトラブルシュート

Cisco IOS XE Catalyst SD-WAN デバイス の AppNav-XE コンポーネントは、デバイスの CLI および WCM GUI を使用してモニターできます。

AppNav-XE のモニター

AppNav-XE のトラブルシュート

一般的な問題と、さまざまな debug コマンドを使用したトラブルシュート方法については、「Troubleshooting AppNav-XE」[英語] を参照してください。